異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ

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第44話:勇者と初デート! 映画館と遊園地、そして時限爆弾

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「……なんで私がこんな格好をしなきゃいけないんだい?」

日曜日の朝。コガネ・タワーのエントランス。 私は全身鏡の前で、不機嫌に自分の姿を見つめていた。

パステルピンクのワンピース、白いカーディガン、そしてフリルのついた靴下。 どこからどう見ても「清純派・可憐な女子中学生」だ。

「完璧だぜ、ボス! これなら誰が見ても『悪の組織の黒幕』には見えねえ!」 スタイリスト役のリオが親指を立てる。

「ヒナよ、武器は持ったか? その可愛らしいポシェットの中に、手榴弾くらいは入るであろう」 ルシファーが心配そうに聞いてくる。

「入れないよ。デートだって言ってるだろう。手ぶらで行くんだ」

「気をつけてくださいね、ヒナちゃん。相手は勇者……隙を見せれば、その可愛らしい首が飛びますよ」 善さんがハンカチで涙を拭っている。

「縁起でもないことを言うんじゃないよ」

私はため息をつき、タワーを出た。 中身88歳の元聖女にとって、14歳のデート服は羞恥プレイ以外の何物でもない。 だが、これも「一般人」を演じきるためだ。我慢だ。

***

待ち合わせ場所の駅前広場。 ハチ公像(の代わりに最近置かれた『忠犬ロボット・ハチ』像)の前に、彼はいた。

白のシャツに、ベージュのチノパン。爽やかなカジュアルスタイル。 だが、その背中には、不自然に長い「テニスラケットのケース」を背負っている。

「……おはようございます、ヒナさん」

レオナルドが私を見つけ、爽やかに微笑んだ。

「おはよう、レオくん。……その背中の荷物はなんだい? デートでテニスでもする気かい?」

「ああ、これですか? ……『護身用』です。いつ魔族が襲ってきてもいいように」

中身は間違いなく聖剣だ。 デートに聖剣を持参する中学生。重すぎる。

「……そうかい。じゃあ、行こうか」

私たちは歩き出した。 周囲のカップルが楽しそうに腕を組む中、私たちは一定の距離(斬撃の間合い)を保って歩く。 緊張感がすごい。

***

「まずは映画でも観ましょうか。……『一般人』のデートの定番ですよね?」

レオナルドの提案で、私たちはシネコンに入った。 選んだ映画は『恋する魔法学園 ~転生したら王子様がドSだった件~』。 今流行りの異世界恋愛ものだ。

上映中。 私はポップコーンを機械的に口に運びながら、スクリーンを眺めていた。

(……なんだい、この脚本は。魔法の詠唱が適当すぎるよ。それに、この王子、性格が悪すぎる。前世の私なら杖で頭をひっぱたいてるね)

私は心の中でツッコミを入れまくっていた。 ふと、隣のレオナルドを見る。 彼はスクリーンを食い入るように見つめ、真剣な表情をしている。

(……意外と楽しんでるのか?)

映画のクライマックス。 ヒロインが王子に愛の告白をするシーン。

『好きです! 世界が滅んでも、あなたといたい!』

その瞬間。 レオナルドが、ボソッと呟いた。

「……愚かですね」

「え?」

「世界が滅んだら、愛もクソもないでしょう。……優先順位がおかしい。まずは世界の平和を維持し、安全を確保してから告白すべきだ」

「……」

こいつ、ガチだ。 恋愛映画を「危機管理マニュアル」として見ている。

映画が終わり、私たちはゲームセンターへ移動した。 UFOキャッチャーの前で、レオナルドが足を止める。

「……あれは、魔獣のぬいぐるみですか?」

彼が指差したのは、人気のマスコットキャラ『モチモチうさぎ』。

「可愛いだろう? 取ってあげようか?」

私は百円玉を入れた。 アームを操作する。 私の【空間把握能力】と、物理演算予測(元聖女の勘)をもってすれば、こんなもの赤子の手をひねるようなものだ。

ウィーン……ガシッ! ポトン。

一発ゲット。

「……すごいですね。魔法を使ったのですか?」 レオナルドが目を細める。

「まさか。物理だよ、物理。……ほら、やるよ」

私がぬいぐるみを渡すと、レオナルドは少し驚いた顔をして、それを受け取った。

「……ありがとうございます。……柔らかいですね」

彼がぬいぐるみをプニプニと触る。 その表情が、初めて年相応の少年のものになった。

(……ふん。やっぱりガキだね)

少しだけ空気が和んだ、その時だった。

『緊急警報! 緊急警報!』

館内にけたたましいサイレンが鳴り響いた。

「……ッ!? なんだ!?」 レオナルドの表情が一瞬で戦士に戻る。

『お客様にご案内します。……当施設内に、爆発物が仕掛けられたとの情報が入りました。直ちに避難を……』

「爆発物!?」 周囲の客がパニックになり、出口へと殺到する。

「……ヒナさん、逃げましょう!」 レオナルドが私の手を掴む。

「待ちな! ……あれを見るんだ」

私はフロアの奥、立ち入り禁止の従業員用通路のドアが開いているのに気づいた。 そこから、奇妙な「魔力」が漏れ出している。

「……あの気配。ただの爆弾じゃないね」 私が呟くと、レオナルドもハッとした。

「……魔力反応!? ……まさか、魔族のテロか!?」

レオナルドが背中のケースから聖剣を取り出す。

「ヒナさん、君は逃げてください! 僕は確認に行きます!」

「おい、待て!」

レオナルドは私の制止も聞かず、奥へと走っていった。 やれやれ、正義感の塊だね。 放っておけばいいのに、もし彼が死んだら「勇者殺しの責任」を問われかねない。

「……仕方ない。付き合ってやるか」

私は人混みに逆らって、彼を追いかけた。

***

従業員用通路の奥。倉庫のような場所。 そこに、「それ」はあった。

段ボールの山の上に置かれた、黒い球体。 表面には禍々しい赤い紋章が浮かび上がり、ドクン、ドクンと脈打っている。

「……これは、古代魔導兵器『コア・ボム』!? なぜこんなところに!?」

レオナルドが驚愕の声を上げる。

(……ああ、あれか)

私は一目で正体を見抜いた。 あれは、魔王城の倉庫に眠っていたガラクタの一つだ。 おそらく、東京湾に城が出現した際のどさくさで流出し、リサイクルショップか何かを経由して、ここに流れ着いたのだろう。 そして、このゲーセンの強烈な電力に反応して、起動してしまったんだ。

「……あと三分で爆発します! この規模なら、半径一キロが消し飛ぶ……!」

レオナルドが聖剣を構える。

「斬るしかありません……!」

「馬鹿! やめな!」

私が叫んで飛び込んだ。

「ヒナさん!? なぜここに!?」

「その爆弾はね、衝撃を与えると即起爆するんだよ! 斬ったらあんたも私もおしまいだ!」

「なっ……じゃあどうすれば!?」 レオナルドが焦る。 解除するには、複雑な魔力コードを解読し、逆位相の魔力を流し込む必要がある。 だが、それは高度な魔法技術だ。 私がやれば一瞬だが、そうすれば私が「ただの中学生ではない」ことがバレる。

勇者の前で魔法を使わずに、魔法の爆弾を解除する。 ……無理ゲーだ。

だが、私には「金」と「人脈」がある。

「……レオくん。スマホ貸して」

「は? 今そんな場合じゃ……」

「いいから!」

私は彼のスマホを奪い取り、スピーカーモードにして、ある番号にかけた。

プルルル……ガチャッ。

『はい、こちら株式会社コガネ、カスタマーサポートです』

「鏡! 私だ!」

『おや、デート中では?』

「緊急事態だ! このゲーセンに『タイプ3・魔導コア』がある! 暴走寸前だ!」

『……なんですって? それは厄介ですね』

「レオくん(勇者)がいるから、私が魔法を使うわけにはいかない! ……あんたのハッキングで、遠隔解除できるかい!?」

『……物理的な回線が繋がっていれば可能ですが、魔導兵器にはLANポートがありませんよ』

「チッ、役立たず!」

『ですが……そのコア、周囲の「電波」には干渉する性質があります。……そこのゲーセンのWi-Fi出力を最大にし、特定の周波数のノイズをぶつければ、一時的に機能を停止(フリーズ)させられるかもしれません』

「それだ! やりな!」

『了解。……アクセス開始。ゲーセンのルーターを乗っ取ります』

私はスマホをレオナルドに返した。

「……な、何をしたんですか?」 レオナルドが呆然としている。

「……父の会社のエンジニアに電話したんだ。爆弾処理のプロさ」

「エンジニア? スマホで?」

「見てな!」

次の瞬間。 ゲーセン内の照明が一斉に明滅し、スピーカーから「キィィィィン!」という高周波音が鳴り響いた。

ドクン……ドクン……プシュン。

黒い球体の脈動が、止まった。

「……と、止まった?」 レオナルドが目を見開く。

「今だ、レオくん! その爆弾を、誰もいない上空へ投げるんだ!」

「えっ、投げる!?」

「フリーズしてるのは数十秒だ! 早く!」

「わ、分かりました!」

レオナルドは球体を抱え上げると、窓を蹴破り、屋上の空へ向かって全力で投擲した。 勇者の馬鹿力で、球体は遥か彼方へ飛んでいく。

数秒後。 遥か上空で、小さな花火のような光が弾けた。

ドォォォン……。

被害ゼロ。完全処理だ。

「……はぁ、はぁ……助かった……」

レオナルドがその場に座り込む。

「……ヒナさん。君は一体……」

彼が私を見上げた。 疑いの眼差し。 当然だ。魔導兵器の知識、謎の電話、的確な指示。 一般の中学生で通るはずがない。

私は覚悟を決めた。

「……私はね」

「……?」

「『ミリオタ』なんだよ」

「……は?」

「ミリタリーオタクさ。爆弾とか兵器とか、ネットで調べまくって詳しくなっちゃってね。……あはは、引いた?」

私は精一杯の愛想笑いを浮かべた。

「……ミリオタ……」

レオナルドは数秒間、ポカンとしていたが……。 やがて、クスクスと笑い出した。

「……ふっ、ははは! なるほど、そうでしたか!」

彼は立ち上がり、私の頭をポンと撫でた。

「君は面白い人だ。……今日のところは、そういうことにしておきましょう」

「……助けてくれて、ありがとう。ヒナさん」

彼の笑顔は、初めて心からのものに見えた。 どうやら、「正体バレ」の危機は去ったようだ。……ギリギリで。

「……さあ、帰ろうか。おじいちゃんが待ってる」

私たちはゲーセンを後にした。 帰り道、少しだけ二人の距離が縮まった気がした。 テニスラケットケースとポシェット。 奇妙なカップルの初デートは、爆発オチで幕を閉じた。

だが。 私が安堵したのも束の間。 コガネ・タワーに戻ると、さらなるカオスが待っていた。

「おかえり、ヒナ! テレビを見るのじゃ!」 ヴェルベットが血相を変えて飛んできた。

テレビ画面には、緊急ニュースが流れている。

『速報です。……本日午後、国会議事堂前に、謎の巨大生物が出現しました!』 『生物は、「我は魔王軍四天王『剛力のバッファロー』なり! 魔王ルシファー様を出せ!」と叫んでおり……』

画面には、筋骨隆々の牛男が、機動隊の車をひっくり返している映像が。

「……また四天王かい!」

ルシファーが「あやつ、まだ生きておったか……脳筋で困るのだ」と頭を抱えている。

「レオくん、デートは終了だ」

私は隣の勇者の肩を叩いた。

「……ええ。仕事(魔物退治)の時間ですね」 レオナルドが聖剣を抜く。

「違うよ。……『説得』の時間だ」

私はスマホを取り出した。

「鏡! 装甲車を回しな! 国会議事堂へ行くよ!」

デートの余韻に浸る暇もない。 次は、永田町で魔物と政治家を相手に大立ち回りだ!

次回、「国会議事堂占拠!? 牛男 vs 勇者 vs 政治家、そしてヒナの買収工作」 お楽しみに!
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