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第十三章:予兆
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「……俺、あとで篠崎さんのところ行ってきていいですか」
「えっ」
「いや……だって、波折先輩あんなに嫌そうな顔をして……弱みとか握られているんじゃないですか?」
「やめてよ……沙良が痛い目にあうかもしれないから。沙良、殴り合いとかになったら勝てないでしょ。篠崎くん、ちょっと危なっかしいからいつたがが外れて暴力を振るってくるかわからないよ」
「いや、行きます、波折先輩がつらい目にあっているの見たくないから。昼休みは大丈夫でもほら……放課後狙われたり」
「……」
波折は言葉に詰まる。そうだ、沙良はこういう奴だった、と思い出した。問題事が起きたら根本的に解決しないと気がすまない。でも、沙良を彼のもとにはいかせたくない。色々悩んだ末に……波折は、言う。
「ちょっとの間、耐えればいいだけなんだ」
「……?」
「沙良がわざわざ関わってこなくても、大丈夫だから」
首をかしげる沙良から離れて、波折は乱れた服装を正す。よろよろと立ち上がれば、沙良が慌てて体を支えてくれた。
校舎に戻ろうと歩き出したところで、波折は沙良の横顔を窺い見る。「大丈夫」といったのに、きっとまだ篠崎をどうするかと考えている顔だ。
「……沙良、ちょっと聞いていい?」
ぽつり、波折が言う。沙良が波折の表情を覗きこめば、波折はどこか遠くをみつめていた。
「……沙良はさ、」
「……はい」
「……もし、大切な人が悪人だったらどうする」
「……どうしたんですか、急に」
突拍子もない質問。沙良にはそう感じたかもしれない。ただ、波折は……どうしても聞いてみたかった。
「……とくに、意味はないよ」
「えー……? 大切な人が悪人……そうですね、俺は――討ちます」
「……討つ、」
「悪に堕ちた人の生きる道に光はない。だから、俺が断ってあげる」
「……だと思った」
「え?」
ふ、と波折が笑う。それから沙良が「どういうことですか」としつこく尋ねてみても、波折は何も答えなかった。
(ほんと、沙良は慧太と逆のこと言うなあ……)
波折は今朝の鑓水との会話を思い出しながら……沙良に寄り添った。
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