53 / 357
第五章:キミとの時間は刹那に
10
燃えるような赤に染まっていた空は、案外あっさりと夜の色に移っていった。半分が青になっていて、赤と混ざって不思議な雰囲気を醸し出している。そんな空をぼんやりと見上げながら歩いていた波折は、ふ、と吹いた風にぴくりと震えた。柔らかい風で自分の体に染み付いた沙良の匂いがふわりと浮く。ベッドやソファで彼に抱かれて眠ったときのぬくもりを思い出して、波折はひとつ、まばたいた。
「……!」
そのとき、ポケットに入っていたスマートフォンが震える。なんとなく、誰がかけてきたのか波折は察した。画面に映る発信元の名前をみて一瞬、出るのをためらった。しかし、無視はしない。
「……はい」
「もしもし、波折。今どこ?」
「えっと……外に」
「ああ、もしかして神藤くんの家に泊めてもらったのかな」
「……あ、あの……すみません、すぐ帰るので、」
「いいよいいよ、怒ってない。でも早く帰っておいで、波折。俺もおまえの家にいくから」
いつのまにか波折は立ち止まって会話をすることに必死になっていた。スマートフォンを持つ手は、どことなく震えている。
「――たくさん、愛しあおうね、波折」
空からは赤が消えかかっていた。夕日は……消えていくのが早いのだと、波折はぼんやりとそう思う。光が消えてゆく空を見上げていると、なんとなく心が落ち着いた。沙良の家でみたあのまばゆさに覚えた苦しさとは、全く違う安心感。
「……はい、ご主人様」
一言、電話の向こうの相手を呼んだとき――自分には光は似合わないのだと、そう思った。
「……!」
そのとき、ポケットに入っていたスマートフォンが震える。なんとなく、誰がかけてきたのか波折は察した。画面に映る発信元の名前をみて一瞬、出るのをためらった。しかし、無視はしない。
「……はい」
「もしもし、波折。今どこ?」
「えっと……外に」
「ああ、もしかして神藤くんの家に泊めてもらったのかな」
「……あ、あの……すみません、すぐ帰るので、」
「いいよいいよ、怒ってない。でも早く帰っておいで、波折。俺もおまえの家にいくから」
いつのまにか波折は立ち止まって会話をすることに必死になっていた。スマートフォンを持つ手は、どことなく震えている。
「――たくさん、愛しあおうね、波折」
空からは赤が消えかかっていた。夕日は……消えていくのが早いのだと、波折はぼんやりとそう思う。光が消えてゆく空を見上げていると、なんとなく心が落ち着いた。沙良の家でみたあのまばゆさに覚えた苦しさとは、全く違う安心感。
「……はい、ご主人様」
一言、電話の向こうの相手を呼んだとき――自分には光は似合わないのだと、そう思った。
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー