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4. 心「エブリダ・アッシュレディ」
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エブリダ・アッシュレディ。
僕の母親にして、オルティス王国の第二王女である。
王国では姉・オリビアと共に絶世の美女として名を馳せており、ダンテと結婚する前は、他国の王や大貴族からの求婚の誘いが途絶える事がなかったいう。
財力や名誉がある他国の王や大貴族を選ばず、なぜ"男爵位の男"と結婚の契りを交わしたのか、それはまた別の話。
──クルーシオ邸宅 マッシュの部屋
「マッシュ・・・私の目を見て? 貴方は私の心を読み取れる?」
エブリダが部屋に急に入ってきたと思ったら、この質問である。急すぎて何を言っているのか、僕は一瞬理解が出来ず、困惑してしまった。
妖麗なボディをしている金髪美女の母親は、困惑している僕の目の前に正座して、僕の目をずっと見つめている。
その母親の表情は真剣そのもので、いつもの優しい表情ではなかった。
いきなり何なんだこの質問? 心なんて普通は読み取れないぞ?
素直に「心を読み取れない」と言っていいものなのか?
本物のマッシュは心を読み取れるんじゃないか?
正直に言ってしまったら偽物だとバレてしまうんじゃないか?
なぜこのタイミングで、エブリダが質問してきたのか?
一瞬にして、四つの疑問が頭の中に浮かび上がった。
考える時間も与えられない状況に、僕は思わずエブリダから目を離してしまった。
「マッシュ、私は単に質問をしているだけよ? 変に勘繰らないで頂戴。それとも私の心の中が読めていて、返答がないのなら話は別よ?」
エブリダの言い方こそは優しかったが、意味深な発言のせいで余計に怖く感じ取ってしまう。必死に頭をフル回転させて答えを見出そうとするが、見つからない。
エブリダの瞳は、全てを見透かしているようで瞳を見ること自体が怖かった。
さて・・・どうしたものか。ものの数分の間なのに、果てしない濃密な時間を過ごしているように感じてしまえる。
──あぁ、早く! 早く答えないと・・・しかし、なんて答える?
自問自答をしながら様々な解決策を考えていると、現実でありえない予期せぬ出来事が起きた。
可愛い声をした何かが、脳内に直接語りかけてきたのだ。
(正直に話すベアね~。君が変に考えすぎてるだけグマね。)
な、なんだこの声!? 僕の心情を全て察しているような物言いだ・・・。
えぇい! こうなったらッ! と半ばヤケ糞になった僕は、その可愛い声をした何かに背中を押された形で言葉を発した。
「僕は・・・、心を読み取る事は出来ません!!」
僕が恐る恐る言うと、エブリダは表情を和らげて優しく微笑んだ。
その表情はいつもの母親の姿で、僕はひとまずホッと胸を撫で下ろした。その僕を尻目に優しく微笑みながら母親が続けて説明する。
「私と姉のオリビアは、幼少期から【人の心を読み取れる力】があるの。だけど、マッシュ・・・貴方の心の中を全く読めないのよ。物心がつくまでは、心が未熟だから読めないのは当たり前だけど、言語を喋れる様になったら読み取れるはず、お父様の時とまるで同じで心が読めない・・・。私に似ないでお祖父ちゃんに似たのかしら? まぁ・・・それは、賢者の刻印が関係しているのでしょうけどね。まぁ仮説は置いておいて、急に言葉を喋り出した可愛い息子を試しちゃいましたぁ~! って怖かったでしょ? ごめんね?」
「............。」あまりの母親の変貌ぶりに出す言葉がない。
「フフフ、怒った顔も可愛いわね~流石は私の息子! あ、それと私が心を読み取れる事を知っているのは、国王とダンテ様とシスヴァだけだから他の人には絶対に他言無用よ。」
「僕は怒っていません。ただ単に怖かっただけです」
「もうプリプリしちゃってっ! 本当は喋れるようになった時に試したかったんだけれど、メイがいたから色々と演技をしないといけなかったのよ~。マッシュちゃん、愛してるわよ」
エブリダはそういうと、おもむろに僕の額にキスをして部屋を後にした。
さっきまでの出来事を勝手に水に流したような、悠然とした態度を取っていた母親に僕は腹が立ったが、現世では考えられない金髪美女にキスをされるという奇跡、幸福感で心が満たされた。
──さて、ここでさっきの話を要約しようか。
・エブリダは【人の心を読み取れる力】があり、その子供であるマッシュこと僕はその力を継承してる可能性がある。だが、その力で僕の心を読み取ることは出来ないらしい。これは好都合で僕の正体がバレる心配がない。
・会話の途中で聞こえた謎の声。あれってなんだったんだ? と冷静に判断しても分からない。会話の流れを理解しての発言だったし、頭の中に直接響き渡る声だった。
あ~、立て続けに色々あり過ぎたせいで、頭が追い付かない。
流石、異世界転生。それかよく出来た夢か、現状どっちか分からないが日常では味わえない生活である。
僕は両手を大の字に広げて、ふわふわの絨毯の上に横になった。そのまま目を閉じて不貞寝をしようとした時、再び脳内に声が響き渡る。
(ふぅ、災いを遺伝していなくてよかったわ)
聞き慣れた母親の声だった。災い? 一体何のことだ? というか心の中が読めた・・・!?
お母様・・・、凄く怖いです・・・。
僕の母親にして、オルティス王国の第二王女である。
王国では姉・オリビアと共に絶世の美女として名を馳せており、ダンテと結婚する前は、他国の王や大貴族からの求婚の誘いが途絶える事がなかったいう。
財力や名誉がある他国の王や大貴族を選ばず、なぜ"男爵位の男"と結婚の契りを交わしたのか、それはまた別の話。
──クルーシオ邸宅 マッシュの部屋
「マッシュ・・・私の目を見て? 貴方は私の心を読み取れる?」
エブリダが部屋に急に入ってきたと思ったら、この質問である。急すぎて何を言っているのか、僕は一瞬理解が出来ず、困惑してしまった。
妖麗なボディをしている金髪美女の母親は、困惑している僕の目の前に正座して、僕の目をずっと見つめている。
その母親の表情は真剣そのもので、いつもの優しい表情ではなかった。
いきなり何なんだこの質問? 心なんて普通は読み取れないぞ?
素直に「心を読み取れない」と言っていいものなのか?
本物のマッシュは心を読み取れるんじゃないか?
正直に言ってしまったら偽物だとバレてしまうんじゃないか?
なぜこのタイミングで、エブリダが質問してきたのか?
一瞬にして、四つの疑問が頭の中に浮かび上がった。
考える時間も与えられない状況に、僕は思わずエブリダから目を離してしまった。
「マッシュ、私は単に質問をしているだけよ? 変に勘繰らないで頂戴。それとも私の心の中が読めていて、返答がないのなら話は別よ?」
エブリダの言い方こそは優しかったが、意味深な発言のせいで余計に怖く感じ取ってしまう。必死に頭をフル回転させて答えを見出そうとするが、見つからない。
エブリダの瞳は、全てを見透かしているようで瞳を見ること自体が怖かった。
さて・・・どうしたものか。ものの数分の間なのに、果てしない濃密な時間を過ごしているように感じてしまえる。
──あぁ、早く! 早く答えないと・・・しかし、なんて答える?
自問自答をしながら様々な解決策を考えていると、現実でありえない予期せぬ出来事が起きた。
可愛い声をした何かが、脳内に直接語りかけてきたのだ。
(正直に話すベアね~。君が変に考えすぎてるだけグマね。)
な、なんだこの声!? 僕の心情を全て察しているような物言いだ・・・。
えぇい! こうなったらッ! と半ばヤケ糞になった僕は、その可愛い声をした何かに背中を押された形で言葉を発した。
「僕は・・・、心を読み取る事は出来ません!!」
僕が恐る恐る言うと、エブリダは表情を和らげて優しく微笑んだ。
その表情はいつもの母親の姿で、僕はひとまずホッと胸を撫で下ろした。その僕を尻目に優しく微笑みながら母親が続けて説明する。
「私と姉のオリビアは、幼少期から【人の心を読み取れる力】があるの。だけど、マッシュ・・・貴方の心の中を全く読めないのよ。物心がつくまでは、心が未熟だから読めないのは当たり前だけど、言語を喋れる様になったら読み取れるはず、お父様の時とまるで同じで心が読めない・・・。私に似ないでお祖父ちゃんに似たのかしら? まぁ・・・それは、賢者の刻印が関係しているのでしょうけどね。まぁ仮説は置いておいて、急に言葉を喋り出した可愛い息子を試しちゃいましたぁ~! って怖かったでしょ? ごめんね?」
「............。」あまりの母親の変貌ぶりに出す言葉がない。
「フフフ、怒った顔も可愛いわね~流石は私の息子! あ、それと私が心を読み取れる事を知っているのは、国王とダンテ様とシスヴァだけだから他の人には絶対に他言無用よ。」
「僕は怒っていません。ただ単に怖かっただけです」
「もうプリプリしちゃってっ! 本当は喋れるようになった時に試したかったんだけれど、メイがいたから色々と演技をしないといけなかったのよ~。マッシュちゃん、愛してるわよ」
エブリダはそういうと、おもむろに僕の額にキスをして部屋を後にした。
さっきまでの出来事を勝手に水に流したような、悠然とした態度を取っていた母親に僕は腹が立ったが、現世では考えられない金髪美女にキスをされるという奇跡、幸福感で心が満たされた。
──さて、ここでさっきの話を要約しようか。
・エブリダは【人の心を読み取れる力】があり、その子供であるマッシュこと僕はその力を継承してる可能性がある。だが、その力で僕の心を読み取ることは出来ないらしい。これは好都合で僕の正体がバレる心配がない。
・会話の途中で聞こえた謎の声。あれってなんだったんだ? と冷静に判断しても分からない。会話の流れを理解しての発言だったし、頭の中に直接響き渡る声だった。
あ~、立て続けに色々あり過ぎたせいで、頭が追い付かない。
流石、異世界転生。それかよく出来た夢か、現状どっちか分からないが日常では味わえない生活である。
僕は両手を大の字に広げて、ふわふわの絨毯の上に横になった。そのまま目を閉じて不貞寝をしようとした時、再び脳内に声が響き渡る。
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お母様・・・、凄く怖いです・・・。
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