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第三章:もっとキミのことを知りたくて
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「はあ……」
結局昨日は一睡も出来ず。沙良は目の下に隈をつくって登校した。ふらふらと、おぼつかない足取りで校門をくぐる。
遠くの方で、黄色い声が聞こえてきた。ざわ、と胸の中がざわめいた。恐る恐る、騒がしいほうへ目をやれば――いた。生徒会長・冬廣波折。波折はまわりの、波折へ敬愛の眼差しを向けながら挨拶をしてくる生徒たちに、にこやかに挨拶を返している。まるで何事もなかったのように。いつもの、爽やかな王子様だ。
「……あっ」
人に囲まれているからか、波折の歩くスピードはだいぶ遅かった。沙良は波折に追いついてしまって、思わず波折のいるところを避けて通る。が、波折は沙良のことを発見してしまったようだ。ばちりと目が合って、沙良は固まった。しかし、その目はふいっと逸らされてしまう。波折はそのまま何もみなかったように歩き出したのだ。
「く……」
胸の中のもやもやが晴れない。沙良は走って、波折のもとへ行く。何を言うかも決めていなかったが、このまま今日一日を過ごせる気がしなかったのだ。
「な、波折先輩……!」
人の群れを掻き分けて、沙良は波折の手を掴んだ。波折はぎょっとしたように目を瞠ったが、手を振りほどきはしなかった。しかし、わずかに嫌そうに顔を歪める。ちらりと周りにいる人達をみつめると、沙良を引っ張るように歩き出す。周りから「生徒会仲いいね~」なんてのんきな声が聞こえてくるが、気にしていないようだ。
「……なにか、用?」
「あ、い、いや……あの」
人混みを抜けだしたあたりで波折は手を振りほどいて、冷たい声で沙良に言い放った。人混みを抜けたのは、波折が沙良に話があるというわけではなく、この冷たい態度を他の生徒にみせないためのようだ。何を言うべきか決めていなかった沙良は、問われて、どもりだす。波折はそんな沙良の様子を鬱陶しそうに見つめている。
「……昨日のあれは、俺の体質だから。チョコレートを食べるとああなるんだ。だから、昨日のことは全部なかったことにしてくれ」
「な、なかったことって……そんな、」
「なにか?」
「い、いや……突っ込みどころ多すぎますけど……ま、まず……あんなことになって、全部なかったことなんて、無理に決まっているじゃないですか……あ、あんな……え、エロ……」
「……俺はなんとも思ってない。勝手に意識するのは構わないけど、俺に余計に絡んでこないでくれる? 鬱陶しいんだよ」
「な、なんだってえ……?」
昨日のは、8割自分が悪い。沙良はそう思っていたが、そんなことを言われてしまうとカチンとくる。だって、残りの2割は波折が悪いじゃないか。先に迫ってきたのは、波折のほうだ。それなのに、自分ばかりが意識していて波折が何も感じていないというのが腹立たしかった。
「だ、大体! 迫ってきたのはそっちのくせに! 俺の上に乗っかって腰振ったのはどこのどいつだよ! こっちばっかりパニくってるとか、なんか不公平だろ! あんたにも非はあるんだぞ!」
「……あんなんで興奮して襲ってくるとか、どんだけ飢えてんだよ。エロ動画ばっかりみてないで彼女でもつくれば」
「な、な、なんだと~!?」
しれっと嫌味を言ってくる波折に、沙良も堪忍袋の緒が切れそうになった。そのままスタスタと先にいってしまう彼を、沙良は睨みつける。
(罪悪感覚えていた俺が馬鹿だった! あいつホント、最低だ!)
それまで沙良のなかにあった、波折への後ろめたさとか申し訳なさとか、そういったものは全て吹っ飛んでしまった。そして、また昨日までの波折への嫌悪が復活してしまったのだった。
結局昨日は一睡も出来ず。沙良は目の下に隈をつくって登校した。ふらふらと、おぼつかない足取りで校門をくぐる。
遠くの方で、黄色い声が聞こえてきた。ざわ、と胸の中がざわめいた。恐る恐る、騒がしいほうへ目をやれば――いた。生徒会長・冬廣波折。波折はまわりの、波折へ敬愛の眼差しを向けながら挨拶をしてくる生徒たちに、にこやかに挨拶を返している。まるで何事もなかったのように。いつもの、爽やかな王子様だ。
「……あっ」
人に囲まれているからか、波折の歩くスピードはだいぶ遅かった。沙良は波折に追いついてしまって、思わず波折のいるところを避けて通る。が、波折は沙良のことを発見してしまったようだ。ばちりと目が合って、沙良は固まった。しかし、その目はふいっと逸らされてしまう。波折はそのまま何もみなかったように歩き出したのだ。
「く……」
胸の中のもやもやが晴れない。沙良は走って、波折のもとへ行く。何を言うかも決めていなかったが、このまま今日一日を過ごせる気がしなかったのだ。
「な、波折先輩……!」
人の群れを掻き分けて、沙良は波折の手を掴んだ。波折はぎょっとしたように目を瞠ったが、手を振りほどきはしなかった。しかし、わずかに嫌そうに顔を歪める。ちらりと周りにいる人達をみつめると、沙良を引っ張るように歩き出す。周りから「生徒会仲いいね~」なんてのんきな声が聞こえてくるが、気にしていないようだ。
「……なにか、用?」
「あ、い、いや……あの」
人混みを抜けだしたあたりで波折は手を振りほどいて、冷たい声で沙良に言い放った。人混みを抜けたのは、波折が沙良に話があるというわけではなく、この冷たい態度を他の生徒にみせないためのようだ。何を言うべきか決めていなかった沙良は、問われて、どもりだす。波折はそんな沙良の様子を鬱陶しそうに見つめている。
「……昨日のあれは、俺の体質だから。チョコレートを食べるとああなるんだ。だから、昨日のことは全部なかったことにしてくれ」
「な、なかったことって……そんな、」
「なにか?」
「い、いや……突っ込みどころ多すぎますけど……ま、まず……あんなことになって、全部なかったことなんて、無理に決まっているじゃないですか……あ、あんな……え、エロ……」
「……俺はなんとも思ってない。勝手に意識するのは構わないけど、俺に余計に絡んでこないでくれる? 鬱陶しいんだよ」
「な、なんだってえ……?」
昨日のは、8割自分が悪い。沙良はそう思っていたが、そんなことを言われてしまうとカチンとくる。だって、残りの2割は波折が悪いじゃないか。先に迫ってきたのは、波折のほうだ。それなのに、自分ばかりが意識していて波折が何も感じていないというのが腹立たしかった。
「だ、大体! 迫ってきたのはそっちのくせに! 俺の上に乗っかって腰振ったのはどこのどいつだよ! こっちばっかりパニくってるとか、なんか不公平だろ! あんたにも非はあるんだぞ!」
「……あんなんで興奮して襲ってくるとか、どんだけ飢えてんだよ。エロ動画ばっかりみてないで彼女でもつくれば」
「な、な、なんだと~!?」
しれっと嫌味を言ってくる波折に、沙良も堪忍袋の緒が切れそうになった。そのままスタスタと先にいってしまう彼を、沙良は睨みつける。
(罪悪感覚えていた俺が馬鹿だった! あいつホント、最低だ!)
それまで沙良のなかにあった、波折への後ろめたさとか申し訳なさとか、そういったものは全て吹っ飛んでしまった。そして、また昨日までの波折への嫌悪が復活してしまったのだった。
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