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第二章:届いた想い
二人で検診
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月曜日、僕は海斗と一緒に病院に向かった。
診察室に呼ばれると、三浦先生が優しい笑顔で挨拶をしてくれる。
「結城さん、おはようございます」
「おはようございます」
僕が挨拶を返すと、三浦先生が海斗に視線を移した。
「こちらが番の方ですか?」
三浦先生が海斗を見て尋ねた。
「はい。藤堂海斗です」
海斗が姿勢を正して自己紹介した。礼儀正しい態度で、少し緊張しているように見えて微笑ましかった。
「三浦です。よろしくお願いします」
挨拶を終えると、三浦先生が診察台を指した。
「結城さん、こちらに横になってください」
言われた通りに診察台に横になると、海斗が隣の椅子に座って僕の手を握ってくれた。海斗の手が少し汗ばんでいて、緊張しているのが伝わってきた。
「今日はエコーで赤ちゃんの様子を見ますね」
三浦先生が優しく説明してくれて、僕は頷いた。
シャツをめくってお腹を出すと、冷たい空気が肌に触れた。三浦先生が冷たいジェルをお腹に塗って、ひんやりとした感触が広がった。プローブを当てられると、モニターに白黒の映像が映った。
「ここが赤ちゃんですよ」
三浦先生がモニターを指差して、小さな豆粒みたいな形が見えた。こんなに小さいのかと思うと、不思議な気持ちになった。
「これが……」
海斗が息を呑んで、モニターを食い入るように見つめていた。
「心拍も確認できますね。元気に育っていますよ」
三浦先生が微笑んで、モニターの音量を上げた。トクトク、トクトクという小さな音が診察室に響いて、赤ちゃんの心臓が動いている音が聞こえた。
「すごい……」
海斗が涙声になって、僕の手を強く握った。お腹の中に命がある、海斗との子が育っているという実感が湧いてきて、胸がいっぱいになった。
「予定日は九月初旬になります」
三浦先生が優しく告げて、海斗が「九月……」と小さく呟いた。
「今のところ順調です。つわりはまだ続きますか?」
三浦先生が僕を見て尋ねた。
「はい、朝と夕方がちょっとつらいです」
正直に答えると、三浦先生が頷いた。
「処方している吐き気止めは効いていますか?」
「効いています」
「無理せず、休めるときは休んでくださいね」
三浦先生が優しく微笑んで、お腹のジェルを拭き取ってくれた。
「もしまだ職場に妊娠の報告をしていないようでしたら、しておいてくださいね。育休とか産休とかの手続きもあると思いますから」
三浦先生の言葉に、職場への報告のことを思い出した。
「はい」
頷いて答えると、三浦先生が診察記録をカルテに書き込んでいた。
「次回は四週間後ですね。何か気になることがあれば、いつでも連絡してください」
三浦先生が優しく微笑んで、診察が終わった。
診察台から降りようとすると、海斗が唐突に口を開いた。
「先生、精神科医の医師について聞きたいのですが」
海斗の突然の質問に、僕は驚いた。
「ああ、君もなにか悩み事かな?」
三浦先生が穏やかに答えた。
「いえ、先生からも匂いがするので、恋人同士ですか?」
海斗の直球な質問に、僕は慌てて海斗の腕を掴んだ。
「海ちゃん? 先生のプライベートだよ!」
海斗を止めようとしたが、海斗は真剣な表情で三浦先生を見つめていた。
「直球だね。恋人ではないけど、大人な関係だよ。会いたいなら、土曜日であれば呼べるけど?」
三浦先生が苦笑しながら答えた。
「いえ、殴りそうなので会いません」
海斗がきっぱりと断って、僕は呆れてしまった。
「まあ、殴っても平気じゃない?」
三浦先生が軽く言って、笑っている。
「三浦先生まで――」
僕が言うと、三浦先生はにっこりと笑った。
「心配だよね、藤堂くんとしたら。医師としての線引きはしっかりしてる奴だから、心配しないで。もしものことがあったら、僕が責任持って蹴り飛ばして、海の底に沈めておくから。報告してね」
三浦先生が冗談めかして言って、海斗が少し表情を緩めた。
「わかりました」
海斗が頷いて、僕はホッとした。
診察が終わって、受付で会計を済ませた。病院を出ると、冷たい空気が肌に触れて、深呼吸をした。
「赤ちゃん、見えたね」
海斗が嬉しそうに言って、僕の手を握った。
「うん。小さかったね」
「あれが、俺たちの子かあ」
海斗が感動したように言って、目が潤んでいた。
「海ちゃん、さっき泣いてたでしょ」
僕が言うと、海斗が照れくさそうに笑った。
「……うん。感動した。心臓の音聞いたら、涙が出てきた」
海斗が正直に答えて、僕も嬉しくなった。歩き出すと、海斗が真剣な顔で言った。
「親にも報告しないと」
海斗の言葉に、僕は少し緊張した。
「え……」
「両親には言わないと」
海斗が当然のように言って、僕は不安になった。
「怒られるんじゃ……」
「大丈夫。うちの親、理解あるから」
海斗が自信満々に言って、僕の肩を抱いた。僕は不安だったが、海斗が一緒なら大丈夫だと思えた。
「今日は会社休んだんだよね? 午後は用事ある?」
海斗が尋ねてきて、僕は頷いた。
「とくにないよ」
「じゃあ、午後ははーちゃんの家でゴロゴロしよう」
海斗が嬉しそうに言った。
「海ちゃんこそ、学校は? 午後からでも行ったほうが」
「もう休んだから平気」
海斗が笑って、僕の肩を抱いた。温かい腕に包まれて、安心感が広がった。
二人でアパートに向かって歩き出した。海斗が「赤ちゃんのために、栄養のあるもの作るね」と張り切っていて、何を作ろうかと楽しそうに話している。僕は海斗の横顔を見つめながら、幸せを感じた。
診察室に呼ばれると、三浦先生が優しい笑顔で挨拶をしてくれる。
「結城さん、おはようございます」
「おはようございます」
僕が挨拶を返すと、三浦先生が海斗に視線を移した。
「こちらが番の方ですか?」
三浦先生が海斗を見て尋ねた。
「はい。藤堂海斗です」
海斗が姿勢を正して自己紹介した。礼儀正しい態度で、少し緊張しているように見えて微笑ましかった。
「三浦です。よろしくお願いします」
挨拶を終えると、三浦先生が診察台を指した。
「結城さん、こちらに横になってください」
言われた通りに診察台に横になると、海斗が隣の椅子に座って僕の手を握ってくれた。海斗の手が少し汗ばんでいて、緊張しているのが伝わってきた。
「今日はエコーで赤ちゃんの様子を見ますね」
三浦先生が優しく説明してくれて、僕は頷いた。
シャツをめくってお腹を出すと、冷たい空気が肌に触れた。三浦先生が冷たいジェルをお腹に塗って、ひんやりとした感触が広がった。プローブを当てられると、モニターに白黒の映像が映った。
「ここが赤ちゃんですよ」
三浦先生がモニターを指差して、小さな豆粒みたいな形が見えた。こんなに小さいのかと思うと、不思議な気持ちになった。
「これが……」
海斗が息を呑んで、モニターを食い入るように見つめていた。
「心拍も確認できますね。元気に育っていますよ」
三浦先生が微笑んで、モニターの音量を上げた。トクトク、トクトクという小さな音が診察室に響いて、赤ちゃんの心臓が動いている音が聞こえた。
「すごい……」
海斗が涙声になって、僕の手を強く握った。お腹の中に命がある、海斗との子が育っているという実感が湧いてきて、胸がいっぱいになった。
「予定日は九月初旬になります」
三浦先生が優しく告げて、海斗が「九月……」と小さく呟いた。
「今のところ順調です。つわりはまだ続きますか?」
三浦先生が僕を見て尋ねた。
「はい、朝と夕方がちょっとつらいです」
正直に答えると、三浦先生が頷いた。
「処方している吐き気止めは効いていますか?」
「効いています」
「無理せず、休めるときは休んでくださいね」
三浦先生が優しく微笑んで、お腹のジェルを拭き取ってくれた。
「もしまだ職場に妊娠の報告をしていないようでしたら、しておいてくださいね。育休とか産休とかの手続きもあると思いますから」
三浦先生の言葉に、職場への報告のことを思い出した。
「はい」
頷いて答えると、三浦先生が診察記録をカルテに書き込んでいた。
「次回は四週間後ですね。何か気になることがあれば、いつでも連絡してください」
三浦先生が優しく微笑んで、診察が終わった。
診察台から降りようとすると、海斗が唐突に口を開いた。
「先生、精神科医の医師について聞きたいのですが」
海斗の突然の質問に、僕は驚いた。
「ああ、君もなにか悩み事かな?」
三浦先生が穏やかに答えた。
「いえ、先生からも匂いがするので、恋人同士ですか?」
海斗の直球な質問に、僕は慌てて海斗の腕を掴んだ。
「海ちゃん? 先生のプライベートだよ!」
海斗を止めようとしたが、海斗は真剣な表情で三浦先生を見つめていた。
「直球だね。恋人ではないけど、大人な関係だよ。会いたいなら、土曜日であれば呼べるけど?」
三浦先生が苦笑しながら答えた。
「いえ、殴りそうなので会いません」
海斗がきっぱりと断って、僕は呆れてしまった。
「まあ、殴っても平気じゃない?」
三浦先生が軽く言って、笑っている。
「三浦先生まで――」
僕が言うと、三浦先生はにっこりと笑った。
「心配だよね、藤堂くんとしたら。医師としての線引きはしっかりしてる奴だから、心配しないで。もしものことがあったら、僕が責任持って蹴り飛ばして、海の底に沈めておくから。報告してね」
三浦先生が冗談めかして言って、海斗が少し表情を緩めた。
「わかりました」
海斗が頷いて、僕はホッとした。
診察が終わって、受付で会計を済ませた。病院を出ると、冷たい空気が肌に触れて、深呼吸をした。
「赤ちゃん、見えたね」
海斗が嬉しそうに言って、僕の手を握った。
「うん。小さかったね」
「あれが、俺たちの子かあ」
海斗が感動したように言って、目が潤んでいた。
「海ちゃん、さっき泣いてたでしょ」
僕が言うと、海斗が照れくさそうに笑った。
「……うん。感動した。心臓の音聞いたら、涙が出てきた」
海斗が正直に答えて、僕も嬉しくなった。歩き出すと、海斗が真剣な顔で言った。
「親にも報告しないと」
海斗の言葉に、僕は少し緊張した。
「え……」
「両親には言わないと」
海斗が当然のように言って、僕は不安になった。
「怒られるんじゃ……」
「大丈夫。うちの親、理解あるから」
海斗が自信満々に言って、僕の肩を抱いた。僕は不安だったが、海斗が一緒なら大丈夫だと思えた。
「今日は会社休んだんだよね? 午後は用事ある?」
海斗が尋ねてきて、僕は頷いた。
「とくにないよ」
「じゃあ、午後ははーちゃんの家でゴロゴロしよう」
海斗が嬉しそうに言った。
「海ちゃんこそ、学校は? 午後からでも行ったほうが」
「もう休んだから平気」
海斗が笑って、僕の肩を抱いた。温かい腕に包まれて、安心感が広がった。
二人でアパートに向かって歩き出した。海斗が「赤ちゃんのために、栄養のあるもの作るね」と張り切っていて、何を作ろうかと楽しそうに話している。僕は海斗の横顔を見つめながら、幸せを感じた。
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