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第四章:愛を知らない獣
酔って出た本音
ある夜、リビングに入ると鬼頭さんがソファに座って酒を飲んでいた。
琥珀色の液体が揺れるグラスを片手に、窓の外を眺めている姿が目に入る。普段は真っ直ぐな背筋が、今夜は少しだけ丸まっているように見える。仕事から帰宅して、ジャケットだけを脱いで飲み始めたようだ。ワイシャツ姿でくつろいでいるのは、珍しい気がする。
リビングで酒を傾けている鬼頭さんは、どこか違う人のように見えた。
「鬼頭さん、お酒を飲むんですね」
声をかけると、鬼頭さんがゆっくりと振り返った。少し目が据わっているように見えるが、酔っているというほどでもない。グラスを軽く揺らして、僕に視線を向けてくる。
「ああ。社員からブランデーをもらったから」
テーブルの上には、高そうな瓶が置かれていた。ラベルには読めないアルファベットが並んでいて、外国産のものだと分かる。鬼頭さんがグラスに注いだ液体は、照明を受けて美しく輝いていた。
僕は冷蔵庫に向かい、中にあるものを確認する。チーズ、オリーブ、生ハム。お酒に合いそうなものを取り出して、簡単におつまみを作った。小さく切ったチーズに生ハムを巻き、オリーブを添えてテーブルに置く。
「おつまみ、作りました」
「ありがとう」
鬼頭さんが小さく礼を言って、チーズを一つ口に入れた。ゆっくりと咀嚼して、また酒を口に含む。僕は鬼頭さんの隣に座り、グラスの中の液体を眺めた。
「鬼頭さんがお酒を飲むのって珍しいですね」
「そうだな。基本的には口にしない」
鬼頭さんがグラスを傾けて、喉を鳴らして飲み込んだ。吐息に、甘いアルコールの香りが混じる。
「どうしてですか?」
「アルコールは思考力を低下させるからだ。仕事に支障が出る」
真面目な答えが返ってきた。鬼頭さんらしい理由だと感じた。
「ストイックなんですね」
「そうでもないと思うが」
淡々とした口調だった。鬼頭さんがどんな人生を送ってきたのか、僕は詳しく知らない。きっと、僕には想像もできないような厳しい世界だったのだろう。
出会いが最悪だったから、僕は鬼頭さんという人をたくさん誤解しているのだろう。
「どうして今夜は飲むんですか?」
僕が質問すると、鬼頭さんが視線を逸らした。窓の外を見つめたまま、グラスを揺らす。琥珀色の液体が波を作り、照明を反射して揺れていた。
「お前に飲ませろ、と鉄平たちが言ってた」
「僕に?」
「ああ」
鬼頭さんが小さく笑った。珍しく柔らかな表情だった。
「でも、お前は未成年だからな。代わりに俺が飲んでいる」
僕は鬼頭さんの隣に座り直した。距離が近くなり、肩が触れそうになる。鬼頭さんの体温が伝わってきて、酒の香りがさらに濃くなった。
「なんで僕に飲ませようとさせたんでしょうか?」
僕が問いかけると、鬼頭さんが視線を向けてくる。少し潤んだ瞳が、僕を見つめていた。酔っているのか、それともただ疲れているのか。普段よりも表情が柔らかくて、どこか危うい雰囲気があった。
「さあな」
鬼頭さんが惚けた様子で答える。僕は諦めずに、もう一度聞いた。
「教えてください」
「まあ……よくあるアレだろ」
曖昧な答えに、僕は首を傾げる。鬼頭さんがグラスを置いて、僕の顔を覗き込んできた。近い距離に、心臓が跳ねる。
「酔った勢いでっていうやつを期待してるんだろ」
低い声が耳朶を撫でた。意味を理解した瞬間、僕の顔が熱くなる。
「――なっ」
声にならない声が漏れた。顔が真っ赤になっていくのが分かる。心臓が激しく跳ねて、息が詰まった。
先日、鉄平さんに言われた言葉を思い出す。「社長の溜まった熱を抜いてくれるだけでありがたい」と話していた。
あれ以来、平日のオフィスで強請られても拒絶を続けていた。恥ずかしさのほうが勝ってしまって、どうしても受け入れられなかった。
みんな、それに気づいてお酒をプレゼントという形で渡して、酔った勢いで抱けるようにと画策したのだろう。
「悪かったな」
鬼頭さんが急にしおらしく謝ってきた。グラスを置いて、深く息をつく。肩が落ちて、背中が丸まった。まるで捨てられた子犬のような表情になっている鬼頭さんに、僕は呆れてしまった。
「こんな生活、後悔しかないだろう」
「は? 何を今さら」
僕が聞き返すと、鬼頭さんが視線を落とした。
「付き合ってる奴、いただろう」
低く、苦しそうな声だった。僕の胸が締めつけられる。
「――本当に、今更それを言う?」
「悪いと思ってる。でも離したくない」
グラスを握る手に力が込められて、指が白くなっている。顔を上げると、切ない表情で僕を見つめていた。
「僕に付き合ってる人がいるって知ってて抱いたの?」
僕が問いかけると、鬼頭さんが小さく首を横に振った。
「最初に抱いたときは知らなかった。後に知った」
「奪うつもりだった?」
「もちろん」
即答だった。迷いのない声に、僕の心臓が大きく跳ねる。
「柊は俺にとって運命の番だ。誰にも渡したくない」
真剣な眼差しで、鬼頭さんが僕を見つめてくる。瞳の奥に燃える炎のような熱が見えて、息が詰まった。
「いつ別れたか知ってる?」
僕が聞くと、鬼頭さんが頷いた。
「ああ。卒業式の予行で泣いたって嘘ついた日だろ」
「――知ってたんだ」
驚きで目を見開くと、鬼頭さんが小さく笑った。
「すぐにはわからなかった。卒業式に参列したときに、二人の雰囲気でなんとなく察した」
「……相手が誰だかも知って――?」
「仕事柄ね、一通り調べたよ。柊についての調査はかなり私情が混じってたけど」
鬼頭さんが苦笑した。
(まあ、確かにそうだよね)
借金している人間の家族構成や資産とか調べるのは当然だ。貸しても、回収できなければ意味がない。
「僕が割り切って、鬼頭さんと身体の関係を持って、まだ交際を続けていたらどうしてたんですか?」
僕が質問すると、鬼頭さんが視線を逸らした。窓の外を見つめて、グラスを揺らす。
「どうしもしない」
「――二股を許すってことですか?」
「許すっていうか……」
鬼頭さんが言葉を選ぶように、ゆっくりと続けた。
「もっと別の関係になっていたんじゃないか? 俺からは運命の番同士だったとは言わなかっただろうし、家に住めとも提案しない。大学に通えるように交渉もしてない。一回十万の契約のまま、定期的に呼び出して満足するまで抱いて、家に帰ってもらうっていう生活が続いてる」
淡々とした口調だった。
僕が篤志を選んでいたら、鬼頭さんは一線をひいた付き合いをしていた――。
(でも抱くのはやめないんだ……)
「それで良かったんですか?」
「わからない」
鬼頭さんが首を横に振った。
「選んでない未来について考えないから。ただ、キスマークだらけの身体を付き合ってる男に見せられないだろうから、いずれ破綻するだろうなとは考えてた」
「――ちょっと待ってください」
僕は鬼頭さんの言葉に引っかかりを覚えた。
「さっき、大学に交渉しなかったって言ってましたけど?」
言葉の端に隠された意味に気づいた瞬間、鬼頭さんの表情が強張った。
「……あっ」
鬼頭さんが失敗したという表情で、目を泳がせる。グラスを握る手が震えて、視線が定まらない。
「どういうことです?」
「どういうことでもない」
鬼頭さんが誤魔化そうとする。僕は身体を乗り出して、鬼頭さんの顔を覗き込んだ。
「それで誤魔化せると思ってますか?」
「誤魔化せるなら」
弱々しい声に、僕は小さくため息をついた。
「ちゃんと話してください」
「――ちょっと、記憶にない」
鬼頭さんがぐいっとアルコールを口に入れて、そっぽを向く。喉が上下して、グラスが空になった。逃げようとしている鬼頭さんに、僕は思わず笑ってしまう。
僕は小さく息をつくと、座る位置をずらして前屈みになった。
シャツの襟口から胸の突起がちらりと見えるようにして、上目遣いで鬼頭さんを見つめる。鬼頭さんの太腿に手を乗せると、ゆっくりと上に撫でていった。筋肉の硬さが手のひらに伝わってきて、体温が熱い。股間の部分まで手を滑らせると、布越しに優しく擦る。
「教えてくれないんですか?」
甘く囁くように問いかけると、鬼頭さんの身体が強張った。
「――っ」
鬼頭さんが手に持っているグラスをテーブルに置く。音が響いて、氷がカランと鳴った。
「そういう……卑怯な手を……」
激しく動揺した声が震えている。視線が僕の胸に注がれて、鬼頭さんの喉が上下した。ごくりと生唾を飲み下す音が聞こえて、僕の心臓が跳ねる。
鬼頭さんの熱があっという間に重量を増していくのが、手のひらから伝わってくる。ズボンの下で成長していく硬さに、僕の顔も熱くなった。鬼頭さんの視線は僕の胸に釘付けになっていて、荒い息が漏れている。
「言ったら、抱いていいのか?」
鬼頭さんの声が掠れていた。性的に興奮した低い声に、僕の下腹部が疼く。
「弟に関係を知られたくないから、寝室は別で夜はするなって言ったのは柊だぞ」
肩で息をして、鬼頭さんが僕から視線を逸らした。深く息を吐いて、自分を落ち着かせようとしているのが分かる。
「聞きたいです」
僕が囁くと、鬼頭さんが僕を見つめてきた。瞳の奥に燃える炎のような欲望が見えて、息が詰まる。
「――悪いが、後悔するなよ」
低く、危険な声だった。
「ここ数ヶ月、満足に抱けてなかったんだ。その上、最近は平日も断ってばかりだっただろ。明日の授業に差し支えても俺は責任をとらない」
警告するような口調に、僕は小さく頷いた。心臓が激しく跳ねて、全身が熱を持ち始める。
「毎日抱いてますよね?」
「はあ?」
鬼頭さんが眉を寄せた。不満そうな表情に、僕は首を傾げる。
「あれが抱いているうちに入らない。五分だけとか……ありえない。俺はもっと――」
言葉が途切れた。鬼頭さんが唇を噛んで、視線を逸らす。
「もっと? なんですか」
「――やっぱり酒は嫌いだ。思考力が落ちる」
鬼頭さんがため息をついて、顔を両手で覆った。指の隙間から覗く顔が、真っ赤に染まっている。普段は冷静な鬼頭さんが、こんなに動揺している姿を見るのは初めてだった。
「僕は嬉しいですけどね」
僕が小さく笑うと、鬼頭さんが指の隙間から僕を見つめてきた。
「鬼頭さんのいろんな表情が見られて」
囁くように告げると、鬼頭さんの瞳が揺れた。息を飲む音が聞こえて、僕の心臓が大きく跳ねる。
僕はソファから降りると、鬼頭さんの足の間に身体を入れた。膝をついて、鬼頭さんを見上げる。鬼頭さんの瞳が見開かれて、息が止まったように静かになった。
僕はゆっくりとズボンのボタンを外して、ジッパーを下ろす。硬く大きく育った熱が、下着の中で窮屈そうに脈打っていた。布越しに触れると、鬼頭さんの身体がビクンと跳ねる。
「柊……」
掠れた声で名前を呼ばれて、僕の下腹部がさらに疼いた。
僕は下着を下ろして、鬼頭さんの熱を外に出す。反り返った熱が目の前に現れて、先端から透明な液体が滲んでいた。太く、硬く、血管が浮き上がっている。
手のひらで包み込むと、熱が伝わってきた。ドクン、ドクンと脈打つ感触が手に響いて、鬼頭さんの息が荒くなる。僕は舌を出して、先端を舐めた。
「んっ……」
鬼頭さんが小さく呻いた。僕は先端をゆっくりと舐めて、滲んだ液体を舌で掬い取る。苦くて、少ししょっぱい味が口の中に広がった。
舌で先端を何度も舐めて、唾液を塗りつけていく。濡れた先端が光を反射して、艶やかに輝いた。僕は口を開けて、先端を含む。温かく、硬い感触が口の中に入ってきて、舌に熱が触れる。
「ああ……」
鬼頭さんの声が甘く震えた。大きな手が僕の髪を掴んで、優しく撫でてくる。僕は口を動かして、ゆっくりと奥まで含んでいった。喉の奥に触れそうになって、反射的に吐き出しそうになる。深呼吸をして、鼻で息をしながら飲み込んでいく。
口の中いっぱいに熱が広がって、頬が押し広げられた。鬼頭さんの味が口の中に満ちて、唾液が溢れてくる。僕は頭を動かして、出し入れを繰り返した。
「柊、気持ちいい……」
鬼頭さんの声が蕩けるように甘くなる。髪を撫でる手が震えて、腰が僅かに浮いた。僕は舌を這わせながら、吸い上げるように口を動かす。
くちゅ、くちゅと水音が響いた。唾液が溢れて、顎を伝って落ちていく。僕は構わずに、さらに深く飲み込んだ。喉の奥に触れて、涙が滲む。視界がぼやけて、鬼頭さんの顔が揺れて見えた。
鬼頭さんが荒い息を吐いて、僕の頭を優しく押さえる。腰が浮いて、喉の奥まで押し込まれそうになった。苦しくて涙が溢れるが、僕は受け入れた。
「ああ、……イク……っ」
鬼頭さんの声が切羽詰まった響きになる。鬼頭さんの熱から唇を離すと、透明な糸が引く。熱は硬いままで、先端から透明な液体が滲んでいた。
「もう、いいかな」
僕は立ち上がって、服を脱ぎ始める。シャツを脱ぎ、ズボンを下ろし、下着も全て脱いだ。全裸になって、鬼頭さんの前に立つ。
鬼頭さんの視線が僕の身体を這った。胸から腹へ、腹から股間へと視線が動いて、僕の顔が熱くなる。恥ずかしさで身体が震えて、腕で隠したくなった。
僕は鬼頭さんの上に跨った。膝をソファについて、鬼頭さんの熱に腰を下ろしていく。先端が入口に触れて、ゆっくりと押し広げられる感覚があった。
「んっ……」
小さく声が漏れる。僕はゆっくりと腰を落として、奥まで飲み込んでいった。熱が身体の中を満たしていく感覚に、息が詰まる。
深くまで飲み込むと、鬼頭さんに抱きついた。硬い胸板に顔を押し付けて、心臓の音を聞く。激しく跳ねている鼓動が、僕の鼓動と重なり合った。
僕は腰を動かし始めた。ゆっくりと上下に動かして、鬼頭さんの熱を出し入れする。くちゅ、くちゅと水音が響いて、恥ずかしさで顔が燃えた。
「ああ……気持ちいい……」
甘い吐息を鬼頭さんの耳元で漏らすと、鬼頭さんの手が僕の腰を掴んだ。大きな手が腰を掴んで、上下の動きを助けてくれる。
「ああ……っ」
鬼頭さんが気持ちよさそうな声をあげた。低く、甘い声に、僕の下腹部がさらに疼く。腰を振る動きが速くなって、ソファが軋む音が響いた。
鬼頭さんの唇が僕の唇に触れた。甘く蕩けるような深いキスに、僕は目を閉じる。舌が絡み合って、唾液が混じり合った。くちゅくちゅと水音が響いて、息が苦しくなる。
鬼頭さんの熱が中でさらに大きくなるのが分かった。内壁を押し広げて、奥を突き上げてくる。身体の奥が疼いて、快感が全身を駆け巡った。
「んっ、あっ……ああっ」
声が大きくなっていく。堪えようとしても、勝手に口から漏れてしまう。
「柊……イキそうだ……」
鬼頭さんが苦しげな声で呟いた。僕は唇を離して、振っている腰をぴたりと止める。
腹筋に力を入れて、繋がっている内壁をぎゅうっと締めつけた。鬼頭さんの熱を締め出すように、収縮を繰り返す。
「ちょ……なにをして?」
鬼頭さんが驚いた声をあげた。苦しそうに眉を寄せて、僕を見つめてくる。
「大学と交渉ってなんです?」
僕が問いかけると、鬼頭さんの表情が強張った。
「僕をこのまま抱いて、あやふやにしようとさせないから」
「――柊」
鬼頭さんが僕の名前を呼ぶ。苦しげな声に、僕は少しだけ罪悪感を覚えた。
「鬼頭さん、苦しそう」
僕はさらに内壁に力を入れた。鬼頭さんの熱を締めつけてた。
「……っくぅ」
鬼頭さんが艶かしい呻き声をあげた。身体を震わせて、僕の腰を掴む手に力が込められる。
「話してください」
「イカせてくれ」
懇願するような声だった。鬼頭さんの瞳が潤んで、切なげに僕を見つめてくる。
「だめです」
僕が首を横に振ると、鬼頭さんが深く息をついた。
「入学金と前期の授業代を払ったのは俺だ」
早口で真実を告げてくれる。
「大学側に親の状況を話して、俺が支払った――これでいいだろ? ちゃんと話した」
鬼頭さんが僕をソファに押し倒した。体勢が変わって、鬼頭さんが上になる。激しく腰を振り始めて、奥を何度も突き上げてきた。
「あっ、あっ、ああああっ」
甘い声がリビングに響く。ガンガンと奥を突かれて、僕の身体が大きく揺れた。快感が全身を駆け巡って、頭の中が真っ白になる。
「ああ、イク……っ」
身体の奥から、何かが弾けた。視界が真っ白になって、全身が痙攣する。鬼頭さんの熱を強く締めつけて、収縮を繰り返した。
「っ……!」
鬼頭さんも奥に腰を沈めて、動きを止めた。身体を強張らせて、熱いものが中に注がれる感覚があった。ドクン、ドクンと脈打つように、熱い液体が注ぎ込まれていく。
荒い息を整えながら、僕は鬼頭さんの首に腕を回した。両足を鬼頭さんの腰に巻き付けて、繋がったまま抱きしめる。
「それ、本当ですか?」
息を整えながら問いかけると、鬼頭さんが頷いた。
「大学に行きたがってただろ。だから……」
「大金ですよ! そんな簡単に――」
驚きで声が大きくなる。入学金と前期の授業代を合わせたら、かなりの金額になる。父が払ったと思っていた金額を、鬼頭さんが支払っていた。
「言っただろ。俺は柊の泣き顔のほうがつらい。笑顔を見られるなら、あれくらいの金額どうってことない」
真剣な眼差しで、鬼頭さんが僕を見つめてくる。
「後期だって払うつもりだぞ」
「ずるい……」
僕は鬼頭さんの頬を両手で包んだ。温かい肌の感触が手のひらに伝わってきて、鬼頭さんの瞳が優しく細められる。
僕は顔を近づけて、キスをした。甘く、深く、愛おしむような口づけ。鬼頭さんが僕のキスに応えてくれて、舌が絡み合った。
「ずるいのは柊のほうだろ」
唇を離すと、鬼頭さんが呟いた。
「どこで覚えてきたか知らないが、俺を誘惑して聞き出して」
「まさか鬼頭さんが引っ掛かるとは思いませんでした」
僕が小さく笑うと、鬼頭さんが不満そうに眉を寄せた。
「――柊以外だったら、ブチ切れてる」
「僕だから?」
「……他の奴に絶対、やるな」
鬼頭さんが少し怒ったような表情を見せた。
「鬼頭さんにだったらいいんですね?」
「俺にもだめだ」
鬼頭さんが僕の腰を掴んだ。中で復活していく熱杭をぐっと奥に差し込まれて、身体の奥が押し広げられる。
「ああん……っ」
甘い声が思わず漏れた。鬼頭さんの瞳が欲望に染まって、僕を見つめてくる。
「ちゃんと話したから、朝まで覚悟しろ」
「朝まで?」
「明日の授業が受けられなくても文句は言うなって最初に言っただろ」
鬼頭さんが腰を動かし始めた。ゆっくりと引いて、また奥を突く。そのたびに、快感が身体を駆け巡った。
「そんな……じゃあもう一つ質問」
僕が息を整えながら言うと、鬼頭さんが動きを止めた。不満そうに眉を寄せて、僕を見つめてくる。
「今更なこと聞いていいですか」
「なんだ?」
「最初のころ、ホテルで僕を抱く前に女性を抱いてたのはなんで?」
ずっと気になっていたことを口にした。鬼頭さんの表情が強張って、視線を逸らす。
「……抱いていない」
「香水の匂いがしてたし、ベッドが明らかに乱れてた。長い髪も枕に落ちてて、抱いてないっていう嘘かと……」
具体的に指摘すると、鬼頭さんが深く息をついた。
「――抱いてない。抱けなかった」
苦しげな声だった。鬼頭さんが僕の髪を撫でて、額にキスを落とす。
「ああいう接待はよくあった。それでお互いに仕事がスムーズにいくのなら、いいと思ってた」
淡々とした口調で説明してくれる。僕は黙って、鬼頭さんの話を聞いた。
「でも柊を抱いてから、全く反応しなくなった。触られてもただ気持ち悪いだけ」
鬼頭さんの声が震えていた。僕の腰を抱きしめて、顔を僕の首筋に埋める。
「勃たなくなったのかと思って、柊を呼んだ。来るってわかった時点から痛いくらいに勃起して、我慢できなかった」
ホテルに呼び出されているとき、いつもいきなり抱き始めた理由が分かった。普通に我慢できなかっただけだったなんて。僕の胸が温かくなって、笑いがこみ上げてくる。
「柊しか抱けないんだとわかった」
鬼頭さんが顔を上げて、僕を見つめた。真剣な眼差しに、僕の心臓が跳ねる。
「四回ほど確かめて答えに辿り着いた。あれ以来、ああいう接待をすべて断った」
「もういいだろ?」
鬼頭さんが僕を抱き上げた。繋がったまま立ち上がって、寝室へと向かう。腕の中で揺れながら、僕は鬼頭さんの首にしがみついた。
寝室に入ると、鬼頭さんが僕をベッドに寝かせた。優しく身体を離して、僕の上に覆い被さってくる。
「柊、呼び方を変えろ」
低い声で命令された。僕は首を傾げて、鬼頭さんを見つめる。
「鬼頭じゃなくて、鷹臣と呼べ」
真剣な眼差しで、鷹臣さんが僕を見つめてくる。頬が僅かに赤く染まっていて、恥ずかしそうに視線を逸らした。
「……鷹臣さん」
小さく呟くと、鷹臣さんの瞳が揺れた。嬉しそうに微笑んで、僕の額にキスを落とす。
「さんはいらない。鷹臣でいい」
「恥ずかしい……」
鷹臣さんが小さく笑った。珍しく柔らかな表情に、僕の胸が温かくなる。
鷹臣さんが腰を動かし始めた。ゆっくりと引いて、奥を突く。そのたびに、快感が身体を駆け巡った。
「声を出せ。柊の声が聞きたい」
「ああ、気持ちいい……」
甘い声が口から零れた。鷹臣さんの動きが速くなって、激しく奥を突き上げてくる。
体勢が変わった。鷹臣さんが僕の身体を裏返して、後ろから抱きしめてくる。背中に硬い胸板が触れて、耳元で荒い息が聞こえた。
「呼べ。俺の名前を呼べ」
低く、甘い声が耳朶を撫でる。鷹臣さんの熱が奥を突き上げて、快感が全身を駆け巡った。
「たか……っ、あっ……」
言葉が途切れる。激しく突かれて、声にならない。鷹臣さんが耳朶を甘噛みして、囁いた。
「最後まで言え」
「鷹臣……さん……っ」
甘く呻くように名前を呼ぶと、鷹臣さんの動きがさらに激しくなった。ガンガンと奥を突かれて、ベッドが軋む音が響く。
「ああ、ダメ……イッちゃう……」
「イけ。何度でもイけ」
鷹臣さんの声が甘く蕩けていた。僕の身体を抱きしめて、激しく腰を振ってくる。
身体の奥から、何かが弾けた。視界が真っ白になって、全身が痙攣する。
「ああああっ! 鷹臣……さんっ!」
叫び声が部屋に響いた。
鷹臣さんは止まらなかった。僕が痙攣している間も、激しく腰を振り続ける。快感が途切れずに押し寄せてきて、息ができない。
「もう、無理……っ」
懇願するように呟くと、鷹臣さんが優しくキスを落とした。
「まだ始まったばかりだ。朝までって言っただろ」
低く、甘い声に、僕の下腹部が疼いた。
気がつくと意識が遠くなっていて、最後の記憶は鷹臣さんの甘い囁きだけだった。
朝日が窓から差し込んで、カーテンの隙間から光が漏れている。僕はゆっくりと目を開けて、天井を見つめた。
隣には誰もいなかった。鷹臣さんの気配がなくて、布団だけが僕の身体を包んでいる。
身体を動かすと、全身が痛かった。腰が重くて、太腿の内側がヒリヒリする。下腹部に鈍い痛みがあって、起き上がるのも辛い。
久しぶりに身体中にキスマークがついていた。胸に、腹に、太腿に。鷹臣さんの痕跡が残っていて、恥ずかしさで顔が熱くなる。
時計を見て、真っ青になった。
(やばい……!)
弟の登校時間が迫っている。朝食の用意をしていない。
僕は慌てて身体を起こした。気だるい身体を無理やり動かして、鷹臣さんのシャツを借りて着ると、寝室を飛び出した。
琥珀色の液体が揺れるグラスを片手に、窓の外を眺めている姿が目に入る。普段は真っ直ぐな背筋が、今夜は少しだけ丸まっているように見える。仕事から帰宅して、ジャケットだけを脱いで飲み始めたようだ。ワイシャツ姿でくつろいでいるのは、珍しい気がする。
リビングで酒を傾けている鬼頭さんは、どこか違う人のように見えた。
「鬼頭さん、お酒を飲むんですね」
声をかけると、鬼頭さんがゆっくりと振り返った。少し目が据わっているように見えるが、酔っているというほどでもない。グラスを軽く揺らして、僕に視線を向けてくる。
「ああ。社員からブランデーをもらったから」
テーブルの上には、高そうな瓶が置かれていた。ラベルには読めないアルファベットが並んでいて、外国産のものだと分かる。鬼頭さんがグラスに注いだ液体は、照明を受けて美しく輝いていた。
僕は冷蔵庫に向かい、中にあるものを確認する。チーズ、オリーブ、生ハム。お酒に合いそうなものを取り出して、簡単におつまみを作った。小さく切ったチーズに生ハムを巻き、オリーブを添えてテーブルに置く。
「おつまみ、作りました」
「ありがとう」
鬼頭さんが小さく礼を言って、チーズを一つ口に入れた。ゆっくりと咀嚼して、また酒を口に含む。僕は鬼頭さんの隣に座り、グラスの中の液体を眺めた。
「鬼頭さんがお酒を飲むのって珍しいですね」
「そうだな。基本的には口にしない」
鬼頭さんがグラスを傾けて、喉を鳴らして飲み込んだ。吐息に、甘いアルコールの香りが混じる。
「どうしてですか?」
「アルコールは思考力を低下させるからだ。仕事に支障が出る」
真面目な答えが返ってきた。鬼頭さんらしい理由だと感じた。
「ストイックなんですね」
「そうでもないと思うが」
淡々とした口調だった。鬼頭さんがどんな人生を送ってきたのか、僕は詳しく知らない。きっと、僕には想像もできないような厳しい世界だったのだろう。
出会いが最悪だったから、僕は鬼頭さんという人をたくさん誤解しているのだろう。
「どうして今夜は飲むんですか?」
僕が質問すると、鬼頭さんが視線を逸らした。窓の外を見つめたまま、グラスを揺らす。琥珀色の液体が波を作り、照明を反射して揺れていた。
「お前に飲ませろ、と鉄平たちが言ってた」
「僕に?」
「ああ」
鬼頭さんが小さく笑った。珍しく柔らかな表情だった。
「でも、お前は未成年だからな。代わりに俺が飲んでいる」
僕は鬼頭さんの隣に座り直した。距離が近くなり、肩が触れそうになる。鬼頭さんの体温が伝わってきて、酒の香りがさらに濃くなった。
「なんで僕に飲ませようとさせたんでしょうか?」
僕が問いかけると、鬼頭さんが視線を向けてくる。少し潤んだ瞳が、僕を見つめていた。酔っているのか、それともただ疲れているのか。普段よりも表情が柔らかくて、どこか危うい雰囲気があった。
「さあな」
鬼頭さんが惚けた様子で答える。僕は諦めずに、もう一度聞いた。
「教えてください」
「まあ……よくあるアレだろ」
曖昧な答えに、僕は首を傾げる。鬼頭さんがグラスを置いて、僕の顔を覗き込んできた。近い距離に、心臓が跳ねる。
「酔った勢いでっていうやつを期待してるんだろ」
低い声が耳朶を撫でた。意味を理解した瞬間、僕の顔が熱くなる。
「――なっ」
声にならない声が漏れた。顔が真っ赤になっていくのが分かる。心臓が激しく跳ねて、息が詰まった。
先日、鉄平さんに言われた言葉を思い出す。「社長の溜まった熱を抜いてくれるだけでありがたい」と話していた。
あれ以来、平日のオフィスで強請られても拒絶を続けていた。恥ずかしさのほうが勝ってしまって、どうしても受け入れられなかった。
みんな、それに気づいてお酒をプレゼントという形で渡して、酔った勢いで抱けるようにと画策したのだろう。
「悪かったな」
鬼頭さんが急にしおらしく謝ってきた。グラスを置いて、深く息をつく。肩が落ちて、背中が丸まった。まるで捨てられた子犬のような表情になっている鬼頭さんに、僕は呆れてしまった。
「こんな生活、後悔しかないだろう」
「は? 何を今さら」
僕が聞き返すと、鬼頭さんが視線を落とした。
「付き合ってる奴、いただろう」
低く、苦しそうな声だった。僕の胸が締めつけられる。
「――本当に、今更それを言う?」
「悪いと思ってる。でも離したくない」
グラスを握る手に力が込められて、指が白くなっている。顔を上げると、切ない表情で僕を見つめていた。
「僕に付き合ってる人がいるって知ってて抱いたの?」
僕が問いかけると、鬼頭さんが小さく首を横に振った。
「最初に抱いたときは知らなかった。後に知った」
「奪うつもりだった?」
「もちろん」
即答だった。迷いのない声に、僕の心臓が大きく跳ねる。
「柊は俺にとって運命の番だ。誰にも渡したくない」
真剣な眼差しで、鬼頭さんが僕を見つめてくる。瞳の奥に燃える炎のような熱が見えて、息が詰まった。
「いつ別れたか知ってる?」
僕が聞くと、鬼頭さんが頷いた。
「ああ。卒業式の予行で泣いたって嘘ついた日だろ」
「――知ってたんだ」
驚きで目を見開くと、鬼頭さんが小さく笑った。
「すぐにはわからなかった。卒業式に参列したときに、二人の雰囲気でなんとなく察した」
「……相手が誰だかも知って――?」
「仕事柄ね、一通り調べたよ。柊についての調査はかなり私情が混じってたけど」
鬼頭さんが苦笑した。
(まあ、確かにそうだよね)
借金している人間の家族構成や資産とか調べるのは当然だ。貸しても、回収できなければ意味がない。
「僕が割り切って、鬼頭さんと身体の関係を持って、まだ交際を続けていたらどうしてたんですか?」
僕が質問すると、鬼頭さんが視線を逸らした。窓の外を見つめて、グラスを揺らす。
「どうしもしない」
「――二股を許すってことですか?」
「許すっていうか……」
鬼頭さんが言葉を選ぶように、ゆっくりと続けた。
「もっと別の関係になっていたんじゃないか? 俺からは運命の番同士だったとは言わなかっただろうし、家に住めとも提案しない。大学に通えるように交渉もしてない。一回十万の契約のまま、定期的に呼び出して満足するまで抱いて、家に帰ってもらうっていう生活が続いてる」
淡々とした口調だった。
僕が篤志を選んでいたら、鬼頭さんは一線をひいた付き合いをしていた――。
(でも抱くのはやめないんだ……)
「それで良かったんですか?」
「わからない」
鬼頭さんが首を横に振った。
「選んでない未来について考えないから。ただ、キスマークだらけの身体を付き合ってる男に見せられないだろうから、いずれ破綻するだろうなとは考えてた」
「――ちょっと待ってください」
僕は鬼頭さんの言葉に引っかかりを覚えた。
「さっき、大学に交渉しなかったって言ってましたけど?」
言葉の端に隠された意味に気づいた瞬間、鬼頭さんの表情が強張った。
「……あっ」
鬼頭さんが失敗したという表情で、目を泳がせる。グラスを握る手が震えて、視線が定まらない。
「どういうことです?」
「どういうことでもない」
鬼頭さんが誤魔化そうとする。僕は身体を乗り出して、鬼頭さんの顔を覗き込んだ。
「それで誤魔化せると思ってますか?」
「誤魔化せるなら」
弱々しい声に、僕は小さくため息をついた。
「ちゃんと話してください」
「――ちょっと、記憶にない」
鬼頭さんがぐいっとアルコールを口に入れて、そっぽを向く。喉が上下して、グラスが空になった。逃げようとしている鬼頭さんに、僕は思わず笑ってしまう。
僕は小さく息をつくと、座る位置をずらして前屈みになった。
シャツの襟口から胸の突起がちらりと見えるようにして、上目遣いで鬼頭さんを見つめる。鬼頭さんの太腿に手を乗せると、ゆっくりと上に撫でていった。筋肉の硬さが手のひらに伝わってきて、体温が熱い。股間の部分まで手を滑らせると、布越しに優しく擦る。
「教えてくれないんですか?」
甘く囁くように問いかけると、鬼頭さんの身体が強張った。
「――っ」
鬼頭さんが手に持っているグラスをテーブルに置く。音が響いて、氷がカランと鳴った。
「そういう……卑怯な手を……」
激しく動揺した声が震えている。視線が僕の胸に注がれて、鬼頭さんの喉が上下した。ごくりと生唾を飲み下す音が聞こえて、僕の心臓が跳ねる。
鬼頭さんの熱があっという間に重量を増していくのが、手のひらから伝わってくる。ズボンの下で成長していく硬さに、僕の顔も熱くなった。鬼頭さんの視線は僕の胸に釘付けになっていて、荒い息が漏れている。
「言ったら、抱いていいのか?」
鬼頭さんの声が掠れていた。性的に興奮した低い声に、僕の下腹部が疼く。
「弟に関係を知られたくないから、寝室は別で夜はするなって言ったのは柊だぞ」
肩で息をして、鬼頭さんが僕から視線を逸らした。深く息を吐いて、自分を落ち着かせようとしているのが分かる。
「聞きたいです」
僕が囁くと、鬼頭さんが僕を見つめてきた。瞳の奥に燃える炎のような欲望が見えて、息が詰まる。
「――悪いが、後悔するなよ」
低く、危険な声だった。
「ここ数ヶ月、満足に抱けてなかったんだ。その上、最近は平日も断ってばかりだっただろ。明日の授業に差し支えても俺は責任をとらない」
警告するような口調に、僕は小さく頷いた。心臓が激しく跳ねて、全身が熱を持ち始める。
「毎日抱いてますよね?」
「はあ?」
鬼頭さんが眉を寄せた。不満そうな表情に、僕は首を傾げる。
「あれが抱いているうちに入らない。五分だけとか……ありえない。俺はもっと――」
言葉が途切れた。鬼頭さんが唇を噛んで、視線を逸らす。
「もっと? なんですか」
「――やっぱり酒は嫌いだ。思考力が落ちる」
鬼頭さんがため息をついて、顔を両手で覆った。指の隙間から覗く顔が、真っ赤に染まっている。普段は冷静な鬼頭さんが、こんなに動揺している姿を見るのは初めてだった。
「僕は嬉しいですけどね」
僕が小さく笑うと、鬼頭さんが指の隙間から僕を見つめてきた。
「鬼頭さんのいろんな表情が見られて」
囁くように告げると、鬼頭さんの瞳が揺れた。息を飲む音が聞こえて、僕の心臓が大きく跳ねる。
僕はソファから降りると、鬼頭さんの足の間に身体を入れた。膝をついて、鬼頭さんを見上げる。鬼頭さんの瞳が見開かれて、息が止まったように静かになった。
僕はゆっくりとズボンのボタンを外して、ジッパーを下ろす。硬く大きく育った熱が、下着の中で窮屈そうに脈打っていた。布越しに触れると、鬼頭さんの身体がビクンと跳ねる。
「柊……」
掠れた声で名前を呼ばれて、僕の下腹部がさらに疼いた。
僕は下着を下ろして、鬼頭さんの熱を外に出す。反り返った熱が目の前に現れて、先端から透明な液体が滲んでいた。太く、硬く、血管が浮き上がっている。
手のひらで包み込むと、熱が伝わってきた。ドクン、ドクンと脈打つ感触が手に響いて、鬼頭さんの息が荒くなる。僕は舌を出して、先端を舐めた。
「んっ……」
鬼頭さんが小さく呻いた。僕は先端をゆっくりと舐めて、滲んだ液体を舌で掬い取る。苦くて、少ししょっぱい味が口の中に広がった。
舌で先端を何度も舐めて、唾液を塗りつけていく。濡れた先端が光を反射して、艶やかに輝いた。僕は口を開けて、先端を含む。温かく、硬い感触が口の中に入ってきて、舌に熱が触れる。
「ああ……」
鬼頭さんの声が甘く震えた。大きな手が僕の髪を掴んで、優しく撫でてくる。僕は口を動かして、ゆっくりと奥まで含んでいった。喉の奥に触れそうになって、反射的に吐き出しそうになる。深呼吸をして、鼻で息をしながら飲み込んでいく。
口の中いっぱいに熱が広がって、頬が押し広げられた。鬼頭さんの味が口の中に満ちて、唾液が溢れてくる。僕は頭を動かして、出し入れを繰り返した。
「柊、気持ちいい……」
鬼頭さんの声が蕩けるように甘くなる。髪を撫でる手が震えて、腰が僅かに浮いた。僕は舌を這わせながら、吸い上げるように口を動かす。
くちゅ、くちゅと水音が響いた。唾液が溢れて、顎を伝って落ちていく。僕は構わずに、さらに深く飲み込んだ。喉の奥に触れて、涙が滲む。視界がぼやけて、鬼頭さんの顔が揺れて見えた。
鬼頭さんが荒い息を吐いて、僕の頭を優しく押さえる。腰が浮いて、喉の奥まで押し込まれそうになった。苦しくて涙が溢れるが、僕は受け入れた。
「ああ、……イク……っ」
鬼頭さんの声が切羽詰まった響きになる。鬼頭さんの熱から唇を離すと、透明な糸が引く。熱は硬いままで、先端から透明な液体が滲んでいた。
「もう、いいかな」
僕は立ち上がって、服を脱ぎ始める。シャツを脱ぎ、ズボンを下ろし、下着も全て脱いだ。全裸になって、鬼頭さんの前に立つ。
鬼頭さんの視線が僕の身体を這った。胸から腹へ、腹から股間へと視線が動いて、僕の顔が熱くなる。恥ずかしさで身体が震えて、腕で隠したくなった。
僕は鬼頭さんの上に跨った。膝をソファについて、鬼頭さんの熱に腰を下ろしていく。先端が入口に触れて、ゆっくりと押し広げられる感覚があった。
「んっ……」
小さく声が漏れる。僕はゆっくりと腰を落として、奥まで飲み込んでいった。熱が身体の中を満たしていく感覚に、息が詰まる。
深くまで飲み込むと、鬼頭さんに抱きついた。硬い胸板に顔を押し付けて、心臓の音を聞く。激しく跳ねている鼓動が、僕の鼓動と重なり合った。
僕は腰を動かし始めた。ゆっくりと上下に動かして、鬼頭さんの熱を出し入れする。くちゅ、くちゅと水音が響いて、恥ずかしさで顔が燃えた。
「ああ……気持ちいい……」
甘い吐息を鬼頭さんの耳元で漏らすと、鬼頭さんの手が僕の腰を掴んだ。大きな手が腰を掴んで、上下の動きを助けてくれる。
「ああ……っ」
鬼頭さんが気持ちよさそうな声をあげた。低く、甘い声に、僕の下腹部がさらに疼く。腰を振る動きが速くなって、ソファが軋む音が響いた。
鬼頭さんの唇が僕の唇に触れた。甘く蕩けるような深いキスに、僕は目を閉じる。舌が絡み合って、唾液が混じり合った。くちゅくちゅと水音が響いて、息が苦しくなる。
鬼頭さんの熱が中でさらに大きくなるのが分かった。内壁を押し広げて、奥を突き上げてくる。身体の奥が疼いて、快感が全身を駆け巡った。
「んっ、あっ……ああっ」
声が大きくなっていく。堪えようとしても、勝手に口から漏れてしまう。
「柊……イキそうだ……」
鬼頭さんが苦しげな声で呟いた。僕は唇を離して、振っている腰をぴたりと止める。
腹筋に力を入れて、繋がっている内壁をぎゅうっと締めつけた。鬼頭さんの熱を締め出すように、収縮を繰り返す。
「ちょ……なにをして?」
鬼頭さんが驚いた声をあげた。苦しそうに眉を寄せて、僕を見つめてくる。
「大学と交渉ってなんです?」
僕が問いかけると、鬼頭さんの表情が強張った。
「僕をこのまま抱いて、あやふやにしようとさせないから」
「――柊」
鬼頭さんが僕の名前を呼ぶ。苦しげな声に、僕は少しだけ罪悪感を覚えた。
「鬼頭さん、苦しそう」
僕はさらに内壁に力を入れた。鬼頭さんの熱を締めつけてた。
「……っくぅ」
鬼頭さんが艶かしい呻き声をあげた。身体を震わせて、僕の腰を掴む手に力が込められる。
「話してください」
「イカせてくれ」
懇願するような声だった。鬼頭さんの瞳が潤んで、切なげに僕を見つめてくる。
「だめです」
僕が首を横に振ると、鬼頭さんが深く息をついた。
「入学金と前期の授業代を払ったのは俺だ」
早口で真実を告げてくれる。
「大学側に親の状況を話して、俺が支払った――これでいいだろ? ちゃんと話した」
鬼頭さんが僕をソファに押し倒した。体勢が変わって、鬼頭さんが上になる。激しく腰を振り始めて、奥を何度も突き上げてきた。
「あっ、あっ、ああああっ」
甘い声がリビングに響く。ガンガンと奥を突かれて、僕の身体が大きく揺れた。快感が全身を駆け巡って、頭の中が真っ白になる。
「ああ、イク……っ」
身体の奥から、何かが弾けた。視界が真っ白になって、全身が痙攣する。鬼頭さんの熱を強く締めつけて、収縮を繰り返した。
「っ……!」
鬼頭さんも奥に腰を沈めて、動きを止めた。身体を強張らせて、熱いものが中に注がれる感覚があった。ドクン、ドクンと脈打つように、熱い液体が注ぎ込まれていく。
荒い息を整えながら、僕は鬼頭さんの首に腕を回した。両足を鬼頭さんの腰に巻き付けて、繋がったまま抱きしめる。
「それ、本当ですか?」
息を整えながら問いかけると、鬼頭さんが頷いた。
「大学に行きたがってただろ。だから……」
「大金ですよ! そんな簡単に――」
驚きで声が大きくなる。入学金と前期の授業代を合わせたら、かなりの金額になる。父が払ったと思っていた金額を、鬼頭さんが支払っていた。
「言っただろ。俺は柊の泣き顔のほうがつらい。笑顔を見られるなら、あれくらいの金額どうってことない」
真剣な眼差しで、鬼頭さんが僕を見つめてくる。
「後期だって払うつもりだぞ」
「ずるい……」
僕は鬼頭さんの頬を両手で包んだ。温かい肌の感触が手のひらに伝わってきて、鬼頭さんの瞳が優しく細められる。
僕は顔を近づけて、キスをした。甘く、深く、愛おしむような口づけ。鬼頭さんが僕のキスに応えてくれて、舌が絡み合った。
「ずるいのは柊のほうだろ」
唇を離すと、鬼頭さんが呟いた。
「どこで覚えてきたか知らないが、俺を誘惑して聞き出して」
「まさか鬼頭さんが引っ掛かるとは思いませんでした」
僕が小さく笑うと、鬼頭さんが不満そうに眉を寄せた。
「――柊以外だったら、ブチ切れてる」
「僕だから?」
「……他の奴に絶対、やるな」
鬼頭さんが少し怒ったような表情を見せた。
「鬼頭さんにだったらいいんですね?」
「俺にもだめだ」
鬼頭さんが僕の腰を掴んだ。中で復活していく熱杭をぐっと奥に差し込まれて、身体の奥が押し広げられる。
「ああん……っ」
甘い声が思わず漏れた。鬼頭さんの瞳が欲望に染まって、僕を見つめてくる。
「ちゃんと話したから、朝まで覚悟しろ」
「朝まで?」
「明日の授業が受けられなくても文句は言うなって最初に言っただろ」
鬼頭さんが腰を動かし始めた。ゆっくりと引いて、また奥を突く。そのたびに、快感が身体を駆け巡った。
「そんな……じゃあもう一つ質問」
僕が息を整えながら言うと、鬼頭さんが動きを止めた。不満そうに眉を寄せて、僕を見つめてくる。
「今更なこと聞いていいですか」
「なんだ?」
「最初のころ、ホテルで僕を抱く前に女性を抱いてたのはなんで?」
ずっと気になっていたことを口にした。鬼頭さんの表情が強張って、視線を逸らす。
「……抱いていない」
「香水の匂いがしてたし、ベッドが明らかに乱れてた。長い髪も枕に落ちてて、抱いてないっていう嘘かと……」
具体的に指摘すると、鬼頭さんが深く息をついた。
「――抱いてない。抱けなかった」
苦しげな声だった。鬼頭さんが僕の髪を撫でて、額にキスを落とす。
「ああいう接待はよくあった。それでお互いに仕事がスムーズにいくのなら、いいと思ってた」
淡々とした口調で説明してくれる。僕は黙って、鬼頭さんの話を聞いた。
「でも柊を抱いてから、全く反応しなくなった。触られてもただ気持ち悪いだけ」
鬼頭さんの声が震えていた。僕の腰を抱きしめて、顔を僕の首筋に埋める。
「勃たなくなったのかと思って、柊を呼んだ。来るってわかった時点から痛いくらいに勃起して、我慢できなかった」
ホテルに呼び出されているとき、いつもいきなり抱き始めた理由が分かった。普通に我慢できなかっただけだったなんて。僕の胸が温かくなって、笑いがこみ上げてくる。
「柊しか抱けないんだとわかった」
鬼頭さんが顔を上げて、僕を見つめた。真剣な眼差しに、僕の心臓が跳ねる。
「四回ほど確かめて答えに辿り着いた。あれ以来、ああいう接待をすべて断った」
「もういいだろ?」
鬼頭さんが僕を抱き上げた。繋がったまま立ち上がって、寝室へと向かう。腕の中で揺れながら、僕は鬼頭さんの首にしがみついた。
寝室に入ると、鬼頭さんが僕をベッドに寝かせた。優しく身体を離して、僕の上に覆い被さってくる。
「柊、呼び方を変えろ」
低い声で命令された。僕は首を傾げて、鬼頭さんを見つめる。
「鬼頭じゃなくて、鷹臣と呼べ」
真剣な眼差しで、鷹臣さんが僕を見つめてくる。頬が僅かに赤く染まっていて、恥ずかしそうに視線を逸らした。
「……鷹臣さん」
小さく呟くと、鷹臣さんの瞳が揺れた。嬉しそうに微笑んで、僕の額にキスを落とす。
「さんはいらない。鷹臣でいい」
「恥ずかしい……」
鷹臣さんが小さく笑った。珍しく柔らかな表情に、僕の胸が温かくなる。
鷹臣さんが腰を動かし始めた。ゆっくりと引いて、奥を突く。そのたびに、快感が身体を駆け巡った。
「声を出せ。柊の声が聞きたい」
「ああ、気持ちいい……」
甘い声が口から零れた。鷹臣さんの動きが速くなって、激しく奥を突き上げてくる。
体勢が変わった。鷹臣さんが僕の身体を裏返して、後ろから抱きしめてくる。背中に硬い胸板が触れて、耳元で荒い息が聞こえた。
「呼べ。俺の名前を呼べ」
低く、甘い声が耳朶を撫でる。鷹臣さんの熱が奥を突き上げて、快感が全身を駆け巡った。
「たか……っ、あっ……」
言葉が途切れる。激しく突かれて、声にならない。鷹臣さんが耳朶を甘噛みして、囁いた。
「最後まで言え」
「鷹臣……さん……っ」
甘く呻くように名前を呼ぶと、鷹臣さんの動きがさらに激しくなった。ガンガンと奥を突かれて、ベッドが軋む音が響く。
「ああ、ダメ……イッちゃう……」
「イけ。何度でもイけ」
鷹臣さんの声が甘く蕩けていた。僕の身体を抱きしめて、激しく腰を振ってくる。
身体の奥から、何かが弾けた。視界が真っ白になって、全身が痙攣する。
「ああああっ! 鷹臣……さんっ!」
叫び声が部屋に響いた。
鷹臣さんは止まらなかった。僕が痙攣している間も、激しく腰を振り続ける。快感が途切れずに押し寄せてきて、息ができない。
「もう、無理……っ」
懇願するように呟くと、鷹臣さんが優しくキスを落とした。
「まだ始まったばかりだ。朝までって言っただろ」
低く、甘い声に、僕の下腹部が疼いた。
気がつくと意識が遠くなっていて、最後の記憶は鷹臣さんの甘い囁きだけだった。
朝日が窓から差し込んで、カーテンの隙間から光が漏れている。僕はゆっくりと目を開けて、天井を見つめた。
隣には誰もいなかった。鷹臣さんの気配がなくて、布団だけが僕の身体を包んでいる。
身体を動かすと、全身が痛かった。腰が重くて、太腿の内側がヒリヒリする。下腹部に鈍い痛みがあって、起き上がるのも辛い。
久しぶりに身体中にキスマークがついていた。胸に、腹に、太腿に。鷹臣さんの痕跡が残っていて、恥ずかしさで顔が熱くなる。
時計を見て、真っ青になった。
(やばい……!)
弟の登校時間が迫っている。朝食の用意をしていない。
僕は慌てて身体を起こした。気だるい身体を無理やり動かして、鷹臣さんのシャツを借りて着ると、寝室を飛び出した。
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