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崩れる
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◇惣二郎side◇
放課後、職員室で仕事を始める。今日は会議も部活も入ってないから、ゆっくりと放課後の時間が使えそうだ。
斎藤に伊坂のことを頼んで良かった。想像以上に伊坂を守ってくれてて、ありがたい。
自分で伊坂を守れないのが、悔しいが。
真嶋があんなに脆く、崩れていくなんて。驚きだった。いったい、斎藤は真嶋に何をしたんだ。
「失礼します。伊坂の母です。ご相談がありまして」と職員室の入り口から、かすかに聞こえてきて俺は顔をあげた。
隣に座っている小暮先生も、伊坂の母親の声に反応して体を起こしていた。
小暮先生と伊坂の母親は一緒に暮らしている。小暮先生が驚いた顔をしているということは、母親は今日、学校に行くことを知らせてないのだろうか?
俺は小暮先生に視線を送る。小暮先生も、俺を見てきた。
「何か聞いてますか?」と俺が質問すると、小暮先生が「いや」と首を横に振った。
表情から読み取った通り、小暮先生は何も知らないようだ。
「伊坂さん、どうしたんですか?」と俺よりも先に、小暮先生が席を立った。
去年の担任だ。不自然さはない。俺よりも教師歴は長い。先輩教師として、先に対応している……と見れば、そう見える。
俺はゆっくりと仕事をしたいという気持ちもあり、伊坂の母親に背を向けた。
恋人同士で話し合って、解決できるならそうしてもらったほうが楽だ。
小暮先生なら、親的目線も教師的目線からも話を聞けるだろうし。あ、あと恋人同士目線もか。
俺はボールペンを握ると、書類に目を落とした。
「英先生、伊坂の母親が担任と話したいそうですよ」とポンッと小暮先生に肩に手を置かれた。
俺かよ。
小暮先生じゃないのかよ。
新米教師より、ベテランに相談したほうが解決が早いんじゃねえの?
「そうですか」と俺は、ボールペンをワイシャツの胸ポケットに入れると手帳を持って立ち上がった。
椅子をしまっていると、小暮先生からの視線がきつく感じて、顔を動かした。
「俺、教師ですから。そう簡単にオチません」とボソッと小暮先生に耳打ちして、歩き出した。
恋人、いるし。興味ない。
恋人の母親だぞ。欲情しねえっての。
俺は職員室のドアのところで、立っている伊坂の母親にとって付けたような笑みを送った。
「お待たせしました。あちらの応接室でお話をうかがいます」と職員室の斜め前にある応接室に手を差し出した。
「学校でのあの子の様子、いかがですか?」と椅子に座るなり、机においてある俺の手を握りしめてきた。
そういうこと、か。
小暮先生が不安がるのもわかる。
服装も三者面談のときよりも過激になってるしなあ。
ジャケットで隠しておいて、ここでお披露目。それなら小暮先生の嫉妬は免れると……。
スカートの丈を見れば、だいたいわかるだろ、って突っ込みたいが。
「学校での伊坂ですか?」と言いながら、俺は伊坂の母親からの手を外した。
ボールペンを胸ポケットから出して、手帳を広げて真っ新なメモ帳部分を開いた。
「志望校も決まって、それに向けて勉学に励んでいるように見えますよ。休み時間も、友人と楽しく談笑してましたし、問題はないかと思います」
真嶋を除けば、ね。
「あの子、学校の帰りが遅いんです」
ま、そうだろうな。
去年の担任が帰ってくるであろう家になんて、早く帰りたいなんて思わないだろ。
思春期だぞ。遅くても毎日、きちんと帰っているほうがスゴイだろ、と思うが。
家庭の事情を丸々知っているとは、思ってないだろうからなあ。
まさか小暮先生と同棲しているところまで把握しているとは、知らないだろうなあ。
「志望校が決まってから、放課後は教室で勉強している姿を何度か見てます。それで帰るのが遅くなっているんじゃありませんか? 家だと集中しにくいっていう生徒はいます。学校のほうが集中しやすい、って」
「それならいいんですけど」
伊坂の母親が前のめりになって、また俺の手を握ってきた。
胸の谷間攻撃ね。
こうやって小暮先生は落ちていったわけ、か。
「痣が……日に日にひどくなっていってるんです。ワイシャツに血がついてることもあるし」
「え?」
それは……俺は知らない。
真嶋、か。
精神的に追いつめるだけではなくて、伊坂に暴力を?
放課後、職員室で仕事を始める。今日は会議も部活も入ってないから、ゆっくりと放課後の時間が使えそうだ。
斎藤に伊坂のことを頼んで良かった。想像以上に伊坂を守ってくれてて、ありがたい。
自分で伊坂を守れないのが、悔しいが。
真嶋があんなに脆く、崩れていくなんて。驚きだった。いったい、斎藤は真嶋に何をしたんだ。
「失礼します。伊坂の母です。ご相談がありまして」と職員室の入り口から、かすかに聞こえてきて俺は顔をあげた。
隣に座っている小暮先生も、伊坂の母親の声に反応して体を起こしていた。
小暮先生と伊坂の母親は一緒に暮らしている。小暮先生が驚いた顔をしているということは、母親は今日、学校に行くことを知らせてないのだろうか?
俺は小暮先生に視線を送る。小暮先生も、俺を見てきた。
「何か聞いてますか?」と俺が質問すると、小暮先生が「いや」と首を横に振った。
表情から読み取った通り、小暮先生は何も知らないようだ。
「伊坂さん、どうしたんですか?」と俺よりも先に、小暮先生が席を立った。
去年の担任だ。不自然さはない。俺よりも教師歴は長い。先輩教師として、先に対応している……と見れば、そう見える。
俺はゆっくりと仕事をしたいという気持ちもあり、伊坂の母親に背を向けた。
恋人同士で話し合って、解決できるならそうしてもらったほうが楽だ。
小暮先生なら、親的目線も教師的目線からも話を聞けるだろうし。あ、あと恋人同士目線もか。
俺はボールペンを握ると、書類に目を落とした。
「英先生、伊坂の母親が担任と話したいそうですよ」とポンッと小暮先生に肩に手を置かれた。
俺かよ。
小暮先生じゃないのかよ。
新米教師より、ベテランに相談したほうが解決が早いんじゃねえの?
「そうですか」と俺は、ボールペンをワイシャツの胸ポケットに入れると手帳を持って立ち上がった。
椅子をしまっていると、小暮先生からの視線がきつく感じて、顔を動かした。
「俺、教師ですから。そう簡単にオチません」とボソッと小暮先生に耳打ちして、歩き出した。
恋人、いるし。興味ない。
恋人の母親だぞ。欲情しねえっての。
俺は職員室のドアのところで、立っている伊坂の母親にとって付けたような笑みを送った。
「お待たせしました。あちらの応接室でお話をうかがいます」と職員室の斜め前にある応接室に手を差し出した。
「学校でのあの子の様子、いかがですか?」と椅子に座るなり、机においてある俺の手を握りしめてきた。
そういうこと、か。
小暮先生が不安がるのもわかる。
服装も三者面談のときよりも過激になってるしなあ。
ジャケットで隠しておいて、ここでお披露目。それなら小暮先生の嫉妬は免れると……。
スカートの丈を見れば、だいたいわかるだろ、って突っ込みたいが。
「学校での伊坂ですか?」と言いながら、俺は伊坂の母親からの手を外した。
ボールペンを胸ポケットから出して、手帳を広げて真っ新なメモ帳部分を開いた。
「志望校も決まって、それに向けて勉学に励んでいるように見えますよ。休み時間も、友人と楽しく談笑してましたし、問題はないかと思います」
真嶋を除けば、ね。
「あの子、学校の帰りが遅いんです」
ま、そうだろうな。
去年の担任が帰ってくるであろう家になんて、早く帰りたいなんて思わないだろ。
思春期だぞ。遅くても毎日、きちんと帰っているほうがスゴイだろ、と思うが。
家庭の事情を丸々知っているとは、思ってないだろうからなあ。
まさか小暮先生と同棲しているところまで把握しているとは、知らないだろうなあ。
「志望校が決まってから、放課後は教室で勉強している姿を何度か見てます。それで帰るのが遅くなっているんじゃありませんか? 家だと集中しにくいっていう生徒はいます。学校のほうが集中しやすい、って」
「それならいいんですけど」
伊坂の母親が前のめりになって、また俺の手を握ってきた。
胸の谷間攻撃ね。
こうやって小暮先生は落ちていったわけ、か。
「痣が……日に日にひどくなっていってるんです。ワイシャツに血がついてることもあるし」
「え?」
それは……俺は知らない。
真嶋、か。
精神的に追いつめるだけではなくて、伊坂に暴力を?
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