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第二章;初めてのヒート
抑制剤の効かない身体
廊下に出て、先生の部屋の扉の前に立った。深く息を吸い、ノックをする。
「先生、入ってもいいですか」
「どうぞ」
低い声が聞こえた。扉を開けて、中に入る。
(――っ!)
部屋に入った瞬間、身体が震えた。
先生の冬の森のような、冷たく鋭い香りが部屋中に充満している。今までにも先生の匂いはしていたのに、今はやけに過敏に反応してしまう。肌が粟立ち、全身が熱を帯びる。
広い部屋だった。中央に大きなベッドがあり、天蓋が吊るされている。深紅のカーテンが垂れ下がり、ベッドを包み込んでいた。窓からは夜空が見え、月明かりが差し込んでいる。本棚が壁一面に並び、医学書が詰まっていた。暖炉に火が灯り、部屋を温かく照らしている。
(――これってもしかして、ヒート?)
身体の異変に、寒気のこない微熱、首筋の疼き。敏感になった肌のすべてがヒートの症状だと、訴えている。
(先生の家で、初めてのヒートを迎えるなんて)
「診察台がないから、そこに横になってくれる?」
先生が示したのは――ベッドだった。
僕はゆっくりと歩き、ベッドに近づいた。深紅のカーテンが揺れ、ベッドが目の前に広がる。
ベッドに腰を下ろした。柔らかい感触が腰に伝わる。横になると背中がシーツに沈み込み、枕に頭を預けた。
先生の匂いが、一気に押し寄せてきた。
枕から立ち上る香りが大好きなラインハルト先生の匂い。冷たく、鋭く、でもどこか温かい。冬の森で、雪が降り積もる音を聞いているような。静かで、清らかで、美しい。
(これは――無理)
身体が、勝手に反応する。下腹部が熱くて、痛くて。奥の方が――疼いて。何かが欲しい。満たされたい。
先生に触れてほしい。
「んっ……」
声が漏れた。先生のシーツに包まれて、先生の香りを吸い込んで。それだけで――身体が震える。熱が下腹部に集まっていく。
「リエル?」
先生の声が遠い。視界が霞み、身体が、勝手に――震え出した。
「あ、ああっ……!」
スボンの下で、僕は白濁の液を吐き出した。
先生の香りだけで。何も触れられていないのに。ただ、ベッドに横になっただけなのに。下着が濡れ、熱い液体が溢れ出てくる。身体が痙攣し、快楽が波のように押し寄せる。
(恥ずかしい)
こんなの――恥ずかしすぎる。
でも、止められない。身体が、もっと欲しがっている。もっと――先生を。
「――ヒートか」
先生の声が、低く掠れた。
目を開けると、先生が僕を見下ろしていた。氷のような青い瞳が――揺れている。まるでルナを見るときと同じような冷たさを感じた。
「先生……なにこれ……怖い」
震える声で言った。自分の身体が、自分のものじゃないみたいだ。意識があるのに、身体が勝手に動く。欲望が溢れ出て、止められない。
「大丈夫。すぐに楽にするから」
先生が近づいてきた。香りが、もっと濃くなる。先生の体温。先生の息遣い。すべてが僕を刺激する。理性が――溶けていく。
先生が医療鞄から小瓶を取り出した。透明な液体が入っている。抑制剤だろう。先生は小瓶の蓋を開け、中身を口に含んだ。
(……え?)
注射じゃないの? ルナには押さえつけて注射を打っていたのに。どうして僕のときは――?
先生が僕の顔に手を添えた。大きく、温かい手。頬を包み込む。顔が近づいてくる。白銀の髪が視界を覆い、青い瞳が僕を捉える。
唇が、重なった。
キス――。
先生とキスしてる。
なんで薬を飲ませるのにキスなの? 初めて、先生の唇に触れた。柔らかくて、温かい。先生の舌が僕の唇をなぞり、口を開けるように促してくる。口を開くと、舌が侵入してきた。薬の苦味と、先生の味が混ざり合う。
舌が絡み合う。先生の舌が僕の口内を探り、薬を喉の奥へと押し込んでくる。甘い声が漏れた。もっと深く。もっと激しく。僕は先生の首に腕を回し、キスを求めた。
先生の手が僕の腰を抱き、身体を引き寄せる。密着する身体。先生の体温が伝わってくる。
薬が喉に流れ込んだ。苦くて、冷たい。でもキスは止まらない。先生の唇が、何度も僕を貪る。深く、激しく、容赦なく。
また身体が震えた。快楽が押し寄せ、視界が白くなる。
「んんっ……!」
また達してしまった。先生に抱きしめられて、唇を奪われて。それだけで、身体が頂点に達する。
先生が唇を離した。名残惜しく糸を引きながら、唇が離れていった。
「これで、しばらくすれば落ち着くはず」
先生が囁いた。息が荒い。色っぽい声。先生も興奮しているのだろうか。
僕はベッドに横たわったまま、荒い呼吸を繰り返した。身体が熱い。汗が流れ、肌が火照っている。
しばらくすれば身体が楽になると信じて。薬が効いてくるのを待った。
でも――三十分経っても熱が引かない。
身体の火照りは増すばかり。ルナのときは五分くらいで、薬が効いてきたのに。僕の身体はまだ熱いままだ。むしろ熱くなっている。首筋の疼きが激しくなり、下腹部が痛い。
先生が時計を見て、「おかしい」と呟いた。僕の首筋に手を当て、身体の熱を調べる。大きな手が、僕の肌に触れる。
「薬が効いてない?」
先生の眉間に皺が寄った。先生の困惑している顔は初めて見た。
「先生……まだ、熱い」
僕は訴えた。身体が楽になるどころか、熱くなるばかり。意識も朦朧とする。欲しい。先生に触れてほしい。抱いてほしい。中に、欲しい。
(――嫌だ)
これではルナのヒートのときと同じになる。誰でもいいから抱いてと叫ぶような獣になってしまう。あんな姿、先生に見せたくない。
「……怖い」
身体を小さく丸めた。湧き上がる欲望を必死に抑え込んだ。震える手で、寝衣を掴む。
「おかしい。もう薬は効いているはずだ」
先生が僕の額に手を当てた。冷たくて気持ちがいい。
ヒートでおかしくなっていたルナの姿を思い出す。先生に迷惑はかけたくない。あんな冷たい目で、身体を押さえつけられて――なんて僕には耐えられない。先生に嫌われたくない。汚いものを見る目で見られたくない。
荒い呼吸のまま、僕はなんとか起き上がった。先生のベッドから出て行こうとする。足に力が入らなくて、うまく歩けない。ベッドの端に手をついて、立ち上がろうとした。
身体が傾いて、ベッドから転がり落ちてしまった。床に身体を打ちつけ、鈍い痛みが走る。
「リエル! 何をしているんだ」
先生が駆け寄ってきた。
「きっと、もうすぐ薬が効いてくると思うので……僕は自室で休みます」
そう言いながらなんとか、立ち上がろうとした。腕に力を込めるが、立てない。力が入らない。腕の力だけを使って、床を這いながらドアへと向かった。
熱い。
欲しい。
それしか考えられなくなっている。
こんな状態になるのだから、父が城から僕たちを追い出すのはわかる気がする。母の欲望にまみれた姿なんて見たくない。子どもたちに見せたくないから、僕たちを先生に預ける。
先生だってそれがわかっているから、僕たちを受け入れてくれるんだ。
「……ああ、駄目だ」
呟いた瞬間、僕は身体を小さく震わせて痙攣を起こした。ここは先生の匂いが強すぎる。部屋中が先生の香りで満たされていて、呼吸するたびに欲望が増していく。
ルナみたいに「先生、抱いて」なんて言いたくない。
なんとか壁を掴みながら、立ち上がった。ドアを開けようとする。手が震えて、ノブを掴めない。
後ろから抱き上げられた。
「え? ちょ……」
先生の腕が、僕の身体を抱き上げる。軽々と持ち上げられ、再びベッドに運ばれる。
「そんな状態で部屋に行っても、休めない」
先生の声が耳元で響いた。ベッドに下ろされ、シーツの感触が背中に伝わる。先生の匂いが、また押し寄せてくる。
「先生……? 薬、もっと強いのを……」
「駄目だ」
先生は首を横に振った。
「なんで?」
僕の呼吸は浅い。はあはあ、と息が上がってしまう。胸が上下し、心臓が激しく跳ねている。
「初めてのヒートで、いきなり強い薬を身体に入れるほうが毒だ。それに次の服用ができるのは八時間後だ」
「――そんな」
無理だ。八時間もこの状態でいるなんて耐えられない。身体が壊れてしまう。意識が飛んでしまう。
「リエル」
艶っぽい声で名前を呼ばれた。僕が視線を上げると、先生が覆い被さってきていた。優しい手つきで、僕の頬に触れてくる。大きな手が、頬を包み込む。
「……んぅ」
声が上がってしまう。先生の手が、僕の肌を撫でる。薄い寝衣越しに、先生の手の温度が伝わってくる。
太腿に硬いものを感じた。頭だけ持ち上げて、視線を下げる。
(――え?)
先生のズボンが、盛り上がっていた。
(先生が――興奮してる?)
ルナのときは、平然としていたのに。何も反応していなかったのに。
今の先生は、僕のヒートにつられて欲情しているみたいに見えた。ズボン越しに、硬く大きくなっているのがわかる。
「リエル、君の香りが……」
先生の声が震えている。こんな先生、初めて見た。いつもは冷静で、感情を表に出さない先生なのに。でも今は――揺れている。欲望に囚われているように見える。
「先生……お願い……つらい」
涙が溢れた。身体が、もう限界だ。熱くて、痛くて、苦しい。
何かが欲しい。満たされたい。
先生が――青い瞳が、熱を帯びている。氷のような瞳が、炎のように燃えていた。
「……リエル」
いつもと違う、熱のこもった声で呼ばれた。
そして――先生の唇が、再び僕に重なった。
さっきよりも激しく、貪欲に。先生の舌が僕の口内を侵し、隅々まで舐め上げる。甘い声が漏れ、僕は先生にしがみついた。
先生の手が、僕の寝衣を脱がし始めた。ボタンが外され、肌が露わになっていく。冷たい空気が肌に触れ、鳥肌が立つ。
「先生……」
「リエル、痛かったら言ってくれ。できるだけ優しくする」
先生の声が優しかった。大きな手が、僕の身体を愛撫する。胸を撫で、腹を撫で、腰を撫でる。ゆっくりと、丁寧に。僕の身体を確かめるように。
寝衣が完全に脱がされた。下着も剥ぎ取られ、全裸になる。先生の前で、何も纏わない姿を晒して恥ずかしさと、期待が混ざり合う。
先生も服を脱いだ。白いシャツが床に落ち、ズボンが脱がされる。先生の身体が露わになった。鍛えられた身体。引き締まった腹。盛り上がった胸板。そして――大きく反り返った先生の象徴。
大きい。
(あれが、僕の中に入るのか)
恐怖が込み上げてくる。でも、欲望のほうが強かった。欲しい。先生のものが欲しい。中に、欲しい。
先生が僕の足を開いた。膝を立てさせ、間に入り込む。先生の手が、僕の秘所に触れた。
「ここ、もう濡れているね」
先生の指が、蜜口を撫でる。ぬるぬると濡れた場所を、優しく撫でられる。
「あっ……」
声が漏れた。先生の指が、中に入ってくる。一本、二本。ゆっくりと、慎重に。中を探るように動く。
「んっ……ああっ……」
快楽が走る。先生の指が、奥の一点を擦った。そこを触られると、身体が跳ねる。
「ここが気持ちいいのか」
先生が何度も同じ場所を擦ってくる。快楽が波のように押し寄せ、息が荒くなった。
指が三本に増えた。中を広げられ、出し入れされる。ぬちゅぬちゅと水音が響く。恥ずかしい音。でも溢れ出てくる愛液は止められない。
「もう大丈夫そうだね」
先生が指を抜いた。物足りなさが残る。でもすぐに、熱いものが入口に押し当てられた。
先生の象徴が大きく、硬く、熱い。
「入れるよ、リエル」
先生が囁いた。僕は頷いた。
ゆっくりと、押し込まれていく。
「っ……!」
痛い。入口が押し広げられ、鋭い痛みが走る。身体が拒絶しようとする。でも、先生の手が僕の腰を優しく撫でる。
「力を抜いて」
優しい声。僕は深く息を吸い、身体の力を抜いた。
さらに奥へと進んでいく。先生のものが、僕の中を満たしていく。
「ああっ……先生……」
「ごめん、リエル。もう少しだけ」
先生が額にキスを落とした。優しく、慈しむようなキス。
全部、入った。先生のものが、僕の奥まで届いている。繋がっている。先生と、一つになっている。
「動くよ」
先生が腰を引いた。抜けていく感覚。そしてまた押し込まれる。ゆっくりと、優しく。
「あっ、ああっ……」
痛みが徐々に和らいでいく。代わりに、快楽が生まれてきて奥を擦られるたびに、身体が震える。
先生の動きが速さを増していく。腰を掴まれ、深く突き上げられる。奥に何かが当たり、身体が跳ねる。
「ここ、気持ちいい?」
先生が同じ場所を何度も突いてくる。
「あ、ああっ、先生……!」
声が漏れ続ける。恥ずかしい声を止められない。先生が、僕の奥を突いてくる。
「リエル……君、中で締め付けてきてる」
先生の声が掠れた。興奮している声。先生も、気持ちいいのだろうか。
「一緒に、イこう」
先生が僕を抱きしめた。密着する身体。先生の体温。先生の鼓動。すべてが伝わってくる。
激しく突き上げられ、奥を何度も擦られる。
「先生、イク……イっちゃう……!」
「ああ、私も……!」
先生が奥で止まった。熱いものが注がれる感覚があった。先生のが、僕の中で溢れてくる。温かくて、濃いものが。
僕も視界が白くなり、全身が痙攣する。
(気持ちいいっ)
先生が僕を抱きしめたまま、キスを落としてくる。
ヒートの熱が、かなり楽になった。身体の火照りが引いていく。苦しかった呼吸が、落ち着いていく。先生の中に注がれたものが、僕の熱を冷ましてくれるようだった。
「先生、入ってもいいですか」
「どうぞ」
低い声が聞こえた。扉を開けて、中に入る。
(――っ!)
部屋に入った瞬間、身体が震えた。
先生の冬の森のような、冷たく鋭い香りが部屋中に充満している。今までにも先生の匂いはしていたのに、今はやけに過敏に反応してしまう。肌が粟立ち、全身が熱を帯びる。
広い部屋だった。中央に大きなベッドがあり、天蓋が吊るされている。深紅のカーテンが垂れ下がり、ベッドを包み込んでいた。窓からは夜空が見え、月明かりが差し込んでいる。本棚が壁一面に並び、医学書が詰まっていた。暖炉に火が灯り、部屋を温かく照らしている。
(――これってもしかして、ヒート?)
身体の異変に、寒気のこない微熱、首筋の疼き。敏感になった肌のすべてがヒートの症状だと、訴えている。
(先生の家で、初めてのヒートを迎えるなんて)
「診察台がないから、そこに横になってくれる?」
先生が示したのは――ベッドだった。
僕はゆっくりと歩き、ベッドに近づいた。深紅のカーテンが揺れ、ベッドが目の前に広がる。
ベッドに腰を下ろした。柔らかい感触が腰に伝わる。横になると背中がシーツに沈み込み、枕に頭を預けた。
先生の匂いが、一気に押し寄せてきた。
枕から立ち上る香りが大好きなラインハルト先生の匂い。冷たく、鋭く、でもどこか温かい。冬の森で、雪が降り積もる音を聞いているような。静かで、清らかで、美しい。
(これは――無理)
身体が、勝手に反応する。下腹部が熱くて、痛くて。奥の方が――疼いて。何かが欲しい。満たされたい。
先生に触れてほしい。
「んっ……」
声が漏れた。先生のシーツに包まれて、先生の香りを吸い込んで。それだけで――身体が震える。熱が下腹部に集まっていく。
「リエル?」
先生の声が遠い。視界が霞み、身体が、勝手に――震え出した。
「あ、ああっ……!」
スボンの下で、僕は白濁の液を吐き出した。
先生の香りだけで。何も触れられていないのに。ただ、ベッドに横になっただけなのに。下着が濡れ、熱い液体が溢れ出てくる。身体が痙攣し、快楽が波のように押し寄せる。
(恥ずかしい)
こんなの――恥ずかしすぎる。
でも、止められない。身体が、もっと欲しがっている。もっと――先生を。
「――ヒートか」
先生の声が、低く掠れた。
目を開けると、先生が僕を見下ろしていた。氷のような青い瞳が――揺れている。まるでルナを見るときと同じような冷たさを感じた。
「先生……なにこれ……怖い」
震える声で言った。自分の身体が、自分のものじゃないみたいだ。意識があるのに、身体が勝手に動く。欲望が溢れ出て、止められない。
「大丈夫。すぐに楽にするから」
先生が近づいてきた。香りが、もっと濃くなる。先生の体温。先生の息遣い。すべてが僕を刺激する。理性が――溶けていく。
先生が医療鞄から小瓶を取り出した。透明な液体が入っている。抑制剤だろう。先生は小瓶の蓋を開け、中身を口に含んだ。
(……え?)
注射じゃないの? ルナには押さえつけて注射を打っていたのに。どうして僕のときは――?
先生が僕の顔に手を添えた。大きく、温かい手。頬を包み込む。顔が近づいてくる。白銀の髪が視界を覆い、青い瞳が僕を捉える。
唇が、重なった。
キス――。
先生とキスしてる。
なんで薬を飲ませるのにキスなの? 初めて、先生の唇に触れた。柔らかくて、温かい。先生の舌が僕の唇をなぞり、口を開けるように促してくる。口を開くと、舌が侵入してきた。薬の苦味と、先生の味が混ざり合う。
舌が絡み合う。先生の舌が僕の口内を探り、薬を喉の奥へと押し込んでくる。甘い声が漏れた。もっと深く。もっと激しく。僕は先生の首に腕を回し、キスを求めた。
先生の手が僕の腰を抱き、身体を引き寄せる。密着する身体。先生の体温が伝わってくる。
薬が喉に流れ込んだ。苦くて、冷たい。でもキスは止まらない。先生の唇が、何度も僕を貪る。深く、激しく、容赦なく。
また身体が震えた。快楽が押し寄せ、視界が白くなる。
「んんっ……!」
また達してしまった。先生に抱きしめられて、唇を奪われて。それだけで、身体が頂点に達する。
先生が唇を離した。名残惜しく糸を引きながら、唇が離れていった。
「これで、しばらくすれば落ち着くはず」
先生が囁いた。息が荒い。色っぽい声。先生も興奮しているのだろうか。
僕はベッドに横たわったまま、荒い呼吸を繰り返した。身体が熱い。汗が流れ、肌が火照っている。
しばらくすれば身体が楽になると信じて。薬が効いてくるのを待った。
でも――三十分経っても熱が引かない。
身体の火照りは増すばかり。ルナのときは五分くらいで、薬が効いてきたのに。僕の身体はまだ熱いままだ。むしろ熱くなっている。首筋の疼きが激しくなり、下腹部が痛い。
先生が時計を見て、「おかしい」と呟いた。僕の首筋に手を当て、身体の熱を調べる。大きな手が、僕の肌に触れる。
「薬が効いてない?」
先生の眉間に皺が寄った。先生の困惑している顔は初めて見た。
「先生……まだ、熱い」
僕は訴えた。身体が楽になるどころか、熱くなるばかり。意識も朦朧とする。欲しい。先生に触れてほしい。抱いてほしい。中に、欲しい。
(――嫌だ)
これではルナのヒートのときと同じになる。誰でもいいから抱いてと叫ぶような獣になってしまう。あんな姿、先生に見せたくない。
「……怖い」
身体を小さく丸めた。湧き上がる欲望を必死に抑え込んだ。震える手で、寝衣を掴む。
「おかしい。もう薬は効いているはずだ」
先生が僕の額に手を当てた。冷たくて気持ちがいい。
ヒートでおかしくなっていたルナの姿を思い出す。先生に迷惑はかけたくない。あんな冷たい目で、身体を押さえつけられて――なんて僕には耐えられない。先生に嫌われたくない。汚いものを見る目で見られたくない。
荒い呼吸のまま、僕はなんとか起き上がった。先生のベッドから出て行こうとする。足に力が入らなくて、うまく歩けない。ベッドの端に手をついて、立ち上がろうとした。
身体が傾いて、ベッドから転がり落ちてしまった。床に身体を打ちつけ、鈍い痛みが走る。
「リエル! 何をしているんだ」
先生が駆け寄ってきた。
「きっと、もうすぐ薬が効いてくると思うので……僕は自室で休みます」
そう言いながらなんとか、立ち上がろうとした。腕に力を込めるが、立てない。力が入らない。腕の力だけを使って、床を這いながらドアへと向かった。
熱い。
欲しい。
それしか考えられなくなっている。
こんな状態になるのだから、父が城から僕たちを追い出すのはわかる気がする。母の欲望にまみれた姿なんて見たくない。子どもたちに見せたくないから、僕たちを先生に預ける。
先生だってそれがわかっているから、僕たちを受け入れてくれるんだ。
「……ああ、駄目だ」
呟いた瞬間、僕は身体を小さく震わせて痙攣を起こした。ここは先生の匂いが強すぎる。部屋中が先生の香りで満たされていて、呼吸するたびに欲望が増していく。
ルナみたいに「先生、抱いて」なんて言いたくない。
なんとか壁を掴みながら、立ち上がった。ドアを開けようとする。手が震えて、ノブを掴めない。
後ろから抱き上げられた。
「え? ちょ……」
先生の腕が、僕の身体を抱き上げる。軽々と持ち上げられ、再びベッドに運ばれる。
「そんな状態で部屋に行っても、休めない」
先生の声が耳元で響いた。ベッドに下ろされ、シーツの感触が背中に伝わる。先生の匂いが、また押し寄せてくる。
「先生……? 薬、もっと強いのを……」
「駄目だ」
先生は首を横に振った。
「なんで?」
僕の呼吸は浅い。はあはあ、と息が上がってしまう。胸が上下し、心臓が激しく跳ねている。
「初めてのヒートで、いきなり強い薬を身体に入れるほうが毒だ。それに次の服用ができるのは八時間後だ」
「――そんな」
無理だ。八時間もこの状態でいるなんて耐えられない。身体が壊れてしまう。意識が飛んでしまう。
「リエル」
艶っぽい声で名前を呼ばれた。僕が視線を上げると、先生が覆い被さってきていた。優しい手つきで、僕の頬に触れてくる。大きな手が、頬を包み込む。
「……んぅ」
声が上がってしまう。先生の手が、僕の肌を撫でる。薄い寝衣越しに、先生の手の温度が伝わってくる。
太腿に硬いものを感じた。頭だけ持ち上げて、視線を下げる。
(――え?)
先生のズボンが、盛り上がっていた。
(先生が――興奮してる?)
ルナのときは、平然としていたのに。何も反応していなかったのに。
今の先生は、僕のヒートにつられて欲情しているみたいに見えた。ズボン越しに、硬く大きくなっているのがわかる。
「リエル、君の香りが……」
先生の声が震えている。こんな先生、初めて見た。いつもは冷静で、感情を表に出さない先生なのに。でも今は――揺れている。欲望に囚われているように見える。
「先生……お願い……つらい」
涙が溢れた。身体が、もう限界だ。熱くて、痛くて、苦しい。
何かが欲しい。満たされたい。
先生が――青い瞳が、熱を帯びている。氷のような瞳が、炎のように燃えていた。
「……リエル」
いつもと違う、熱のこもった声で呼ばれた。
そして――先生の唇が、再び僕に重なった。
さっきよりも激しく、貪欲に。先生の舌が僕の口内を侵し、隅々まで舐め上げる。甘い声が漏れ、僕は先生にしがみついた。
先生の手が、僕の寝衣を脱がし始めた。ボタンが外され、肌が露わになっていく。冷たい空気が肌に触れ、鳥肌が立つ。
「先生……」
「リエル、痛かったら言ってくれ。できるだけ優しくする」
先生の声が優しかった。大きな手が、僕の身体を愛撫する。胸を撫で、腹を撫で、腰を撫でる。ゆっくりと、丁寧に。僕の身体を確かめるように。
寝衣が完全に脱がされた。下着も剥ぎ取られ、全裸になる。先生の前で、何も纏わない姿を晒して恥ずかしさと、期待が混ざり合う。
先生も服を脱いだ。白いシャツが床に落ち、ズボンが脱がされる。先生の身体が露わになった。鍛えられた身体。引き締まった腹。盛り上がった胸板。そして――大きく反り返った先生の象徴。
大きい。
(あれが、僕の中に入るのか)
恐怖が込み上げてくる。でも、欲望のほうが強かった。欲しい。先生のものが欲しい。中に、欲しい。
先生が僕の足を開いた。膝を立てさせ、間に入り込む。先生の手が、僕の秘所に触れた。
「ここ、もう濡れているね」
先生の指が、蜜口を撫でる。ぬるぬると濡れた場所を、優しく撫でられる。
「あっ……」
声が漏れた。先生の指が、中に入ってくる。一本、二本。ゆっくりと、慎重に。中を探るように動く。
「んっ……ああっ……」
快楽が走る。先生の指が、奥の一点を擦った。そこを触られると、身体が跳ねる。
「ここが気持ちいいのか」
先生が何度も同じ場所を擦ってくる。快楽が波のように押し寄せ、息が荒くなった。
指が三本に増えた。中を広げられ、出し入れされる。ぬちゅぬちゅと水音が響く。恥ずかしい音。でも溢れ出てくる愛液は止められない。
「もう大丈夫そうだね」
先生が指を抜いた。物足りなさが残る。でもすぐに、熱いものが入口に押し当てられた。
先生の象徴が大きく、硬く、熱い。
「入れるよ、リエル」
先生が囁いた。僕は頷いた。
ゆっくりと、押し込まれていく。
「っ……!」
痛い。入口が押し広げられ、鋭い痛みが走る。身体が拒絶しようとする。でも、先生の手が僕の腰を優しく撫でる。
「力を抜いて」
優しい声。僕は深く息を吸い、身体の力を抜いた。
さらに奥へと進んでいく。先生のものが、僕の中を満たしていく。
「ああっ……先生……」
「ごめん、リエル。もう少しだけ」
先生が額にキスを落とした。優しく、慈しむようなキス。
全部、入った。先生のものが、僕の奥まで届いている。繋がっている。先生と、一つになっている。
「動くよ」
先生が腰を引いた。抜けていく感覚。そしてまた押し込まれる。ゆっくりと、優しく。
「あっ、ああっ……」
痛みが徐々に和らいでいく。代わりに、快楽が生まれてきて奥を擦られるたびに、身体が震える。
先生の動きが速さを増していく。腰を掴まれ、深く突き上げられる。奥に何かが当たり、身体が跳ねる。
「ここ、気持ちいい?」
先生が同じ場所を何度も突いてくる。
「あ、ああっ、先生……!」
声が漏れ続ける。恥ずかしい声を止められない。先生が、僕の奥を突いてくる。
「リエル……君、中で締め付けてきてる」
先生の声が掠れた。興奮している声。先生も、気持ちいいのだろうか。
「一緒に、イこう」
先生が僕を抱きしめた。密着する身体。先生の体温。先生の鼓動。すべてが伝わってくる。
激しく突き上げられ、奥を何度も擦られる。
「先生、イク……イっちゃう……!」
「ああ、私も……!」
先生が奥で止まった。熱いものが注がれる感覚があった。先生のが、僕の中で溢れてくる。温かくて、濃いものが。
僕も視界が白くなり、全身が痙攣する。
(気持ちいいっ)
先生が僕を抱きしめたまま、キスを落としてくる。
ヒートの熱が、かなり楽になった。身体の火照りが引いていく。苦しかった呼吸が、落ち着いていく。先生の中に注がれたものが、僕の熱を冷ましてくれるようだった。
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七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
【完結】末っ子オメガ
鉾田 ほこ
BL
「晴にいさま、大好き」
アルファばかりのエリート一家の四人兄弟の末っ子に生まれた 亜季。
思春期の第二性検査を受けるまで、誰もがアルファだと信じて疑っていなかったが、結果は「オメガ」だった。確かに他の息子たちに比べて、身体も小さく、性格もおっとりしていた末っ子オメガ。親戚を含めてアルファばかりで、オメガがいないゆえに扱いがわからない。
だが、はじめは家族の誰一人として末っ子がオメガであることを疎むことなく可愛がっていた。
ある日、転機が訪れる──
末っ子オメガに発情期(ヒート)が訪れ、事故が起こってしまう。それを理由に亜季はひとり家族と離れて暮らすことになった。
そして末っ子は──男娼になって……長男 晴臣と再会する。
すれ違いオメガバース。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!