シャボン玉

ヨージー

文字の大きさ
2 / 4

2.

しおりを挟む
 尚太は部屋に戻る。自室は高校を卒業したきり、特段手を加えていない。そのため、少しばかり人を招くには躊躇する仕様だ。汚い、というよりは幼い。それでもめんどくさがって尚太は部屋に手を加えない。でも、そう、ほんの少しだけ変えたくない理由がある。尚太はそのことに思い当たって、あまり見ない本棚の下の段を探る。硬いざらついた感触。尚太の高校の卒業アルバムだ。尚太はそのページをめくる。クラスの写真、ここには用はない。あの子はここに載っていないからだ。

 西日がきつい放課後。自転車がパンクしてしまい、尚太は汗を流しながら自転車を押していた。尚太の通学路は河川敷をひたすらまっすぐに進む。川の照り返しが夏場は特に眩しい。しかし、この時間帯はむしろ揺らぐ光に物悲しさを覚える。河川敷に一人女生徒が座っている。尚太はクラスメイトのその子の名前を呼ぶ。
「ここで何してるの?」
「あ、竹内くん」
 女生徒は立ち上がってからお尻をはたいた。こちらを振り返り、尚太の方へ歩いてくる。尚太もあわてて自転車にスタンドをたてて、歩み寄る。女生徒は笑顔で手元の物を持ち上げる。
「シャボン玉?」
「さっき、スーパーのレジ前で見つけて、つい」
「好きなの?」
「いや、べつに。さすがに幼いかな」
「変わってるね」
 彼女はなにも言わずにシャボン玉を吹いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

転身

S.H.L
青春
高校のラグビー部でマネージャーとして静かに過ごすつもりだったユリ。しかし、仲間の危機を救うため、思いがけず選手としてフィールドに戻る決意をする。自分を奮い立たせるため、さらに短く切った髪は、彼女が背負った覚悟と新しい自分への挑戦の象徴だった。厳しい練習や試合を通して、本気で仲間と向き合い、ラグビーに打ち込む中で見えてきたものとは——。友情、情熱、そして成長の物語がここに始まる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...