6 / 38
秘密
6
しおりを挟む
「やめっ……はなせっ」
「小暮先生、何してるんです?」
頭上から喉仏にかかる低い声がした。
顔をあげると、さっき図書室を出て行ったはずの英先生が怖い顔で立っていた。
「は、英先生っ!?」
小暮先生が、パッと僕から離れると喉の奥を鳴らして、意味もなくスーツの皺を直し始めた。
「ちょっと……伊坂君が」
小暮先生が語尾を小さくして言葉を濁した。
切れ長の瞳で英先生が、小暮先生を冷たく見やる。
「今回は英先生に免じて見逃すけど、次回は……」とぼそぼそとバツの悪そうに呟きながら、小暮先生が逃げて行った。
僕は上半身を起こすと、ボタンの取れたワイシャツの襟口をぎゅっと掴んだ。
「な……んで、戻ってきたんだよ」
強がってみる。でも腕が震えてるのが丸わかりだ。
英先生が、フッと笑うとスーツの上着を脱いだ。
「一日体育着ってのは屈辱だろう。周囲の奴らの目は残酷だからな。俺のワイシャツを貸すから、その破れたワイシャツを渡せ。放課後までに直しておいてやる」
今、着ている白ワイシャツを脱ぐと、英先生が僕の頭にかけた。
ふわりと柔軟剤の甘い香りがした。
また先生の上半身を見られるなんて、幸せだと思った。ランニングのシャツを着ているけど、腕の鍛えられた筋肉が綺麗だ。
「先生は……どうするの?」
「替えのワイシャツが更衣室に置いてあるから、それを着る。使用済みのワイシャツで悪いな。替えのワイシャツは白くないんだ。柄物を生徒に着せるわけにはいかない」
「ワイシャツを貸してくれるだけで大感謝だよ」
僕は、破れたワイシャツを脱ぐと、先生が来ていたワイシャツに袖を通した。
ぶかぶかだけど、ブレザーを上から羽織ってしまえばわからない。
今朝の英先生のワイシャツが白で良かった。
じゃなかったら、僕は一日ジャージで過ごし、下校も格好悪いジャージでしなくちゃいけなかったんだから。
「ありがと、先生」
「放課後、職員室に来い。直したワイシャツを渡すから」
「……ごめん、先生」
僕は下を向くと、唇をかみしめた。
生徒想いの先生なのに。僕は卑劣な行為をして、先生を追い詰めようとしていたんだ。
嫌われて当然だし、さっき小暮の行為を見て見ぬふりをすることだって出来たのに。
「言っただろ。俺は十代のガキの人生を狂わすために教師になったわけじゃないって」
英先生がスーツの上着を腕にかけると、僕の破れたワイシャツを持って図書室を出て行った。
下着のランニングシャツにスーツのズボンで校内を歩くなんて。どんな噂が流れるか、わからないじゃないか。
それなのに、僕が一日ジャージで過ごして、他の生徒たちからの噂の的になるよりも、自らが噂の的になるなんて。
僕は、本当に英先生に……酷い命令をしてしまった。
バラされたくないなら、僕を抱け……だなんて。恥ずかしくて、申し訳なくて。
なんて愚かな行いをしてしまったんだろう。
「小暮先生、何してるんです?」
頭上から喉仏にかかる低い声がした。
顔をあげると、さっき図書室を出て行ったはずの英先生が怖い顔で立っていた。
「は、英先生っ!?」
小暮先生が、パッと僕から離れると喉の奥を鳴らして、意味もなくスーツの皺を直し始めた。
「ちょっと……伊坂君が」
小暮先生が語尾を小さくして言葉を濁した。
切れ長の瞳で英先生が、小暮先生を冷たく見やる。
「今回は英先生に免じて見逃すけど、次回は……」とぼそぼそとバツの悪そうに呟きながら、小暮先生が逃げて行った。
僕は上半身を起こすと、ボタンの取れたワイシャツの襟口をぎゅっと掴んだ。
「な……んで、戻ってきたんだよ」
強がってみる。でも腕が震えてるのが丸わかりだ。
英先生が、フッと笑うとスーツの上着を脱いだ。
「一日体育着ってのは屈辱だろう。周囲の奴らの目は残酷だからな。俺のワイシャツを貸すから、その破れたワイシャツを渡せ。放課後までに直しておいてやる」
今、着ている白ワイシャツを脱ぐと、英先生が僕の頭にかけた。
ふわりと柔軟剤の甘い香りがした。
また先生の上半身を見られるなんて、幸せだと思った。ランニングのシャツを着ているけど、腕の鍛えられた筋肉が綺麗だ。
「先生は……どうするの?」
「替えのワイシャツが更衣室に置いてあるから、それを着る。使用済みのワイシャツで悪いな。替えのワイシャツは白くないんだ。柄物を生徒に着せるわけにはいかない」
「ワイシャツを貸してくれるだけで大感謝だよ」
僕は、破れたワイシャツを脱ぐと、先生が来ていたワイシャツに袖を通した。
ぶかぶかだけど、ブレザーを上から羽織ってしまえばわからない。
今朝の英先生のワイシャツが白で良かった。
じゃなかったら、僕は一日ジャージで過ごし、下校も格好悪いジャージでしなくちゃいけなかったんだから。
「ありがと、先生」
「放課後、職員室に来い。直したワイシャツを渡すから」
「……ごめん、先生」
僕は下を向くと、唇をかみしめた。
生徒想いの先生なのに。僕は卑劣な行為をして、先生を追い詰めようとしていたんだ。
嫌われて当然だし、さっき小暮の行為を見て見ぬふりをすることだって出来たのに。
「言っただろ。俺は十代のガキの人生を狂わすために教師になったわけじゃないって」
英先生がスーツの上着を腕にかけると、僕の破れたワイシャツを持って図書室を出て行った。
下着のランニングシャツにスーツのズボンで校内を歩くなんて。どんな噂が流れるか、わからないじゃないか。
それなのに、僕が一日ジャージで過ごして、他の生徒たちからの噂の的になるよりも、自らが噂の的になるなんて。
僕は、本当に英先生に……酷い命令をしてしまった。
バラされたくないなら、僕を抱け……だなんて。恥ずかしくて、申し訳なくて。
なんて愚かな行いをしてしまったんだろう。
0
あなたにおすすめの小説
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる