スイートアンドビターエゴイスト〜淫乱生徒会長の調教日記〜

うめこ

文字の大きさ
232 / 357
第十三章:予兆

8

 次の日の朝だ。学校につくと波折は鬱屈とした気分をすっきりさせたくて、廊下にでて柵に身を預け、吹き抜けを眺めていた。昨夜は篠崎と狭いベッドで一緒に寝て、朝も一緒に登校してきて。気を抜ける時間が一切なかった。はあ、とため息をついてぼんやりとしていたとき。


「おはよう、波折クン」

「……えっ、慧太」


 鑓水が白々しい笑みを浮かべて声をかけてきた。逃げないと、そう思うのに脚が動かない。波折が瞳を震わせて固まっていると、鑓水が腕を掴んでくる。


「ちょっ……離せ」

「いいからこっちこい」

「し、篠崎くんに見られたら、」

「浮気じゃねーから大丈夫」

「大丈夫じゃないって!」


 制止を無視して鑓水がずるずると波折を引っ張ってゆく。向かう先は階段のようで、違う階に向かうらしい。いったいどこに連れて行かれるのかと思いながら、手を離してくれる気配がなかったためついていけば……鑓水は保健室に向かっていた。鑓水は保健室に人がいないことを確認すると、波折を中に押し込んで扉に鍵をかけてしまう。


「け、慧太……なんのつもりだよ、」

「なんのつもりはこっちのセリフなんですけど」


 鑓水は波折をソファに向かって突き飛ばす。衝撃に耐え切れずソファの上に尻もちをついた波折は、じとっと鑓水を睨み上げた。鑓水は棚に置いてあった救急箱を持ち、波折の前に椅子を引っ張ってきて座る。


「あのさ、昨日おまえが言っていたことだけど」


 鑓水はぐいっと波折のシャツをめくり上げた。そこには、昨日篠崎につけられた大量の痕。それを見つめ顔をしかめながら、鑓水はガーゼに消毒液を染み込ませ、化膿している部分を拭いていく。鑓水は波折の歩き方がどこか変だったことから、怪我をしているということに気付いていたらしい。怪我については何も言わずに、黙々と治療をしていく。一応保健医に見せれば魔術を使ったしっかりとした治療をうけられるが、こんな怪我を事情の知らない保健医にみせるわけにはいかないだろう。

 鑓水はそんな波折の怪我をみつめ、顔をあげることもなく、ボソリと言う。


「……あれ、どういう意味」

「……あれ?」

「『一週間だけだから』って」


――鑓水が波折に問うたのは……波折が鑓水の前で篠崎に連れて行かれる瞬間に、鑓水にだけ聞こえるように言った言葉。必死に篠崎から波折を取り返そうとしている鑓水に、波折は言ったのだ。「一週間だけだから」と。


「……篠崎がおまえを一週間で手放すって言ったのか」

「……ううん」

「じゃあ、どういうこと」

「……一週間後にわかるよ」


 治療をすませ、波折の服を直してやると、鑓水はじっと波折の顔を見つめる。何を考えているのか、わからない顔だ。しかし、目元には隈が浮かんでいて、疲れているんだな、くらいは感じ取ることができる。


「……よくわかんないけど……一週間後には波折は俺のところに戻ってくるの」

「……うん。俺が篠崎くんのところを離れたからといって慧太が俺をもう一度抱きしめたいって思うかはわからないけど」

「は? なんで?」

「……一緒に堕ちるわけにはいかないじゃん」

「……?」


 わけがわからない。波折は時々抽象的なことばかりいって核心を言おうとしない……が、今回は特に意味がわからない。ただ、その危うい雰囲気に、鑓水は「わけわかんねえ」と一蹴することができなかった。波折を抱きしめ、そのままソファに倒れこむ。


「……堕ちるってなに。悪人にでもなるの」

「んー……さあ」

「……おまえ、疲れてるんだよ。ちょっと休めって」


 ぎゅっと鑓水が抱きしめれば、波折はぴく、と震えた。ニ日ぶりの鑓水の体。その形とか、匂いとか。包まれると気持ちよくて、心がぽかぽかとしてくる。波折がゆっくりと鑓水の背に手を回して、その胸元に顔を埋めれば、鑓水は波折の頭をぽんぽんとあやすように叩く。


「……俺、おまえが戻ってきたら一番におまえを抱きしめるよ。大丈夫、安心して俺のところに、きて」

「……」

「……堕ちるなら、どこまでも一緒に堕ちていくから。波折……大丈夫」


 波折は何も答えない。ただ、鑓水の胸元で気持ちよさそうに目を閉じて微睡んでいる。なんでこんなに可愛い奴を傷つけられるのかな、と思いつつ……鑓水は、「一週間後」の篠崎の行方に不安を覚えていた。
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。