7 / 38
暴力
7
しおりを挟む
放課後の職員室って、実はあまり好きじゃない。
先生たちが集結してて、何やら難しい話をしている気がする。冷たい空気が、室内を取り巻いて、ただでさえ入りたくないのに、足を踏み入れる気持ちを余計に萎えさせるんだ。
それでも僕は英先生と約束をしたから、職員室に行かないと。
僕のワイシャツを直してくれるって言っていたけれど、先生が授業の合間を見計らって、ボタンつけをしてくれたのだろうか?
僕は恐る恐る職員室の扉をひくと、「失礼します」と足を入れた。
各学年の先生たちが、顔を突き合わせて座っている。
僕は1年生の教師陣の群れを通り過ぎて、2年の教師たちが固まっている机に足を向けた。
そこには顔を見たくない小暮先生もいる。今年は僕の担任じゃないけど、同じ学年の先生だ。
僕の担任は、英先生だ。職員室でいきなり声をかけても、僕の担任だからまわりから不思議な目で見られることもない。
小暮先生だけは、何をどう思ったのかは知らないが。僕と英先生の関係を、疑っているみたいだけど。
「英先生」と僕は小さい声で呼んだ。
何やら小難しい書類に字を書きこんでいた英先生が、顔をあげた。
グレーのワイシャツを着ている。これが更衣室に入れてあった替えのワイシャツだろう。
「伊坂か」と僕の姿を確認した先生が、机の抽斗から綺麗にラッピングされた物を取り出した。
「前に探しているって相談してきただろ? 見つけたから、良かったら使うといい」
周りの人たちに不信がられないように、英先生が気を使ってくれている。
僕はラッピングされた袋を手に取ると、「代金は?」と話を合わせた。
「金額なら袋の中だ。持ち合わせがあるときでいい」
「わかりました。わざわざありがとうございます」
僕は英先生にお辞儀をして、職員室を後にした。
廊下に出ると、ラッピングの袋を少し崩して中身を確認する。僕が今朝、着ていたと思われるワイシャツの襟がちらりと見えた。
その他に、小さなメモ用紙が入っている。僕は指を入れると、その用紙を引っ張り出した。
『繕いものは苦手だ。上手くはないが、ワイシャツは着れるはずだ。俺のワイシャツは伊坂のロッカーに入れておけ。今日、俺が帰宅するときに取っていく。洗濯云々は考えなくて良い。英』
男とは思えないくらいの綺麗な字だった。
黒板に文字を書くとき、読みやすい字だなとは思っていたけど。こうしてメモ用紙に文字を書かれると、さらに綺麗さに拍車がかかっているようだ。
洗濯云々は考えるなって、書いてあるけど。やっぱ考えるでしょ。人様に借りたものは、渡されたときよりも綺麗な状態にして返すのが日本人ってもんだし。
僕は先生からのメモ用紙を制服のポケットに入れた。
英先生には酷いことをしてしまった分、詫びを入れたい。謝ったところで、先生はすぐに「許す」って言うはず。
それは教師だから。生徒のしでかして過ちは、たとえ心が許してなくても、英先生は教師として許してしまうはず。
だから、出来ることをして、先生に態度で示したいって思う。もう僕は、あんなことはしませんって。行動でわかってもらいたい。
僕は少し形の崩れたラッピングの袋をしっかり持つと、教室にむかって廊下を歩きだした。
先生たちが集結してて、何やら難しい話をしている気がする。冷たい空気が、室内を取り巻いて、ただでさえ入りたくないのに、足を踏み入れる気持ちを余計に萎えさせるんだ。
それでも僕は英先生と約束をしたから、職員室に行かないと。
僕のワイシャツを直してくれるって言っていたけれど、先生が授業の合間を見計らって、ボタンつけをしてくれたのだろうか?
僕は恐る恐る職員室の扉をひくと、「失礼します」と足を入れた。
各学年の先生たちが、顔を突き合わせて座っている。
僕は1年生の教師陣の群れを通り過ぎて、2年の教師たちが固まっている机に足を向けた。
そこには顔を見たくない小暮先生もいる。今年は僕の担任じゃないけど、同じ学年の先生だ。
僕の担任は、英先生だ。職員室でいきなり声をかけても、僕の担任だからまわりから不思議な目で見られることもない。
小暮先生だけは、何をどう思ったのかは知らないが。僕と英先生の関係を、疑っているみたいだけど。
「英先生」と僕は小さい声で呼んだ。
何やら小難しい書類に字を書きこんでいた英先生が、顔をあげた。
グレーのワイシャツを着ている。これが更衣室に入れてあった替えのワイシャツだろう。
「伊坂か」と僕の姿を確認した先生が、机の抽斗から綺麗にラッピングされた物を取り出した。
「前に探しているって相談してきただろ? 見つけたから、良かったら使うといい」
周りの人たちに不信がられないように、英先生が気を使ってくれている。
僕はラッピングされた袋を手に取ると、「代金は?」と話を合わせた。
「金額なら袋の中だ。持ち合わせがあるときでいい」
「わかりました。わざわざありがとうございます」
僕は英先生にお辞儀をして、職員室を後にした。
廊下に出ると、ラッピングの袋を少し崩して中身を確認する。僕が今朝、着ていたと思われるワイシャツの襟がちらりと見えた。
その他に、小さなメモ用紙が入っている。僕は指を入れると、その用紙を引っ張り出した。
『繕いものは苦手だ。上手くはないが、ワイシャツは着れるはずだ。俺のワイシャツは伊坂のロッカーに入れておけ。今日、俺が帰宅するときに取っていく。洗濯云々は考えなくて良い。英』
男とは思えないくらいの綺麗な字だった。
黒板に文字を書くとき、読みやすい字だなとは思っていたけど。こうしてメモ用紙に文字を書かれると、さらに綺麗さに拍車がかかっているようだ。
洗濯云々は考えるなって、書いてあるけど。やっぱ考えるでしょ。人様に借りたものは、渡されたときよりも綺麗な状態にして返すのが日本人ってもんだし。
僕は先生からのメモ用紙を制服のポケットに入れた。
英先生には酷いことをしてしまった分、詫びを入れたい。謝ったところで、先生はすぐに「許す」って言うはず。
それは教師だから。生徒のしでかして過ちは、たとえ心が許してなくても、英先生は教師として許してしまうはず。
だから、出来ることをして、先生に態度で示したいって思う。もう僕は、あんなことはしませんって。行動でわかってもらいたい。
僕は少し形の崩れたラッピングの袋をしっかり持つと、教室にむかって廊下を歩きだした。
0
あなたにおすすめの小説
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる