3 / 32
3 一度目の結婚式
しおりを挟む
この国の法律では、十五歳から正式な婚姻を結ぶことが出来る。
私は学園に通わせてもらう事も出来ずに、十五歳になってすぐに嫁ぐ事になった。
やっと捕まえた〝ネギを背負った鴨〟に逃げられない様にするために、侯爵家も必死なのだろう。
婚姻の手続きは驚くほど早く行われた。
(あ~あ・・・。
学園・・・・・・、通ってみたかったのになぁ)
この国の貴族子女は多くの場合、十六歳から三年間、学園に通う。
義務では無いので、家庭教師を雇って学ぶ者や、入学金が準備できずに入学を諦める者、私の様に婚姻によって入学しない者なども居るのだが、私は学園で学ぶことを楽しみにしていたので、非常に残念だ。
そんなことを考えて、溜息を吐きながら、ウエディングドレスに袖を通す。
最近少し膨らみが大きくなった胸には、サラシを巻いて、ぺったんこに押さえ付けてある。
ドレスのラインが綺麗に見えなくて残念だけど、仕方が無い。
これもマーティン様に好かれない為なのだ。
噂によると、どうやら彼は、ボンキュッボンな妖艶系美女がお好みらしい。
煩悩のままに生きる男だな。
非常に分かりやすくて助かる。
だから、私はその逆を行く事にした。
女性らしい体のラインはなるべく見せない様にして、元々の幼い顔立ちを強調する様な化粧を施してもらう。
「お嬢様の晴れ姿を見ることが出来たのに、こんなにも嬉しく無いなんて・・・。
でも、今日もとってもお綺麗です」
スーザンが呟きながら、暗い表情で私の髪を結う。
こんな状況でも、私を褒める事は忘れないらしい。
彼女のお陰で、ちょっと笑みが零れた。
「心配かけて、ごめんね」
子爵家からは使用人を連れて行かない予定だ。
冷遇されたら可哀想だから。
だから、スーザンに身支度を整えてもらうのは、きっとこれが最後になるだろう。
彼女の瞳には、涙が滲んでいる。
本当ならば、結婚式には私の幸せを見届けて、喜びの涙を見せて欲しかった。
決して、こんな形では無く・・・・・・。
でも、先日紹介された侯爵家の使用人達は私に同情的で、快く色々協力してくれそうなので、その点だけは少しホッとしている。
「チッ!
馬子にも衣装だな」
控室に迎えに来たマーティン様は、不機嫌そうにそう言った。
一応褒めているつもりらしい。
どうでも良いけど。
それより、この人、定期的に舌打ちしないと死ぬ病気か何かなのかな?
そんな心の内を隠して、今日も私は微笑みを浮かべる。
「有難うございます」
互いの家族しか出席者がいない挙式は滞りなく済み、侯爵邸に移動しようとしたのだが・・・・・・
「お前が今日から住むのは別邸の方だ。
最低限の使用人は用意したから、贅沢は言うなよ」
「因みに旦那様はどちらに住まわれるのですか?」
「勿論、本邸に住む。
愛する女と住むのだから、邪魔をするな」
「はい。
では本邸の方には近寄らない様に致しますね」
笑顔で頷けば、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をされた。
予想外の反応だったらしい。
私が貴方に愛を求めるとでも思ったのだろうか?
本当に残念な思考回路だ。
本邸には、元踊り子でボンキュッボンな夫の愛人が一緒に住むらしい。
今迄沢山の女性に手を付けて来たが、この愛人が本命で、なかり長い付き合いらしい。
どうやら、運命の相手(笑)らしい。
乙女かよ。恋愛小説の読みすぎだろ。
っつーか、その女以外にも手当たり次第に唾付けといて、運命もクソも無い。
聞いてもいないのに、愛人自慢をペラペラと語り始めた形だけの夫に、死んだ目になりながらハイハイと適当な相槌を打つ。
知らんがな。
勝手にやってくれ。
義両親は、まだ息子に爵位は渡さないけど、実務は任せて、領地の中でも自然豊かな場所にある、小さな別荘に住むらしいよ。
領地の奥にずっと引き篭もってないで、ちゃんとダメ息子の監視をして欲しい。
まあ、私にとっても、夫とも義両親とも別居出来るのは都合が良いのだけれど。
私は学園に通わせてもらう事も出来ずに、十五歳になってすぐに嫁ぐ事になった。
やっと捕まえた〝ネギを背負った鴨〟に逃げられない様にするために、侯爵家も必死なのだろう。
婚姻の手続きは驚くほど早く行われた。
(あ~あ・・・。
学園・・・・・・、通ってみたかったのになぁ)
この国の貴族子女は多くの場合、十六歳から三年間、学園に通う。
義務では無いので、家庭教師を雇って学ぶ者や、入学金が準備できずに入学を諦める者、私の様に婚姻によって入学しない者なども居るのだが、私は学園で学ぶことを楽しみにしていたので、非常に残念だ。
そんなことを考えて、溜息を吐きながら、ウエディングドレスに袖を通す。
最近少し膨らみが大きくなった胸には、サラシを巻いて、ぺったんこに押さえ付けてある。
ドレスのラインが綺麗に見えなくて残念だけど、仕方が無い。
これもマーティン様に好かれない為なのだ。
噂によると、どうやら彼は、ボンキュッボンな妖艶系美女がお好みらしい。
煩悩のままに生きる男だな。
非常に分かりやすくて助かる。
だから、私はその逆を行く事にした。
女性らしい体のラインはなるべく見せない様にして、元々の幼い顔立ちを強調する様な化粧を施してもらう。
「お嬢様の晴れ姿を見ることが出来たのに、こんなにも嬉しく無いなんて・・・。
でも、今日もとってもお綺麗です」
スーザンが呟きながら、暗い表情で私の髪を結う。
こんな状況でも、私を褒める事は忘れないらしい。
彼女のお陰で、ちょっと笑みが零れた。
「心配かけて、ごめんね」
子爵家からは使用人を連れて行かない予定だ。
冷遇されたら可哀想だから。
だから、スーザンに身支度を整えてもらうのは、きっとこれが最後になるだろう。
彼女の瞳には、涙が滲んでいる。
本当ならば、結婚式には私の幸せを見届けて、喜びの涙を見せて欲しかった。
決して、こんな形では無く・・・・・・。
でも、先日紹介された侯爵家の使用人達は私に同情的で、快く色々協力してくれそうなので、その点だけは少しホッとしている。
「チッ!
馬子にも衣装だな」
控室に迎えに来たマーティン様は、不機嫌そうにそう言った。
一応褒めているつもりらしい。
どうでも良いけど。
それより、この人、定期的に舌打ちしないと死ぬ病気か何かなのかな?
そんな心の内を隠して、今日も私は微笑みを浮かべる。
「有難うございます」
互いの家族しか出席者がいない挙式は滞りなく済み、侯爵邸に移動しようとしたのだが・・・・・・
「お前が今日から住むのは別邸の方だ。
最低限の使用人は用意したから、贅沢は言うなよ」
「因みに旦那様はどちらに住まわれるのですか?」
「勿論、本邸に住む。
愛する女と住むのだから、邪魔をするな」
「はい。
では本邸の方には近寄らない様に致しますね」
笑顔で頷けば、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をされた。
予想外の反応だったらしい。
私が貴方に愛を求めるとでも思ったのだろうか?
本当に残念な思考回路だ。
本邸には、元踊り子でボンキュッボンな夫の愛人が一緒に住むらしい。
今迄沢山の女性に手を付けて来たが、この愛人が本命で、なかり長い付き合いらしい。
どうやら、運命の相手(笑)らしい。
乙女かよ。恋愛小説の読みすぎだろ。
っつーか、その女以外にも手当たり次第に唾付けといて、運命もクソも無い。
聞いてもいないのに、愛人自慢をペラペラと語り始めた形だけの夫に、死んだ目になりながらハイハイと適当な相槌を打つ。
知らんがな。
勝手にやってくれ。
義両親は、まだ息子に爵位は渡さないけど、実務は任せて、領地の中でも自然豊かな場所にある、小さな別荘に住むらしいよ。
領地の奥にずっと引き篭もってないで、ちゃんとダメ息子の監視をして欲しい。
まあ、私にとっても、夫とも義両親とも別居出来るのは都合が良いのだけれど。
224
あなたにおすすめの小説
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
【完結】留学先から戻って来た婚約者に存在を忘れられていました
山葵
恋愛
国王陛下の命により帝国に留学していた王太子に付いて行っていた婚約者のレイモンド様が帰国された。
王家主催で王太子達の帰国パーティーが執り行われる事が決まる。
レイモンド様の婚約者の私も勿論、従兄にエスコートされ出席させて頂きますわ。
3年ぶりに見るレイモンド様は、幼さもすっかり消え、美丈夫になっておりました。
将来の宰相の座も約束されており、婚約者の私も鼻高々ですわ!
「レイモンド様、お帰りなさいませ。留学中は、1度もお戻りにならず、便りも来ずで心配しておりましたのよ。元気そうで何よりで御座います」
ん?誰だっけ?みたいな顔をレイモンド様がされている?
婚約し顔を合わせでしか会っていませんけれど、まさか私を忘れているとかでは無いですよね!?
【完結】婚約解消後に婚約者が訪ねてくるのですが
ゆらゆらぎ
恋愛
ミティルニアとディアルガの婚約は解消された。
父とのある取引のために動くミティルニアの予想とは裏腹に、ディアルガは何度もミティルニアの元を訪れる…
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる