227 / 357
第十三章:予兆
5(3)
「……僕と付き合ってくれたら、誰にもいいません。冬廣会長」
「……なんで、こんなこと……」
「貴方のことが好きだからですよ! でも僕は……普通に告白したところで、絶対に貴方に振り向いてもらえない……僕は、鑓水くんみたいに頭がいいわけでも、かっこいいわけでもないから……」
「だからって……」
波折はぐっと押し黙る。その顔には、焦りと絶望。
「……篠崎くん、やっていいことと悪いことが……」
「うるさい……! 冬廣会長……! 僕と付き合うんですか、付き合わないんですか! 答えて!」
迫られ、波折は顔をしかめる。付き合うっていったら……今とは大分状況が変わる。沙良と昼休みに語らうことも、鑓水と同じ部屋に帰ることも、きっと許されない。そもそも今まで関わりのなかった人物に突然関係を強要されるのが、嫌だ。――でも。
「……わかった……付き合うよ」
――篠崎が、恍惚と微笑んだ。波折の頬を撫でうっとりとした声で囁く。
「……冬廣会長……僕のものに、なってくれるんですね」
「……うん」
「他の男と無駄に接触するのは、だめですよ。鑓水くんと同棲するのも」
「……わかってる」
篠崎は波折の返事をきくと、にこにこと嬉しそうに笑った。全く悪気のない顔だ。平気で人の家に侵入して隠しカメラを設置するくらいなのだから……その精神は普通ではないのだろう。その笑顔は本当にただ好きな人と付き合えることになった純粋な少年のもののようだった。
篠崎がポケットからチョコレートを取り出す。隠しカメラで「ご主人様」とのセックスもみていたから、波折がチョコレートを食べることによって変わってしまうことも知っているのだ。チョコレートを差し出されると、波折は抵抗しても無駄だと悟り、おとなしく口を開く。チョコレートが咥内に押し込められ、じわりとその甘味が溶け出してゆくと……身体がじわじわと熱くなってきた。
「うっ……」
乱暴に、服を脱がされる。篠崎は興奮で手が震えているのか、波折の服を脱がせるのに苦労しているようである。ベルトを外すのも、スラックスを脱がせるのにも時間がかかっていた。上はもはやちゃんと脱がせる心の余裕がないのか、ぐいっと首までたくし上げられて、胸を露出させられる。波折の肌があらわになっていくごとに、篠崎の息はあがっていった。
「……あっ……ひ、ぁ……」
篠崎はただ興奮のままに、波折の身体を舐めまわす。一年――溜め込んだ波折への想いをすべてぶつけるような愛撫は激しくて、それでいて粗雑。チョコレートの作用でかろうじて波折は感じてしまっていたが、あまりにもひとりよがりなそれに波折の心は拒絶を示していた。後孔のほぐし方も、下手くそだ。ただ指を突っ込んで掻き回しているだけ。
「うっ……」
「冬廣会長、……感じて、ますね……とても可愛いです」
「あっ……あぁっ……!」
篠崎は早急にペニスを波折のなかに突っ込んできた。体格のままに、太く大きいそれをろくに解されることもなく突っ込まれて波折は悲鳴をあげる。
「やっ……もう、いやだ……! やめて、……ひゃあっ……!」
「いやいやいって……恥ずかしがっているんですか……可愛い……」
「ううっ……」
セックスは好き。でも、ここまで気の乗らないセックスは初めてだ……というくらい、波折は篠崎のやり方が嫌だった。感じてしまっている自分が憎らしいと思うくらい。別に、篠崎が嫌いというわけではない……むしろこのセックスを通して嫌いになりそうだ。こんなに、相手のことを考えない自分の欲望のままにするセックスを、波折は知らなかった。ガクガクと身体を揺さぶられて、強引に口付けられて。ああ、これセックスじゃなくてレイプだ、と気づいたのは中に出されたとき。最後まで、波折はこのセックスへの嫌悪感を拭えなかった。
「冬廣会長……今日から、僕の家に帰りますよ。冬廣会長との愛の巣にふさわしくなるように、たくさん準備していますからね」
「……うん」
……自分のうちに帰りたいなあ、なんて。慧太に触られたいなあ、なんて。そう思いながら、波折は微笑んだ。
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー