悪女の取り扱いには注意してください。

羽月☆

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12 情けない情報を共有した四人。

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それでもやっぱり終わらなかった。

あと一冊と少し。

先輩達は先に帰った。
一時間くらい経った頃、とりあえず自分はほぼ終わりの頃だった。
林がやってきた。浩美も一緒だった。
当然話は丸ごと全部伝わったのだろう。
もはや隠せるわけもない。

書類を保存して仕事を終わりにした。
本日のノルマ終了。


「亜弓、大丈夫?またやばい奴釣り上げたらしいじゃない。噂にはちらりと聞いたことあるけど。」

「・・・浩美、知ってるの?」

「うっすらと、なんとなく。うちにもおかしいって思ってる子がいるらしいの。数人そんな事が続いたら疑うって。」

「何があったの?」

「気分悪くなって目が覚めたら、真横にいるんだって。『すごく縋りつかれたから、でも忘れていいよ。たまにはそんな相手が必要な時もあるから。』みたいな。『じゃあ、元気出してね。』ってサラリといなくなるらしいよ。連絡先もきちんと交換してなくて、深追いする子もいないらしい。だからゴタゴタしないし、本人も恥ずかしくて忘れることにするらしい。なんだかそんな話。」

電話番号と名字しか聞かれてないのも、そういうことだったのかと思う。

特別感はうっすらとしか演出しないでおけば、恥ずかしさを感じるし、失望されてるかもとか思うし、だから深追いしない。

「なんだか元気ない子とか、落ち込んだ子に声をかけるらしい。」

ああ、もう、顔がどんどん下を向いて行く。
恥ずかしい。
ただ、生理痛だっただけです。
そうでした。後は少しのストレスと。

「本当に佐々木に感謝だよな。危うく会社一の悪女が手玉に取られるところだったから。それは社としても恥ずかしい。何とかして逆襲したいところだけど、マジに危ない奴だとしたら余計な事はしないに限るな。」

林が言う。

「まだ仕事終わらないの?」

「終わったところ。」

「佐々木は?」

「うん、終わった。」

「何?毎日二人で仲良く残業してたの?」

「嫌がらせのように倉庫に行ってる間に、勝手に電気を消されて帰られてたけど。」

「それは知らなかったって言ったでしょう?嫌がらせってこっちも思ってたって。」

「そうだったかな?」

わざとらしい。

「ありがたく護衛役を頼まれて送ってやるよ。全部解決したらお礼をしてもらう。」

林が言うのを睨む。

「なによ、途中駅まででしょう、偉そうに。」

つい言い返した。

「あ~、嫌だねえ、人の親切が分からないなんて。わざわざ悪い評判に自分が近づいてどうするよ。」

そう言われた。

勝手に決められたのに。お願いしたわけじゃないのに。
でも、浩美も知っていた話。
壮大な嫌がらせということじゃないらしい。

信じよう。


「しばらくはそうした方がいいよ。でも証拠とかあるのかな?」

「なくても被害者が多すぎて、みんな同じ反応だったら、薬の入手先も割れるだろうし。会社としては辞めさせると思うよ。」

「最悪な物証が出てこないことを祈りたい。勇気を出した子たちが気の毒になるし。」

皆が沈黙した。
自分も・・・・・・、そんな最悪な気分になるところだった。
そこをタイミングよく助けられて、揶揄われて、救われた。

「ありがとう。」

そう言った。

「やっと人の心を取り戻せたらしい。ここは矯正施設か?」

やっぱり林が混ぜっかえしてきた。
それでいい。
そんな事でも少しは救われる。


皆で帰り支度をした。

同じ路線は林だけ。

電車の中で話をしてみた。

「金曜日佐々木さんが泊ったの?」

「ああ、ビックリした。重要な相談があるから会いたいって。」

「部屋にいたの?」

「ああ、丁度帰って来たところだったよ。」

「お前も本当に脇が甘いなあ。」

お前に言う権利があるかどうか慎重に考えたい!!
そう思って言い返さなかった。

「お、反省中?」

うっとうしいので無視。

「本当に感謝しろ。被害者に名前を連ねたら、嫌なことを根掘り葉掘り何度も聞かれるんだぞ。それこそ奴に余計な恨みを買うし。」



「分かってる。」

「なら、いい。」



「ご飯も食べないで仕事してるって?」

「だって終わらないのよ。それでも余分に一時間かかってるくらい。」

「心配してるよ。やつれたって。」

「浩美が?」

「佐々木だよ。」

なら、一言あればいいのに、と思った。

「佐々木さんもお昼はとってない。残業もしてる。」

「食には興味ないらしいから、別に苦痛じゃないタイプなんだよ。」

「知らないし。」

「食べろよ。」

「分かってる。明日から先輩と一緒にランチとるように誘われてる。」

「そうか。別にこっちも忙しくないよ。今のところのんびりだ。急いで帰ってこなくていいぞ。」

それはゆっくりやれってことだと思うことにした。
そう思ってあげよう、送ってくれたお礼だ。

林の駅が過ぎたのに降りなかった。
私の駅で一緒に降りて、そこで気がついたふりをした。

「部屋は近いか?大きい通りを通って帰れるか?」

「大丈夫。ありがとう。気を付けるから。」

「ああ、じゃあな。明日は佐々木の当番だから。」

そう言ってホームに戻って行った。

明るい、大きな通りを通って部屋に戻った。


お風呂を済ませてから浩美に電話をした。

『かかってくると思った。』

「誰に何を聞いたの?」

そう聞いた。

『さすがに林君も知らなかったらしいの、女子の間で有名かどうか、そう聞かれて、同じことを教えた。マジにびっくりしてたよ。』

「それで?」

『どうしたのって聞いたら、ランチの時に相談があるって言われて。もうドキドキ、何が起こったのか全然分からないし。いい予感はしないし。』


「そう。ごめんね。あの日飲み会断ったのに。多分一緒に行ったらすごく悪口を言ったと思う。酷く酔って、本当に酷いことを言ったと思う。」

『なんとなく聞いてた。頑張り過ぎだって、逆に心配してくれてたみたいだけど。』

そのことには何も言えない。

「でも、本当に今でも信じられない。すごく元気になるようなことを緩く言ってくれて、誘い方もサラリとしてて。すごくいい人だと思ったのに。」

『誰もがそう思ったから、今まで何度も同じことを繰り返してこれたんじゃないの?もう、忘れよう。』

「そうだね。ありがとう。しばらく林にも何も言い返せない。」

『それは普通でいいんじゃない?向こうだってそんなのつまらないと思ってるよ。全部終わったら四人で飲もうね。メンズの会計は亜弓が出してね。私は自分の分しか出さないよ。』

「分かりました。」

『じゃあ、ちゃんと食べて、あと少しだから・・・・・佐々木君と仲良くしてね。』


「普通です。」

そう答えた。
一緒に働いてる先輩達とも薄い関係しか作ってないのに、私とはもっと短い、たったの2週間くらいだし。

それでもちゃんとお昼は休みをとって、せっかく知り合いになれるなら先輩達とも話がしたい。




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