異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ

文字の大きさ
66 / 67

第64話:最終奥義「100億の閃光(ゴールド・ラッシュ)」

しおりを挟む
「……鏡! 接続(リンク)完了したかい!?」

「……完了しました! オーナーの個人資産、法人口座、証券、不動産権利、隠し財産(へそくり)……全てのデータを魔力変換回路へバイパスしました!」

鏡がキーボードを叩きながら叫ぶ。額には脂汗が滲んでいる。 今から行われるのは、人類史上最も高価な「無駄遣い」だ。

「……紫雲! 砲身の冷却は!?」

「限界です! ……ですが、一発なら耐えられます! タワーの避雷針を砲塔として使います!」

「よし……!」

私はスマホの画面を睨みつけた。 銀行アプリの残高表示。 『15,348,210,500円』。 この数字が増えていくのを見るのが、私の毎晩の楽しみだった。 通帳の記帳こそが、私の生きがいだった。

「……うぅ……ううう……」

涙が止まらない。 悲しい。悔しい。 でも、やらなきゃ死ぬ。死んだら金は紙切れだ。

「……パパ! サビのラストだ! 合わせな!」

『……あァァ~……あァァ~……』 船外の善さんが、最後のロングトーンに入った。

ドラゴンの動きが止まっている今しかない。

「……食らえ、貧乏神!!」

私はスマホの『全額送金』ボタンを、親指で強く、強く押し込んだ。

【決済完了】 【残高:0円】

その瞬間。 スマホから眩い黄金の光が噴出した。

「……固有スキル発動! 【等価交換・黄金の奇跡(マネー・イズ・パワー)】!!」

ズゴォォォォォォォォォ……!!!

コガネ・タワー全体が、神々しい黄金色のオーラに包まれた。 私の150億円が、物理法則を無視した純粋な魔力エネルギーへと変換されていく。

『……な、なんだこの力は!?』 外にいるルシファーが、あまりの魔力密度に戦慄する。 『……ヒナの魔力か!? いや、これは……「欲望」の輝き!?』

タワーの先端(避雷針)に、太陽ごとき輝きが収束する。 1円=1MP。 150億MPの超極大魔法。 それは、魔王の全力すら凌駕する、資本主義の暴力だ。

「……行けェェェェェッ!!! 私の老後ォォォォォッ!!!」

私は泣きながら、発射トリガー(ちゃぶ台)を叩き割った。

ドッゴオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

タワーの先端から、極太の黄金の閃光(レーザー)が放たれた。 宇宙の闇を切り裂き、一直線にドラゴンへ向かう。 その光の中には、1万円札の幻影や、金の延べ棒の幻影が舞っているように見えた(気のせいではない)。

『……ギョ……!?』

宇宙ドラゴン『星喰い』が、迫りくる光を見て目を見開いた。 硬い装甲? 精神障壁? 関係ない。 「金」は全てを解決する。それが世の理だ。

ジュワァァァァァッ!!

黄金の閃光がドラゴンの胸部に直撃した。 ダイヤモンドよりも硬い装甲が、飴細工のように溶け、蒸発していく。

『……ギャアアアアアアアアアアアッ!!!!』

断末魔の叫び。 150億円のエネルギーは、ドラゴンの巨体を分子レベルで分解し、貫通し、彼方の星空へと消えていった。

ドォォォォォン……。

ドラゴンの残骸が、キラキラと輝く光の粒子となって宇宙空間に散らばっていく。 それはまるで、高価な金粉を宇宙に撒き散らしたような、美しくも虚しい光景だった。

『……津軽海峡ォ~……冬景色ィィィ~~……♪』

善さんの歌が終わり、静寂が訪れた。

「……はぁ、はぁ、はぁ……」

私はちゃぶ台(割れた)に突っ伏した。 勝った。 世界を救った。

「……ふふ……あはははは……」

乾いた笑いが漏れる。 スマホを見る。 『残高:0円』。 さらに、通信会社からの通知。 『パケット通信料のお知らせ:未払い』。

「……文無しだ」

私は大の字になった。 清々しいほどに、スッカラカンだ。

『……ヒナさん! やりました! ドラゴン消滅確認!』 レオナルドの歓喜の声。

『……見事じゃ。あの光、まさしく王の輝き』 ルシファーの賞賛。

『……オーナー! ……まずいです』 鏡の焦った声。

「……なんだい、まだ何かあるのかい?」

『……エネルギーを使い果たしました。……タワーの姿勢制御、および推力がゼロです』

「……え?」

窓の外を見る。 地球の重力が、再び私たちを捕らえ始めていた。 コガネ・タワーの船首が、ゆっくりと下(地球)を向く。

『……落下します! 大気圏再突入コース!』

「……ちょっ、待ちな! バリアは!?」

「アリスさんの魔力も空っぽです! このまま突入すれば、摩擦熱で燃え尽きます!」

「……嘘だろう!?」

金もなくなり、命もなくなるのか!? ふざけるんじゃないよ!

「……誰か! 誰か魔力を!!」

私は叫んだ。 だが、全員ガス欠だ。 万事休すか。

その時。 宇宙空間を漂っていた、ドラゴンの「光の粒子」が、ふわりとタワーに集まってきた。

『……おや?』 ルシファーが気づく。

『……これは、ドラゴンの魔素か? ……ヒナよ! あのトカゲ、死に際に「お土産」を残していったぞ!』

ドラゴンの死骸から放出された膨大な魔力が、タワーの避雷針に吸い寄せられ、バッテリーを急速充電していく。

『……エネルギー回復! シールド展開可能!』 紫雲が叫ぶ。

「……へ?」

どうやら、私が放った「金」の魔力が呼び水となり、ドラゴンの魔力を取り込んだらしい。 投資回収(リターン)だ!

「……よし! アリス! 最後の仕事だ!」

『はいッ! 【聖域の盾】、最大展開!!』

タワーが再び光の膜に包まれる。 私たちは炎の塊となって、地球の大気圏へと突っ込んでいった。

ゴオオオオオオオオッ!!!

窓の外が真っ赤に染まる。 振動で歯がガタガタ鳴る。

「……落ちるゥゥゥ! 東京湾へ着水するよ!!」

「キャアアアアッ!」 「ウオオオオッ!」

ドッパァァァァァァァァン!!!!!

巨大的な水柱を上げ、コガネ・タワーは東京湾(魔王城のすぐ横)へダイナミックに着水した。 大量の海水が降り注ぎ、蒸気が上がる。

シーン……。

タワーは斜めに傾きながらも、なんとか形を保っていた。

「……生きてる……?」

私は割れた窓から外の空気(潮風)を吸い込んだ。 懐かしい、東京のドブ川のような匂い。

「……帰ってきたんだね」

リビングのドアが開き、レオナルドたちが雪崩れ込んできた。

「……ヒナさん! 無事ですか!?」 「我は酔ったぞ……オロロ……」 「……パパは?」

善さんは、タワーのてっぺんでマイクを握りしめたまま、白く燃え尽きていた(無事)。

「……全員、無事だね」

私はへなへなと座り込んだ。 生き残った。 だが、現実は非情だ。

ピロン♪ スマホが鳴る。 銀行からの自動メール。 『お引き落とし不能のお知らせ。残高不足のため、電気料金の引き落としができませんでした』

「……あぁぁぁぁ……」

私はスマホを抱きしめて号泣した。 世界を救った英雄の、これが末路か。

だが、その時。 窓の外から、けたたましいヘリの音が聞こえてきた。 米軍、自衛隊、そして報道ヘリの群れだ。

『……Look! The tower is back!(見ろ! タワーが帰ってきた!)』 『……英雄だ! 世界を救ったぞ!』

そして、私のスマホに、鏡から一枚の画像が転送されてきた。

『……オーナー。泣いている場合ではありませんよ』

「……なんだい?」

『……タワーの周りの海を見てください』

私は窓から身を乗り出した。 タワーの着水地点。 そこの海面が、キラキラと七色に輝いていた。

「……油?」

『違います。……「竜血結晶(ドラゴン・ブラッド)」です』

鏡の声が弾んでいる。

『……宇宙ドラゴンの魔力を浴びて変質した、タワーの外壁剥離剤……およびドラゴンの残骸です。……これ、グラム数千万円の超レア素材ですよ』

「……は?」

私は目を凝らした。 海一面に漂う、宝石のような欠片。 それが、波に乗ってタワーに打ち寄せられている。 ざっと見積もって……数百トン。

「……計算すると……」

『……今のレートで換算して、約300億円になります』

「……」

私は電卓(脳内)を叩いた。 投資150億。回収300億。 利益率200%。

「……勝った」

私は震える手でガッツポーズをした。

「……勝ったァァァァァッ!! ぼろ儲けだァァァァッ!!」

私の歓喜の絶叫が、東京湾に響き渡った。 金は天下の回りもの。 出せば入る。これぞ錬金術の極意。

こうして。 私の「世界で一番高い買い物」は、最高の形で幕を閉じた。

……はずだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

ヤンデレ女神と征く開拓スローライフ。

山椒
ファンタジー
両親に、友達に、恋人に、嫁に裏切られ続けた男、神室千照は絶望して自ら命を絶った。 すべてが終わるという安堵感であったが次に目覚めた時には女神が目の前にいた。 千照のことをずっと見ていた女神、アマテラスは千照に異世界転生を提案する。 まだ人生に未練があった千照はそれを受け入れ、二度目の人生を送ることになる。 だが千照は知らなかった。千照にはとてつもない才能が秘められていることを。 千照は知らなかった。アマテラスがヤンデレであることを。 千照は知らなかった。彼を裏切らないものはとてつもない人格の持ち主であることを。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...