社長令息αの執着〜君を手放すくらいなら〜『年下幼馴染αの執着』シリーズ2

ひなた翠

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第二章:大学生活・婚約と妊娠

妊娠発覚

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 大学二年生になって間もない春、僕は体調不良に悩まされていた。朝起きると吐き気が襲い、食事を口にしても喉を通らなかった。講義中に気分が悪くなり、トイレに駆け込むこともあった。疲れやすく、いつもより眠気が強い。

 週末、拓海のアパートに泊まった時、朝食を作ってくれた拓海の前で、突然吐き気に襲われた。トイレに駆け込み、胃の中のものを吐き出した。吐き終わって洗面台で顔を洗っていると、拓海が心配そうに背中を撫でてくれた。

「悠斗、最近ずっと調子悪いよな」
「うん……ちょっと疲れてるのかも」
「もしかして……」

 拓海が何かを考え込むような表情をして、僕の手を引いてリビングへと連れていった。

「念のため、妊娠検査薬で調べてみよう」

 拓海の言葉に、心臓が跳ね上がった。まさか、と思いながらも、拓海がドラッグストアに買いに行ってくれるのを待った。戻ってきた拓海が検査薬を手渡し、僕はトイレで検査をした。

 三分間が、永遠のように長く感じられた。リビングで拓海と並んで座り、検査薬を見つめ続ける。時間が経つと、判定窓に線が浮かび上がってきた。二本の線が、はっきりと現れた。

「陽性……」

 声が震えた。拓海が僕の手を握り、「病院できちんと検査しよう」と言ってくれた。

 翌日、拓海と一緒に産婦人科を訪れた。待合室で緊張しながら名前を呼ばれるのを待ち、診察室に入った。医師が超音波検査をして、画面を見ながら説明してくれた。

「妊娠していますね。だいたい八週目くらいです」
 医師の言葉に、頭が真っ白になった。隣に座る拓海が、僕の手を強く握りしめていた。

「心拍も確認できます。順調ですよ」

 画面に映る小さな命を見て、涙が溢れそうになった。本当に、お腹の中に赤ちゃんがいる。拓海との子供が、僕の身体の中で育っている。

 僕の隣に立つ拓海も、涙を流して喜んでいた。

 昨日、検査薬で陽性を見たときは不安しかなかった。毎回、拓海はきちんと避妊してくれていたのに、どうして――と。

 僕たちはまだ学生だ。本当に妊娠していたら、拓海が嫌がるんじゃないかと悪いことばかり考えてしまった。
 でも隣で画面を見つけている拓海は、嬉しそうに喜んでいる。それだけで胸が温かくなった。

 病院を出て、二人で公園のベンチに座った。

「悠斗」

 拓海が僕の名前を呼び、立ち上がった。そして、僕の前で膝をついた。

「お願いします。産んでください!」

 拓海が深く頭を下げた。公園を歩く人たちの視線が集まったが、拓海は頭を下げたまま動かない。

「拓海……ちょっと、待って」
「俺の子供を、産んでほしい。悠斗と赤ちゃんを、絶対に守るから」

 拓海の声が震えていて、胸が熱くなった。僕も、産みたいと思っていた。お腹の中の赤ちゃんを、拓海との子供を、この手で抱きしめたいと思っている。
「僕も……産みたい。拓海の赤ちゃん、産みたいよ」

 涙が溢れて、止まらなくなった。拓海が立ち上がり、僕を抱きしめた。

「ありがとう。ありがとう、悠斗」
 拓海の声も涙で震えていて、二人で抱き合ったまま泣いた。

「絶対に悠斗と赤ちゃんを守るから。二人とも、俺が全力で守る」
 拓海の誓いの言葉が、胸に深く刻まれた。

 週末、二人で両家の両親に挨拶に行った。まず僕の実家を訪れ、両親に妊娠したことと結婚したいことを伝えた。母は驚いて涙を流し、父は厳しい表情で拓海を見つめた。

「息子を幸せにしてくれますか」
 父の問いかけに、拓海は深く頭を下げた。

「必ず幸せにします。悠斗と赤ちゃんを、一生守り続けます」
 拓海の真剣な眼差しに、父は頷いた。母が僕を抱きしめ、「おめでとう」と囁いてくれた。

 次に拓海の実家を訪れた。拓海の両親は驚いていたが、温かく迎えてくれた。拓海の母が僕の手を取り、「家族になれて嬉しい」と笑顔で言ってくれた。

 数日後、拓海が「家を買った」と言って驚いた。

「え……家?」
「赤ちゃんが生まれるから、広い家が必要だろ。一軒家を購入したんだ」

 驚いて言葉が出なかった。拓海はまだ大学生なのに、家を買えるお金があるなんて。

「両親が少し援助してくれたのと、投資でけっこう資金があったから」
 拓海が照れたように笑い、僕は呆然としていた。

 その夜、拓海のアパートで今後について話し合った。

「大学、辞める」
 僕が口を開くと、拓海が驚いた表情で僕を見る。

「なら、俺も辞める」
「だめだよ、拓海は卒業しないと」
「悠斗が辞めるのに、俺だけ続けるなんてできない」

 拓海が強い口調で言い、僕は首を横に振った。

「拓海は卒業して。お願い」
 僕の言葉に、拓海は何も言えなくなった。

 翌日、拓海の父親も交えて話し合いをした。拓海の父は「拓海は大学を卒業するべきだ」と言い、僕も同意した。拓海は納得できない様子だったが、僕と父親に説得され、渋々頷いた。

「じゃあ悠斗は休学にしよう。子育てが落ち着いたら、また大学に戻ろうよ」
 拓海の提案に、僕は首を横に振った。

「休学じゃなくて、退学する」
「悠斗……」
「子育てに集中したい。中途半端な状態でいたくない。赤ちゃんのことだけ考えていたい」

 僕の意思をはっきりと伝えると、拓海は唇を噛んだ。

「大学を中退させることになって、本当に申し訳ない」
 拓海が深く頭を下げた。

「謝らないで。これは僕が決めたことだから」
 僕が拓海の頬に手を添えると、拓海が顔を上げた。

「拓海の子供を産みたいから、この決断したの。拓海に負い目を感じてほしくない」
 僕の言葉に、拓海の目から涙が溢れた。

「悠斗……」
「拓海が嬉しそうに赤ちゃんを楽しみにしてくれてるから、僕はすごく幸せだよ。だから、謝らないで」

 拓海が僕に抱きついてきた。肩が震えていて、嗚咽が漏れる。

「幸せにするから。絶対に、悠斗と赤ちゃんを幸せにする」
 拓海が泣きながら何度も繰り返し、僕も拓海を抱きしめ返した。

「ありがとう、拓海。一緒に赤ちゃんを育てよう」

 拓海が頷き、僕のお腹に手を当てた。まだ膨らんでいないお腹を、優しく撫でる拓海の手が温かかった。

「早く会いたいな」

 拓海が微笑み、僕も笑顔で頷いた。不安はあったが、拓海がいれば大丈夫だと思えた。二人で抱き合ったまま、お腹の中の小さな命を感じていた。
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