愛の物語を囁いて

ひなた翠

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一線を越える夜

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―惣二郎side―

 伊坂が風呂に入ったのを確認してから、俺は携帯に手を伸ばした。

 小暮先生のアドレスを引き出すと、電話をかけた。

 3回目のコール音で、小暮先生の声が聞こえてきた。

『ああ、英くんか。そろそろ電話がかかってくるころじゃないかと思っていたよ。どうせ、英くんのところに瑠衣がお邪魔しているんだろ?』

 息子同然の子どもの行動はお見通しって言いたそうだ。

 教師になってからいろいろな親を見てきたが、伊坂はあまり親には恵まれてなさそうだ。

 本人は、良い子なんだが。たまに突拍子のないことをするが、きちんと話をすればきちんと解決できる。

「ちょっと酷いんじゃありませんか?」

『瑠衣から話を聞いたのか? だって仕方ないじゃないか』

「仕方ない? 教師たる人間が、そんな言い訳をして許してもらえるとでも思ってるんですか?」

『英くんだって同じようなことをしたんだろ? 前の学校で』

「は?」

 なんだって? なんの話をしているんだ?

 今の話ぶりだと、殴る以外にも伊坂に何かしたってことか。

『英くんが勤めていた学校に知り合いがいてね。聞いたんだよ。君が生徒にしたことを。なんでこの学校に転任してきたかも、ね』

「それと同じことを貴方は、伊坂にしたと?」

 なんて教師だ。生徒に手を出すなんて。信じられない。

『意外と良いもんだね。今夜、瑠衣に奉仕してもらうといいよ。あの子は上手だ』

 あはは、と大声で笑いながら小暮先生が勝手に電話を遮断した。

 俺は携帯を閉じると、「くそっ」とベッドに向かって携帯を投げつけた。

 なんて野郎だ。くそ教師め。

 俺は「はあ」と怒りを鎮めるために、深呼吸をする。テーブルに肘をつくと、前髪をガシガシと掻き毟った。

 殴られただけじゃなかった。伊坂は、小暮にいやらしいことを強要されたんだ。

 どいつもこいつも、最低野郎ばっかだ。嫌になる。


   ◇惣二郎side 終わり◇
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