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『凶なこと』
試練Ⅱ
しおりを挟む「……わかった。 思いついたよ、あいつを捕まえる方法を。」
「まぁ、まだうまくいくかどうかわかんないんだけど。」
「へー、そうなんだ!! それならこの試練クリア目前……って、ぅえぇ?!! まだ始まって少ししか経ってないのに!?」
「テストだとあんな点しかとれないバカのくせに意外にやるね! ねぇ、どうやるのか教えて?? ねーえってば!!」
エイレネはわかりやすく驚いていた表情をしており、目をキラキラさせ、羽根をパタパタさせている。
この種の生物は驚くとこうなるのだろうか。
見た目が幼女である手前、天真爛漫な雰囲気が大層かわいらしい。
いや、俺はロリコンではないのだが。
あと聞き逃すとこだったが、ちょっと貶されなかったか?
まぁ、細かいことは気にしないでおこう。
「残念だけど、方法は教えられない。」
あっさり断ってやった。
「えー?! なんでよー!! いいじゃん! ケチ!」
「…あのな、前提としてお前はこの試練の運営側だろ? つまりお前は俺の存在を補填エネルギーに回そうとしてる側の人間、もとい生物な訳だ。 そんなお前に俺が思いついた方法を教えたら即座に対策されるかもしれないだろ。 やっと手に入れた微かな希望をみすみすドブに捨てるやつがどこにいるんだよ。」
「あ、なるほど。 それもそうか!」
頭の隅にすらなかったのだろうか、エイレネは感心した様子を見せている。
もしかしたら杞憂だったのかもしれないが、リスクを考えると正しい判断だと思う。
「あ、あと聞いてなかったが、強化のやり方も教えて欲しい。」
「え? あ、そういえばその辺詳しく言ってなかったね! やり方はねー、、」
エイレネによると、" 強化 "は、強化対象に触れた状態で、2秒間念じることで発動するらしい。
そこで、もし対象が強化済みであった場合は何も起こらず、未強化の場合は対象の能力の内、1つの能力だけが望んだように強化される。
" 強化 "の使用回数は1回で、期限は能力発動時から試練終了まで。
また、強化対象に関して、能力における具体的な数値があるものについては約10倍を限度として強化される、とのこと。
ふとアラームを確認すると残り54分程となっている。
急いで諸々準備しなくてはならない。
というのも、捕まえるための強化方法は思いついたが、相手を追い込む具体的なプランまでは全く考えていなかったのである。
当たり前の話だがエンカウントしないことには何も始まらない。
差し当たって人形を探すことを始めることにする。
「よし、それじゃあ時間もないし、行ってくる! さっきの質問、答えてくれてありがとうな!」
「え、それはどういたしましてだけど……、教えてよー!!」
校舎に向けて走り出した俺は、徐々に小さくなるエイレネの声を聞きながら、プランを考える。
校舎の入り口に到達し、靴を履き替えることもなく土足で玄関前の廊下へと上がった。
「ふぅ…、どこに逃げやがった? そんで、どこ行けばいいんだ…?」
俺の通う高校は校門から見て正面に校舎があり、その奥にグラウンドとプールがある。
そして校舎自体は、タワーホテルのような構造をしている。
具体的には円柱のような建物で、4階建て。
1階に体育館と職員室があり、2~4階に生徒の教室と、美術室や音楽室といった教室が点々とある。
「…まぁ、とりあえず学校の花形って感じもするし、体育館に行けばなんとかなるはず!」
我ながら短絡的思考がここに極まっている。
そうは思いながらも体育館へ向けて走り出す。
「はぁ、はぁ…、体育館まで遠過ぎ。」
そう呟きながら体育館特有の重い扉を開け、中を確認し、威勢よく『出てこい!』と叫ぶ……予定だった。
俺が体育館の扉の片方を少し開けた時、扉が予想以上に重かったため、体勢を若干崩した。
その時、扉の隙間から凄まじい速度で飛び出してきた何かが、風を切る音と共に髪の毛を掠め、背後で大きく鈍い音を立てる。
飛んできたものが何かを確認すると、それは陸上競技用の砲丸であった。
あの速度で飛んできた砲丸に当たりでもしたらひとたまりもないだろう。
即座に身の危険を感じつつもこの状況がどういうことか考え、体育館の中を確認すると、体育館には砲丸を振りかぶった状態の人形がいた。
人形を発見できたという点に関しては願ってもない状況だが、この状態の人形と合間見えるのは全く願っていない状況だ。
そして認めたくはないが、エイレネに言われたように、俺はやはりバカなのかもしれない。
俺は鬼ごっこという遊びを知っているし、もちろん何度もやったことがある。
このため、この試練と通常の鬼ごっことの違いを深く考えていなかった。
通常の鬼ごっこの場合、逃げる側は逃げる以外の選択肢がない。
なぜなら、逃げることしかできないからである。
しかし今回の試練では逃げる側にもう1つ選択肢があるのだ。
それは、捕まえる側の無力化。
至極簡単な話である、あの人形は俺を殺そうとしているのだ。
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