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第60話:留年回避せよ! 魔王と挑む三者面談デスゲーム
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「……小金沢ヒナ。貴様、今のままでは確実に『留年』だぞ」
放課後の教室。 担任の鬼瓦(おにがわら)先生が、書類の束を私の机に叩きつけた。 その名の通り、鬼のような形相をした生活指導の鉄人だ。
「……先生。留年という言葉は法的拘束力があるんですか? 義務教育において」
「屁理屈を言うな! 出席日数が足りんのだ! テストの点が良くても、学校に来なければ評価はゼロだ!」
鬼瓦先生の怒声が響く。 耳が痛い。世界を救うために(主に金のために)休んでいたとは言えない。
「……来週、三者面談を行う。保護者を呼べ。……来なければ、家庭訪問をして貴様の生活実態を徹底的に調査する」
「家庭訪問!?」
それはまずい。 今のコガネ・タワーは、魔王、吸血鬼、筋肉牛、米軍、魔術師が入り乱れる魔窟だ。 そこに先生が足を踏み入れれば、教育委員会どころか、精神病院に通報されかねない。
「……分かりました。保護者を連れてきます」
私は腹を括った。 こうなれば、私の「最強の家族」を使って、この面談という名の「デスゲーム」を乗り切るしかない。
***
コガネ・タワー、リビング。
「……というわけで。誰か、私の『保護者』として面談に来ておくれ」
私がちゃぶ台で頭を下げると、全員が視線を逸らした。
「……私は無理だよぉ。鬼瓦先生、僕が学生の頃からいて、すごく怖いんだもん……」 善さん(パパ)が震え上がっている。情けない。
「妾はパスじゃ。日光の下に出れば灰になる」 ヴェルベットがプリンを食べながら断る。
「筋肉ハ……制服ガ着レマセン」 バッファローが論外なことを言う。
「……フン。仕方あるまい」
重々しい声と共に、一人の男が立ち上がった。 着物を脱ぎ捨て、ビシッとしたダークスーツに身を包んだ老人。 魔王ルシファーだ。
「……我が行こう。ヒナの保護者として、その教師とやらを『説得(どうかつ)』してやろう」
「……おじいちゃん。説得だよ? 焼き殺しちゃダメだよ?」
「分かっておる。……『王の威厳』を見せつければよいのだろう?」
一抹の不安はあるが、彼しかいない。 見た目は厳格な富豪の老人だ。黙っていれば完璧なはずだ。
***
そして、面談当日。
「……失礼する」
ルシファー(偽名:小金沢 留)が、教室のドアを開けた。 その瞬間、教室の空気が変わった。
「……ッ!?」
待機していた鬼瓦先生が、思わず居住まいを正した。 ルシファーから溢れ出る、隠しきれない「覇王色の覇気」。 ただの老人ではない。数多の修羅場(と魔界統一戦争)をくぐり抜けてきた者のオーラだ。
「……小金沢の祖父です。孫が世話になっておりますな」
ルシファーが重厚なバリトンボイスで挨拶し、パイプ椅子にドカッと座った。 椅子がミシミシと悲鳴を上げる。
「……は、はい。担任の鬼瓦です。……本日はお忙しい中……」
先生が冷や汗を拭う。 先制攻撃は成功だ。完全に飲まれている。
「……単刀直入に伺おう。我が孫、ヒナの何が問題なのかね?」
ルシファーが鋭い眼光で問う。
「は、はい。……ヒナさんは、学業成績は優秀です。テストは常に学年トップ。……しかし、いかんせん『欠席』が多すぎます」
先生が出席簿を見せる。スカスカだ。
「……先日は『腹痛』で三日休み、その前は『法事』で一週間、さらにその前は『世界を救う用事』で……」
「……うむ。事実だな」 ルシファーが頷く。
「じ、事実!? 『世界を救う』がですか!?」
「……先生よ。教育とは何かね?」
ルシファーが話をそらした。
「は?」
「教室で教科書を読むことだけが学びか? ……否。世界を知り、社会の荒波に揉まれ、時には命懸けで『敵(マルサや米軍)』と戦う……。それこそが真の帝王学ではないか?」
ルシファーが熱弁を振るう。 論点がすり替わっているが、説得力がすごい。
「ヒナは遊んでいるのではない。……我が一族の『事業(世界征服)』を手伝い、その才覚を磨いているのだ。……それを『欠席』という小さな枠で縛るのかね?」
「……ぐぬぬ……! し、しかし、義務教育の規定が……!」
鬼瓦先生も負けていない。 さすが生活指導の鬼。規則という名の盾で防戦する。
「……それに、ヒナさんの交友関係も心配です!」
先生が窓の外を指差した。
「最近転校してきた、レオナルド君とアリスさん。……彼らとヒナさんは、いつも一緒に行動していますが……何か『危険な遊び』に巻き込まれているのでは?」
その時。 グラウンドから爆音が聞こえた。
ドゴォォォォン!!!
「……なんだ!?」
窓から下を見ると、体育の授業中だった。 そして、そこには信じられない光景が広がっていた。
「……ハァッ! 聖剣スマッシュ!!」 レオナルドがテニスのラケット(聖剣の鞘)を振り抜き、ボールを音速で打ち込む。
「……甘いですわ! 聖域レシーブ!!」 アリスが光り輝くバレーボールでそれを打ち返す。
二人のラリーの余波で、グラウンドにクレーターができ、サッカーゴールがひしゃげている。
「……あ、あれは一体……!?」 先生が絶句する。
「……ふむ。元気があってよろしい」 ルシファーが満足げに頷く。
「よくありません! 校庭が破壊されています! ……小金沢さん、あの子たちは一体……」
「……我が家の『居候(部下)』だ」
「居候!?」
まずい。話がややこしくなってきた。 私は慌ててルシファーの袖を引っ張った。 「おじいちゃん! 余計なことは言わないで!」
しかし、ルシファーは止まらない。
「先生よ。……貴様には見えるか?」
ルシファーが立ち上がり、先生に詰め寄った。
「……この腐りきった世界(教育現場)を変えるには、強力な『力』と『秩序』が必要だとは思わんか?」
「は、はい……? まあ、規律は大事ですが……」
「ならば、ヒナに任せよ。……あやつはいずれ、この国の……いや、世界の頂点に立つ器だ。細かい出席日数など、歴史の前では些末なことよ」
ルシファーが先生の肩に手を置いた。
(――精神干渉魔法。【王の威圧(キングス・プレッシャー)】・弱)
「……分かったな?」
先生の目が虚ろになった。
「……は、はい……。そうですね……。世界のためなら……出席など……」
「よし。話はついたな」
ルシファーがニヤリと笑った。 洗脳だ。これは教育的指導の範囲を超えている。
「ちょっ、おじいちゃん! やりすぎだよ!」
私が止めようとした時。 教室のドアがガラッと開いた。
「……失礼します」
入ってきたのは、銀縁眼鏡の男――国税局の冷泉(れいぜい)だった。 なぜここに!?
「……小金沢ヒナさん。学校にまでお邪魔して申し訳ない」
冷泉が冷徹な目で室内を見回す。
「……先日押収した資料の中に、貴女の『通学定期券』の不正利用疑惑がありましてね。……学割で魔王城(東京湾)まで通勤するのは、目的外使用ですよ」
「……細かいねぇ! ここまで追ってくるのかい!」
「……む? 貴様は誰だ?」 ルシファーが冷泉を睨む。
「……国税局です。……貴方が『無職』の祖父、小金沢留さんですね?」
冷泉はルシファーの覇気(洗脳)を、眼鏡の反射だけで弾き返した。 この男、精神耐性が異常に高い!
「……先生。洗脳されていますよ。目を覚ましなさい」
冷泉が鬼瓦先生の肩を叩く。 ハッ! と先生が正気に戻る。
「……はっ! 私はいったい……!? いかん! 留年の話だ!」
振り出しに戻った。 しかも、マルサという新たな敵が乱入し、状況はカオスを極める。
「……ええい、面倒じゃ!」
ルシファーがキレた。
「……ヒナよ。金で解決せよ!」
「えっ」
「この学校を買収してしまえ! 理事長になれば、ルールなど自由自在であろう!」
「……その手があったか!」
私はポンと手を叩いた。 コガネ・タワーの資産、そしてダンジョンの莫大な利益。 私立中学の一つくらい、買えないはずがない。
「……冷泉さん。あんたもだ」
私は冷泉に向き直った。
「……あんたの国税局への『天下り先』、ウチ(株式会社コガネ)で用意してやるよ。……年収は今の三倍だ」
「……買収工作ですか。公務員には通じませんよ」 冷泉が即答する。
「……『限定プレミアム・プリン一年分』をつける」 ヴェルベット用の在庫だ。
「……!」 冷泉の眼鏡がキラリと光った。 「……話を聞きましょう」
落ちた。
「……先生。この学校の『新校舎』と『最新鋭の体育館』……私が寄付しましょう」
「……!」 鬼瓦先生がゴクリと唾を飲む。 「……しかし、教育者としての矜持が……」
「……さらに、先生の『ハゲ治療費』も全額負担します(聖女アリスの育毛魔法)」
「……合格です!!」 先生がガッツポーズをした。
***
こうして。 三者面談は、圧倒的な「財力」と「政治力」によって強行突破された。
私は留年を回避したどころか、学校の『名誉理事(スポンサー)』としての地位を確立した。 出席日数は「特別活動(ダンジョン経営)」として単位認定されることになった。
「……ふぅ。金があれば何でもできるね」
夕暮れの帰り道。 私はルシファーと二人で、タワーへの道を歩いていた。
「……ヒナよ。楽しかったぞ、学校というのも」 ルシファーが満足げに笑う。
「……また呼び出されるのは御免だよ」
「ふふ。……だが、忘れるなよ」
ルシファーが空を見上げた。
「……『力』には必ず『代償』が伴う。……お前が積み上げた金と権力、それがいつか、お前自身を縛る鎖になるかもしれんぞ」
魔王の予言めいた言葉。 私は肩をすくめた。
「……その時は、その鎖も売っ払って金にするさ」
私たちは笑い合った。
だが。 タワーに戻った私たちを待っていたのは、最後の、そして最大の「オチ」だった。
リビングにて。 鏡が真っ青な顔でモニターを見つめていた。
「……オーナー。大変です」
「なんだい? また敵襲かい?」
「いいえ。……アメリカの『NASA』から緊急連絡です」
「NASA?」
「……『地球に向かってくる巨大な隕石』を発見したそうです。……その軌道が、吸い寄せられるように『コガネ・タワー』に向かっています」
「……は?」
どうやら、私が地下から掘り出した『ドラゴン・ハート』。 あれはただの魔力源ではなく、宇宙の魔力を呼び寄せる「ビーコン」だったらしい。
「……衝突まで、あと24時間です」
世界滅亡のカウントダウン。 留年どころの騒ぎじゃない。
「……やってくれるねぇ、神様は」
私は杖を握りしめた。 地上、地下、そして最後は「宇宙」。 私の老後を守る戦いは、ついに大気圏を突破する!
放課後の教室。 担任の鬼瓦(おにがわら)先生が、書類の束を私の机に叩きつけた。 その名の通り、鬼のような形相をした生活指導の鉄人だ。
「……先生。留年という言葉は法的拘束力があるんですか? 義務教育において」
「屁理屈を言うな! 出席日数が足りんのだ! テストの点が良くても、学校に来なければ評価はゼロだ!」
鬼瓦先生の怒声が響く。 耳が痛い。世界を救うために(主に金のために)休んでいたとは言えない。
「……来週、三者面談を行う。保護者を呼べ。……来なければ、家庭訪問をして貴様の生活実態を徹底的に調査する」
「家庭訪問!?」
それはまずい。 今のコガネ・タワーは、魔王、吸血鬼、筋肉牛、米軍、魔術師が入り乱れる魔窟だ。 そこに先生が足を踏み入れれば、教育委員会どころか、精神病院に通報されかねない。
「……分かりました。保護者を連れてきます」
私は腹を括った。 こうなれば、私の「最強の家族」を使って、この面談という名の「デスゲーム」を乗り切るしかない。
***
コガネ・タワー、リビング。
「……というわけで。誰か、私の『保護者』として面談に来ておくれ」
私がちゃぶ台で頭を下げると、全員が視線を逸らした。
「……私は無理だよぉ。鬼瓦先生、僕が学生の頃からいて、すごく怖いんだもん……」 善さん(パパ)が震え上がっている。情けない。
「妾はパスじゃ。日光の下に出れば灰になる」 ヴェルベットがプリンを食べながら断る。
「筋肉ハ……制服ガ着レマセン」 バッファローが論外なことを言う。
「……フン。仕方あるまい」
重々しい声と共に、一人の男が立ち上がった。 着物を脱ぎ捨て、ビシッとしたダークスーツに身を包んだ老人。 魔王ルシファーだ。
「……我が行こう。ヒナの保護者として、その教師とやらを『説得(どうかつ)』してやろう」
「……おじいちゃん。説得だよ? 焼き殺しちゃダメだよ?」
「分かっておる。……『王の威厳』を見せつければよいのだろう?」
一抹の不安はあるが、彼しかいない。 見た目は厳格な富豪の老人だ。黙っていれば完璧なはずだ。
***
そして、面談当日。
「……失礼する」
ルシファー(偽名:小金沢 留)が、教室のドアを開けた。 その瞬間、教室の空気が変わった。
「……ッ!?」
待機していた鬼瓦先生が、思わず居住まいを正した。 ルシファーから溢れ出る、隠しきれない「覇王色の覇気」。 ただの老人ではない。数多の修羅場(と魔界統一戦争)をくぐり抜けてきた者のオーラだ。
「……小金沢の祖父です。孫が世話になっておりますな」
ルシファーが重厚なバリトンボイスで挨拶し、パイプ椅子にドカッと座った。 椅子がミシミシと悲鳴を上げる。
「……は、はい。担任の鬼瓦です。……本日はお忙しい中……」
先生が冷や汗を拭う。 先制攻撃は成功だ。完全に飲まれている。
「……単刀直入に伺おう。我が孫、ヒナの何が問題なのかね?」
ルシファーが鋭い眼光で問う。
「は、はい。……ヒナさんは、学業成績は優秀です。テストは常に学年トップ。……しかし、いかんせん『欠席』が多すぎます」
先生が出席簿を見せる。スカスカだ。
「……先日は『腹痛』で三日休み、その前は『法事』で一週間、さらにその前は『世界を救う用事』で……」
「……うむ。事実だな」 ルシファーが頷く。
「じ、事実!? 『世界を救う』がですか!?」
「……先生よ。教育とは何かね?」
ルシファーが話をそらした。
「は?」
「教室で教科書を読むことだけが学びか? ……否。世界を知り、社会の荒波に揉まれ、時には命懸けで『敵(マルサや米軍)』と戦う……。それこそが真の帝王学ではないか?」
ルシファーが熱弁を振るう。 論点がすり替わっているが、説得力がすごい。
「ヒナは遊んでいるのではない。……我が一族の『事業(世界征服)』を手伝い、その才覚を磨いているのだ。……それを『欠席』という小さな枠で縛るのかね?」
「……ぐぬぬ……! し、しかし、義務教育の規定が……!」
鬼瓦先生も負けていない。 さすが生活指導の鬼。規則という名の盾で防戦する。
「……それに、ヒナさんの交友関係も心配です!」
先生が窓の外を指差した。
「最近転校してきた、レオナルド君とアリスさん。……彼らとヒナさんは、いつも一緒に行動していますが……何か『危険な遊び』に巻き込まれているのでは?」
その時。 グラウンドから爆音が聞こえた。
ドゴォォォォン!!!
「……なんだ!?」
窓から下を見ると、体育の授業中だった。 そして、そこには信じられない光景が広がっていた。
「……ハァッ! 聖剣スマッシュ!!」 レオナルドがテニスのラケット(聖剣の鞘)を振り抜き、ボールを音速で打ち込む。
「……甘いですわ! 聖域レシーブ!!」 アリスが光り輝くバレーボールでそれを打ち返す。
二人のラリーの余波で、グラウンドにクレーターができ、サッカーゴールがひしゃげている。
「……あ、あれは一体……!?」 先生が絶句する。
「……ふむ。元気があってよろしい」 ルシファーが満足げに頷く。
「よくありません! 校庭が破壊されています! ……小金沢さん、あの子たちは一体……」
「……我が家の『居候(部下)』だ」
「居候!?」
まずい。話がややこしくなってきた。 私は慌ててルシファーの袖を引っ張った。 「おじいちゃん! 余計なことは言わないで!」
しかし、ルシファーは止まらない。
「先生よ。……貴様には見えるか?」
ルシファーが立ち上がり、先生に詰め寄った。
「……この腐りきった世界(教育現場)を変えるには、強力な『力』と『秩序』が必要だとは思わんか?」
「は、はい……? まあ、規律は大事ですが……」
「ならば、ヒナに任せよ。……あやつはいずれ、この国の……いや、世界の頂点に立つ器だ。細かい出席日数など、歴史の前では些末なことよ」
ルシファーが先生の肩に手を置いた。
(――精神干渉魔法。【王の威圧(キングス・プレッシャー)】・弱)
「……分かったな?」
先生の目が虚ろになった。
「……は、はい……。そうですね……。世界のためなら……出席など……」
「よし。話はついたな」
ルシファーがニヤリと笑った。 洗脳だ。これは教育的指導の範囲を超えている。
「ちょっ、おじいちゃん! やりすぎだよ!」
私が止めようとした時。 教室のドアがガラッと開いた。
「……失礼します」
入ってきたのは、銀縁眼鏡の男――国税局の冷泉(れいぜい)だった。 なぜここに!?
「……小金沢ヒナさん。学校にまでお邪魔して申し訳ない」
冷泉が冷徹な目で室内を見回す。
「……先日押収した資料の中に、貴女の『通学定期券』の不正利用疑惑がありましてね。……学割で魔王城(東京湾)まで通勤するのは、目的外使用ですよ」
「……細かいねぇ! ここまで追ってくるのかい!」
「……む? 貴様は誰だ?」 ルシファーが冷泉を睨む。
「……国税局です。……貴方が『無職』の祖父、小金沢留さんですね?」
冷泉はルシファーの覇気(洗脳)を、眼鏡の反射だけで弾き返した。 この男、精神耐性が異常に高い!
「……先生。洗脳されていますよ。目を覚ましなさい」
冷泉が鬼瓦先生の肩を叩く。 ハッ! と先生が正気に戻る。
「……はっ! 私はいったい……!? いかん! 留年の話だ!」
振り出しに戻った。 しかも、マルサという新たな敵が乱入し、状況はカオスを極める。
「……ええい、面倒じゃ!」
ルシファーがキレた。
「……ヒナよ。金で解決せよ!」
「えっ」
「この学校を買収してしまえ! 理事長になれば、ルールなど自由自在であろう!」
「……その手があったか!」
私はポンと手を叩いた。 コガネ・タワーの資産、そしてダンジョンの莫大な利益。 私立中学の一つくらい、買えないはずがない。
「……冷泉さん。あんたもだ」
私は冷泉に向き直った。
「……あんたの国税局への『天下り先』、ウチ(株式会社コガネ)で用意してやるよ。……年収は今の三倍だ」
「……買収工作ですか。公務員には通じませんよ」 冷泉が即答する。
「……『限定プレミアム・プリン一年分』をつける」 ヴェルベット用の在庫だ。
「……!」 冷泉の眼鏡がキラリと光った。 「……話を聞きましょう」
落ちた。
「……先生。この学校の『新校舎』と『最新鋭の体育館』……私が寄付しましょう」
「……!」 鬼瓦先生がゴクリと唾を飲む。 「……しかし、教育者としての矜持が……」
「……さらに、先生の『ハゲ治療費』も全額負担します(聖女アリスの育毛魔法)」
「……合格です!!」 先生がガッツポーズをした。
***
こうして。 三者面談は、圧倒的な「財力」と「政治力」によって強行突破された。
私は留年を回避したどころか、学校の『名誉理事(スポンサー)』としての地位を確立した。 出席日数は「特別活動(ダンジョン経営)」として単位認定されることになった。
「……ふぅ。金があれば何でもできるね」
夕暮れの帰り道。 私はルシファーと二人で、タワーへの道を歩いていた。
「……ヒナよ。楽しかったぞ、学校というのも」 ルシファーが満足げに笑う。
「……また呼び出されるのは御免だよ」
「ふふ。……だが、忘れるなよ」
ルシファーが空を見上げた。
「……『力』には必ず『代償』が伴う。……お前が積み上げた金と権力、それがいつか、お前自身を縛る鎖になるかもしれんぞ」
魔王の予言めいた言葉。 私は肩をすくめた。
「……その時は、その鎖も売っ払って金にするさ」
私たちは笑い合った。
だが。 タワーに戻った私たちを待っていたのは、最後の、そして最大の「オチ」だった。
リビングにて。 鏡が真っ青な顔でモニターを見つめていた。
「……オーナー。大変です」
「なんだい? また敵襲かい?」
「いいえ。……アメリカの『NASA』から緊急連絡です」
「NASA?」
「……『地球に向かってくる巨大な隕石』を発見したそうです。……その軌道が、吸い寄せられるように『コガネ・タワー』に向かっています」
「……は?」
どうやら、私が地下から掘り出した『ドラゴン・ハート』。 あれはただの魔力源ではなく、宇宙の魔力を呼び寄せる「ビーコン」だったらしい。
「……衝突まで、あと24時間です」
世界滅亡のカウントダウン。 留年どころの騒ぎじゃない。
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多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
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