悪女の取り扱いには注意してください。

羽月☆

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22 二度目の二人、私の部屋。

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目の前にやっと部屋が見えてきた。

あ~、デザート食べたい。
二種類買って来たけど、これを分けることになるんだろうか?
味がよく分からない人と?
見て楽しめるとは思うけど。一つは歯ごたえもあるかも・・・・。


部屋に入る時に少し止まる足。
どうぞと言ってそのまま入って行く私についてきた。
閉まった玄関のドアの音。
お邪魔しますの小さな声と鍵のかかる音。

本当に不器用なんだと分かったら、裏を探ったり、駆け引きしたり、そんな必要もないのかもと思った。


「ずっとコーヒー飲んでたんでしょう?何か飲む?」

「お水をください。」

「ねえ、私は外でご飯を食べて、デザートを買って楽しみに帰って来たんだけど、食べる?」

そう言って箱の中を見せた。

「ううん、構わないで食べていいよ。人が食べてるのを見るのも嫌いじゃないし。」

「ねえ、その・・・・味覚が分からないってことは、全然何を食べても味がしないの?」

「うっすらと甘いかしょっぱいくらいは分かることがある。ケーキは少しは甘いと感じるかもってレベル。どっちかには分けれるっていう感じで、食材ごとに味が区別できるかというと出来ないことが多い。小さいころからだし、そんなものだと思ってる。気を遣わなくていいから。」

「飲み物は?コーヒーと紅茶とお水とお酒。どうしてるの?」

「ビールは苦い。炭酸がはじけて気持ちいい、後は同じか、コーヒーが時々少し苦いくらい。」

「そう、何を出そうかってこの間も今も思ったから、聞いてみただけ。本当に横で食べていい?」

「どうぞ。」


それでもスプーンを余分に持って、小さな皿を一つ出してシュークリームを出して持って行く。もう一つはコーヒーゼリーだ。
味は分かるだろうか。


「良かったらどうぞ。二つも食べると本当は食べ過ぎだし。」

少し手を付けてくれるだろうかと思ってたら、結構スプーンを動かしてる。
むしろ気を遣ってる?ってくらいに。

「冷たくて少し苦くて、美味しい。」

美味しそうだと私が思ったコーヒーゼリーをまあまあの楽しみ方で食べている。
さて、私は一緒にスプーンを突っ込むことはできないから。
しばらくシュークリームを食べて待つ。
半分ちぎるようにして、二種類のクリームを上手にのせて食べる。
皮の上にアーモンドの粒が乗っていて、少し歯応えも足してはいる。


「そんなに暑い?」

涼しいくらいだけど。

「ちょっと自分の中では、緊張してるし、まあ、いろいろ。」

そう言ってほとんどコーヒーゼリーのプラの底が見えかけていた。
私は一口も食べてないけど・・・・。
喜んでくれたらいい・・・・と思おう。


「今までデートしてた時はどうしたの?食事はお任せ?あ、彼女の手料理も褒めるの難しいね。いっそ下手でも気が楽かも。」

そう言ったらスプーンが止まった。

そう言えば前にも見たこんな反応。
まさか今まで誰も彼女がいなかったとか、無いよね?


「聞いちゃいけなかった?」


「別に・・・・・。まあまあ。」

ハッキリしない答えだった。
まあ、存在皆無というような寂しい青春じゃなかったらしい。
そうだ、前に同窓会とか初恋とかのことを聞いたんだった。
その時そんな反応してた。
同級生だったらさすがに知ってるよね。
なら、良かった。

そう勝手に安心して。

ついでにちょっと思い出した。
林とした話。

「ねえ、私と他の会社の面接会場で会った?性別間違えられて、隣に座った?」


「・・・・覚えてくれてた?」

「林がどこかで会ってるんじゃないかって、そう言ってきて、思い出した。ごめん、あの時はこっちも緊張してたりでいっぱいいっぱいだったし、よく顔も見てなかったし。印象も少し違うから。」

「あの会社は途中でダメになってすごく残念だったんだ。でも今の会社の試験の時に見つけて、間違いないって思って、さり気なく近寄って名前も確認した。目が合ったのに全然気がついてなかったから、まあそんなものだなあって思ってた。」

知らない。目が合ったことも気がついてない。

あの時期はさらに余裕がそがれてしまった時期で、自分も周りもピリピリしてたと思う。

「入社してすぐに、林君が簡単に話しかけてたのがうらやましかった。楽しそうに笑ってたし、ごめんとか、イメージが違うとか、謝ってる言葉も聞こえて、自分と同じようなきっかけがあったのかと思ってた。偶然仲良くなって、聞くより前に『幼馴染で初恋の相手』って教えてくれた。無理だなあって思った。自分との小さなきっかけなんて吹き飛ぶくらいの昔からの結びつきかって。」


「林とは別に何もない。本当は全然覚えてなかった。手紙も・・・・内緒だけど、読んだら捨ててた。自分が何を書いてたのかも覚えてない。確かに家が近くて仲良かったのに。本当に冷たい女で。でも、今は普通に同僚としても気を遣わない唯一の男だから、いてもらってうれしい。あいつは噂も気にしてないし。」




「もうヘルプが終わって、一緒に仕事することはないと思うけど、考えてももらえない?昨日も聞くだけ聞いて、何も言わずにいなくなって、そんな対象の枠の中にも入ってないのかって、残念で。」

本題だ。

「ごめん、本当に存在もよく知らなかったくらいで、・・・・今すぐには何も答えられない。」


「そうだよね。」


そう言ってお互い黙る。


沈黙に耐えられないのか、シュークリームの半分に手を伸ばして食べている。

「甘い。美味しいね。」

「本当?」

「うん、自分が感じるより本当はすごく甘いのかもしれないけど、甘いのは分かる。」

「美味しい?」

「うん。」

「良かった。ゼリーも大人の味だね、苦い。上のクリーム全部食べられたし。」

底に残った一口のゼリーを食べてみた。

「ごめん、本当に全部食べちゃった。」

「いいよ。美味しいとか、冷たくて気持ちいいって思ってもらえるなら。」

「匂いは分かるんだ。」

「ねえ、いっそ激辛料理とかはどう?」

「試した。バクバク食べられたけど喉が痛いし、汗はかくし、鼻水も出るし、楽しくはないね。しかも次の日にお腹壊したから。危ないから止めてる。」

「そうか、試してるのか・・・・ガッカリ。」

後は思いつかない。
膝に顎をのせて考える。

「あとは・・・・・何がいいかな?」


「ねえ、今僕のために考えてくれてるの?」

「ん?・・・・そうだね。」

確かにそう言うことになる。

「もちろん試してみるなら付き合うよ。でも、もう思いつかない。だけど、普通でいいみたいね。思ったより楽しめるなら、一緒でも楽しいかも。」

テーブルのゴミを指さす。

「それは・・・・普通の食事でもある程度楽しめるって分かったから、一緒に行ってくれるってこと?」

そう?違う?

「そう、かな。」

思ったより気を遣わないで食事が出来るって確かめて、どうしたかったと聞かれると、そういうこと?
それはどういうこと?
皆でって考えてた?


距離の開いたソファの下に座り込んだまま見つめ合って、しばし無言。
ゆっくり視線を動かして外した。
正面に。見慣れた自分の部屋。
それでもいつもと違う位置に座っていて、見える景色も少し角度が違うし、自分以外の体温を感じる。

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