キミの足が魅惑的だから

ひなた翠

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第三章 似た者同士

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 ちゅ、ちゅく……と水音がして、熱い吐息が室内に響いた。

「今日は……頑張れないんじゃ……なかったの?」

 貪るように唇に噛みつく翔太の胸を軽く押しながら、私は抵抗をする。自宅の玄関に入るなり、荒々しいキスの嵐だ。お互いに投げ捨てるように靴を脱ぎ、廊下をキスしたまま、歩いている。

「まさか! 兄さんの手前、そう言っただけ。さくらと二人きりになったら、エッチしたいに決まってるだろ」
「……やんっ、だめ……今夜は」

「『無理』って言わないで」

 唇を放した翔太が、捨てられた子犬のような表情になって呟いてきた。彼の乱れた呼吸からそんなことを言われたら、『駄目』とは言えなくなる。朝方近くまでシて、昼にも一回エッチして……さらに、夜もなんて身体がもたない。

「今夜はちゃんと寝る?」
「もちろん。さくらの中で」

「はあ? ちがっ。睡眠っていう意味!」
「寝るよ。さくらと一緒に寝かせて。朝方、帰るから。でもその前にシャワー浴びてもいい? さすがに汚い身体でさくらを抱きたくない」

 眉尻をさげて、申し訳なさそうに翔太が苦笑した。徹夜で仕事をして、午後は外回りして……きっとひどく疲れているだろうに。

 家に帰ってゆっくり寝たほうがいいんじゃないかって思うけど。下半身の熱を押し付けられた手前、強く帰れとは言えなくなる。

 あの大きい熱が自分の中に入りたがっていると思っただけで、下肢が疼いてしまう。

「朝比奈課長が入ったら、私もシャワー浴びさせて」
「……? なら一緒に入ろう?」

「やだ」
「なんで?」

「絶対、エッチするでしょ?」
「当たり前。お風呂でたくさんエッチしよ。そしたらベッドがさくらの甘い蜜で濡れないよ?」

「そういうこと言う?」
「言うよ。昨日はドロドロだったでしょ」

「そっちが中に出すからでしょう?」
「早く妊娠しないかな」

 ニコニコと嬉しそうに笑って翔太は、私の手を握りしめた。
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