悪女の取り扱いには注意してください。

羽月☆

文字の大きさ
27 / 37

27 どんなトラウマか、そのあたりは分からないまま。

しおりを挟む
結局疲れ果てて、明るくなるまでよく眠れた。
目が覚めた時、目の前に顔があってビックリした。

急いで離れた。
先に目が覚めたのは佐々木君だったらしい。

起きた瞬間視線が合うなんて、薄暗いとはいえ、さすがにそれはどうかと思う。
誤魔化すように聞く。

「いつから起きてたの?」

「少し前。本当に隣にいてくれて感動して、寝顔見てた。」

恥ずかしい。せめて私が早く起きたかった。

距離をとったまま、さらに顔も伏せるように俯く。

何で正面にいるのよ、普通少しずれて胸のあたりとか、せいぜい顎のあたりとか・・・・・。
普通が通じないって、怖い。

寝起きにはまったく自信がないのに。


「いびきとか、大丈夫だった?」

「うん。静かに寝息だけだったよ。」

それでも聞こえたのか、聞いてたのか。
ひとまず、いびき減点はなかったらしい。

「今までに言われたことあるの?」
「ない。」

速攻で否定した。

「じゃあ、今まで何人も一緒にいて言われたことがないなら、大丈夫じゃない?」


「そんなにたくさん、何人もなんてないから、勝手に誤解しないで。」


「じゃあ、今まで何回も一緒にいて言われたことがないんなら、大丈夫だよ。」

「そんなに・・・・以下同文。」


「ふ~ん。」


なんだ今の反応は?
ちょっと首を絞めて羽をもぎたくなる衝動が再び。
あの日、助けてくれた日もそんな感じでいろいろと言われた。
突き放すような、揶揄うような、信じてないけどねって感じで。
週末からの告白パターンとは全然感じが違う。

何?


顔をあげて見たら視線を外された。

天井向きの佐々木君。

目は開いてる。

取りあえず約束は守れた。
満足してもらえただろうか?
何か期待するようなことがあったんだろうか?

同じように天井を向いた。

視線だけ上に向ける。
まだまだ早い時間。

日曜日の朝、のんびり寝坊したい。
下着は乾いてると思うけど、勝手に取り出されるわけにはいかない。
私の分も一緒に洗ってるし。


「起きようか。お腹空いたんじゃない、今度こそ。」

胸を隠しながら座って見下ろす。

「空いてる。」

じゃあ先にシャワーを浴びたいと思ったのに、掴まれた腰。

「きゃあ。」
思わず声も出る。

微妙微妙、離れて。

布団から出て起き上がり抱きしめられた。

「朝だよ、まだ。」

知ってる。時計も見た。昨日までちゃんと動いてたし時計が壊れてないのは外の明るさからも想像できる、多分そんな時間。


「私はお腹空いた。」

「我慢して。僕が出来ないから、亜弓さんが我慢して。僕が出来るところは亜弓さんは我慢しなくていいから。」

それは何?
何を我慢するつもりなのよ。

細腕だから、引き込まれるように横になったのは、実は自分の方からだったかも。


すっかり慣れたらしい。
素晴らしい適応力、記憶力、応用力、持久力、その他にも何か。


本当に疲れた、付き合いきれない。

初心者を舐めたらいけない。
ポテンシャル、高い。

寝坊することにしよう。今度こそいびきをかくかもしれない。
出来たら、私より深く眠って欲しいと思った。



次に目が覚めたのは、それでもそんなに時間はたってなかった。
今度は私が寝顔を見る。

軽く閉じた唇にキスをするけど起きなくて。

少し緩んだくらい。

もてる要素ともてない要素。
別にもてない要素は、ちょっと慣れてない所だけ?
ただ目立たないという個性のせいだろう。
きっと佐々木君を好きになるのは大人しいタイプの人で、決して自分のような、トラブルの噂があるような人とは思えない。
だからひっそり片思いしてた人がいたのかもしれないのに。

ただ本人が気がつかなかっただけなんじゃないの?


眉間にしわが寄りそうになる。
今何かに焼きもちを焼いてるんだろうか?
心が黒くなった気がした。

それを独占欲というのかもしれない。


真っ白だと聞いたのに。多分、そう言うことだと判断した。
それでもどこかに漏れ出る隙がないか目を光らせて敏感に反応して。
そう、本当はそんなタイプでもある。
そう思わせてくれる人に最近出会ってなかっただけ。
それなりに嫉妬もする。


そんな事実は想像もしてないかもしれない。
驚くだろう。
びっくりだろう。
それこそ噂と違うって違和感を覚えたりして。そして・・・・。


まだそう決めつけるのは早いから保留。



お昼に近い時間。
お腹空いてる、もうピークは過ぎたくらいに空いてる。

勝手に起きだしていいよね。だってシャワーを浴びるのに時間差は必要だし。
今度こそゆっくり起きだそうとしたら腕を掴まれた。

「もう無理。」

そう言った。
もう付き合えない。

「分かった。でも一人で起きないで。」

何かのトラウマですか?
幼児体験で、お母さんが夜に家出した事件があったとか?

ゆっくり横になり話す。

「でもシャワーを交互に浴びるんだよ。」

その間一人で待つのに?

返事はなかった。胸に顔を埋められて、強く抱きしめられた。

本当にトラウマ説?
何かの告白があるかとゆっくり背中をさすりながら待つ。

ただ、無駄だったらしい。
口は言葉を押し出すよりも、目の前の物に反応したらしい。
ゆっくり胸元にキスをされた。

「無理だって。」

「分かってる。ちょっとだけ。大人しくしてるから。」

その意味するところは分からない。

おでこをくっつけたまま少しづつ刺激を強められると、こっちも大人しくしてられなくて。

頭を抱えて声が出てしまう。

すっかり慣れた手つきで確かめられた。




絶対痩せる。
こんなの体力が続かない。
食事をしたい。私はご飯を食べたい。

今度こそ隙を見て起きだして、さっさと寝室を後にした。

シャワーを浴びて、軽く着替えた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

処理中です...