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第十章:その弱さを知ったとき
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「……?」
瞼をあける。視界がぼやぼやと不鮮明で……次第にはっきりとしてくる。暗闇の中に、波折がいる。自分を心配そうに覗きこんで――
「……えっ、波折!?」
鑓水は覚醒と同時に体を跳ね起こす。びっくりしたような表情でこちらを見ている波折は、どうやらピンピンとしていた。一体何が起こっているのかわからない……鑓水は辺りを見渡して、自分たちがいる場所が波折の部屋だということに気づく。そして、傷だらけだったはずの体が全く傷まない、ということも。
「あれ……俺達、兄貴に……波折? 体、平気なのか?」
「あっ……えっと……うん、俺は大丈夫だよ。慧太こそ……大丈夫?」
「ああ……なんで俺達普通にここにいるの?」
「えーっと……気付いたらここにいた、かな」
「……そ、っか……」
波折がしどろもどろに話しているのを、鑓水はじっと見つめる。自分が意識を失ったあとに何かがあったのは確実だ。波折は早い段階で意識を失っていたから、それを見たのかは定かではない。鑓水は波折にそれ以上聞いても真実を知ることはできないと悟り、彼を言及するのを諦める。
「……兄貴は、生きてるよな?」
「……わ、わからない」
「……明日家にいってみる」
「えっ?」
錫が波折の「ご主人様」に家まで飛ばされたところを見ていない鑓水にとって、錫の行方が気がかりだった。波折や棗に酷いことをした彼のことを鑓水は嫌悪しているが、彼が行方をくらませたりでもすれば、家族が混乱してしまう。ましてや彼は魔術を使っていた。魔女にでもなられたら、彼の家族である自分がどうにかしてけじめをつけなければ、そう思ったのだった。
「波折」
「……んっ」
これからやることを決めると、不思議と心が落ち着いた。ふと視界に入った波折をみて、鑓水は頬を緩める。あの時は本当に死にそうだったのに、こうしてちゃんと生きている。鑓水は溢れてくる嬉しさに耐え切れず波折を引き寄せて、抱きしめた。腕のなかにすっぽりと収まった波折が暖かくて、本当に彼が無事なのだと実感した瞬間に、鑓水は嬉しくて静かに涙を流した。鑓水が泣いたことに気付いた波折が驚いて「慧太?」と何度か名前を呼んでいたが、それに応える代わりに鑓水は波折の頭にキスを落とす。
「……俺、明日学校休むわ」
「……うん」
「波折」
「……うん」
「……愛している」
「け、慧太……だから、それはだめだって――ん、」
波折の言葉を、鑓水は唇で塞いだ。波折はびくっと震えて、しばらくとんとんと鑓水の胸を叩いて抵抗していたが……やがて、くたりと鑓水に体を委ねて、鑓水のキスに翻弄されてしまっていた。
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