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第十章:その弱さを知ったとき
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しおりを挟む「……あの、慧太」
波折の家に向かうまでの電車のなかで、鑓水は終始無言だった。そのかわりに、波折の手を掴んで、肩に頭を乗せている。
波折としてはどれほどくっつかれようと構わないが……完全に注目の的だ。電車のなかの女性はちらちらとこちらをみているし、ちらほらといるJSの生徒に至っては写真までとっている。
会長と副会長がこんなことをしていれば仕方ないか、と思いつつ、いつもは多少人目を気にしている鑓水はこれでいいのか、と波折は心配になった。
(……慧太、弱いなあ)
波折は諦めて、手のひらの上に返して鑓水と指を絡めてやる。
苦手な家に帰って家族と少し話しただけでこんな風になって。そもそも波折を求めてきているのも、一番であり続けたことに対するストレスからのようなものだ。
「……家に帰ったらいくらでも俺を使っていいからね」
縋ってくるのはべつに構わない。でも……自分が離れていった時、彼はどうなるのだろうと――波折は不安を覚えた。
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