11 / 37
11 初めて話し声が響いた部屋。
しおりを挟む
コーヒーを買ってきて机で飲む。
シリアルバーも一応いろんな会社の物を食べてみている。
美味しいとかは思わない。
ただの非常食だ。
野菜ジュースもそれなりだ。
先輩達が帰って来た。
「おかえりなさい。」
口の中の物を飲み込んで挨拶する。
それにしても、佐々木さんは一言もない。
それが『普通』と言えるか?
この間は終わった後の挨拶を常識だとか何とか偉そうに言っていたのに。
朝の『おはよう』すら聞いてない気がしてきた。
確かに聞いてない。
もし来年に新人が来たとしても、教育担当には指名されそうにない。
面倒な役は押し付けられない。
そうやって生きていく戦法か。
しばらく人が落ち着いてお昼が終わったころ、トイレに行って歯磨きと化粧直しをする。
人がいない時間が好ましいから、わざとずらしてる。
昼も休まず、残業もしてるから構わないだろう。
席に戻って仕事を再開する。
眠気を感じる暇もない。
時々肩と首をグルグルと回して疲れをとる。
静かな部署なのだ。
自分のいた市場調査部は人も多いし、隣には営業や、戦略室や、人の出入りや電話の多い部署もあり、にぎやかだ。
両隣が同期という気安い席並びで、午後には決まった時間におやつが回される。
暇な誰かが他の二人のコーヒーを買ってきたりして。
それでなくても小声で会話をしながら仕事をすることもある。
ここは静かだ。
音を壁際の資料の紙が吸い取ってるかのような。
その内すべてをとりこんで、処分するのだろうか?
ぐるりと部屋を見渡す。
ふと見たら先輩と目が合った。
「疲れてるでしょう?佐々木君と同じペースで仕事してたら肩がこるよね。」
「そうよ、少し休んでいいのよ。お昼も休んでないでしょう?」
先輩の会話に課長も加わった。
「そうなの?そんなに急ぐわけじゃないから、大丈夫だけど。ちゃんと休んでね。」
「はい。そうします。」
「じゃあ、明日は一緒にお昼に行こう?なんだか来た時よりやつれてる気がするよ。お詫びに皆で奢るから。佐々木君もね。」
佐々木さんを見たら、顔をあげてうなずいただけだった。
それでいいのか?
先輩を見たら早速明日の予約をしていた。
いいらしい、後輩らしくない、後輩。
マイペースな個性を尊重してくれているらしい。
自由なヤツだ。
「なんだか前評判と違うからっと・・・・・・・」
先輩の一人が誤魔化すように口を閉じた。
「・・・・私は評判悪いんですよね。分かってます。いろいろ言われてます。」
「美人ならではの悩みね。女子に敵が多い。」
そんな事はありますが、ないです。
「でも、私の知ってる子はほとんど感謝してるよ。尻の軽い男とわかったし、逆に『君』がいいって戻って来てくれたりって。まあ、それはどうよと思ったりするけど。」
そんな事は初耳・・・・ではないけど。やはり真実ですか?
「本当にみんな勝手だから。面白がってるだけで、そんなに嫌われてないよ。妬みを捨てきれない人の分、敵が多いだけ。」
「先輩、それはフォローになってないです。」
「大丈夫、社内恋愛する気がない人には無関係で、蜜の味のゴタゴタ話題提供者だから。」
「男にとってはこんなラッキーな偶然があったら喜ぶ。是非仕事後に飲みに行こう!」
「うっすらと下心が見えてるけど。」
「いいんです。たまには自分の庭の外で華を見たいんです。」
「既婚者で愛妻家で子煩悩だから、安心して。一緒に行こう、もちろん佐々木君も誘ってあげる。今までほとんど行ったことがないから、強制参加ね。課長も行きますか?」
「誘ってくれるの?行くよ。」
「じゃあ、金曜日に、大丈夫?」
「はい。」
いきなり予定が決まった。
子煩悩な先輩が携帯を操作してる。
こんなにこの部屋で言葉が飛び交うのをはじめて見た。
一応仲はいいらしい。
「はい、予約とりました~。」
そう宣言されて、予定は確定したらしい。
シリアルバーも一応いろんな会社の物を食べてみている。
美味しいとかは思わない。
ただの非常食だ。
野菜ジュースもそれなりだ。
先輩達が帰って来た。
「おかえりなさい。」
口の中の物を飲み込んで挨拶する。
それにしても、佐々木さんは一言もない。
それが『普通』と言えるか?
この間は終わった後の挨拶を常識だとか何とか偉そうに言っていたのに。
朝の『おはよう』すら聞いてない気がしてきた。
確かに聞いてない。
もし来年に新人が来たとしても、教育担当には指名されそうにない。
面倒な役は押し付けられない。
そうやって生きていく戦法か。
しばらく人が落ち着いてお昼が終わったころ、トイレに行って歯磨きと化粧直しをする。
人がいない時間が好ましいから、わざとずらしてる。
昼も休まず、残業もしてるから構わないだろう。
席に戻って仕事を再開する。
眠気を感じる暇もない。
時々肩と首をグルグルと回して疲れをとる。
静かな部署なのだ。
自分のいた市場調査部は人も多いし、隣には営業や、戦略室や、人の出入りや電話の多い部署もあり、にぎやかだ。
両隣が同期という気安い席並びで、午後には決まった時間におやつが回される。
暇な誰かが他の二人のコーヒーを買ってきたりして。
それでなくても小声で会話をしながら仕事をすることもある。
ここは静かだ。
音を壁際の資料の紙が吸い取ってるかのような。
その内すべてをとりこんで、処分するのだろうか?
ぐるりと部屋を見渡す。
ふと見たら先輩と目が合った。
「疲れてるでしょう?佐々木君と同じペースで仕事してたら肩がこるよね。」
「そうよ、少し休んでいいのよ。お昼も休んでないでしょう?」
先輩の会話に課長も加わった。
「そうなの?そんなに急ぐわけじゃないから、大丈夫だけど。ちゃんと休んでね。」
「はい。そうします。」
「じゃあ、明日は一緒にお昼に行こう?なんだか来た時よりやつれてる気がするよ。お詫びに皆で奢るから。佐々木君もね。」
佐々木さんを見たら、顔をあげてうなずいただけだった。
それでいいのか?
先輩を見たら早速明日の予約をしていた。
いいらしい、後輩らしくない、後輩。
マイペースな個性を尊重してくれているらしい。
自由なヤツだ。
「なんだか前評判と違うからっと・・・・・・・」
先輩の一人が誤魔化すように口を閉じた。
「・・・・私は評判悪いんですよね。分かってます。いろいろ言われてます。」
「美人ならではの悩みね。女子に敵が多い。」
そんな事はありますが、ないです。
「でも、私の知ってる子はほとんど感謝してるよ。尻の軽い男とわかったし、逆に『君』がいいって戻って来てくれたりって。まあ、それはどうよと思ったりするけど。」
そんな事は初耳・・・・ではないけど。やはり真実ですか?
「本当にみんな勝手だから。面白がってるだけで、そんなに嫌われてないよ。妬みを捨てきれない人の分、敵が多いだけ。」
「先輩、それはフォローになってないです。」
「大丈夫、社内恋愛する気がない人には無関係で、蜜の味のゴタゴタ話題提供者だから。」
「男にとってはこんなラッキーな偶然があったら喜ぶ。是非仕事後に飲みに行こう!」
「うっすらと下心が見えてるけど。」
「いいんです。たまには自分の庭の外で華を見たいんです。」
「既婚者で愛妻家で子煩悩だから、安心して。一緒に行こう、もちろん佐々木君も誘ってあげる。今までほとんど行ったことがないから、強制参加ね。課長も行きますか?」
「誘ってくれるの?行くよ。」
「じゃあ、金曜日に、大丈夫?」
「はい。」
いきなり予定が決まった。
子煩悩な先輩が携帯を操作してる。
こんなにこの部屋で言葉が飛び交うのをはじめて見た。
一応仲はいいらしい。
「はい、予約とりました~。」
そう宣言されて、予定は確定したらしい。
0
あなたにおすすめの小説
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
思い出のチョコレートエッグ
ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。
慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。
秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。
主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。
* ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。
* 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。
* 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる