抱きついて癒されたい!私の大好きなコアラ。

羽月☆

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3 貪欲なペリカンの私を愛して。

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相変わらず隣の席はただの隣同士の仲良しの二人のままらしい。

今日は桂馬は新しい仕事の打ち合わせで遅くなる。
ついでに知り合いに会うとか言っていた。
そんな日、飲み会の誘いがあった。
よその会社のメンズも集めるけど人が足りないらしい。

よし、勝負をさせよう。
そう思った。

「緑ちゃん、今日恋活しよう。」

「ええっ、百合先輩のお誘いですか?」

「他から回ってきたの。一緒に行こう。」

「今日コアラさんは?」

「遅くなるから参加できるの。」

「はい、誘われます!!」

かなり気合が入ってる。
後ろから心配そうな気配が立ち上ってる気もする。


しばらくして緑ちゃんが席をはずした隙に隣に囁いた。

「一緒に行くよ。端に隔離するから、いい加減に決めれば。本当に空回りが止まるよ。」

「・・・・ありがとう。」


席並びはラッキーなことに端しか空いてなかった。
いつものようなトライアングルができた。
座ったあと緑ちゃんは遠くを見て、今日も何かを諦めたみたい。
ごめんね、ちょっとだけそう思いそうになる。
でもその分、松田に視線でエールを送った。
私はエールのつもりだけど、ガンバレと届いたか、いい加減にしろよと届いたか、受取人次第だ。

さてさてじっくり観察しましょう、松田の実力を!

いつものように仲良く三人で盛り上がる。私の正面の人は入り込めない。そのうちいなくなった。しょうがない。今日は許してもらおう。
遠くでは明らかに社外の男たちをめぐる火花が散っている。
時々緑ちゃんが悲しい顔をする。
あっちに行きたい気もするが、やっぱり大好きな松田を諦めきれない、捨てきれない。
そんな感じだろうか?
なんで気が付かないかなぁ?


話に聞いた二股のトラウマが今でもあるのか。
恋活と騒いでるわりには自分から行くことはしないタイプだ。
松田はそのあたり全く心配ないのに。
喜んでウェルカムだろうし、まっすぐ一人しか見つめないだろうに、多分。

「松田、どう?二股かけたり、かけられたりってある?」

明らかにびっくりする二人。
ちょっと脈絡のない質問だったかも。
それでも、緑ちゃん、耳がピクピクしていますか?

「ないよ、なんでいきなりそんな質問なの?」

過剰に必死に見える。

「まぁ、そんなに器用じゃないだろうなぁって思った。」

「ひどいなぁ、新田さん。新田さんはどうなの?」

「あると思う?」

「ないね。」

当たり前だ。

「そんな素振り見つけようものならチクチクといじめてやる。」

言い切った。

なんて言っても、この間はあんなに必死に割り込まれないように、その芽を摘みたくてお願いしてしまった自分、そんな事は桂馬しか知らない。

どうなったんだろう?
あれからまた連絡をとったろだうか?

「緑ちゃん、次は?」

二股の話から思い出したんだろうか?
緑ちゃんにお酒を勧める松田。

「もう最後でした。これでおしまいです。」

「もう飲まないの?」

「はい。」

本当に毎回毎回自制心はある、そこは褒めてあげよう。

ぐずぐずに酔ってとんでもないことを口走るのをひそかに楽しみにしてるのに。
止めて欲しいと言われてるが、私が出しゃばるまでもなくきちんと自分で自制している。
酔っぱらったとんでもな姿は松田に任せよう。


「そろそろじゃない?二次会の話になってるし。緑ちゃん、行く?」

「まさかです。だって誰ですか?って感じです。」

「そうだね。面白いことになりそう。」

思わずニヤリと笑ってしまう。
他人事ならごたごたも多少なら面白い。

緑ちゃんがトイレに立った隙に松田に言ってみる。

「どう?」

「月曜日にいい報告が出来たらうれしいんだけど。」

「楽しみにしてる。酔うとどうなるかも楽しみ。」

松田がどこかに予約を入れている。
緑ちゃんは誘われるだろう、戸惑いながらもうれしさを隠せずに笑顔で誘われるだろう。
想像してこっちもうれしくなる。
良い事をしたら、その分自分もハッピーになれる気がするし。

駅でみんなで別れた。

桂馬はもう帰ってるだろうか?
早く報告したい。
一緒に二人の事を応援してもらってるし、早く教えてあげたい!


部屋に帰ると桂馬は帰っていた。

テーブルにノートを広げてぼんやりとしていた。

「ただいま。桂馬、早かったの?」

「うん、1時間くらい前に帰って来た。」

「仕事中?」

「ううん、ぼんやりとしていただけ。」

「桂馬、聞いて。今日ね松田の背中を押したの。今頃二人で飲んでるかもしれない。」

いつものようにくっついて、さっそく話をする。

「何?二人で二次会?」

「うん、松田がどこか予約してたから、きっと誘ってる。緑ちゃんも断らないと思う。絶対うまくいくと思うんだ。」

「そうだね、そうだといいよね。」

「うん、いいことしたよね?」

見上げると、同じようにうれしい表情をしてくれている。

「百合ちゃん、一度だけ聞いていい?」

「何?」

急に真面目な顔をした桂馬。

「どうしたの?」

「百合ちゃんは、松田君は全然だったの?」

「うん、まったく。いい奴だけど。」

あっさりと言った。
あまりにもあっさりと。
可哀想なくらいあっさりと。

「あっ、もしかして、そう思ってたの?あんまり名前が出るから?」

「・・・まあ、そうかな?僕を相手にしたから、なんとなく誰かとくっつけたいとか・・・・。」

「・・・いつから?いつから、そんな事思ってたの?」

「なんとなく、ぼんやりと、名前を憶えて、緑ちゃんとのことを話しだしたころから・・・かな?」

「全然だよ。」

「うん、なんだか、そうみたいだね。」

「そんなこと思ってたなんて、全然気が付かなかった。少しも。」

「ちらりと思っただけだから。」

そう言ってくれたけど、改めて思うとかなり名前は出てたと思う。
気にしてただろう。
まったく、全然違うのに。

「お風呂入ってくる。なんだかウキウキして、探りを入れたい気分を我慢するのが難しい。緑ちゃんから相談来ないかなあ?」

「頼って欲しいんだね。」

「うん、少しくらいは。でも月曜日に必死に隠してるところを想像するのも面白そう。どっちがいいかなあ?」

「厄介な世話役じゃない?」

「いいのいいの。私も楽しみたいんだもん。」

携帯を確認する。連絡はない。

まさか松田の誘いを断ったってことないよね。
そもそもそれがないと何も始まらない。

「百合ちゃん、お風呂お風呂。」

さすがにそう言われた。

ササっとお風呂から出て、携帯をチェックする。
何もない。

すっかり見ていた桂馬に笑われた。

お水を持ってきて、一緒に座ってぼんやりする。


「ペリカンみたい。なんでもかんでもパクパクって文字を口にして、楽しくて面白い言葉に変えて吐き出すペリカン。」

「何?それはどちらかというと鵜飼の鵜じゃないの?」

「う~ん、いっぱい入りそうなあの嘴がいいんだよ。さっきうれしそうな顔をして話をする百合ちゃんを見てて、そんなイメージがわいた。」

久しぶりに聞いた。
最近全然教えてもらってなかった。
あんまり聞いたらいけないかと思って。
だからすごく久しぶりに聞いた。
出来た画を見ても説明されることはなかったから。
あったのか、なかったのか。
でも、久しぶりでうれしくなった。

「すごく久しぶりに聞いた。私がちょっとだけ桂馬のイメージの中に入れたって事。うれしい。」

「ああ、そうかもね。もう最近はずっと普通のやり取りでイメージをもらってて、それが当たり前みたいになってたから、いちいち言ってなかったかも。なんだかちゃんと話を聞いてないみたいだし、その・・・夢中じゃない風にとられて、ガッカリされたりしても嫌だし。」

「だって、前みたいに起きだしていなくなることないし・・・・。だから全然刺激にならない、慣れた存在になったかなって思ってた。それでも、それが当たり前だと思った方がいいかなって。」

「そんなことないよ。夜はちょっとだけ起きてメモを取って終わりにするようにしてる。たまたま百合ちゃんが気が付かないで寝てるだけだよ。ぐっすり寝てるもん。」

知らなかった。
全然。
だっていつ目が覚めてもいるし、服着てないままだし。

裸のまま明かりをつけて、メモを取ってまた戻って来てたの?

風邪ひくよ。
想像して笑ってしまった。
安心して笑ってしまった。


「もう連絡ないね。」

「うん、楽しんでるといいね。」

「もう待たなくていい。」

「そう?」

「うん。きっと緑ちゃんも邪魔しちゃ悪いなあって思う時間だよ。」

「邪魔って言うの?」

「うん、思いっきり邪魔。」

「勝手なんだね。」

「いいの、私が楽しいのが一番。桂馬も。」

「まあね。」


ペリカン・・・・なんでだろう?
早く見たいなあ。

目が覚めた時にやっぱり桂馬はそこにいた。
さすがに今日はもう浮かばなかったかな?
やっぱり桂馬が大好き。松田なんて、全然存在してないから。

桂馬の手を引き寄せて体の距離を縮めた。
力を入れ過ぎたのか、ビックリしたみたいに声をあげて桂馬が目を覚ましたみたい。

「うわぁ。」

「ごめん、起こしちゃった?ちょっと近寄りたくて。」

暗い中でじっと目を合わせる。

「ペリカンに食べられるところだった。頭を撫でてたら目を細めて喜んでたのに、急に大きな口を開けるんだもん、ビックリした。」

「桂馬、どんな夢見てるの?」

「だって凄く食べられた気分で寝ちゃったから。そのままイメージの続きを見てたみたい。」

失礼な。ちょっとうれしくなっていつもよりははしゃいだけど。
昨日は私でも、いつもは桂馬に食べられてるのに。

髪をゆっくり撫でられた。

目を細めて喜んだりしない。
大きな目で見つめてやる。

でも心地よくてうっとりしてしまったかもしれない。

そして・・・やっぱり食べるのは桂馬の方じゃない。
最後に食べられたのは私の方だと言いたい。








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