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第十四章:彼らにとっては最後の青い春
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お昼を少しすぎたころ、沙良たちの出番が近づいてくる。リハーサル室で最終調整を行った後に、会場となる体育館へ向かった。出演者用の裏口から入ってみれば、すでに違うグループのパフォーマンスをしている音が中から聞こえてくる。沙良たちと同じようにバンド演奏をしているグループだったため、なんだか緊張を煽られてしまう。
「あ~緊張する」
「歌詞間違えんなよ」
人前で演奏することが久々な沙良も他のメンバーと同じように緊張してしまう。少し指先の感覚がなくなってきたな~、と思っていれば、メンバーの一人が扉の隙間から客席を覗き始めた。
「なにやってんの」
「生徒会きてないかな~って」
「えー、ここからみえないんじゃない」
他のメンバーも緊張をほぐしたかったのか、一緒に客席を見始めた。沙良もつられて一緒に覗いてみれば……
「あっ」
生徒会のメンバーは、あっさりと発見することができた。波折だけでなく、鑓水や可織、そして月守も。生徒会のメンバーがまとまって客席の前のほうにいたのだ。これはかなり緊張するな、と沙良が思っていると、なんと波折がこちらに気付いてしまう。沙良とバチリと目があって、そしてふっと笑って手を振ってきた。
「ウッ……」
「ど、どうした沙良!」
「……勃起しそうになった」
「まじかよ! おまえもなかなか重症じゃねーか!」
手を振ってくるレア波折をみることができたメンバーは、みんなで騒ぎ出す。手を振られた沙良本人だけでなく、みんなでぎゃーぎゃーとしだすものだからいつのまにか緊張はとけていた。
「波折ー、どうした?」
「あそこに、沙良がいた」
「ほお」
客席にいる生徒会のメンバーは、沙良の登場を待ちわびているらしい。波折以外は沙良が楽器を演奏するところを見たことがないから、というのもあるだろう。
「あれ、波折さん!」
「?」
ふいに、波折が誰かから声をかけられる。はっとして声のしたほうをみれば、そこには夕紀とその友人らしき女の子が立っていた。鑓水が「誰?」という顔をしていたため波折はこっそり「沙良の妹さん」と教えてやる。
「こんにちは波折さん!」
「こんにちは」
「波折さんのクラスいきましたよ! 波折さんいなくて残念でしたけど」
「う、うん」
隣で鑓水が「波折がいるときにいけば波折のおっぱい揉み放題」とか言っているため波折は鑓水を小突く。夕紀は首をかしげながら波折のもとに寄ってきて、さらに話を続けた。
「お兄ちゃんのバンドみるんですか?」
「うん」
「お兄ちゃん鍵盤楽器とっても上手なんですよ! 取り柄それしかないし」
「そんなこと言ってやらないで」
にこにこと笑っている夕紀を、波折は撫でてやる。夕紀はわー、と顔を赤くしながら嬉しそうにはしゃいでいた。そうして話をしているうちに次のパフォーマンスがはじまる、というアナウンスがなってしまう。夕紀たちは「じゃあね波折さん!」と言って後ろの方の空いている席に向かってかけていった。
おちていた幕があがってゆく。それと同時に客席は拍手で湧いた。ステージに、バンドのメンバーが立っている。ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムの五人構成。服装は私服。一個前のバンドは黒を基調とした派手な私服だったのに対し、沙良たちのバンドの服装はカジュアルな私服。なんとなく服装でバンドの傾向もわかるなあ、と波折がぼんやりと眺めていれば、ボーカルの北村がMCを始める。
「あ~緊張する」
「歌詞間違えんなよ」
人前で演奏することが久々な沙良も他のメンバーと同じように緊張してしまう。少し指先の感覚がなくなってきたな~、と思っていれば、メンバーの一人が扉の隙間から客席を覗き始めた。
「なにやってんの」
「生徒会きてないかな~って」
「えー、ここからみえないんじゃない」
他のメンバーも緊張をほぐしたかったのか、一緒に客席を見始めた。沙良もつられて一緒に覗いてみれば……
「あっ」
生徒会のメンバーは、あっさりと発見することができた。波折だけでなく、鑓水や可織、そして月守も。生徒会のメンバーがまとまって客席の前のほうにいたのだ。これはかなり緊張するな、と沙良が思っていると、なんと波折がこちらに気付いてしまう。沙良とバチリと目があって、そしてふっと笑って手を振ってきた。
「ウッ……」
「ど、どうした沙良!」
「……勃起しそうになった」
「まじかよ! おまえもなかなか重症じゃねーか!」
手を振ってくるレア波折をみることができたメンバーは、みんなで騒ぎ出す。手を振られた沙良本人だけでなく、みんなでぎゃーぎゃーとしだすものだからいつのまにか緊張はとけていた。
「波折ー、どうした?」
「あそこに、沙良がいた」
「ほお」
客席にいる生徒会のメンバーは、沙良の登場を待ちわびているらしい。波折以外は沙良が楽器を演奏するところを見たことがないから、というのもあるだろう。
「あれ、波折さん!」
「?」
ふいに、波折が誰かから声をかけられる。はっとして声のしたほうをみれば、そこには夕紀とその友人らしき女の子が立っていた。鑓水が「誰?」という顔をしていたため波折はこっそり「沙良の妹さん」と教えてやる。
「こんにちは波折さん!」
「こんにちは」
「波折さんのクラスいきましたよ! 波折さんいなくて残念でしたけど」
「う、うん」
隣で鑓水が「波折がいるときにいけば波折のおっぱい揉み放題」とか言っているため波折は鑓水を小突く。夕紀は首をかしげながら波折のもとに寄ってきて、さらに話を続けた。
「お兄ちゃんのバンドみるんですか?」
「うん」
「お兄ちゃん鍵盤楽器とっても上手なんですよ! 取り柄それしかないし」
「そんなこと言ってやらないで」
にこにこと笑っている夕紀を、波折は撫でてやる。夕紀はわー、と顔を赤くしながら嬉しそうにはしゃいでいた。そうして話をしているうちに次のパフォーマンスがはじまる、というアナウンスがなってしまう。夕紀たちは「じゃあね波折さん!」と言って後ろの方の空いている席に向かってかけていった。
おちていた幕があがってゆく。それと同時に客席は拍手で湧いた。ステージに、バンドのメンバーが立っている。ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムの五人構成。服装は私服。一個前のバンドは黒を基調とした派手な私服だったのに対し、沙良たちのバンドの服装はカジュアルな私服。なんとなく服装でバンドの傾向もわかるなあ、と波折がぼんやりと眺めていれば、ボーカルの北村がMCを始める。
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