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第三章 似た者同士
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「なに? どうしたの?」
『やっぱり、起きてた。寝なきゃ駄目って言ったのに』
兄さんが電話の向こうで優しい声で話している。
俺は、ベッドから出るとさくらを起こさないように、玄関のほうへと足を向けた。
「いや、そろそろ帰ろうかと思って」
『え? 仕事してたの?』
「違う。さくらの家に……」
『……そういうこと。今日は頑張れないんじゃなかったの?』
クスクスと笑う兄さんに、俺もつられて苦笑した。
「意外と頑張れた。ただ軽い頭痛が治らない」
『寝ないからだろ? まあ、あんだけの損害を一人でカバーしようとしたら……頭痛もおきるだろうね。明日、辞令を出すから。それと二社ほど。契約を結べたよ。明日、契約書を持って訪ねてみて。詳しくは会社のメールに送ってある』
「すごいな、兄さんは」
俺にはできない。ずるいよ。そうやって難なくこなしていくんだから。
『僕からしたら、翔太のほうが凄いけどな。我慢強いし……。それに、さくらさんを落とした。何年かけても、僕には振り向いてくれなかった』
「俺は……、ただ強引だっただけだから」
無理やり近いだろうし……ていうか、無理やりか。
さくらが受け入れてくれているから、成り立っている関係だと思う。じゃなければ、俺はただの変態だ。
『明日からまた、頑張れ。じゃ』
兄さんが静かに電話を終わりにする。俺はスマホを握ったまま、壁に寄りかかると小さく息を吐いた。
俺はさくらにただ想いをぶちまけているだけ。さくらの気持ちは? どこにあるんだ?
兄さんに? それとも元カレに?
俺じゃないことは確かだと思うが。さくらを振り向かせるには、どうしたらいいんだ? 俺だけを見てくれるには……。
『やっぱり、起きてた。寝なきゃ駄目って言ったのに』
兄さんが電話の向こうで優しい声で話している。
俺は、ベッドから出るとさくらを起こさないように、玄関のほうへと足を向けた。
「いや、そろそろ帰ろうかと思って」
『え? 仕事してたの?』
「違う。さくらの家に……」
『……そういうこと。今日は頑張れないんじゃなかったの?』
クスクスと笑う兄さんに、俺もつられて苦笑した。
「意外と頑張れた。ただ軽い頭痛が治らない」
『寝ないからだろ? まあ、あんだけの損害を一人でカバーしようとしたら……頭痛もおきるだろうね。明日、辞令を出すから。それと二社ほど。契約を結べたよ。明日、契約書を持って訪ねてみて。詳しくは会社のメールに送ってある』
「すごいな、兄さんは」
俺にはできない。ずるいよ。そうやって難なくこなしていくんだから。
『僕からしたら、翔太のほうが凄いけどな。我慢強いし……。それに、さくらさんを落とした。何年かけても、僕には振り向いてくれなかった』
「俺は……、ただ強引だっただけだから」
無理やり近いだろうし……ていうか、無理やりか。
さくらが受け入れてくれているから、成り立っている関係だと思う。じゃなければ、俺はただの変態だ。
『明日からまた、頑張れ。じゃ』
兄さんが静かに電話を終わりにする。俺はスマホを握ったまま、壁に寄りかかると小さく息を吐いた。
俺はさくらにただ想いをぶちまけているだけ。さくらの気持ちは? どこにあるんだ?
兄さんに? それとも元カレに?
俺じゃないことは確かだと思うが。さくらを振り向かせるには、どうしたらいいんだ? 俺だけを見てくれるには……。
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