悪女の取り扱いには注意してください。

羽月☆

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11 初めて話し声が響いた部屋。

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コーヒーを買ってきて机で飲む。
シリアルバーも一応いろんな会社の物を食べてみている。
美味しいとかは思わない。
ただの非常食だ。
野菜ジュースもそれなりだ。

先輩達が帰って来た。

「おかえりなさい。」
口の中の物を飲み込んで挨拶する。
それにしても、佐々木さんは一言もない。

それが『普通』と言えるか?
この間は終わった後の挨拶を常識だとか何とか偉そうに言っていたのに。
朝の『おはよう』すら聞いてない気がしてきた。
確かに聞いてない。

もし来年に新人が来たとしても、教育担当には指名されそうにない。
面倒な役は押し付けられない。
そうやって生きていく戦法か。

しばらく人が落ち着いてお昼が終わったころ、トイレに行って歯磨きと化粧直しをする。
人がいない時間が好ましいから、わざとずらしてる。
昼も休まず、残業もしてるから構わないだろう。


席に戻って仕事を再開する。
眠気を感じる暇もない。
時々肩と首をグルグルと回して疲れをとる。

静かな部署なのだ。

自分のいた市場調査部は人も多いし、隣には営業や、戦略室や、人の出入りや電話の多い部署もあり、にぎやかだ。
両隣が同期という気安い席並びで、午後には決まった時間におやつが回される。
暇な誰かが他の二人のコーヒーを買ってきたりして。
それでなくても小声で会話をしながら仕事をすることもある。

ここは静かだ。
音を壁際の資料の紙が吸い取ってるかのような。

その内すべてをとりこんで、処分するのだろうか?

ぐるりと部屋を見渡す。

ふと見たら先輩と目が合った。

「疲れてるでしょう?佐々木君と同じペースで仕事してたら肩がこるよね。」

「そうよ、少し休んでいいのよ。お昼も休んでないでしょう?」

先輩の会話に課長も加わった。

「そうなの?そんなに急ぐわけじゃないから、大丈夫だけど。ちゃんと休んでね。」

「はい。そうします。」

「じゃあ、明日は一緒にお昼に行こう?なんだか来た時よりやつれてる気がするよ。お詫びに皆で奢るから。佐々木君もね。」

佐々木さんを見たら、顔をあげてうなずいただけだった。
それでいいのか?

先輩を見たら早速明日の予約をしていた。

いいらしい、後輩らしくない、後輩。
マイペースな個性を尊重してくれているらしい。

自由なヤツだ。


「なんだか前評判と違うからっと・・・・・・・」

先輩の一人が誤魔化すように口を閉じた。

「・・・・私は評判悪いんですよね。分かってます。いろいろ言われてます。」

「美人ならではの悩みね。女子に敵が多い。」

そんな事はありますが、ないです。

「でも、私の知ってる子はほとんど感謝してるよ。尻の軽い男とわかったし、逆に『君』がいいって戻って来てくれたりって。まあ、それはどうよと思ったりするけど。」

そんな事は初耳・・・・ではないけど。やはり真実ですか?

「本当にみんな勝手だから。面白がってるだけで、そんなに嫌われてないよ。妬みを捨てきれない人の分、敵が多いだけ。」

「先輩、それはフォローになってないです。」

「大丈夫、社内恋愛する気がない人には無関係で、蜜の味のゴタゴタ話題提供者だから。」

「男にとってはこんなラッキーな偶然があったら喜ぶ。是非仕事後に飲みに行こう!」

「うっすらと下心が見えてるけど。」

「いいんです。たまには自分の庭の外で華を見たいんです。」

「既婚者で愛妻家で子煩悩だから、安心して。一緒に行こう、もちろん佐々木君も誘ってあげる。今までほとんど行ったことがないから、強制参加ね。課長も行きますか?」

「誘ってくれるの?行くよ。」

「じゃあ、金曜日に、大丈夫?」

「はい。」

いきなり予定が決まった。

子煩悩な先輩が携帯を操作してる。

こんなにこの部屋で言葉が飛び交うのをはじめて見た。
一応仲はいいらしい。

「はい、予約とりました~。」

そう宣言されて、予定は確定したらしい。

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