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第十一章:彗星のように
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授業が終わり、生徒たちは学園祭の準備にはいったり部活へいったりし始めた。がやがやと賑やかな廊下を歩き、波折も自分の持ち場へつくべく生徒会室へ向かう。
「あっ……」
階段に差し掛かったとき、少し前の方に沙良がいるのを発見する。沙良も丁度下の階から登ってきた、というところで、波折が声をあげたからか波折に気付き、振り向いた。
「沙良……」
「……波折先輩。どうしたんですか」
「えっ……」
「いえ、ぼーっとしてるから。……先に行ってますよ」
「えっ、沙良っ……」
沙良は波折を顧みることなく、そのままスタスタと階段をのぼっていってしまった。
取り残された波折は、なぜかその場から動けず立ち尽くしていた。
いつもなら、「一緒にいきませんか」って遠慮がちに、でもきらきらとした顔で言ってくるのに。そんな様子を一切みせないで、沙良は自分を置いて先に行ってしまった。
……望んでいたことなのに。これでいいのに。心に隙間風が、吹いたような気がした。
「……波折?」
波折がぼんやりと沙良が去っていった階段を見つめていると、ふと、声をかけられた。振り向けばそこには鑓水が立っている。
「……けいた」
波折はよろよろと鑓水に近づいていって、彼のカーディガンの裾を掴んだ。そして、トイレへ引っ張っていき、個室に入る。鑓水は波折の行動に少しばかり驚いていたが、個室の扉が閉められると波折をそっと抱きしめてやった。
「……どうした?」
誰かがトイレに入って来てもいいように、波折の耳元で、吐息混じりの小さな声で尋ねてやる。波折はしばらく何も答えずに鑓水の首元に顔を埋めていたが、やがてゆっくりと顔をあげると息のかかるくらいの距離で鑓水の瞳を見つめた。まるで捨て猫のようなその瞳には、涙が浮かんでいる。
「……わからない」
「ん?」
「わからない、哀しい、けいた……」
突然「哀しい」なんて言われて、鑓水は波折になにがあったのか理解することができなかった。でも、その表情が本当に哀しそうで、見ているだけでも胸が締め付けられて……鑓水はそっと波折の頭を掴むと、キスをしてやる。
「んんっ……」
波折はぽろ、と静かに涙を流して泣いた。鑓水の背に腕をまわして縋りつくようにキスに応えて、身体を密着させる。
「はっ……んっ……」
――沙良がああいった態度をとるのは当たり前のことだった。むしろ無視されないだけ彼は優しいと思った。何度突っぱねても側に居続けてくれて、本当は一人は好きじゃないという波折の心を汲み取って「友達になりましょう」と言ってくれた。波折を本当に想って、優しく、本当に優しくしてくれた。……それなのに。
「あっ……ふ、く、ぅっ……ん、あぁ……」
鑓水が波折のアナルにささったディルドをゆるゆると動かす。波折の気持ちいいところをごりごりと擦るように、いれて、ぬいて、いれて、ぬいて、を繰り返した。ちゅぷ、ちゅぷ、といやらしい水音が個室に響き、波折の甘い声と融け合ってゆく。
「あ、ふ……んっ……あ、っ……あぁん……」
俺はどうしてこんなに哀しいなんて思っているのだろう。あれだけ優しくしてくれた沙良の想いすらも跳ね除けたのなら、彼が傷ついて離れていくのなんて、当然なのに。そして俺は離れていって欲しくて跳ね除けたのに。いざ、沙良との壁がみえた瞬間、俺は――
「あっ……いくっ……いくっ……!」
鑓水は何も言わずに、泣きながら自分に縋ってくる波折をイかせてやった。涙に濡れた瞳に口付けを落としてやって、よしよしと頭を撫でてやる。
「波折……泣くな。泣くなよ、俺がそばにいるからな、大丈夫だ」
「けいた……」
大切な、大切な、たからものを失ったような。心の中で静かに、でも綺麗に、きらきらと輝いていた小さなたからものをなくしてしまった、そんな哀しさ。青空の下、眩しい笑顔をみせてくれた沙良がもう自分の側にいてくれないのだと思うと、切なくて、涙が止まらなかった。
「あっ……」
階段に差し掛かったとき、少し前の方に沙良がいるのを発見する。沙良も丁度下の階から登ってきた、というところで、波折が声をあげたからか波折に気付き、振り向いた。
「沙良……」
「……波折先輩。どうしたんですか」
「えっ……」
「いえ、ぼーっとしてるから。……先に行ってますよ」
「えっ、沙良っ……」
沙良は波折を顧みることなく、そのままスタスタと階段をのぼっていってしまった。
取り残された波折は、なぜかその場から動けず立ち尽くしていた。
いつもなら、「一緒にいきませんか」って遠慮がちに、でもきらきらとした顔で言ってくるのに。そんな様子を一切みせないで、沙良は自分を置いて先に行ってしまった。
……望んでいたことなのに。これでいいのに。心に隙間風が、吹いたような気がした。
「……波折?」
波折がぼんやりと沙良が去っていった階段を見つめていると、ふと、声をかけられた。振り向けばそこには鑓水が立っている。
「……けいた」
波折はよろよろと鑓水に近づいていって、彼のカーディガンの裾を掴んだ。そして、トイレへ引っ張っていき、個室に入る。鑓水は波折の行動に少しばかり驚いていたが、個室の扉が閉められると波折をそっと抱きしめてやった。
「……どうした?」
誰かがトイレに入って来てもいいように、波折の耳元で、吐息混じりの小さな声で尋ねてやる。波折はしばらく何も答えずに鑓水の首元に顔を埋めていたが、やがてゆっくりと顔をあげると息のかかるくらいの距離で鑓水の瞳を見つめた。まるで捨て猫のようなその瞳には、涙が浮かんでいる。
「……わからない」
「ん?」
「わからない、哀しい、けいた……」
突然「哀しい」なんて言われて、鑓水は波折になにがあったのか理解することができなかった。でも、その表情が本当に哀しそうで、見ているだけでも胸が締め付けられて……鑓水はそっと波折の頭を掴むと、キスをしてやる。
「んんっ……」
波折はぽろ、と静かに涙を流して泣いた。鑓水の背に腕をまわして縋りつくようにキスに応えて、身体を密着させる。
「はっ……んっ……」
――沙良がああいった態度をとるのは当たり前のことだった。むしろ無視されないだけ彼は優しいと思った。何度突っぱねても側に居続けてくれて、本当は一人は好きじゃないという波折の心を汲み取って「友達になりましょう」と言ってくれた。波折を本当に想って、優しく、本当に優しくしてくれた。……それなのに。
「あっ……ふ、く、ぅっ……ん、あぁ……」
鑓水が波折のアナルにささったディルドをゆるゆると動かす。波折の気持ちいいところをごりごりと擦るように、いれて、ぬいて、いれて、ぬいて、を繰り返した。ちゅぷ、ちゅぷ、といやらしい水音が個室に響き、波折の甘い声と融け合ってゆく。
「あ、ふ……んっ……あ、っ……あぁん……」
俺はどうしてこんなに哀しいなんて思っているのだろう。あれだけ優しくしてくれた沙良の想いすらも跳ね除けたのなら、彼が傷ついて離れていくのなんて、当然なのに。そして俺は離れていって欲しくて跳ね除けたのに。いざ、沙良との壁がみえた瞬間、俺は――
「あっ……いくっ……いくっ……!」
鑓水は何も言わずに、泣きながら自分に縋ってくる波折をイかせてやった。涙に濡れた瞳に口付けを落としてやって、よしよしと頭を撫でてやる。
「波折……泣くな。泣くなよ、俺がそばにいるからな、大丈夫だ」
「けいた……」
大切な、大切な、たからものを失ったような。心の中で静かに、でも綺麗に、きらきらと輝いていた小さなたからものをなくしてしまった、そんな哀しさ。青空の下、眩しい笑顔をみせてくれた沙良がもう自分の側にいてくれないのだと思うと、切なくて、涙が止まらなかった。
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