【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko

文字の大きさ
17 / 56

17 いざ辺境の地へ

しおりを挟む
 家族と話し合った結果、コールドウェル様の提案に承諾の返事をした。
 マーヴィンは少しだけ不満そうだったけど、ジェフリーの奇行を考えると、離れた場所に移住した方が安全だと判断したみたい。

 王太子殿下から、王宮へ来るようにと書簡が届き、父と共に出向いてみると、通信魔道具が設置された部屋に案内された。
 辺境と手紙でやり取りをするのは時間が掛かるからと、わざわざ打ち合わせの場をセッティングして下さったらしい。
 何故か嬉々として協力してくれる。
 仲人としての責任感なのだろうか?

 久し振りに見るコールドウェル様のお顔はやはり厳ついけれど、あの手紙の内容を思い出すと、なんとなく可愛らしく見えるのだから不思議だ。

 あちらは直ぐにでも受け入れが可能との事で、一週間後に出発すると決まった。
 忙しいコールドウェル様はご自分が迎えに来られない事をとても残念がっていたが、その代わり国境警備団と呼ばれる辺境の騎士団から護衛騎士を四人と、剣術の嗜みがある侍女まで派遣してくれると言う。
 勿論ウチも護衛を付けるつもりだったのだが、四人もいればその必要も無いだろう。
 一介の伯爵令嬢に対しての警護としては厳重過ぎて申し訳ないが、ジェフリーの件もあってかなり心配してくれているらしい。

 私は邸に戻ると早速荷造りを始めた。
 別に二度と戻らない訳では無いので、当面必要な物だけを小さな鞄に詰める。
 後は数着の普段着用のドレスを箱にしまって馬車に積み込んだ。




 迎えに来てくれた皆さんは、気さくで良い人ばかりだった。
 でも、侍女以外の四人は、あまり長い雑談は好まないみたい。

「フェリシア様と仲良くなりたいのは山々ですが、自分はまだ命が惜しいので…」

 困った様な笑みを浮かべた騎士は、意味不明な言葉を述べると、すぐに護衛の為の定位置へと戻って行く。
 歓迎して大事にしてくれている空気は伝わるから、嫌な気持ちになる事は無いけど。
 なんだろう?仕事に集中しないと、後でコールドウェル様に叱られてしまうのだろうか。


 そして王都を出発して五日目。
 馬車は、デコボコの田舎道に大きく揺られながら、コールドウェル領に到達した。
 馬車の周囲には護衛の騎士達が騎乗して付き添ってくれている。

 クッションを大量に敷いたりして対策はしていたが、休憩は最小限で馬車に乗り続けていたので、流石にお尻が痛い。

 馬車一台分の幅しか無い細い道の両脇には、大きな木々が聳え立ち、木漏れ日がキラキラと窓から降り注ぐ。
 今は馬車が走る音がうるさいが、普段は小鳥の囀りや小川のせせらぎなども聞こえているのだろう。
 心なしか空気も美味しい気がした。

 うん。良い感じ。

 私は早くもこの土地が好きになりかけていた。


 やがて、国境を守る防壁のすぐ隣にある、砦の様に重厚な造りのコールドウェル邸に辿り着いた。
 塀に沿って等間隔に騎士が配置され、物々しい空気が醸し出されている。
 門の前には騎士が四人も立っていた。

 ここまで護衛してくれていた騎士達の合図で重々しい門扉がギシギシと音を立てて開き、馬車に乗ったまま敷地内に入る。
 広過ぎる庭を車窓から眺めながら母屋まで辿り着くと、大きな玄関扉の前を、更に二人の騎士が警備していた。
 そのうちの一人が馬車に歩み寄り、私が降りるのに手を貸してくれる。

「フェリシア・バッセルと申します。
 コールドウェル辺境伯にお会いする為に参りました」

「ようこそ、バッセル様。
 ご案内致します」

 扉を守っている時は厳めしい表情で近寄り難い空気だったが、話し掛けると意外な程に、にこやかに対応してくれた。
 心の中でホッと息を吐く。



 邸の中に入ると、玄関ホールまで迎えに出て来た男性が丁寧に礼をした。

「ようこそお越し下さいました。
 私はこの邸の執事でごさいます。どうぞロバートとお呼びください。
 フェリシア様にお会い出来て光栄です」

 彼に先導されて無駄に広い廊下を進み、応接室の様な部屋に案内された。
 促されてソファーに座ると、侍女服を来た美女が紅茶を提供してくれる。
 凛とした佇まいは、侍女と言うよりも女性騎士の様な雰囲気。
 辺境領の侍女は、皆んな剣術の嗜みがあるのだろうか?

 彼女が淹れてくれた温かな紅茶に口を付けると、ホッと心が落ち着いた気がした。

 緊張しているつもりは無かったのだが、やはり知らない内に気が張っていたのだ。
しおりを挟む
感想 215

あなたにおすすめの小説

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

[完結]思い出せませんので

シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」 父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。 同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。 直接会って訳を聞かねば 注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。 男性視点 四話完結済み。毎日、一話更新

愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の伯爵令嬢だったエミリアは長年の想い人である公爵令息オリバーと結婚した。 しかし、夫となったオリバーとの仲は冷え切っていた。 オリバーはエミリアを愛していない。 それでもエミリアは一途に夫を想い続けた。 子供も出来ないまま十年の年月が過ぎ、エミリアはオリバーにもう一つの家庭が存在していることを知ってしまう。 それをきっかけとして、エミリアはついにオリバーとの離婚を決意する。 オリバーと離婚したエミリアは第二の人生を歩み始める。 一方、最愛の愛人とその子供を公爵家に迎え入れたオリバーは後悔に苛まれていた……。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

処理中です...