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4章

活動休止

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俺は以前共演をした齋藤紗奈さんのラジオに参加して…
紗奈さんに挨拶をするために楽屋で紗奈さんを待っていた。
岸本さんは俺に気を使って…飲み物を買いに行ってくれている。
高校生は夜の活動は禁止されているため…紗奈さんももうじき
戻ってくるだろう。

一哉『(はぁ…でも我ながら休んだ日数の少なさに驚いた…よく体を壊さずに今日までやって来たものだよ……あぁ…やばい…休んでないってことを知ったからか…体が……やばい…)』





私はスタッフさん達に挨拶をして…今日の芸能活動を終えた。
しかし…やはり、人気No.1アーティストの北野君はその場を盛り上げようと頑張ってくれる…正直ものすごく助かる。

北野さんの第一印象といえば…凄い人…ただそれだけだ。
デビューして1ヶ月で主演抜擢で前聞いた話によれば休みはとってないとか…。

私は撮影のことを思い出しながら…ゆっくりと楽屋へと戻った。

私が楽屋の扉を開けると…そこには…。

紗奈『き、北野さん…!?』
北野さんが…床に倒れていたのだ。

紗奈『北野さん!!北野さん!…スタッフさん!誰か来てください!!』
騒ぎを聞き付けたスタッフがやってきて、
スタッフ『齋藤さんどうしました!?…って…北野さん!?
どうしたしたか!?北野さん!!…齋藤さん、北野さんを見ててください。マネージャーさん探して病院につれてってもらいますから!』
紗奈『は、はい!(どうして楽屋にいるんだろう…帰ったんじゃ…)』









一哉『……ん…』
岸本『あ…北野…気がついたか?』
目を開けると…見たことがない雰囲気の天井と…心配そうに顔を除き混む岸本さんの顔があった。

一哉『ここは…というか岸本さん?どうしたんですか…』
岸本『お前は齋藤紗奈の楽屋で倒れてたんだよ…覚えてないのか?』
一哉『あー…なんか…休んでないんだなぁって思った直後に体が動かなくなって…あ!今何時ですか!?』
岸本『深夜の3時だ』
一哉『え!?岸本さん…ずっとついててくれたんですか!?』
岸本『ずっとってわけじゃないが…2時くらいからずっといる。
それまで少し用があってな』
一哉『すいません…ご迷惑お掛けして…』
岸本『お前…隠してることあるだろ』
一哉『え…?』
岸本『病院で検査してたら…問題点が見つかってるぞ』
一哉『あぁ…足のことですか』
岸本『いつから痛みは出てたんだ』
一哉『先週のPV撮影ぐらいですかね…ただの捻挫だとおもって湿布張ってたんですけど…』
岸本『シンスプリント…筋力の使いすぎだ』
一哉『…すいません』
岸本『お前には悪いが…2週間お前はオフになったから』
一哉『なんでですか!!!』
岸本『そんな足でライブの練習に出て…本番に影響が出るようなことがあったらどうするんだ?この怪我したことも、もうじきネットで拡散されるだろう。ファンにあまり心配をかけるな』
一哉『仕事をしないと…僕の存在価値がなくなります…』
岸本『お前は…リーダーとして頑張って引っ張ってきてくれたよ。でも少しは休め。そうしないと…取り返しがつかなくなるぞ』
一哉『……はい…』
岸本『相楽さんには話が通ってる…お前の仕事は他のメンバーに頼んでおく』
一哉『できる仕事は!やらせてください!ダンスや過度の動きをするものはやりませんから!…せめて…ラジオ出演やモデルの仕事はやらせてください!!!』
岸本『…』
一哉『俺のせいで他のメンバーに負担はかけたくないんです!…しっかりそれ以外は休むって約束しますから…お願いします…!』
岸本『…』
岸本さんは…しばらく黙って考えたあとに…。

岸本『わかった。ラジオとモデルだけは許す…ただしメンバーや俺と必ず行動してもらう』
一哉『ありがとうございます…!!はい!』
岸本『まあ明日から3日はその仕事はないから…病院でゆっくり休んでろ…いいな?』
一哉『はい…』
岸本『俺はそのことを他のマネージャーや相良さんに伝えにいくから…じゃあな』
一哉『すいませんでした…ありがとうございました』
相良さんが出ていったあと…俺はゆっくりと眠りについた。



翌日…俺が目を覚ますと…。
一哉『…ん…』
玲香『あ、起きた…?』
一哉『ん…その声は…玲香?』
玲香『そうだよ…大丈夫?』
一哉『あぁ…心配かけてごめん…』
玲香『私だけじゃなくて…他のメンバーももうじき来るよ…ですよね?紫藤さん?』
紫藤『多分ね。今日午前中は久しぶりに休みな子が多いから。
来てくれると思うわよ…あ、早速来たみたいね』
紫藤さんが言い終わる前に扉をノックするおとが聞こえて…
紫藤さんが扉を開けにいった。

紫藤『あれ…?あなたは…』
紫藤さんの方を向くと…そこにいたのは…。

紗奈『おはようございます…北野さん、大丈夫でしたか?』
一哉『あ…あぁ…すいません…ご迷惑おかけして…』
紗奈『いえいえ…お忙しい中引っ張り出しちゃってすいません…』
一哉『そんな遠いところでなくて…どうぞ入ってください』
紗奈『あ、いえ…このあと取材ですぐいかなければいけないので…』
一哉『そうですか…お忙しい中…ありがとうございました』
紗奈『じゃあ…これで』
紗奈さんは俺におじぎをして…去っていった。

紫藤『…まさか…北野君、付き合ってるんじゃないでしょうね?』
一哉『ち、ちがいますよ!昨日…紗奈さんのラジオに出させてもらって…楽屋で挨拶するために待ってるときに倒れちゃったんです!』
紫藤『本当に?』
??『それは本当ですよ。紫藤さん』
声がする方を見てみると…岸本さんが来ていた。
紫藤『お疲れ様です…ならいいんですけど』
岸本『北野はそういうところはしっかりしてますから…ご安心を』
玲香『一哉…それで大丈夫なの?』
一哉『あぁ。問題ないよ』
岸本『まったく…(足のことは隠したいんだな…)』
一哉『まあ…すぐに復帰するから』
岸本『そういえば…今日からBSSのブログがスタートするから
北野も…報告しとけ。ニュースで話題になってるから』
一哉『あ…忙しくてすっかりブログのこと忘れてた…』
紫藤『そういうところは抜けてるのね…10時に解禁だからね。
玲香も初日ぐらいは更新するようにね』
玲香『はい!気を付けます!』
岸本『じゃ…俺たちは行こう。紫藤さんにも話があるので』
紫藤『え?…わかりました。玲香スタジオまでタクシーでこれる?』
玲香『全然行けますよ!お疲れ様でした!』
岸本『じゃ、北野は休めよ?紫藤さん…事務所へいきましょう』
紫藤『はい』

二人は真剣な顔をして事務所へと戻っていった。

玲香『まさか初日のブログが倒れたことの報告になるなんてね笑』
一哉『あはは…』
玲香『…紗奈さんのこと…一哉はどう思ってるの?』
一哉『あぁ…どうも思ってないよ…ルール破ってまで恋愛をするつもりはないからさ』
玲香『そうなんだ…(…)』
一哉『もし…メンバーが恋をしたいというなら…応援はするけどな』
玲香『そっか…』
一哉『あぁ』
玲香『…私もそろそろいくね…ライブまで時間ないし』
一哉『ん?あ、あぁ…ごめんな』
玲香『うん…じゃあね』
玲香は言い終わると同時に背を向けて歩き出した。



気のせいだろうか…彼女の目に涙が浮かんでいるように見えたのは…。
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