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18 諦めの悪い男
《side:フィリップ》
伯父上と伯母上(国王夫妻)との初めての挨拶に、カチコチに緊張していたディアはとても可愛かった。
しかし同時に、僕が王族の縁戚であると実感して、距離を置かれてしまいそうな嫌な予感がしていた。
ディアは自分の身分が低い事をとても気にしているが、クラックソン公爵家が今以上の力を持つのは、国内貴族のパワーバランスを考えると望ましく無い。
だから、次男の僕は、寧ろ高位貴族の令嬢と縁を結ばない方が良いのだ。
我が家は現在使用していない伯爵位も持っている為、結婚後はそれを譲ってもらう予定だ。
婿入り先を探す必要は無い。
それに加えて、ディアは子爵令嬢とは思えない程にきちんとした礼儀作法を身につけており、その所作はとても美しい。
僕の家族は、この縁談を歓迎しており、「逃がすな」と厳命を受けている。
元より逃すつもりなど無いけどね。
「美しいお嬢さん、一曲お相手願えませんか?」
恭しく手を差し伸べれば、ディアがフフッと小さく笑いながらその手を取った。
「ええ。喜んで」
楽団が演奏する曲に合わせて、ステップを踏み始める。
練習で一緒に踊った時には楽しそうだったのに、今日のディアは緊張で固くなっているようだ。
「ディア。
足元ばかり見ないで、僕を見て」
「緊張して、貴方の足を踏んでしまいそうなのです」
漸く視線を上げた彼女は、ぎこちない笑みを浮かべた。
「平気だよ。僕は結構丈夫だから。
羽根の様に軽いディアに踏まれたって、きっと全然痛くない」
「そんな訳ないじゃ無いですか!
背が低いからって、体重が軽いとは限らないのですよ。
フィルの足の骨が折れてしまうかもしれないわ」
「そうなったら、責任を取って直ぐにでも結婚して貰うから良いよ」
「もう・・・、冗談ばっかり」
会話をしている内に緊張が解れたのか、少しづつ滑らかなステップになってきた。
だが、もう曲は終盤。
「そろそろ終わるね。
せっかく調子が出て来たのに残念だな。
ディアが疲れてなければ、もう一曲続けて踊らないか?」
嬉しそうに頷いたディアと、そのまま踊り続けた。
「はぁ・・・。
流石に少し疲れました」
会場の隅のソファーに座らせると、ディアは大きく息を吐いた。
「ごめん、無理させたかな?
つい、楽しくて」
ディアはどちらかと言えばインドア派なので、体力はあまり無い方なのだ。
気を付けてあげなくてはいけなかったのに。
だが、ダンスを連続して踊るのは婚約者の特権なので、つい見せ付けたくなってしまったのだ。
未だに彼女を狙う、あの男に。
「いいえ!
私も楽しかったので、大丈夫です」
ダンスで上気した頬の彼女はとても可愛い。
その頬にそっと触れたら、彼女の顔が益々赤くなった。
嫌な視線を感じて、ディアがドリンクに気を取られている隙にチラリとそちらを見ると、遠くにマーティン・バークレイの姿があった。
私達の様子を悔しそうに見ているマーティンの視線を遮る様に、ディアの護衛に付けている騎士がさりげなく立ち位置を変える。
なかなか良い仕事をする。
『ディアがあの男の存在に気付かない様に』と言う僕の指示を忠実に守っている様でホッとした。
夜会へ向かう馬車の中で、ディアが婚約解消を示唆する様な話を始めた時には少し焦ったが、彼女がそれ程油断していられるのは、護衛がしっかりと仕事をしてくれている証拠である。
だが、不安が無い訳ではない。
あの男の執着は異常だ。
伯父上と伯母上(国王夫妻)との初めての挨拶に、カチコチに緊張していたディアはとても可愛かった。
しかし同時に、僕が王族の縁戚であると実感して、距離を置かれてしまいそうな嫌な予感がしていた。
ディアは自分の身分が低い事をとても気にしているが、クラックソン公爵家が今以上の力を持つのは、国内貴族のパワーバランスを考えると望ましく無い。
だから、次男の僕は、寧ろ高位貴族の令嬢と縁を結ばない方が良いのだ。
我が家は現在使用していない伯爵位も持っている為、結婚後はそれを譲ってもらう予定だ。
婿入り先を探す必要は無い。
それに加えて、ディアは子爵令嬢とは思えない程にきちんとした礼儀作法を身につけており、その所作はとても美しい。
僕の家族は、この縁談を歓迎しており、「逃がすな」と厳命を受けている。
元より逃すつもりなど無いけどね。
「美しいお嬢さん、一曲お相手願えませんか?」
恭しく手を差し伸べれば、ディアがフフッと小さく笑いながらその手を取った。
「ええ。喜んで」
楽団が演奏する曲に合わせて、ステップを踏み始める。
練習で一緒に踊った時には楽しそうだったのに、今日のディアは緊張で固くなっているようだ。
「ディア。
足元ばかり見ないで、僕を見て」
「緊張して、貴方の足を踏んでしまいそうなのです」
漸く視線を上げた彼女は、ぎこちない笑みを浮かべた。
「平気だよ。僕は結構丈夫だから。
羽根の様に軽いディアに踏まれたって、きっと全然痛くない」
「そんな訳ないじゃ無いですか!
背が低いからって、体重が軽いとは限らないのですよ。
フィルの足の骨が折れてしまうかもしれないわ」
「そうなったら、責任を取って直ぐにでも結婚して貰うから良いよ」
「もう・・・、冗談ばっかり」
会話をしている内に緊張が解れたのか、少しづつ滑らかなステップになってきた。
だが、もう曲は終盤。
「そろそろ終わるね。
せっかく調子が出て来たのに残念だな。
ディアが疲れてなければ、もう一曲続けて踊らないか?」
嬉しそうに頷いたディアと、そのまま踊り続けた。
「はぁ・・・。
流石に少し疲れました」
会場の隅のソファーに座らせると、ディアは大きく息を吐いた。
「ごめん、無理させたかな?
つい、楽しくて」
ディアはどちらかと言えばインドア派なので、体力はあまり無い方なのだ。
気を付けてあげなくてはいけなかったのに。
だが、ダンスを連続して踊るのは婚約者の特権なので、つい見せ付けたくなってしまったのだ。
未だに彼女を狙う、あの男に。
「いいえ!
私も楽しかったので、大丈夫です」
ダンスで上気した頬の彼女はとても可愛い。
その頬にそっと触れたら、彼女の顔が益々赤くなった。
嫌な視線を感じて、ディアがドリンクに気を取られている隙にチラリとそちらを見ると、遠くにマーティン・バークレイの姿があった。
私達の様子を悔しそうに見ているマーティンの視線を遮る様に、ディアの護衛に付けている騎士がさりげなく立ち位置を変える。
なかなか良い仕事をする。
『ディアがあの男の存在に気付かない様に』と言う僕の指示を忠実に守っている様でホッとした。
夜会へ向かう馬車の中で、ディアが婚約解消を示唆する様な話を始めた時には少し焦ったが、彼女がそれ程油断していられるのは、護衛がしっかりと仕事をしてくれている証拠である。
だが、不安が無い訳ではない。
あの男の執着は異常だ。
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