愛の物語を囁いて

ひなた翠

文字の大きさ
5 / 38
秘密

5

しおりを挟む
「それって、僕を抱きたくないってことですか?」

「俺は十代のガキの人生を狂わすために教師になったわけじゃない。伊坂は俺の失敗を知っているんだろ? なら俺が、この学校でどういう教師になりたいか……わかるだろ」

「それでも僕は、先生に人生を壊されたいって願っているとしたら?」

「俺じゃない他の教師に頼るんだな。俺はもう二度と、あんな想いはごめんだ」

 英先生が、僕に背を向けて歩き出した。

『あんな想い』ってどんな想いをしたのだろう。

 男子生徒に手をだして……勤めていた一流進学校を辞めざるを得なくなった。先生は、その生徒を本気で愛していたのだろうか?

 二人は肉体関係をもち、愛をはぐくみ、そして無理やり引き離されたのだろうか。

 愛は叶わなかった今、先生は教師としての職を真面目にこなそうとしているのだろうか?

 英先生に残されたのは教師という立場だけだから。

 それなら先生を本気にさせた男子生徒に会ってみたいものだ。

 先生とのセックスはすごく気持ち良かったから。その男子生徒だって、先生とのセックスには満足してたはず。

 先生とセックスが出来なくなって、きっと後悔している。

「英先生と、何をしていたんだ!」

 急に背後から声をかけられて、僕は肩が跳ね上がった。

 振り返れば、小暮先生が怖い顔をして立っていた。

「はあ?」と僕は眉を寄せた。

「今、図書室から英くんが出て行った。こんな朝早くから二人きりで何をしていたんだ!」

 小暮先生が僕に近づくと、ガシッと両肩を掴んできた。

「触るなよ!」

 僕は小暮先生の手を払う。

「何をしていたんだ」

「別に何も。なんかするとでも思ってたわけ? 僕の落とした携帯を英先生が届けてくれただけだ」

「携帯?」

「そうだよ。学校内では禁止だから。人目につくところで渡したら、問題になるから。早朝に図書室に来てくれって。ただそれだけだ」

 僕は図書室を出ようとするが、ぐっと小暮先生に腕を掴まれた。

「本当に? それだけ?」

「それ以外に何があるって言うの? ってか、ここは学校だ。父親ヅラすんなって言ってるだろ」

 僕は小暮先生の腕を払おうとするが、力を入れられて全く微動だにしなかった。

「ちょ……教室に戻りたいんだけど」

「瑠衣、無断外泊といい、今の出来事といい……ちょっとおかしいんじゃないのか?」

 僕はドンっと、小暮先生に突き飛ばされ、床に転がされた。

 ガツンと後頭部が床に当たって、世界がクラクラする。

「本当に何も無かったんだな?」

 おかしいよ……こいつ。

 なんで僕が小暮先生に突き飛ばされなくちゃいけないんだ。

 小暮先生が僕の上に馬乗りになると、制服のワイシャツを力いっぱい引っ張った。

 パツン、パツンと糸が切れる音がして、ボタンが飛んでいくのが目の端に映る。

 なんだよ。何すんだよ!

 僕は、手足をバタつかせて抵抗した。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

処理中です...