11 / 357
第一章:憧れの生徒会長様
10
「あっ、おはようございます」
生徒会室に入った瞬間、沙良は心臓が飛び出しそうになってしまった。生徒会室に、波折がきていたのだ。動揺を悟られないように挨拶をすれば、彼はにこやかに返してくれる。昨日、自分はあれだけ波折のことを考えていたのに、波折は全く気にしていないようで、少し癪に障った。拒絶をみせたのはあの一瞬だけで、これから近づこうとしなければきっと彼は、こんな笑顔をこれからも向けてくれるだろう。……でもそれはなんとなく、面白くない。
「こんな朝早くきて……なにしていたんですか?」
「ああ……ペンをここに忘れて来ちゃって」
「意外と波折先輩でもドジ踏んじゃうんですね」
「そんなに意外かな」
沙良はさりげない会話を交わしながら、自分の席へ向かってゆく。副会長である沙良の席は、生徒会長の席に近い。自分の席について、波折との距離が縮まったところで……沙良は、波折の体のあるものに、気付く。
「あれ……波折先輩、それなんですか」
「それ?」
「これ。昨日はなかったですよね」
沙良はちょいちょいと自分の手首を指し示す。
――波折の手首についている、赤黒い痕。波折が手をのばしたときにカーディガンの裾から、一瞬見えたのだ。
「――ッ」
沙良が気になって指摘すると……波折はハッとしたように、手首を隠す。表情を確かめるように沙良をみつめ、そして、視線を泳がせながら言った。
「あ、ああ……えっと、昨日強くぶつけちゃって」
「え、大丈夫ですか? 痛そう」
「あ、ちょっ、」
結構はっきりと、その痣はついている。沙良は心配になって、波折の手を掴んでその痣をまじまじと見つめた。波折は沙良の手をはらうように、もう片方の手で軽く抵抗してくる。しかし、その手をみて……沙良は、訝しげに眉をひそめた。
「あれ、そっちの手も同じような痣……どっちもぶつけたんですか?」
「――っ」
波折の、息を呑むような声が聞こえた。それと同時に、思い切り手を振り払われる。
(あ、しまった)
あまり近付くな、と。鑓水の言葉をいまさらのように思い出す。痛そうな痣だったため無意識に彼に近づいて、彼の手を掴んで……ということをやってしまったが、今、思い切り自分は彼に近づいてしまった。
「……あ、ごめん。く、くすぐったかったから」
「いえ……すみません、無理やり」
波折は、あからさまに嫌そうな顔をしていた。上辺の付き合いを保つため、の笑顔は浮かべているが、その目が笑っていない。
(なーんだよ、俺は心配してやってんだぞ、そんな顔する必要なくねえ?)
波折がいったいなぜ人と深く関わることを避けているのかは知らないが……正直、腹がたった。悪気なんて全くないし、そこまで無理に距離を詰めようとしたわけでもないのに。沙良は苛々としてしまって、忘れ物のノートを少し乱暴に掴む。
「……じゃあ、波折先輩。また放課後」
授業の始まる時間も近い。沙良はさっと波折に挨拶をすると、足早に教室から飛び出していった。
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー