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第十四章:彼らにとっては最後の青い春
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――前夜祭は、文化祭実行委員長の挨拶につづいて、生徒会長の挨拶をして始まる。開幕の挨拶ということで文化祭実行委員長である女子生徒・笹塚汐花(ささづか せっか)がステージにあがった時点で生徒たちは大盛り上がりしていた。
「……すごいですね、前夜祭って」
「夜ってことでみんなのテンションも高いんじゃないかな」
「あーなるほど」
舞台袖で待機している波折に、沙良がこっそり話しかけてみる。今日の波折は、特別な衣装を着ていた。生徒会長として挨拶をするということで、スーツを着ている。それはもう様になっていて、裏で作業をしている生徒たちがしきりに波折のほうをちらちらとみているほど。
汐花は挨拶を終えると、意気揚々として裏に戻ってきた。汐花はふんわりとしたショートカットが似合う美少女で、彼女もまたレディースのスーツを着ていて見目麗しい。波折の前にくると彼女はにっこりと笑って、波折の肩を叩く。
「じゃ、冬廣くん、次よろしくね! ぶっちゃけ私よりも冬廣くんがメインだから、この挨拶!」
「いや、笹塚さんこそこの学園祭の顔だから……すごくいい挨拶だったよ」
「冬廣くんのほうが校内人気すごいから! はい、いってらっしゃーい! スーツ姿の冬廣くんみたらみんなきっと大騒ぎするよ!」
汐花がとん、と波折の背を押してひらひらと手を振る。波折は苦笑しながら手を振り返して、ステージへ向かっていった。
「――わっ」
波折がステージに出た瞬間、すさまじい歓声が巻き起こる。あまりの煩さに、沙良は思わず耳を塞いだ。これは学園祭のはじまりに浮足立った歓声ではなく、明らかに波折に対して向けられている歓声。女生徒の声量が先程よりも増していて、「黄色い声」と表現するのが相応しい歓声だ。
『皆様が待ちに待ったこの日がやって参りました――』
波折のスピーチは、歓声に埋もれてほとんど聞こえない。裏で様子をうかがっていた生徒たちも、そのあまりの歓声に驚いていた。「あそこまで人気あったんだ生徒会長……」やら「格好もいつもと違うししょうがない……」やら、ひそひそと話している。もはや感心している、というよりも引いている、といったレベルだ。沙良ですら、ひきつった笑みを浮かべてしまうほど。
「この前夜祭、テレビでも放送されるんだよ!」
ステージを覗いていた沙良の横に、ひょっこりと汐花が現れる。彼女はふふふ、と笑いながら沙良に話しかけてきた。
「いやーこれで来年のJSの入学志望者増えちゃうね! あんなカワイイ生徒会長さんがいるって知られたら!」
「うーん、たしかに……え? 笹塚先輩、今波折先輩のことカワイイって言いました?」
「何かおかしなことでも? 冬廣くん、かわいい~よね。王子様って言われているから絶対的攻め様っぽいじゃん、でもアレ受けだと思うんだよね~」
「……なんの話してるんです?」
汐花が何やら意味不明の話をしているうちに、波折のスピーチは終わったようだ。波折が裏に戻ってくる。
「波折先輩、おつかれさまです!」
挨拶が終わればさっそくステージ発表。裏で待機していたトップバッターのダンス部員たちが準備をはじめる。
「今日はね、みんなみたいに楽しむだけってわけにはいかないけど、明日は生徒会も自由だから」
準備の手伝いをしている沙良に、波折が言う。これから自分たちは花火大会の準備。ステージ発表をろくにみることもできないのは残念だが、とくに辛いとは思わない。自分たちの準備をしたものでみんなが楽しんでくれるなら、それはいいことだと沙良は思っていた。
「俺は準備も楽しいから全然いいんですけどね。でも花火の噂、どうなるんだろう」
「花火?」
「ほら、一緒にみたら両想いになれるってやつ! 一応一緒にはみれるじゃないですか、俺、波折先輩と!」
「ノーカン。あれは一緒にみるとは言わない」
「ですよねー」
せっかくのジンクス、ちょっとやってみたいと思うのは、好奇心から。実行できないからといって落ち込むほどその噂を信じてはいないが、ちょっと残念だな、と沙良はうなだれる。
「いいじゃん、神藤。おまえは」
そうしていると後ろから鑓水が沙良に声をかけてくる。う、と思って振り返ると、バサッと何かを顔にかけられた。慌てて手にとって見れば、それはドレスだった。
「舞台の上で、波折と結ばれるんだからさ」
「う、うるさい!」
ぶ、と吹き出しながら鑓水が沙良を見下ろす。隣で波折も笑いをこらえているのをみて、沙良は顔を真っ赤にした。
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