抱きついて癒されたい!私の大好きなコアラ。

羽月☆

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2 ひとり、どこまでもわがままな私を許して。

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部屋では相変わらず抱きついて食事して、週末はたくさん愛し合って。

会社では相変わらずのような二人を観察しつつ、勇気の出ないらしい筋肉馬鹿に呆れて。



そんな変りのない日々。

最近個展が近づいてきたのもあって、桂馬も外に打ち合わせに出ることが多いらしい。
見たことない凝った料理が出てくるようになった。

「今日も打ち合わせだったの?」

「うん、あと次の依頼もあるから。」

「これ、美味しいね。」

焼き魚を丸々と丸めて洋風に仕上げている。

「この間美味しいって言ってたお店だよ。」

「うん、美味しい。丁寧だし、凄いね。」

「駅ビルの中だから中の会社の人がランチの時に買いにくるみたい。お弁当もたくさん売ってる。」

「ふう~ん。」

「担当の人が色々教えてくれるんだ。」

「新しい人でしょう。どう?」

「うん、いい人だよ。若いし、初めての担当だからって張り切ってる。」

「ふ~ん。」


若い担当をつけられたなんて、手がかからない奴と思われたか、御しやすい奴と踏まれたか。
きっと両方かもしれない。

「でも次につながるといいね。葉書とかの物販も、勿論原画も。」

「うん。そうだね。」

コンスタントに仕事はあるから、そうたくさん請け負っても本人が大変なだけで、そんなに簡単に量産できるものじゃない。
それでも少しは欲を出していいのにって、私はそう思うけど、その辺はあんまり感じられない。

まあ、そこがいいところだけど。




最初の頃、夜に目が覚めて横に姿がないことがあって。
なかなか帰ってこなかったから、寝室を出てのぞきにいったことがある。
ひとりで明かりをつけた仕事部屋にいて、静かに絵を描いている後姿を見た。
そっと扉を閉めて、一人で寝室に戻った。

そんな夜が何度か繰り返されて、本当は邪魔なんじゃないかって思って悩んだ。
私が甘えた日に限って姿を消してるって気がついて、特に。


「ねえ、もしかして一人のほうがマイペースで仕事できる?一緒にいるときに仕事したくなっても、全然いいよ、邪魔はしたくないから。無理はしないで。迷惑ならはっきり言って。」

その時ばかりはしおらしく言った。
真面目な顔で。


だって無理をしたら、きっと長くは続かないから。
それは、お互いに。


「全然。ちゃんとマイペースで出来てるよ。だって昼間ずっと一人でいて仕事してるんだから、百合ちゃんがうちにいる時間は出来るだけ一緒にいたいよ。」

「だって、夜いないことがあるよね。私が・・・・お願いしたりした夜に、特にいなくなる気がする。」

「それは・・・・しょうがないんだ、そういう感じで描きたくなる夜もあるし、
イメージが浮かぶときもあるから。・・・・いい刺激になるみたいで、逆に感謝してる。目が覚めてそう思ったら、ちょっとだけあっちの部屋に行って仕事してる。」

そう言った顔は無理してる風ではない、と思った。


「ねえ、本当に邪魔してない?無理してない?」

「全然してないよ。」

もう一度確認した。
今度は目を見てそう言われた。

嘘は言ってないと思った、思いたい。


「それに、一人でいた時はもっと集中できなかった。だから時々コーヒー屋さんでぼんやりしたりしてたんだから。今はメリハリあって集中してるよ。余裕持って仕上げるようになって担当さんもすごく喜んでる。」

そう言われた。

まだ、前の担当さんの時だった。
そういえば、確かに褒められたと言っていた気がする。
だから安心した。


最近は夜一人になることは少なくなった。
私からもらう刺激がなくなったというべきか、桂馬の体力の問題か。
喜ぶべきじゃない気がするけど、どうだろう。


「じゃあ、新しい担当さんは楽してる?締め切りもちゃんと守るし、わがまま言わないし。」

「そうだね。優等生だと思うよ。だって偉そうなことは言えない。まだまだ下っ端だから。今度一緒にご飯を誘われてるんだ。僕がお世話になってるし、出したほうがいいのかな?」

「経費でしょう?」

「う~ん、どうだろう。仕事の時間以外でって言われたけど。」

「前の人ともイベントの後とかに食事とか飲みとか付き合ってたよね。」

「うん、それは打ち上げというかご苦労様ですってことで経費で出してもらえてた。新人のあの人もそうするかな?」

「ねえ、若い女の子よね、新しい担当さん。」

「うん。元気な女の人だよ。」

「仕事の時間以外でって、どういう意味なの?」

「だから昼間の打ち合わせしかしてないから、それ以外の時間でってことでしょう?たまには夜に飲みたいとか。」

「ねえ、特別な意味はないよね?」

「何で?ないよ。」

「どうしてそう言いきれるの?」

「だって、そんな・・・・ないよ・・・・。」

根拠はないらしい。

「もともとファンだって言われたんでしょう?桂馬のイラストが好きだったんでしょう?」

「それは最初に言われたけど、そんなことは言うんじゃない?」


最初の頃すごく喜んでいたのを知ってる。
長く担当してくれてたベテランさんから変わったときで、少しは不安があったのかもしれない。それでも最初の顔合わせの一番の時にキラキラした目で『小和田さんの画の世界観が大好きです。』そう言われて、うれしかったと言っていた。

「ねえ、私のことは知ってるの?桂馬に彼女がいるって知ってる?」

「だって今日のお惣菜も二人分買ってるし。」

「そこまで一緒にいるの?」

「だって教えてもらったし。」

「じゃあ、彼女が喜んで楽しみにしてるって言ってみて。絶対言って。」

ちゃんと目を見てお願いした。

「うん。言うけど、大丈夫なのに。」

私だってそう思うけど、担当してるとすごく近いって思っちゃうかもしれないじゃない。
全然違うんだったら、それでいい。
そうじゃなかったら、ずっと後になって分かったらその子も悲しいだろうから。
今のうちに知ったほうがいい事だってある。

そう思いながらも、本当は自分の心の平静のためだって分かる。
ちょっとずるい女の出来上がりだ。





「桂馬、疲れてる?」

「ううん、疲れてないよ。」

じっと見上げる。仰向けの桂馬の体にくっつく。
片足を絡ませて。

「明日仕事でしょう?いいの?」

「ねえ、桂馬、お願い、ちゃんと伝えてね。」

担当さんに私のことを、そうまたお願いした。

「うん、明日、ご飯の感想と一緒に伝える。それで、いい?」

「うん、ありがとう。」

抱き寄せられた。

「ごめんね。」

桂馬は怒らない。『メンドクサイ』なんて言わない。
いいよって、いつも言う。
いつも私が言うことに、そうだねって、いいよって。


だから余計に聞けない事がある。
チラリと匂わすこともできない事がある。



「桂馬、出会えてよかった。」

限りなく顔を寄せて、何も見えなくなる寸前に言った。

「うん、すごい出会いだから、あんなことはもう二度とない。」



夜、目が覚めたときに、やっぱり横にいてくれた。
眠ってる。
その手は私の腰にある。

腕の中に入り込んで肌が触れ合うようにくっつく。


本当にもう何のイメージも浮かんでこないんだろうか?
桂馬のあの世界を生みだす刺激になるようなものは、もう私にはないんだろうか?


そんな事も思い始めてる私。
欲張りな自分を時々隠せない。
それでも呆れないでいてくれるって知ってる。




優しい桂馬が困る事って、何だろう?



私のわがままはどこまで許されるんだろう。
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