異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ

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第33話:新社屋ビル完成! そして空から魔王軍幹部(ニート候補)が降ってきた

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「……絶景だねぇ」

港区、地上30階建て。 元外資系企業の自社ビル改め、『コガネ・タワー』の最上階。 私は、真新しい畳の香りに包まれながら、窓の外に広がる東京のパノラマを見下ろしていた。

八十億円で衝動買いしたこのビルだが、内装工事は「魔法(物理的な時短)」と「金(業者へのボーナス)」の力で、たった三日で完了した。

最上階は私のプライベートエリア。 壁一面のガラス窓からは東京タワーと富士山が一望でき、床には最高級の琉球畳。 ちゃぶ台には、コンビニの高級プリンとお茶。 これぞ、私が夢見た「勝ち組の隠居生活」だ。

「……社長。本当にここに住むんですか? 下の階には最新のペントハウスもあるのに……」

善さんが、引っ越し蕎麦(カップ麺)をすすりながら恐縮している。 彼やリオ、鏡たちの居住区は29階だ。

「ここがいいんだよ。……畳の上で死ねるなら本望さ」

「縁起でもないこと言わないでくださいよ……」

ピンポーン。 インターホンが鳴る。

「ちーっす。ヒナ、荷解き手伝おうか?」 「オーナー、地下の研究室のセキュリティ、稼働しました」

リオと鏡、そして首輪付きの紫雲(荷物持ち)が入ってきた。

「おお、ご苦労。……紫雲、顔色が悪いよ? 地下の空気は合わないかい?」

「……いえ。地下に設置した『魔力炉』の調整で、三日寝ていないだけです……。ブラック企業にも程がある……」

紫雲がよろめきながら段ボールを置く。 私が中東から持ち帰った「魔石の欠片」と、紫雲の技術を組み合わせ、このビル全体には独自の魔力供給システムが張り巡らされている。これでいつでも快適な魔法ライフが送れるって寸法だ。

「まあ、座りな。プリンでも食うかい?」

私がちゃぶ台のプリンを勧めようとした、その時だった。

バリィィィィィン!!!

突然、頭上で雷が落ちたような轟音が響いた。

「なっ!? なんだ!?」 善さんが蕎麦を吹き出す。

見上げると、最上階の天井――強化ガラス張りの天窓に、蜘蛛の巣のような亀裂が入っていた。 そして、その亀裂の中心から。

「……きゃああああああああッ!!」

悲鳴と共に、何かが降ってきた。

ガシャアアアン!!

ガラスが粉砕され、ちゃぶ台のど真ん中に「それ」は着地した。 私のプリンが、無残にもペシャンコになる。

土煙とガラス片が舞う中、私たちは呆然とそれを見つめた。

「……い、隕石……?」 善さんが震える。

「いや……人だ」 リオが身構える。

煙が晴れると、そこには一人の少女がうずくまっていた。 年齢は私(ヒナ)と同じくらいか、少し上に見える。 透き通るような銀髪に、ゴシックロリータのような黒いドレス。背中には、ボロボロになったコウモリのような「翼」が生えている。

「……うぅ……痛い……」

少女が顔を上げる。 その目は、血のように赤い深紅(クリムゾン)。 そして口元からは、可愛らしい八重歯――いや、「牙」が覗いていた。

(……は?)

私は目を疑った。 その顔。その魔力の波長。 見間違えるはずがない。

「……ヴェル……ベット?」

私が思わず呟くと、少女がビクリと反応した。

「……誰じゃ? 妾(わらわ)の名を気安く呼ぶのは」

少女はよろめきながら立ち上がり、私たちを見回した。 そして、ふんぞり返って言い放った。

「……ここはどこじゃ? 魔界の辺境か? それとも人間界の僻地か? ……ええい、まあよい! 喉が渇いた! 誰か血を持ってこい! 最上級の処女の血じゃ!」

「……」

全員が沈黙した。 善さんは「血ぃ!?」と泡を吹いている。

間違いない。 こいつは、異世界の魔王軍四天王の一人。 『鮮血の魔女』ヴェルベットだ。 かつて聖女だった私が、三日三晩魔法バトルを繰り広げ、引き分けに持ち込んだ因縁のライバル(天敵)だ。

なんでそんな危険人物が、東京の、しかも私のちゃぶ台の上に降ってくるんだい!?

「……おい、無視するでない! 妾は魔王軍第三軍団長、ヴェルベット・ヴァン・ルージュじゃぞ! 逆らえば灰にするぞ!」

ヴェルベットが右手を掲げる。 そこには、禍々しい魔力の炎が……

プスッ。

……灯らなかった。 マッチの火のような小さな煙が出ただけだ。

「……あれ? 魔力が……出ぬ?」

ヴェルベットが焦って手を振る。 プスプス。 やはり出ない。

(……なるほどね)

私は瞬時に状況を理解した。 時空を超えてこの世界に来る際に、魔力を使い果たしたんだ。 今のこいつは、ただの「コスプレした中二病のガキ」と同レベルだ。

「……おい、そこの銀髪」

私は立ち上がり、杖(木の棒)でヴェルベットの頭をコツンと叩いた。

「な、無礼な! 妾を誰だと……!」

「私のプリンを弁償しな」

「は? ぷ、ぷりん……?」

「一個三百円の高級プリンだ。私の楽しみを奪った罪は重いよ」

私は冷たい目で見下ろした。 かつての宿敵だろうが何だろうが、今の私は大家で、こいつは不法侵入者だ。

「き、貴様……! 魔力がないからと侮るなよ! この牙で噛み殺して……ぐぅぅぅ~」

威嚇しようとしたヴェルベットの腹から、盛大な虫の音が鳴り響いた。

「……」 ヴェルベットの顔が真っ赤になる。

「……腹が減ってるのかい?」

「べ、別に……! ただ、次元転移の消耗で、少しエネルギーが……」

私はため息をつき、冷蔵庫から予備のプリンを取り出した。 スプーンですくって、ヴェルベットの口元に差し出す。

「ほら、食いな。血はないけど、糖分ならあるよ」

「……毒見は済んでおるのか?」

「いいから食え」

私が無理やり口にねじ込むと、ヴェルベットはモグモグと咀嚼し……。

「……んッ!?」

カッ!! ヴェルベットの目が大きく見開かれた。

「な、なんじゃこれはあああああ!! 甘い! 滑らか! そして濃厚なコク! 魔界の『暗黒蜜』より美味ではないか!?」

「コンビニスイーツをなめるんじゃないよ」

「もっと! もっと寄越せ! いや、これを作った料理長を呼べ! 我が城に連れ帰る!」

ヴェルベットはプリンの容器を奪い取り、野獣のような勢いで貪り食った。 チョロい。 かつて世界を恐怖に陥れた大魔女が、日本のコンビニスイーツに陥落した瞬間だ。

「……社長。お知り合いですか?」 リオが呆れて聞く。

「まあね。……腐れ縁ってやつさ」

私はプリンを完食して満足げなヴェルベットを見た。

「……ふぅ。美味であった。褒めて遣わす」

ヴェルベットは口の周りをクリームだらけにして、偉そうに腕を組んだ。

「して、貴様。……どこかで会ったか? その魔力の波長……どこか懐かしいような、不快なような……」

ヴェルベットが私をジロジロと見る。 まずい。バレるか? 私が「元聖女」だとバレたら、魔力がなくても殺し合いに発展しかねない。

「……ただの通りすがりの大家だよ」

私はとぼけた。

「ふん。まあよい。……妾はしばらくここに滞在することにする。魔力が回復するまでの仮宿じゃ」

ヴェルベットは勝手に宣言し、私の琉球畳の上にゴロンと横になった。

「布団を持ってこい。あと、さっきの『ぷりん』をもう十個所望する」

「……おい」

こいつ、完全に居座る気だ。 しかもニートとして。

「……ヒナちゃん。どうするんですか、この子? 警察に……」 善さんがオロオロする。

「警察に突き出しても、戸籍もないし面倒なことになるだけさ」

私は頭を抱えた。 追い出したいが、もし野放しにして魔力が回復したら、東京が火の海になりかねない。 それに、こいつの魔力知識は利用価値があるかもしれない。

「……仕方ない。飼うよ」

「飼う!? ペットですか!?」

「紫雲! 地下に空き部屋はあるかい?」

「は、はい。実験体用の独房なら……」

「そこにブチ込んでおきな。……鏡、こいつの監視を頼むよ。暴れたら麻酔銃でも撃ち込んでいい」

「了解しました。……異種族のサンプル、興味深いですね」 鏡が不穏な笑みを浮かべる。

「な、何を勝手に決めておる! 妾はVIP待遇を……!」

「文句があるなら出て行きな。ただし、外には『ぷりん』はないよ?」

私が脅すと、ヴェルベットは「うぐっ」と黙った。

「……よかろう。屈辱だが、力を取り戻すまでの辛抱じゃ。……世話になるぞ、下等生物ども!」

こうして。 新社屋ビル『コガネ・タワー』に、新たな(厄介な)居候が増えた。 元魔王軍幹部、現在は無職のプリン好き。 彼女がもたらすのは、世界の破滅か、それとも私のストレスか。

だが、私はまだ気づいていなかった。 彼女が降ってきた「穴」――時空の亀裂が、まだ塞がっていないことに。 そして、その穴から、さらなる「招かれざる客」が、こちらの世界を覗き見ていることに。

「……ククク。ヴェルベットめ、先を越しおって」

割れた天窓のはるか上空。 黒い影が、音もなく蠢いていた。

次回、「ヴェルベット、地下アイドルデビュー!? 迫る魔王の影」 お楽しみに!
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