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第十章:その弱さを知ったとき
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授業と授業の間の休み時間。波折は近くの席の女子に話しかけられていた。しかし、途中でスマートフォンが鳴ったため彼女に謝りながら、廊下にでていく。発信元をみた波折は、あ、と小さな声をあげた。
「……もしもし」
『よ、波折』
電話をかけてきたのは、鑓水だった。実家に行くと言っていた彼のことが気が気ではなかった波折は、とりあえず電話から聞こえてきた彼の元気そうな声にほっと安堵のため息をつく。
「……もう、お兄さんには会ってきた?」
『ああ、殴ってきた』
「えっ?」
『いやそれくらいやんねーとだろ!』
無事、錫に会って帰ってきたんだ……そう思うと波折は肩の力が抜けて行くのを感じた。昨日の様子だと錫は危なっかしい男だったため、鑓水が怪我でもして帰ってくるのではないかと心配だったのだ。
『あっ、つーか普通におまえんちいるけど、いい?』
「ん……いいけど。泊まるの?」
『だめ?』
「いや、大丈夫。でも今日もあまり早くは帰らないよ」
『わかってるわかってる、適当に飯買ってきて食って、だらだらしてるわ』
「冷蔵庫にあるものは好きに食べていいから」
『おっけー』
今日も、鑓水がうちに泊まる。それを聞いた瞬間波折の胸がドクリと高鳴る。鑓水にまた「好き」と言われたら、どうしようと思ったのだ。何回拒絶しても鑓水は「好き」と言ってくるから、苦しい。またあのキスをされるのだろうか……波折はふと思い出して、微かに頬を赤らめる。
「……ほかの泊まるあてもちゃんと探しておいて。俺のうちばっかり泊まんなでさ」
『へいへい』
「……電話、切るから。そろそろ時間が……」
『わかった。じゃーなー、波折。帰ってくるの、待ってるから』
「……っ、うん」
待ってるから、そう言った鑓水の声が優しかった。プツンと切れてしまったスマートフォンを耳に当てたまま、波折は硬直する。
待ってる。帰ったら、鑓水がいる。おかえりって、出迎えてくれるのだろう。……そう考えて、波折は何故かぎゅっと胸が苦しくなるのを感じた。玄関先で抱擁されたりすることを意味もなく妄想してしまって、体温が上がってしまう。
「……」
はやく家に帰りたいな、なんて思ってしまった自分の心は、認めたくなかった。
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