異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ

文字の大きさ
22 / 67

第22話:感動の親子再会(フェイク)と、最強の偽造工作

しおりを挟む
「いいかい、善さん。設定を復唱しな」

翌日の午後一時。決戦の一時間前。 私たちはサロンのVIPルームで、最終リハーサルを行っていた。

善さんは、鏡が用意したイタリア製の高級スーツ(グレーの落ち着いた色味)に身を包み、髪をオールバックに固めている。 見た目だけは「苦労を乗り越えて成功したイケオジ」だ。中身はガタガタ震える小動物だが。

「は、はい……。僕は……一ノ瀬……じゃなくて小金沢ゼン。十四年前、事業に失敗して多額の借金を背負い、泣く泣く生まれたばかりのヒナを施設に預けました。その後、死に物狂いで働き、借金を完済。最近やっと小さな整体院を開業し、娘を迎えに行く準備が整ったところです……」

「よし。感情をもっと込めな。『娘を捨てた罪悪感』と『再会できた喜び』をミックスさせるんだ」

私は鬼監督のごとく指導する。 この設定なら、私が貧乏だった理由も、最近になって羽振りが良くなった(高級弁当とか食べてる)理由も、すべて説明がつく。

「しかし、オーナー。口裏合わせだけでは弱いです」

鏡がタブレットを操作しながら口を挟む。 彼は今日も完璧な白衣姿だ。

「相手は児童相談所の職員です。疑うのが仕事のような連中です。感動話だけでは、DNA鑑定を要求されて終わりますよ」

「……分かってるよ。だからこそ、あんたがいるんじゃないか」

私はニヤリと笑った。

「鏡先生。あんたの『権威』と、その『悪知恵』。フル活用してもらうよ」

鏡はフッと口元を緩め、鞄から一枚の書類を取り出した。

「抜かりはありません。……これをご覧ください」

それは、K大学病院のロゴが入った、厳重な封筒だった。 中には、複雑な遺伝子配列のデータと、一枚の証明書。

【DNA親子鑑定報告書:判定結果『生物学的な親子関係が存在する確率 99.9999%』】

「……偽造かい?」

「人聞きが悪い。……私の研究室のプリンターが、たまたま『誤作動』を起こして、貴方と板東さんの名前が入った鑑定書を吐き出してしまっただけです」

鏡が涼しい顔で言う。 なんて優秀なプリンターだろうか。

「K大学病院の公印入り、そして担当医は私、鏡恭介の署名入りです。これを疑う児童相談所職員はいません。もし疑うなら、それはK大学病院と医学界全体への挑戦と見なします」

最強の盾だ。この男、味方にすると本当に心強い(そして敵に回すと恐ろしい)。

「よし! 証拠は揃った。あとは演技力だ!」

私は立ち上がり、善さんの背中をバシッと叩いた。

「行くよ、お父さん。感動の涙で、先生たちを溺れさせてやろうじゃないか!」

***

午後二時。中学校の応接室。

空気は重かった。鉛のように重かった。

「……小金沢さん。お父様は、まだですか?」

担任の佐藤先生が、時計を気にしながら尋ねる。 その横には、ハンカチを握りしめて目を赤くした園長先生。 そして正面には、眼鏡をかけた四十代くらいの女性が座っていた。児童相談所の職員、厳島(いつくしま)さんだ。目が笑っていない。完全に「仕事」の目だ。

「……もうすぐ、着くと思います。仕事の合間を抜けてくるので……」

私は小さくなって答える。 頼むよ善さん。遅刻なんてしたら、それだけで「育児放棄の兆候あり」とか書かれるんだからね。

その時。 ノックの音が響いた。

「失礼します……」

ドアが開き、善さんが入ってきた。 その姿を見た瞬間、園長先生が息を呑んだ。

「……あなたが、ヒナちゃんの……?」

善さんは深々と頭を下げた。

「遅くなりまして申し訳ありません。……小金沢、ゼンと申します」

完璧だ。 スーツの着こなし、落ち着いた所作(【精神安定】魔法済み)、そして顔に刻まれた適度なシワが、苦労人の哀愁を醸し出している。

厳島さんが鋭い視線を善さんに向けた。

「……初めまして。児童相談所の厳島です。単刀直入にお伺いしますが、なぜ十四年間も音信不通だったのですか? そしてなぜ今になって、施設を通さずにお子さんと接触したのですか?」

いきなりの尋問。 善さんの一瞬の動揺を見逃さないよう、厳島さんの目が光る。

「……すべては、私の弱さ故です」

善さんは静かに語り始めた。

「借金取りに追われ、今日食べるものもない日々でした。娘を巻き込むわけにはいかなかった……。遠くから見守ることしかできなかったんです」

善さんの声が震える。 これは演技じゃない。実際に借金で苦しみ、家族(妻)に捨てられた実体験がフラッシュバックしているのだ。リアリティが違う。

「最近やっと、借金を返し終えました。でも……今さら『お父さんだ』なんて名乗り出る資格があるのか、怖かった。だから、最初は客として、遠くから見守るつもりで……」

「でも、血は争えませんね」

そこで、私が割って入った。

「私、すぐ分かったの。あ、この人、私のお父さんだって」

私は善さんの手に、自分の手を重ねた。

「だから、私から会いに行ったの。……パパ、もう離れないよね?」

上目遣い。涙目。十四歳(中身八十八歳)の必殺技だ。

園長先生が「うぅっ……」と号泣し始めた。 担任の佐藤先生も、目頭を押さえている。

だが、厳島さんだけは冷静だった。

「……お話は分かりました。ですが、これは行政の手続きです。感情論だけで『はいそうですか』とは言えません」

厳島さんが眼鏡の位置を直した。

「ご本人が父親だと主張されても、客観的な証拠がなければ、不純異性交遊の疑いは晴れません。……DNA鑑定など、血縁を証明できるものはありますか?」

来た。予想通りの展開だ。

善さんが一瞬詰まる。 そこへ、ドアが再びノックされた。

「失礼します。……遅くなりました」

颯爽と入ってきたのは、白衣姿の鏡恭介だった。 その圧倒的な「エリートオーラ」に、場の空気が一変する。

「えっ……? か、鏡先生!?」

厳島さんが椅子から腰を浮かせた。どうやら顔見知りらしい。さすがK大の有名医師だ。

「厳島さん。お久しぶりです。……本日は、小金沢氏の主治医、および身元保証人として同席させていただきました」

鏡は優雅に一礼すると、一枚の封筒をテーブルに置いた。

「これが、先日当院で行った、お二人のDNA鑑定結果です」

厳島さんが震える手で封筒を開け、書類を確認する。 K大学病院のロゴ。99.9999%の文字。そして鏡の署名。

「……こ、これは……」

「間違いなく、親子です。私が医学的見地から保証します」

鏡が断言する。 これに異を唱えられる公務員は、日本中探してもそうはいないだろう。

厳島さんは書類と、善さんと、鏡を交互に見比べ……やがて、深くため息をついた。

「……分かりました。鏡先生がそこまでおっしゃるなら、疑う余地はありません」

厳島さんの表情から、険しさが消えた。

「小金沢さん。……いえ、お父様。大変なご苦労をされたんですね」

勝った。 完全勝利だ。

園長先生が泣きながら善さんの手を取る。 「よかった……本当によかったわぁ……! ヒナちゃんを、よろしくお願いしますね!」

「あ、はい……必ず、幸せにします」

善さんも、安堵と緊張の糸が切れたのか、本気で涙ぐんでいる。 その涙が、さらに周囲の感動を誘う。

こうして、地獄の三者面談は、涙と感動の「親子再会劇」として幕を閉じた。 私は晴れて「父親公認」のもと、整体院(実家)に通うことが許されたのだ。

***

「……疲れた……もう一歩も動けない……」

帰り道。 私たちは鏡の運転する高級車の中で、泥のようにぐったりしていた。

「お疲れ様です、パパ」

私がニヤニヤしながら善さんを呼ぶと、善さんは「勘弁してくださいよぉ……」と情けない声を出した。

「でも、これで堂々とできるわね。あんたの戸籍上の手続きも、鏡が裏で手を回して誤魔化すんでしょ?」

リオが後部座席で足を組みながら言う。

「ええ。五条先生のコネを使えば、戸籍の偽造……いえ、『修正』など造作もありません」

鏡がハンドルを握りながら、涼しい顔で答える。

私は窓の外を眺めた。 これで、学校も、児童相談所もクリアした。 私を縛る鎖は、もう何もない。

「……さあ、邪魔者は消えたよ」

私は拳を握りしめた。

「次は、いよいよ世界進出だ。日本の富裕層だけじゃ物足りない。海外のセレブたちからも、外貨を毟り取ってやるよ!」

善さんが「ええ……まだやるんですかぁ……」と遠い目をしているが、無視だ。 私の野望は、止まらない。

だが。 私はまだ知らなかった。 この「偽装親子」という設定が、後に私の恋愛事情(もちろん皆無だが)や、善さんの私生活に、とんでもない誤解とカオスを招くことになるなんて。

次回、「パパ活疑惑の次は、隠し子疑惑!? 善さん、モテ期到来(ただし修羅場)」 お楽しみに!
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

ヤンデレ女神と征く開拓スローライフ。

山椒
ファンタジー
両親に、友達に、恋人に、嫁に裏切られ続けた男、神室千照は絶望して自ら命を絶った。 すべてが終わるという安堵感であったが次に目覚めた時には女神が目の前にいた。 千照のことをずっと見ていた女神、アマテラスは千照に異世界転生を提案する。 まだ人生に未練があった千照はそれを受け入れ、二度目の人生を送ることになる。 だが千照は知らなかった。千照にはとてつもない才能が秘められていることを。 千照は知らなかった。アマテラスがヤンデレであることを。 千照は知らなかった。彼を裏切らないものはとてつもない人格の持ち主であることを。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...