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17 いざ辺境の地へ
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家族と話し合った結果、コールドウェル様の提案に承諾の返事をした。
マーヴィンは少しだけ不満そうだったけど、ジェフリーの奇行を考えると、離れた場所に移住した方が安全だと判断したみたい。
王太子殿下から、王宮へ来るようにと書簡が届き、父と共に出向いてみると、通信魔道具が設置された部屋に案内された。
辺境と手紙でやり取りをするのは時間が掛かるからと、わざわざ打ち合わせの場をセッティングして下さったらしい。
何故か嬉々として協力してくれる。
仲人としての責任感なのだろうか?
久し振りに見るコールドウェル様のお顔はやはり厳ついけれど、あの手紙の内容を思い出すと、なんとなく可愛らしく見えるのだから不思議だ。
あちらは直ぐにでも受け入れが可能との事で、一週間後に出発すると決まった。
忙しいコールドウェル様はご自分が迎えに来られない事をとても残念がっていたが、その代わり国境警備団と呼ばれる辺境の騎士団から護衛騎士を四人と、剣術の嗜みがある侍女まで派遣してくれると言う。
勿論ウチも護衛を付けるつもりだったのだが、四人もいればその必要も無いだろう。
一介の伯爵令嬢に対しての警護としては厳重過ぎて申し訳ないが、ジェフリーの件もあってかなり心配してくれているらしい。
私は邸に戻ると早速荷造りを始めた。
別に二度と戻らない訳では無いので、当面必要な物だけを小さな鞄に詰める。
後は数着の普段着用のドレスを箱にしまって馬車に積み込んだ。
迎えに来てくれた皆さんは、気さくで良い人ばかりだった。
でも、侍女以外の四人は、あまり長い雑談は好まないみたい。
「フェリシア様と仲良くなりたいのは山々ですが、自分はまだ命が惜しいので…」
困った様な笑みを浮かべた騎士は、意味不明な言葉を述べると、すぐに護衛の為の定位置へと戻って行く。
歓迎して大事にしてくれている空気は伝わるから、嫌な気持ちになる事は無いけど。
なんだろう?仕事に集中しないと、後でコールドウェル様に叱られてしまうのだろうか。
そして王都を出発して五日目。
馬車は、デコボコの田舎道に大きく揺られながら、コールドウェル領に到達した。
馬車の周囲には護衛の騎士達が騎乗して付き添ってくれている。
クッションを大量に敷いたりして対策はしていたが、休憩は最小限で馬車に乗り続けていたので、流石にお尻が痛い。
馬車一台分の幅しか無い細い道の両脇には、大きな木々が聳え立ち、木漏れ日がキラキラと窓から降り注ぐ。
今は馬車が走る音がうるさいが、普段は小鳥の囀りや小川のせせらぎなども聞こえているのだろう。
心なしか空気も美味しい気がした。
うん。良い感じ。
私は早くもこの土地が好きになりかけていた。
やがて、国境を守る防壁のすぐ隣にある、砦の様に重厚な造りのコールドウェル邸に辿り着いた。
塀に沿って等間隔に騎士が配置され、物々しい空気が醸し出されている。
門の前には騎士が四人も立っていた。
ここまで護衛してくれていた騎士達の合図で重々しい門扉がギシギシと音を立てて開き、馬車に乗ったまま敷地内に入る。
広過ぎる庭を車窓から眺めながら母屋まで辿り着くと、大きな玄関扉の前を、更に二人の騎士が警備していた。
そのうちの一人が馬車に歩み寄り、私が降りるのに手を貸してくれる。
「フェリシア・バッセルと申します。
コールドウェル辺境伯にお会いする為に参りました」
「ようこそ、バッセル様。
ご案内致します」
扉を守っている時は厳めしい表情で近寄り難い空気だったが、話し掛けると意外な程に、にこやかに対応してくれた。
心の中でホッと息を吐く。
邸の中に入ると、玄関ホールまで迎えに出て来た男性が丁寧に礼をした。
「ようこそお越し下さいました。
私はこの邸の執事でごさいます。どうぞロバートとお呼びください。
フェリシア様にお会い出来て光栄です」
彼に先導されて無駄に広い廊下を進み、応接室の様な部屋に案内された。
促されてソファーに座ると、侍女服を来た美女が紅茶を提供してくれる。
凛とした佇まいは、侍女と言うよりも女性騎士の様な雰囲気。
辺境領の侍女は、皆んな剣術の嗜みがあるのだろうか?
彼女が淹れてくれた温かな紅茶に口を付けると、ホッと心が落ち着いた気がした。
緊張しているつもりは無かったのだが、やはり知らない内に気が張っていたのだ。
マーヴィンは少しだけ不満そうだったけど、ジェフリーの奇行を考えると、離れた場所に移住した方が安全だと判断したみたい。
王太子殿下から、王宮へ来るようにと書簡が届き、父と共に出向いてみると、通信魔道具が設置された部屋に案内された。
辺境と手紙でやり取りをするのは時間が掛かるからと、わざわざ打ち合わせの場をセッティングして下さったらしい。
何故か嬉々として協力してくれる。
仲人としての責任感なのだろうか?
久し振りに見るコールドウェル様のお顔はやはり厳ついけれど、あの手紙の内容を思い出すと、なんとなく可愛らしく見えるのだから不思議だ。
あちらは直ぐにでも受け入れが可能との事で、一週間後に出発すると決まった。
忙しいコールドウェル様はご自分が迎えに来られない事をとても残念がっていたが、その代わり国境警備団と呼ばれる辺境の騎士団から護衛騎士を四人と、剣術の嗜みがある侍女まで派遣してくれると言う。
勿論ウチも護衛を付けるつもりだったのだが、四人もいればその必要も無いだろう。
一介の伯爵令嬢に対しての警護としては厳重過ぎて申し訳ないが、ジェフリーの件もあってかなり心配してくれているらしい。
私は邸に戻ると早速荷造りを始めた。
別に二度と戻らない訳では無いので、当面必要な物だけを小さな鞄に詰める。
後は数着の普段着用のドレスを箱にしまって馬車に積み込んだ。
迎えに来てくれた皆さんは、気さくで良い人ばかりだった。
でも、侍女以外の四人は、あまり長い雑談は好まないみたい。
「フェリシア様と仲良くなりたいのは山々ですが、自分はまだ命が惜しいので…」
困った様な笑みを浮かべた騎士は、意味不明な言葉を述べると、すぐに護衛の為の定位置へと戻って行く。
歓迎して大事にしてくれている空気は伝わるから、嫌な気持ちになる事は無いけど。
なんだろう?仕事に集中しないと、後でコールドウェル様に叱られてしまうのだろうか。
そして王都を出発して五日目。
馬車は、デコボコの田舎道に大きく揺られながら、コールドウェル領に到達した。
馬車の周囲には護衛の騎士達が騎乗して付き添ってくれている。
クッションを大量に敷いたりして対策はしていたが、休憩は最小限で馬車に乗り続けていたので、流石にお尻が痛い。
馬車一台分の幅しか無い細い道の両脇には、大きな木々が聳え立ち、木漏れ日がキラキラと窓から降り注ぐ。
今は馬車が走る音がうるさいが、普段は小鳥の囀りや小川のせせらぎなども聞こえているのだろう。
心なしか空気も美味しい気がした。
うん。良い感じ。
私は早くもこの土地が好きになりかけていた。
やがて、国境を守る防壁のすぐ隣にある、砦の様に重厚な造りのコールドウェル邸に辿り着いた。
塀に沿って等間隔に騎士が配置され、物々しい空気が醸し出されている。
門の前には騎士が四人も立っていた。
ここまで護衛してくれていた騎士達の合図で重々しい門扉がギシギシと音を立てて開き、馬車に乗ったまま敷地内に入る。
広過ぎる庭を車窓から眺めながら母屋まで辿り着くと、大きな玄関扉の前を、更に二人の騎士が警備していた。
そのうちの一人が馬車に歩み寄り、私が降りるのに手を貸してくれる。
「フェリシア・バッセルと申します。
コールドウェル辺境伯にお会いする為に参りました」
「ようこそ、バッセル様。
ご案内致します」
扉を守っている時は厳めしい表情で近寄り難い空気だったが、話し掛けると意外な程に、にこやかに対応してくれた。
心の中でホッと息を吐く。
邸の中に入ると、玄関ホールまで迎えに出て来た男性が丁寧に礼をした。
「ようこそお越し下さいました。
私はこの邸の執事でごさいます。どうぞロバートとお呼びください。
フェリシア様にお会い出来て光栄です」
彼に先導されて無駄に広い廊下を進み、応接室の様な部屋に案内された。
促されてソファーに座ると、侍女服を来た美女が紅茶を提供してくれる。
凛とした佇まいは、侍女と言うよりも女性騎士の様な雰囲気。
辺境領の侍女は、皆んな剣術の嗜みがあるのだろうか?
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