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第28話:視聴率50%超え!? 生放送で奇跡を起こせ
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「……吐きそうです。いや、もう吐いていいですか?」
都内某所の超高級ホテル、大会議場。 その控室で、善さんが青い顔をしてゴミ箱を抱えていた。 無理もない。壁のモニターには、会場の様子が映し出されている。数百人の記者、無数のテレビカメラ、そしてネット生中継の同時接続数は既に百万人を超えている。
「ダメだよ。そのイタリア製スーツはレンタルなんだ。汚したら買い取りだよ」
私はパイプ椅子に座り、コンビニで買ってきた大福を頬張りながら言った。 手には、砂漠のダンジョンで手に入れた【世界樹の杖】。ただし、見た目はただの「古びた木の棒」に擬態させてある。傍から見れば、おじいちゃんの肩たたき棒にしか見えないだろう。
「しかし、オーナー。本当にやるんですか? 『台本なし』のガチンコ勝負なんて」
鏡がモニターを見ながら眼鏡の位置を直す。彼もまた、今日は「顧問弁護士兼医師」として登壇する予定だ。
「台本なんてあると、逆に嘘くさくなるのさ。リアリティショーってのは、ハプニングこそが飯の種だよ」
私はニヤリと笑った。
「それに、今の世論は『板東=詐欺師』で固まってる。これをひっくり返すには、小手先の弁明じゃ足りない。……『奇跡』を目の前で見せるしかないんだよ」
「奇跡、ですか。……科学者としては胃が痛い言葉ですが」
鏡は苦笑したが、その目は楽しそうだった。彼もまた、共犯者としてのスリルを楽しんでいる節がある。
「時間だ。行くよ、パパ」
私は善さんの背中を、【世界樹の杖】(木の棒)の先端でグイッと強く押した。 自分には身体強化の魔法がかけられないからね。物理的な痛みで気合を入れるしかないのさ。
「ひでぶっ!?」
変な声を上げて立ち上がる善さん。 さあ、開演だ。
***
会場に入った瞬間、フラッシュの嵐が視界を埋め尽くした。
「板東さん! こっち向いてください!」 「詐欺疑惑について一言!」 「土下座する準備はできていますかー!?」
記者たちの怒号が飛び交う。完全に「吊し上げ」の空気だ。 最前列には、あの『週刊真実』の蝮田が、勝ち誇った顔で陣取っている。彼の鼻には、昨日私が転ばせた時の怪我か、絆創膏が貼られていた。
善さんが席に着くと、会場のボルテージは最高潮に達した。
「静粛に願います」
司会進行役の鏡が、冷徹な声でマイクを通した。
「これより、株式会社コガネ代表、板東善次郎による記者会見を行います。質問のある方は挙手を」
「はいはいはい!!」
真っ先に手を挙げたのは、当然、蝮田だ。
「週刊真実の蝮田です! 板東さん、あなたは石油王の娘を治したと言っていますが、医学的根拠はあるんですか? 現地では『怪しい儀式』を行っていたという証言もありますが!」
蝮田がニヤニヤしながら質問する。 ネットのコメント欄も荒れ放題だ。 『詐欺師乙』『逮捕秒読み』『早く謝れ』
善さんはマイクを握りしめ、震える声で……しかし、必死に私に言われた通りのセリフを紡いだ。
「……医学的根拠は、ありません」
会場がざわつく。 『認めたぞ!』『やっぱり詐欺だ!』
「ですが……結果はあります。アミーラ様は完治しました。それは事実です」
「ハッ! 結果なんてどうとでも捏造できるでしょう!」
蝮田が鼻で笑った。
「そこで今日は、専門家をお呼びしています! ……どうぞ!」
蝮田の合図で、舞台袖から車椅子に乗った老人が現れた。 会場がどよめく。
「あ、あれは……大御所評論家の、佐伯(さえき)剛造氏!?」
「『昭和のご意見番』かよ! まだ生きてたのか!」
佐伯剛造。八十歳。 かつては政界や芸能界のご意見番としてテレビで暴れまわっていたが、数年前に脳梗塞で倒れ、左半身麻痺となり引退していたはずの大物だ。 毒舌と頑固さで知られ、特に「オカルト」や「新興宗教」を徹底的に叩くことで有名な人物だ。
(……へぇ。蝮田のやつ、面倒なのを連れてきたねぇ)
私は舞台袖(助手の定位置)から、その様子を見ていた。
佐伯氏は車椅子の上から、歪んだ口元で善さんを睨みつけた。
「……板東、とか言ったな。ワシはな、貴様のようなインチキが一番嫌いなんだ。人の弱みにつけ込み、金を巻き上げるハイエナめ」
マイクを通さなくても響くようなダミ声。
「ワシのこの左足と左腕。リハビリをしても全く動かん。現代医学でもサジを投げられた。……貴様、これを治せるか? もし治せるなら、ワシが土下座して謝ってやる。だが治せなければ……この場で廃業を宣言しろ!!」
蝮田がガッツポーズをする。 「どうですか、板東さん! この挑戦、受けますよねぇ!?」
完全な罠だ。 治せなければ詐欺師確定。治せたとしても「仕込み」だと言われるリスクもある。 だが、相手は国民的知名度を持つ頑固ジジイだ。彼が認めれば、効果は絶大だ。
善さんが、助けを求めるようにチラリと私を見た。
私は、手にした【世界樹の杖】(木の棒)で、床をトンと突いた。 GOサインだ。
善さんは覚悟を決めたように立ち上がった。
「……分かりました。その挑戦、お受けします」
会場がどよめき、フラッシュが一斉に焚かれる。 ネット掲示板が加速する。 『うわ、受けたよコイツ』『無理だろ』『放送事故確定』
善さんは佐伯氏の前に歩み寄った。
「……触れても、よろしいですか?」
「フン。好きにしろ。どうせ何も変わりはせん」
佐伯氏が吐き捨てる。
善さんは、佐伯氏の動かない左足に手を置いた。
さあ、ショータイムだ。 私はポケットの中の杖を握りしめ、魔力を練り上げた。 今までの「こっそり魔法」じゃない。 今日はカメラの前だ。派手に、かつ「気功」っぽく見せかける必要がある。
(……ターゲット、頑固ジジイの脳神経。詰まった血栓を溶解、神経回路をバイパス接続。――出力、120%!)
(――術式展開。【神経再生(ニューロ・リンケージ)】+【視覚効果(オーラ・エフェクト)】!)
私の杖から放たれた魔力が、善さんの体を通り、その手から金色の光となって溢れ出した。
「なっ……!?」
会場の誰かが声を上げた。 カメラのレンズ越しにもはっきりと分かるほど、善さんの手がぼんやりと発光している。 それは佐伯氏の足へと吸い込まれていく。
「……ぬ、おおぉ……!?」
佐伯氏が呻き声を上げた。 ピクリ。 動くはずのない左足の爪先が、跳ねた。
「お、おい! 今動いたぞ!」 「マジかよ!?」
「……熱い! 足が……燃えるように熱い!」
佐伯氏が叫ぶ。 私はさらに魔力を注ぎ込む。中東で手に入れた杖のおかげで、魔力の通りが段違いに良い。まるでホースから放水するように魔力が流れていく。
「善さん! 今だ! 『立て』と言え!」
私は念話で叫んだ。
善さんは汗だくになりながら、佐伯氏の手を取った。
「……佐伯さん。立ってください。あなたの足は、もう動く!」
「ば、馬鹿な……ワシは三年も車椅子で……」
「立てます! 自分の力を信じて!」
善さんが引っ張り上げる。
佐伯氏は、恐る恐る重心を左足にかけた。 いつもなら崩れ落ちるはずの足が。 床を、踏みしめた。
「……っ!!」
会場が静まり返る。 シャッター音すら消えた。
佐伯剛造は、善さんの手を借りながら、ゆっくりと、しかし確実に、車椅子から立ち上がった。
「……立った……。ワシが……立っておる……?」
佐伯氏は涙目で自分の足を見下ろした。 そして、恐る恐る一歩を踏み出した。 二歩。三歩。
「おおおおぉぉぉ!! 歩ける! 歩けるぞぉぉぉ!!」
佐伯氏の絶叫が、マイクを通して会場中に響き渡った。
ドッッッッ!!
会場が爆発したような騒ぎになった。 「うおおおおお!」「マジかよ!」「奇跡だ!」「放送事故じゃねえ、歴史的瞬間だ!」
ネットのコメント欄が止まらない。流れる速度が速すぎて読めないほどだ。 『神降臨』『ゴッドハンド!』『いくら払えば診てもらえるんだ!?』『ごめんなさい疑ってました』
「な、な、な……」
蝮田は、口をパクパクさせて腰を抜かしていた。 自分の用意した最強の刺客が、敵の宣伝マンになってしまったのだから。
佐伯氏は、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、善さんの手を両手で握りしめた。
「……すまん! ワシが間違っておった! 貴様は……いや、先生は、本物だ! 詐欺師などと言ってすまなかったぁぁ!!」
頑固ジジイの公開土下座。 これ以上の宣伝効果はない。
善さんは、聖人のような微笑み(中身は疲労困憊)で、佐伯氏の肩を抱いた。
「頭を上げてください。私はただ、あなたの『歩きたい』という強い意志をお手伝いしただけですから」
完璧だ、善さん。アカデミー賞モノだよ。
私は舞台袖で、ガッツポーズをした。 これで逆転勝利だ。 詐欺疑惑は消し飛び、代わりに「伝説」が生まれた。 明日からの予約電話はパンクするだろう。入会金の三百万? いや、五百万に値上げしても行列ができるね。
「……ふふっ。チョロいもんだねぇ」
私は残りの大福を口に放り込んだ。
だが。 光が強くなれば、闇もまた濃くなる。
テレビ中継を見ていたのは、一般人だけではなかった。
とある大学の研究室。 薄暗い部屋で、モニターを見つめる一人の男がいた。 白衣を着たその男は、善さんの手から溢れた「光」を、コマ送りにして解析していた。
「……この波長。……生体エネルギー(気)ではない」
男は、狂気じみた笑みを浮かべた。
「……魔力(マナ)だ。間違いない。……見つけたぞ、『サンプル』を」
男の背後には、ホルマリン漬けにされた奇妙な生物や、古びた魔道書のようなものが散乱していた。
私の知らないところで、新たな、そして科学とオカルトが融合した最悪の敵が、動き出そうとしていた。
次回、「科学者の狂気! 狙われたヒナと、奪われた杖」 お楽しみに!
都内某所の超高級ホテル、大会議場。 その控室で、善さんが青い顔をしてゴミ箱を抱えていた。 無理もない。壁のモニターには、会場の様子が映し出されている。数百人の記者、無数のテレビカメラ、そしてネット生中継の同時接続数は既に百万人を超えている。
「ダメだよ。そのイタリア製スーツはレンタルなんだ。汚したら買い取りだよ」
私はパイプ椅子に座り、コンビニで買ってきた大福を頬張りながら言った。 手には、砂漠のダンジョンで手に入れた【世界樹の杖】。ただし、見た目はただの「古びた木の棒」に擬態させてある。傍から見れば、おじいちゃんの肩たたき棒にしか見えないだろう。
「しかし、オーナー。本当にやるんですか? 『台本なし』のガチンコ勝負なんて」
鏡がモニターを見ながら眼鏡の位置を直す。彼もまた、今日は「顧問弁護士兼医師」として登壇する予定だ。
「台本なんてあると、逆に嘘くさくなるのさ。リアリティショーってのは、ハプニングこそが飯の種だよ」
私はニヤリと笑った。
「それに、今の世論は『板東=詐欺師』で固まってる。これをひっくり返すには、小手先の弁明じゃ足りない。……『奇跡』を目の前で見せるしかないんだよ」
「奇跡、ですか。……科学者としては胃が痛い言葉ですが」
鏡は苦笑したが、その目は楽しそうだった。彼もまた、共犯者としてのスリルを楽しんでいる節がある。
「時間だ。行くよ、パパ」
私は善さんの背中を、【世界樹の杖】(木の棒)の先端でグイッと強く押した。 自分には身体強化の魔法がかけられないからね。物理的な痛みで気合を入れるしかないのさ。
「ひでぶっ!?」
変な声を上げて立ち上がる善さん。 さあ、開演だ。
***
会場に入った瞬間、フラッシュの嵐が視界を埋め尽くした。
「板東さん! こっち向いてください!」 「詐欺疑惑について一言!」 「土下座する準備はできていますかー!?」
記者たちの怒号が飛び交う。完全に「吊し上げ」の空気だ。 最前列には、あの『週刊真実』の蝮田が、勝ち誇った顔で陣取っている。彼の鼻には、昨日私が転ばせた時の怪我か、絆創膏が貼られていた。
善さんが席に着くと、会場のボルテージは最高潮に達した。
「静粛に願います」
司会進行役の鏡が、冷徹な声でマイクを通した。
「これより、株式会社コガネ代表、板東善次郎による記者会見を行います。質問のある方は挙手を」
「はいはいはい!!」
真っ先に手を挙げたのは、当然、蝮田だ。
「週刊真実の蝮田です! 板東さん、あなたは石油王の娘を治したと言っていますが、医学的根拠はあるんですか? 現地では『怪しい儀式』を行っていたという証言もありますが!」
蝮田がニヤニヤしながら質問する。 ネットのコメント欄も荒れ放題だ。 『詐欺師乙』『逮捕秒読み』『早く謝れ』
善さんはマイクを握りしめ、震える声で……しかし、必死に私に言われた通りのセリフを紡いだ。
「……医学的根拠は、ありません」
会場がざわつく。 『認めたぞ!』『やっぱり詐欺だ!』
「ですが……結果はあります。アミーラ様は完治しました。それは事実です」
「ハッ! 結果なんてどうとでも捏造できるでしょう!」
蝮田が鼻で笑った。
「そこで今日は、専門家をお呼びしています! ……どうぞ!」
蝮田の合図で、舞台袖から車椅子に乗った老人が現れた。 会場がどよめく。
「あ、あれは……大御所評論家の、佐伯(さえき)剛造氏!?」
「『昭和のご意見番』かよ! まだ生きてたのか!」
佐伯剛造。八十歳。 かつては政界や芸能界のご意見番としてテレビで暴れまわっていたが、数年前に脳梗塞で倒れ、左半身麻痺となり引退していたはずの大物だ。 毒舌と頑固さで知られ、特に「オカルト」や「新興宗教」を徹底的に叩くことで有名な人物だ。
(……へぇ。蝮田のやつ、面倒なのを連れてきたねぇ)
私は舞台袖(助手の定位置)から、その様子を見ていた。
佐伯氏は車椅子の上から、歪んだ口元で善さんを睨みつけた。
「……板東、とか言ったな。ワシはな、貴様のようなインチキが一番嫌いなんだ。人の弱みにつけ込み、金を巻き上げるハイエナめ」
マイクを通さなくても響くようなダミ声。
「ワシのこの左足と左腕。リハビリをしても全く動かん。現代医学でもサジを投げられた。……貴様、これを治せるか? もし治せるなら、ワシが土下座して謝ってやる。だが治せなければ……この場で廃業を宣言しろ!!」
蝮田がガッツポーズをする。 「どうですか、板東さん! この挑戦、受けますよねぇ!?」
完全な罠だ。 治せなければ詐欺師確定。治せたとしても「仕込み」だと言われるリスクもある。 だが、相手は国民的知名度を持つ頑固ジジイだ。彼が認めれば、効果は絶大だ。
善さんが、助けを求めるようにチラリと私を見た。
私は、手にした【世界樹の杖】(木の棒)で、床をトンと突いた。 GOサインだ。
善さんは覚悟を決めたように立ち上がった。
「……分かりました。その挑戦、お受けします」
会場がどよめき、フラッシュが一斉に焚かれる。 ネット掲示板が加速する。 『うわ、受けたよコイツ』『無理だろ』『放送事故確定』
善さんは佐伯氏の前に歩み寄った。
「……触れても、よろしいですか?」
「フン。好きにしろ。どうせ何も変わりはせん」
佐伯氏が吐き捨てる。
善さんは、佐伯氏の動かない左足に手を置いた。
さあ、ショータイムだ。 私はポケットの中の杖を握りしめ、魔力を練り上げた。 今までの「こっそり魔法」じゃない。 今日はカメラの前だ。派手に、かつ「気功」っぽく見せかける必要がある。
(……ターゲット、頑固ジジイの脳神経。詰まった血栓を溶解、神経回路をバイパス接続。――出力、120%!)
(――術式展開。【神経再生(ニューロ・リンケージ)】+【視覚効果(オーラ・エフェクト)】!)
私の杖から放たれた魔力が、善さんの体を通り、その手から金色の光となって溢れ出した。
「なっ……!?」
会場の誰かが声を上げた。 カメラのレンズ越しにもはっきりと分かるほど、善さんの手がぼんやりと発光している。 それは佐伯氏の足へと吸い込まれていく。
「……ぬ、おおぉ……!?」
佐伯氏が呻き声を上げた。 ピクリ。 動くはずのない左足の爪先が、跳ねた。
「お、おい! 今動いたぞ!」 「マジかよ!?」
「……熱い! 足が……燃えるように熱い!」
佐伯氏が叫ぶ。 私はさらに魔力を注ぎ込む。中東で手に入れた杖のおかげで、魔力の通りが段違いに良い。まるでホースから放水するように魔力が流れていく。
「善さん! 今だ! 『立て』と言え!」
私は念話で叫んだ。
善さんは汗だくになりながら、佐伯氏の手を取った。
「……佐伯さん。立ってください。あなたの足は、もう動く!」
「ば、馬鹿な……ワシは三年も車椅子で……」
「立てます! 自分の力を信じて!」
善さんが引っ張り上げる。
佐伯氏は、恐る恐る重心を左足にかけた。 いつもなら崩れ落ちるはずの足が。 床を、踏みしめた。
「……っ!!」
会場が静まり返る。 シャッター音すら消えた。
佐伯剛造は、善さんの手を借りながら、ゆっくりと、しかし確実に、車椅子から立ち上がった。
「……立った……。ワシが……立っておる……?」
佐伯氏は涙目で自分の足を見下ろした。 そして、恐る恐る一歩を踏み出した。 二歩。三歩。
「おおおおぉぉぉ!! 歩ける! 歩けるぞぉぉぉ!!」
佐伯氏の絶叫が、マイクを通して会場中に響き渡った。
ドッッッッ!!
会場が爆発したような騒ぎになった。 「うおおおおお!」「マジかよ!」「奇跡だ!」「放送事故じゃねえ、歴史的瞬間だ!」
ネットのコメント欄が止まらない。流れる速度が速すぎて読めないほどだ。 『神降臨』『ゴッドハンド!』『いくら払えば診てもらえるんだ!?』『ごめんなさい疑ってました』
「な、な、な……」
蝮田は、口をパクパクさせて腰を抜かしていた。 自分の用意した最強の刺客が、敵の宣伝マンになってしまったのだから。
佐伯氏は、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、善さんの手を両手で握りしめた。
「……すまん! ワシが間違っておった! 貴様は……いや、先生は、本物だ! 詐欺師などと言ってすまなかったぁぁ!!」
頑固ジジイの公開土下座。 これ以上の宣伝効果はない。
善さんは、聖人のような微笑み(中身は疲労困憊)で、佐伯氏の肩を抱いた。
「頭を上げてください。私はただ、あなたの『歩きたい』という強い意志をお手伝いしただけですから」
完璧だ、善さん。アカデミー賞モノだよ。
私は舞台袖で、ガッツポーズをした。 これで逆転勝利だ。 詐欺疑惑は消し飛び、代わりに「伝説」が生まれた。 明日からの予約電話はパンクするだろう。入会金の三百万? いや、五百万に値上げしても行列ができるね。
「……ふふっ。チョロいもんだねぇ」
私は残りの大福を口に放り込んだ。
だが。 光が強くなれば、闇もまた濃くなる。
テレビ中継を見ていたのは、一般人だけではなかった。
とある大学の研究室。 薄暗い部屋で、モニターを見つめる一人の男がいた。 白衣を着たその男は、善さんの手から溢れた「光」を、コマ送りにして解析していた。
「……この波長。……生体エネルギー(気)ではない」
男は、狂気じみた笑みを浮かべた。
「……魔力(マナ)だ。間違いない。……見つけたぞ、『サンプル』を」
男の背後には、ホルマリン漬けにされた奇妙な生物や、古びた魔道書のようなものが散乱していた。
私の知らないところで、新たな、そして科学とオカルトが融合した最悪の敵が、動き出そうとしていた。
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