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第三章 似た者同士
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フンっと不満げに鼻を鳴らしながら、朝比奈課長が佐久間から手を放してくれた。相当、痛かったのか肩を抑えて、佐久間が睨みつけている。
「今回の件は、俺から専務に報告をした。あれだけの損失がでたんだ。報告せざるをえない。不服申し立てがあるなら、俺と専務で聞く。秘書は関係ないだろ」
「あんたのミスのくせに!」
大声で叫ぶ佐久間に、朝比奈課長が小さく息をつく。
「なら、専務にそう言え。公正な目で判断してくれる」
「なわけあるかよ。あんたの兄貴だろ! 身内贔屓するに決まってる」
「どう思おうがかまわないが、茂木課長の時間を奪うな。専務の部屋に行くぞ」
朝比奈が佐久間の背中を押してから、振り返った。
「茂木課長、貴重なお時間を申し訳ありませんでした」
腰から折って頭をさげた。
いつもと違う姿に、私は驚きながらも仕事姿の彼を「恰好いい」と思う気持ちもあった。
「いえ、大丈夫です」
「ほら、行くぞ」と朝比奈が佐久間を連れて、専務のオフィスに入っていった。
◇◇◇
朝比奈専務、朝比奈課長と佐久間係長で再度、話し合いをしたが、異動が変更になることはなかった。佐久間はさらには係長のポストを奪われて、主任へと降格になったらしい。
昼休憩になり、私は財布を持って食堂に行った。
今日のランチは何にしようかな、と悩んでいると、制服社員の女性が近づいてきたと思うなり頬を思い切り叩かれた。
パチンと乾いた音が響き、周りからはどよめきが湧きたった。
え? なに?
小柄で可愛らしい女性が目の前に立っていて、憎しみもこもった目で睨まれていた。
「最低っ! 今頃になって復讐って……。自分が女として魅力がなかったくせに」
「……え?」
何が起きているの?
目の前にいるのは、佐久間の奥さんだ。確か、三人目を妊娠しているとか。
今頃になって復讐ってどういうことだろうか?
「まだ、好きなのね? だから、こんなことを!」
「何を言って……?」
まだ好きってなに? 復讐ってなに?
疑問符が脳内にいくつも飛んでは消えていく。
佐久間の奥さんが突進してきたと思ったら、身体を押されて、豪快に床に倒れた。背中もお尻も痛いと思う暇もなく、奥さんが馬乗りにしてきて髪を引っ張ったり、顔を叩いたりしてきた。
「今回の件は、俺から専務に報告をした。あれだけの損失がでたんだ。報告せざるをえない。不服申し立てがあるなら、俺と専務で聞く。秘書は関係ないだろ」
「あんたのミスのくせに!」
大声で叫ぶ佐久間に、朝比奈課長が小さく息をつく。
「なら、専務にそう言え。公正な目で判断してくれる」
「なわけあるかよ。あんたの兄貴だろ! 身内贔屓するに決まってる」
「どう思おうがかまわないが、茂木課長の時間を奪うな。専務の部屋に行くぞ」
朝比奈が佐久間の背中を押してから、振り返った。
「茂木課長、貴重なお時間を申し訳ありませんでした」
腰から折って頭をさげた。
いつもと違う姿に、私は驚きながらも仕事姿の彼を「恰好いい」と思う気持ちもあった。
「いえ、大丈夫です」
「ほら、行くぞ」と朝比奈が佐久間を連れて、専務のオフィスに入っていった。
◇◇◇
朝比奈専務、朝比奈課長と佐久間係長で再度、話し合いをしたが、異動が変更になることはなかった。佐久間はさらには係長のポストを奪われて、主任へと降格になったらしい。
昼休憩になり、私は財布を持って食堂に行った。
今日のランチは何にしようかな、と悩んでいると、制服社員の女性が近づいてきたと思うなり頬を思い切り叩かれた。
パチンと乾いた音が響き、周りからはどよめきが湧きたった。
え? なに?
小柄で可愛らしい女性が目の前に立っていて、憎しみもこもった目で睨まれていた。
「最低っ! 今頃になって復讐って……。自分が女として魅力がなかったくせに」
「……え?」
何が起きているの?
目の前にいるのは、佐久間の奥さんだ。確か、三人目を妊娠しているとか。
今頃になって復讐ってどういうことだろうか?
「まだ、好きなのね? だから、こんなことを!」
「何を言って……?」
まだ好きってなに? 復讐ってなに?
疑問符が脳内にいくつも飛んでは消えていく。
佐久間の奥さんが突進してきたと思ったら、身体を押されて、豪快に床に倒れた。背中もお尻も痛いと思う暇もなく、奥さんが馬乗りにしてきて髪を引っ張ったり、顔を叩いたりしてきた。
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