33 / 38
エスカレートする行為
33
しおりを挟む
『伊坂、ちょっとヅラかせよ!!』
2時間目と3時間目の間の休み時間に、僕は斉藤に教室の外に連れ出された。
教室で僕の目の前にいた真嶋君が、苦虫をかみつぶしたような表情になったのが頭から離れない。
『んじゃ、僕も一緒に……』
『お前はいらん。てか、来んな!! 用があるのは、伊坂だけだ』
僕についてこようとする真嶋君を、斉藤が簡単に突き放していた。僕は、斉藤に首根っこを掴まれて、ズルズルと廊下に連れ出される。
「真嶋君、怒ってるっぽいけど」
ぽい……じゃない。かなり怒っている。ご立腹だ。
今朝、僕は真嶋君に階段から突き落とされた。耳元で、「いい加減、恋心を捨てなよ」って囁かれて。
先生の言うとおり、携帯のアドレスを消して、志望校もかえた。
でも先生を好きな気持ちまでも、消去はできない。学校でしか先生を見られないなら、学校でしっかりと見たい。
学校でしか先生の声が聞けないなら、思い切り学校で聞いておかなくちゃ。
そういう僕の行動が、真嶋君の癪に障っているのはわかっているけど。簡単に、思いを立ちきれるような薄っぺらい感情じゃないんだ。
ズッカズッカと廊下を大股で進んでいく斉藤が、教室からかなり離れた場所で、僕の首から手を話した。
「真嶋が怒ろうが、関係ねえよ。俺は伊坂に用があんだから。てことで、3限はさぼり決定な」
「え、ええ!? ちょっと勝手に決めないでよ。次の授業って……」
英先生の授業なのに。
「大丈夫。英には許可を得ている。てか、英たっての願いだな、これは」
「はい!? 話している意味がよくわからないんだけど」
「ま、いいから俺についてこい。屋上に行こうぜ」
斉藤が目をキラリと光らせて、ズボンのポケットから鍵を取り出した。
「それ……もしかして屋上の鍵!?」
「ああ。英から借りてきた」
斉藤が鍵を手の中に入れると、屋上へと続く階段に足をかけた。
「ほら、伊坂も来いって」
斉藤に手首を掴まれて、僕はまた引っ張られるようにして階段をのぼり始めた。
普段は鍵の閉まっていて開かない屋上への扉。
今日は斉藤の持っている鍵で、いとも簡単に扉が開いた。
「かぁーっ、やっぱ屋上はいいねえ」と斉藤は屋上へ飛び出すと、両手をあげて伸びをする。
青空にポツポツと真っ白い雲が浮かんでいた。
僕は斉藤のあとに続いて、恐る恐る屋上に足を踏み入れた。
「斉藤、英先生から鍵を借りたって話していたけど……」
先生は、斉藤に何を話したのだろう? 何を言ったのだろう。
「英に、伊坂の顔色が悪りぃって話をしたら、この鍵を手渡された。俺がお前の相談相手になれ……ってとさ。俺は、心を開き合うほどの仲じゃねえって、言ったんだけどよ。気がつきゃ、鍵を手に持たされて、英が立ち去ってたよ」
あははは、と豪快に笑った斉藤がフェンスに背をつけて僕を見てきた。
「そ……か」と僕は呟くと、斉藤の隣に立って、フェンスに寄りかかった。
先生、僕は斉藤にどこまで相談していいの?
全部は話せない……だけど、この悶々とした気持ちのやり場を晴らす方法が僕にはわからないよ。
「伊坂、真嶋が嫌いだろ? なんで一緒につるんでるんだ?」
「え?」と僕は目を丸くする。
「嫌いだろ?」と斉藤が、僕の目を見て再度、問いかけてきた。
「あ……うん、まあね。嫌いっていうか、どういう人なのか今いちよくわからない……読めない人かな」
「俺は嫌いだね。ああいう冷ややかなオーラっていうの? 人を見下した態度に、生意気そうでプライドの高そうな眼。最悪。もう顔からして、性格の悪さが滲み出ててさ」
「そこまで言わなくても……中性的な綺麗な顔立ちをしていると思うよ、僕は」
「綺麗!? あれが? お前の眼、イカレてんじゃねえの?」
斉藤が「馬鹿か」と言わんばかりの表情をして、僕の肩をバシッと叩いた。
ふうっと斉藤が息をつくと、いきなりしゃがみこんだ。斉藤は手のひらを開き、中にある鍵に視線を落とした。
「英……きっと、わかってんだろうなあ。伊坂と真嶋の関係にさ。俺の前じゃ、知らない振りを突き通してたけど、こうやって俺に鍵を託したってのが何よりもの証拠だろ。教師だからって、何でもかんでも、仲裁すりゃあいいってわけじゃねえだろうし」
「ん……ごめん」
僕は右手で左手をぎゅっと握りしめた。
「なんでお前が謝るんだよ!」
「なんとなく」
ケタケタっと斉藤が笑って、僕の膝を叩いた。
「しょうがねえなあ。英には世話になってるし、伊坂は意外と可愛いとこあっから、俺がひと肌脱いでやるよ……それに、英に恩を売っておけば、成績あがるかもしんねえしなあ」
「それはないと思うけど……」
斉藤が鍵をポケットにしまうと、ニカッと白い歯を見せて笑った。
「いや、確実に成績はあがる!」
妙な自信に満ちた笑みで斉藤が親指をたてて、大きく頭を振った。
2時間目と3時間目の間の休み時間に、僕は斉藤に教室の外に連れ出された。
教室で僕の目の前にいた真嶋君が、苦虫をかみつぶしたような表情になったのが頭から離れない。
『んじゃ、僕も一緒に……』
『お前はいらん。てか、来んな!! 用があるのは、伊坂だけだ』
僕についてこようとする真嶋君を、斉藤が簡単に突き放していた。僕は、斉藤に首根っこを掴まれて、ズルズルと廊下に連れ出される。
「真嶋君、怒ってるっぽいけど」
ぽい……じゃない。かなり怒っている。ご立腹だ。
今朝、僕は真嶋君に階段から突き落とされた。耳元で、「いい加減、恋心を捨てなよ」って囁かれて。
先生の言うとおり、携帯のアドレスを消して、志望校もかえた。
でも先生を好きな気持ちまでも、消去はできない。学校でしか先生を見られないなら、学校でしっかりと見たい。
学校でしか先生の声が聞けないなら、思い切り学校で聞いておかなくちゃ。
そういう僕の行動が、真嶋君の癪に障っているのはわかっているけど。簡単に、思いを立ちきれるような薄っぺらい感情じゃないんだ。
ズッカズッカと廊下を大股で進んでいく斉藤が、教室からかなり離れた場所で、僕の首から手を話した。
「真嶋が怒ろうが、関係ねえよ。俺は伊坂に用があんだから。てことで、3限はさぼり決定な」
「え、ええ!? ちょっと勝手に決めないでよ。次の授業って……」
英先生の授業なのに。
「大丈夫。英には許可を得ている。てか、英たっての願いだな、これは」
「はい!? 話している意味がよくわからないんだけど」
「ま、いいから俺についてこい。屋上に行こうぜ」
斉藤が目をキラリと光らせて、ズボンのポケットから鍵を取り出した。
「それ……もしかして屋上の鍵!?」
「ああ。英から借りてきた」
斉藤が鍵を手の中に入れると、屋上へと続く階段に足をかけた。
「ほら、伊坂も来いって」
斉藤に手首を掴まれて、僕はまた引っ張られるようにして階段をのぼり始めた。
普段は鍵の閉まっていて開かない屋上への扉。
今日は斉藤の持っている鍵で、いとも簡単に扉が開いた。
「かぁーっ、やっぱ屋上はいいねえ」と斉藤は屋上へ飛び出すと、両手をあげて伸びをする。
青空にポツポツと真っ白い雲が浮かんでいた。
僕は斉藤のあとに続いて、恐る恐る屋上に足を踏み入れた。
「斉藤、英先生から鍵を借りたって話していたけど……」
先生は、斉藤に何を話したのだろう? 何を言ったのだろう。
「英に、伊坂の顔色が悪りぃって話をしたら、この鍵を手渡された。俺がお前の相談相手になれ……ってとさ。俺は、心を開き合うほどの仲じゃねえって、言ったんだけどよ。気がつきゃ、鍵を手に持たされて、英が立ち去ってたよ」
あははは、と豪快に笑った斉藤がフェンスに背をつけて僕を見てきた。
「そ……か」と僕は呟くと、斉藤の隣に立って、フェンスに寄りかかった。
先生、僕は斉藤にどこまで相談していいの?
全部は話せない……だけど、この悶々とした気持ちのやり場を晴らす方法が僕にはわからないよ。
「伊坂、真嶋が嫌いだろ? なんで一緒につるんでるんだ?」
「え?」と僕は目を丸くする。
「嫌いだろ?」と斉藤が、僕の目を見て再度、問いかけてきた。
「あ……うん、まあね。嫌いっていうか、どういう人なのか今いちよくわからない……読めない人かな」
「俺は嫌いだね。ああいう冷ややかなオーラっていうの? 人を見下した態度に、生意気そうでプライドの高そうな眼。最悪。もう顔からして、性格の悪さが滲み出ててさ」
「そこまで言わなくても……中性的な綺麗な顔立ちをしていると思うよ、僕は」
「綺麗!? あれが? お前の眼、イカレてんじゃねえの?」
斉藤が「馬鹿か」と言わんばかりの表情をして、僕の肩をバシッと叩いた。
ふうっと斉藤が息をつくと、いきなりしゃがみこんだ。斉藤は手のひらを開き、中にある鍵に視線を落とした。
「英……きっと、わかってんだろうなあ。伊坂と真嶋の関係にさ。俺の前じゃ、知らない振りを突き通してたけど、こうやって俺に鍵を託したってのが何よりもの証拠だろ。教師だからって、何でもかんでも、仲裁すりゃあいいってわけじゃねえだろうし」
「ん……ごめん」
僕は右手で左手をぎゅっと握りしめた。
「なんでお前が謝るんだよ!」
「なんとなく」
ケタケタっと斉藤が笑って、僕の膝を叩いた。
「しょうがねえなあ。英には世話になってるし、伊坂は意外と可愛いとこあっから、俺がひと肌脱いでやるよ……それに、英に恩を売っておけば、成績あがるかもしんねえしなあ」
「それはないと思うけど……」
斉藤が鍵をポケットにしまうと、ニカッと白い歯を見せて笑った。
「いや、確実に成績はあがる!」
妙な自信に満ちた笑みで斉藤が親指をたてて、大きく頭を振った。
0
あなたにおすすめの小説
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる