異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ

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第31話:響け演歌! 暴走する人造人間と、杖の奪還

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「グオオオオオオッ!!」

人工魔人アダムの豪腕が振り下ろされる。 空気を切り裂く音と共に、床のコンクリートが豆腐のように粉砕された。

「……ッ、化け物かよ!」

リオが間一髪でバックステップしてかわすが、衝撃波だけで吹き飛ばされ、壁に激突する。 手にした鉄パイプは、すでに「く」の字に曲がっていた。 リオの肩が不自然な方向に曲がっている。ダメージは深い。

「リオ!」

私は叫ぶが、ジャマーの不快な高周波音が邪魔をして、援護の魔法が撃てない。 アダムは休むことなく、次の標的――私と善さんに狙いを定めた。

「ハハハハ! 無駄だ無駄だ! アダムの筋肉は炭素繊維で強化されている! 物理攻撃など蚊ほども効かんよ!」

高みの見物を決め込む紫雲が、狂ったように笑う。

「……鏡! マイクはまだかい!?」

「接続完了! スピーカー出力、最大! 鼓膜が破れても知りませんよ!」

鏡が親指を立てる。 私は善さんの背中を蹴飛ばした。

「行け、パパ! あんたの十八番だ! 借金地獄、リストラ、元妻の裏切り……その全てを歌に乗せてぶちまけな!」

「ひぃぃぃっ! や、やりますぅぅ!」

善さんは、アダムが目の前まで迫る中、震える両手でマイクを握りしめた。 そして、目を固く閉じ、腹の底から声を絞り出した。

「う、上野発のぉぉぉぉぉ!!」

スピーカーから、爆音のイントロ(鏡がネットから落としたカラオケ音源)と共に、善さんの魂の叫びが轟いた。

『夜行列車、おりた時からぁぁぁぁ~♪』

上手い。 無駄に上手い。 長年、一人カラオケで鬱憤を晴らしてきた哀愁と、極限状態の恐怖がブレンドされ、とてつもない「情念」の波動となって工場内に響き渡る。

「……な、なんだこの歌は!?」

紫雲が耳を押さえる。

その時、異変が起きた。

『ガ……ガガ……ア……?』

アダムの動きが、ピタリと止まった。 胸のチューブから送り込まれていた魔力の光が、激しく明滅し始める。

(よし! 読み通りだ!)

魔力とは、本来「意志」の力だ。術者の精神状態に強く依存する。 私の杖から吸い出した純粋な魔力に対し、善さんの放つ「負の情念(演歌)」という強烈な音波が干渉し、魔力の波長を掻き乱しているのだ!

『青森駅はぁ~! 雪のぉ~中ぁ~♪』

善さんのこぶしが回るたびに、アダムの胸の魔力コアが、バチバチと火花を散らす。 制御を失った魔力が逆流し、周囲の機械をショートさせていく。

「や、やめろ! やめさせろ! 私のアダムが、回路が焼き切れるぅぅ!!」

紫雲が悲鳴を上げ、ジャマーの出力を上げようとする。 だが、善さんの美声(という名の絶叫)は、ジャマーの音波すらも凌駕していた。

キィィィン……バチンッ!!

ついに、紫雲の持っていたジャマー端末が、過負荷に耐えきれず爆発した。

「……!」

その瞬間。 私の体の中を流れる「川」が、堰を切ったように復活した。

(……戻った)

指先に、馴染み深い熱が戻ってくる。 私はニヤリと笑い、ガラスケースの中の杖に向かって手をかざした。

(――来な! 【念動力(テレキネシス)】!)

パリーン!! 強化ガラスが粉砕され、【世界樹の杖】が私の手元に飛び込んでくる。

バチッ!!

杖を握った瞬間、全身に電撃のような活力が走った。 おかえり、相棒。やっぱりあんたがいないと調子が出ないよ。

「……さて」

私は杖を構えた。 アダムは魔力暴走で痙攣し、膝をついている。 だが、腐っても生体兵器。すぐに立ち直り、私に向かって咆哮を上げた。

「ウオオオオオオッ!!」

アダムが突進してくる。 巨大な拳が、私を肉塊に変えようと迫る。

私は一歩も動かない。 なぜなら、私は攻撃魔法が使えない「か弱い」元聖女だからだ。 だけどね。 私には「最強の矛」がいるんだよ。

「リオ!!」

私は杖を、壁際で倒れていたリオに向けた。

(――術式展開。【超・回復(ハイ・ヒール)】、からの……【身体能力強化(フィジカル・ブースト)・極(リミットブレイク)】!!)

カッッッ!!! まばゆい光がリオを包み込んだ。 折れた骨が一瞬で繋がり、裂けた筋肉が鋼のように再生し、さらにその上から膨大な魔力が上乗せされる。

「……へっ、ありがとよ、ボス!!」

光の中から、赤い残像が飛び出した。

ドォォォン!!

アダムの拳が私に届く寸前、リオの蹴りがアダムの横っ面を捉えた。

「グギャッ!?」

アダムの巨体が、真横に吹き飛ぶ。 だが、リオは止まらない。

「お返しだァァッ!!」

リオは地面を蹴り、アダムを追撃する。 今の彼女のステータスは、私の魔力で限界までバフ(強化)されている。ただの人間じゃない。鬼神だ。

ドガガガガガッ!!

リオの拳の連打が、アダムの強化装甲を凹ませ、炭素繊維の筋肉を引きちぎる。

「ば、馬鹿な……! 生身の人間が、アダムを圧倒するだと!?」

紫雲が目を剥く。

「生身じゃないよ」

私は杖を振るいながら言った。

「あんたの科学が作った筋肉と、私の魔法で強化した筋肉。……どっちが『高い』か、勝負と行こうじゃないか!」

私はさらに追加の支援魔法を飛ばす。

(――【硬化(ハードニング)】! 【加速(アクセラレーション)】!)

「オラオラオラァァァッ!!」

リオの拳が音速を超え、衝撃波を生む。 最後の一撃。

「くたばんな、ポンコツ!!」

リオの渾身の右ストレートが、アダムの胸の魔力コアを正確に撃ち抜いた。

ズドォォォォォン!!

アダムの背中から衝撃が突き抜け、工場の壁を三枚ほどぶち抜いて、アダムは夜の東京湾へと吹っ飛んでいった。

「……あ、アダムぅぅぅぅ……」

紫雲が崩れ落ちる。

「……ふぅ。いい運動になったぜ」

リオが肩を回しながら戻ってくる。その体からは湯気が立ち上っていた。

「……さて、次はお前だ」

私は空中浮遊魔法(レビテーション)でふわありと浮き上がり、テラスに着地した。

「ひっ! く、来るな! 私は天才だぞ! 人類の宝だぞ!」

紫雲が後ずさり、這いつくばる。

「ああ、天才だとも。私の杖を解析した技術力は認めてやる」

私は冷たい目で彼を見下ろした。攻撃魔法は使えないが、人を縛る魔法ならお手の物だ。

「だが、私の平穏な老後を邪魔した罪は重い。……お仕置きの時間だ」

私は杖を紫雲の額に向けた。

「ま、待ってくれ! 金ならある! 技術も提供する! だから……!」

「……金?」

私の杖がピタリと止まった。

「……いくらだい?」

「えっ? ……あ、あるだけ全部! 研究資金の隠し口座、特許料……全部で三億はある!」

「……三億か」

150億持ってる私には端金だが、貰えるものは貰っておくのが私の流儀だ。 それに、こいつの技術力。ジャマーとかホムンクルスとか、使いようによっては金になるかもしれない。

「……鏡」

「はい」

鏡がいつの間にか背後に立っていた。

「こいつの身柄、どうする?」

「警察に突き出せば、彼は死刑か終身刑でしょう。……ですが、それでは勿体ない」

鏡の眼鏡が光る。

「彼の脳みそと技術。……我がサロンの『地下研究室』で、有効活用しませんか? 無給で」

「……ひっ!?」 紫雲が青ざめる。

「採用だ。死ぬまで働いて、詫びてもらうよ」

私は杖の先端を軽く紫雲の額に当てた。

(――【隷属の契約(ギアス)】)

「あがっ!?」

紫雲の額に、小さな魔法陣が浮かび上がり、消えた。 これで彼は、私に逆らえない。もし裏切ろうとすれば、激痛が走る呪いだ。攻撃魔法ではないが、こういう「搦め手」こそが私の本領発揮だ。

「ようこそ、株式会社コガネへ。……ブラック企業だよ、覚悟しな」

***

こうして、私たちは杖を取り戻し、新たな(危険な)人材を手に入れた。

「……はぁ、はぁ……歌い切った……」

工場の中央で、善さんが燃え尽きたように倒れ込んでいた。 スピーカーからは、まだカラオケの終了画面の音が流れている。

「お疲れ、パパ。あんたの歌、最高にロックだったよ」

「……演歌です……」

「全員、ボーナスだ。今日は寿司でも取るよ」

私は杖をポケットにしまい、伸びをした。 杖を取り戻した安心感。やはり、これがないと始まらない。

朝日が昇る頃。 東京湾岸の廃工場は、何事もなかったかのように静まり返っていた。

だが、私の周りには、金と、権力と、暴力と、科学……全ての力が集まりつつあった。 目指す「平穏な隠居生活」は、逆にどんどん遠ざかっている気がするが……まあ、金が増えるなら良しとしよう。

しかし。 私は忘れていた。 「異世界の技術」を使ったアダムの暴走。 その強大な魔力の放出が、時空の壁に、決定的な「亀裂」を入れてしまったことを。

数日後。 私たちは、本当の意味での「異世界からの来訪者」と対面することになる。
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