社長令息αの執着〜君を手放すくらいなら〜『年下幼馴染αの執着』シリーズ2

ひなた翠

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第二章:大学生活・婚約と妊娠

プロポーズ

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 秋が深まった11月のある日、拓海から「今度の土曜日、空けといて」とメッセージが届いた。いつもより少し改まった口調に、何か特別な予定があるのかと思いながら、僕は土曜日を楽しみに待った。

 当日、待ち合わせ場所の駅前に着くと、拓海がジャケットを羽織った姿で立っていた。普段はカジュアルな服装が多い拓海が、きちんとした格好をしている姿を見て、驚きながらも格好良くてドキドキした。

「拓海、今日はどうしたの? ジャケットなんて珍しい」
「悠斗とデートだから」

 拓海が照れたように笑い、僕の手を取った。駅から少し歩き、繁華街へと向かう。普段なら入らないような雰囲気の良さそうな建物の前で、拓海が立ち止まった。

「ここ?」
「うん。予約してあるから」

 拓海に手を引かれ、エレベーターで上の階へと上がった。扉が開くと、落ち着いた雰囲気のレストランが広がっていた。

 木のテーブルに、柔らかな照明が落とされ、窓からは街の景色が見えた。案内されたテーブルは窓際の席で、二人だけの空間が作られているような特等席だった。

 メニューを開くと、普段行く店よりも値段が高めの料理が並んでいて、少し驚いた。

「拓海、大丈夫? ここ、すごく高そう……」
 心配になって尋ねると、拓海は穏やかに笑った。

「大丈夫だよ。今日は特別な日だから」
「特別な日?」
「後で教える」

(なんだろう)

 お互いの誕生日でもないし、何かの記念日でもない。不思議に思いつつも、運ばれてくる料理を美味しくいただいた。

「美味しい……」
 思わず声が漏れると、拓海が嬉しそうに微笑んだ。

「良かった。悠斗が喜んでくれて」
 食事を楽しみながら、拓海と他愛のない話をした。

 大学の授業や友人について、週末の予定も。いつもと変わらない会話のはずなのに、拓海の様子がどこか落ち着かないように見えた。

 時折、手元のナプキンを触ったり、グラスを持つ手が微かに震えていたりする姿に、何か言いたいことがあるのだろうかと気になってしまう。

 デザートが運ばれてきて、甘いケーキを口に運んでいると、拓海が突然立ち上がった。

「拓海?」
 名前を呼ぶと、拓海が僕の隣にやってきた。そして、目の前で膝をついた。

「え……」

 何が起きているのか理解できず、ただ拓海を見つめることしかできなかった。拓海がポケットから小さな箱を取り出し、蓋を開けた。中には、シンプルで美しい指輪が収められていた。

「悠斗、結婚してください」
 はっきりとした声で告げられた言葉に、頭が真っ白になった。

(結婚?)

 心臓が激しく打ち、まるで頭の中に心臓があるかのように鳴り響く。周囲の視線が集まっているのを感じつつも、拓海の瞳しか見に入らない。

「ま、まだ大学生なのに……」
 やっとの思いで絞り出した声は、震えていた。拓海が優しく微笑み、僕の手を取った。

「悠斗が好きなんだ。この先ずっと、悠斗と一緒にいたい。だから――」
 拓海の言葉が、胸に沁みた。

「二人が卒業したら、結婚しよう」

 拓海の真剣な眼差しに、胸が熱くなった。周囲の人たちが固唾を呑んで見守っているのを感じながら、僕は頷いた。

「はい」
 声が震えて、涙が一筋頬を伝った。

(僕も拓海とずっと一緒にいたい)

 拓海が立ち上がり、僕を抱きしめた。周囲から拍手が起こり、祝福の声が聞こえてきた。

「ありがとう、悠斗」

 拓海が耳元で囁き、僕の左手を取った。箱から指輪を取り出し、薬指にゆっくりと通していく。少しきつめの指輪が、薬指にぴったりと収まった。シンプルなデザインの中に、小さなダイヤモンドが一粒輝いていた。

「サイズ、合ってる?」
「うん……ぴったり」

 指輪を見つめながら、涙が止まらなくなった。拓海が優しく涙を拭い、額にキスをしてくれた。

「愛してる、悠斗」
「僕も……愛してる」

 拓海がもう一度僕を抱きしめ、周囲の拍手がさらに大きくなった。恥ずかしさと嬉しさが入り混じりながらも祝福をしてくれた周囲の方々に頭を下げた。

(嬉しい。大学を卒業したら、拓海と夫婦になれるんだ)

 レストランを出て、夜の街を歩く。拓海が僕の手を握り、指輪が街灯の光を反射して輝いた。

「いつから考えてたの?」
「悠斗が大学入って、すぐくらいかな。指輪のサイズ、測るのが意外と大変だった」

 拓海が笑いながら言い、僕も笑った。

「全然気づかなかった」
「バレないように必死だったから」

 拓海が僕の手を引き、公園のベンチに座った。夜空には星が瞬いていて、冷たい風が頬を撫でた。

「悠斗、幸せにするから」
「うん」

 拓海が僕を抱き寄せ、唇を重ねた。柔らかく、優しいキスだった。唇が離れると、拓海が僕の左手を取り、指輪にキスをした。

「この指輪、絶対外さないでね」
「外さないよ。ずっとつけてる」

 拓海が満足そうに笑い、もう一度僕を抱きしめた。婚約指輪が薬指で輝き続け、拓海の温もりが全身を包み込んでいた。

 星空の下で抱き合ったまま、二人の未来を静かに想像していた。

 帰りの電車の中で、僕は何度も左手を見つめてしまう。

「そんなに見つめて、指輪が逃げないよ」
 拓海が笑いながら言い、僕は頬を赤らめた。

「だって嬉しくて……」
「俺も嬉しいよ。悠斗が受けてくれて」

 拓海が僕の頭を撫ででてくれる。
 駅に着き、拓海が僕を家まで送ってくれた。玄関の前で、拓海がもう一度僕にキスをする。

「おやすみ、悠斗。また明日」
「うん、おやすみ」

 拓海が去っていく背中を見送り、家の中に入った。部屋に戻り、ベッドに横たわりながら、左手を見つめる。
指輪が、照明の光を受けて優しく輝いていた。
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