関係者の皆様、私が立派な大人になれるその日まで、あと少しだけお待ちください。

羽月☆

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41 あと少しだけ、待っててください。

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「春日さんは自分の思った通りに人生進んでると思いますか?」

「そんな、思い通りなんて何もないよ。目標を持って何とかこなしてるだけだし、それは一重に朝陽のサポートと芽衣とか他の会社のみんなと付き合いのある人、皆のお陰だよ。」

「じゃあ、来年の春はこうなってるだろうとか考えてますか?二年後、三年後・・・とか。」

「考えるよ。まったく無計画に仕事をしてたら会社の責任を果たすのはうまくいかないから。ちゃんと計画は立ててないとね。」

私の知らないところで朝陽さんと真面目な話をしてるんだろう。
優しい朝陽さんじゃない、厳しい、現実的な朝陽さんがいたりするのかもしれない。

でも聞きたいのはそんな私には想像もつかない事じゃない。


「じゃあ、仕事以外は?」

二年後、三年後の事・・・。

「考えてるよ。・・・・じゃあ、まだまだ若い芽衣はどのくらい先の事を考えてるの?」

「私はまだまだ考えられないです。ただ今が続くことを、成長しながらこのまままっすぐ続くことを願ってるだけです。」

こうやって外の光の中の窓辺で春日さんにもたれてゆっくり過ごす時間が続けばいいと思ってる。

「何も変わらないつもりなの?」

「変わりたくは・・・・ないです。このままがいいです。」

「そう。」





「春日さん・・・・・どうしたらいいんですか?」

「何が?」

「・・・・・何か・・・・・終わる時。」


「そんな未来は考えてないから。絶対必要ないよ。・・・・芽衣、信じる?信じない?」

「信じたいです。」

「じゃあいいんじゃない。二人が信じてれば。・・・・あ、二人じゃないみたいだけどね。先週になって影の応援者がいきなり表に出てきたからね。」



「それは、もしかして教授と園長先生ですか?」


「何か言われたんでしょう?今日の午後かかってきた教授の電話に、朝陽が嬉しそうに報告してたよ。随分話こんでたからね。芽衣と一緒に教授の家にお邪魔することになってるらしい。」


「私は行く予定です。一緒に来たらいいとは言われました。最初からそうなるだろうって奥さんに予言してたらしいです、面接の時辺りからそう思ってたそうです。園長先生は最近の春日さんの様子が変だって思ってたって。私がバレたんじゃないですよ。」

そこは強く言ってみた。


「そう。」

一言で終わった。
もっと焦るかと思ってたのに、普通だった。

顔をあげて顔を見る。

やっぱり普通。

「何?」

「いいえ。・・・・教授にはバレたって直接言いなさいって言われました。絶対驚く顔が見れるからって。」

「残念でした。隠せるとは思ってなかったし。まあ、いいかなって、二人とも喜んでくれてたでしょう?」 

「はい、それはそうみたいです。」

「だから期待には応えたい、裏切れない。それは、そう遠くないいつかだと思うよ。」


そう遠くないいつか、それは約束だろうか。未来はいつも不安定だ。
そんな事去年までは思ってなかった。
就活に明け暮れながらも、少しだけ自分にがっかりし始めていた頃だった。

春日さんの話を聞いて、自分の幸せを改めて思って、でもやっぱり絶対はないって思ったりして。
信じるだけで未来が思うとおりになるのなら、きっと今は全く別の景色を見て、環境にいて、春日さんとも出会えなかった。

想像してなかった未来で思わぬ出会い。
それがとっても幸せで良かったって、今は思えるけど。



反応しない私を引き寄せるように抱きしめてくれるその腕を信じることにした。
その腕に反応して私も力を込める、それはとても自然だから。




「芽衣はいつになったら大人になったと思えるんだろうね?」


「まだまだです。」

「だから、いつくらい?あと何年待てばいいの?」


働き始めたら簡単に大人になれると思ってた。

でもやっぱりまだまだ。


お母さんの手伝いをして出来ることが増えたとして、そんなことじゃない。
じゃあ何?大人の基準って何だろう?


私が考える大人の基準と他の人・・・・、例えば春日さんが考える基準が同じだとは限らない。



暗い部屋の家具にもすっかり馴染んでる。
薄明りの中でも、何もぶつかるようなもののない部屋。
大きなベッドの頭の方に時計などがあって。
時々本が置かれてる。
ちょっとだけ表紙を見たけど、まったく理解できそうにない経済の本だった。

多分単語も分からないような。



ここにいる時は社長とか上司とか、そんな事を忘れて単純に恋人でいるようにしてる。
欲しいとあげたいとを交換するように与え合う普通の恋人。

それでも私が欲張りにお願いして甘える方が多いとは思う。



教授や園長先生にとっては私も春日さんもあんまり変わらないくらいだと思う。
10個くらい離れてても、そんなのちょっとした差だって。
それは私たちより倍以上生きてきた人たちだから。



「春日さん、私を大人として見てくれてますか?」

「当たり前だよ。そう思ってるよ。」

「まだ何も一人じゃできないです。全然ですよ。」

「ちゃんと目標持って頑張ってるでしょう?仕事もお母さんの手伝いも。」

「そんな・・・・・・・。」

そんな事なの?
そんな事が基準なの?

「芽衣、あんまり待てないよ。早く気がついてくれないと。僕も、もちろんあの二人も。」

「大人のゴールが分からないです。」

「それはあの二人も分からないって。だってまだまだゴールしてないんだから。」


ゴールしてないの?


「日々成長。教授は若い子のエネルギーをもらって若返ったけど、今はどうだろうね。途中引き返してきたのに、またゴールに向かい始めたのかもね。」



「誰も完璧じゃないから、じゃあ、あとは自覚だね。芽衣、早く自信もって。」


「はい。出来るだけ、早く、そうします。」


「お願いね。」


その時に何が変わるのか分からない。
きっと何か変わると思うけど。
まだまだ想像が難しい。


でもちゃんと成長しないと、教えてくれてるいろんな人に悪い。

ちゃんと進んでる。
教授や園長先生がまだまだゴールしてないんだったら、私なんてまだまだスタート地点から踏み出したまま、ウロウロしてるのかもしれない。


今度お母さんに聞いてみよう。

『私は大人になれてるの?』


『春日さんに聞きなさい。』そう言われるかも。


しっかりとした自分になって安心してもらいたいのに、まだまだ話を聞いてもらったり、教えてもらったり、子供のように甘えたい自分もいる。

まだまだやっと一歩踏み出したところ、もう少し待ってください。
ビックリするくらい成長します。

楽しみにしててください。

それまではあと少しだけ、このままで、変わりない、このままでいさせてください。


本当にあと少しだけ・・・・待っててください。



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感想 2

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みんなの感想(2件)

johndo
2019.05.31 johndo

完結された作品のようですが、是非是非続きが読みたいです。朝陽さんにも幸せを用意してほしいです。

解除
kanotti
2019.05.02 kanotti

芽衣がかわいい。これからの展開が楽しみです。早くも大好きになりました。応援しています。

解除

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