落ちこぼれの竜人族は竜騎士になりたい。

めんとうふ

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第1章 幼少期

0. プロローグ

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 幻獣の王ドラゴン。あらゆる生物の頂点に君臨し、世界中の神話や伝説に登場する生物。
 姿は堅い鱗に巨大な爬虫類の身体、蛇のように長い尻尾と蝙蝠のような翼、鋭利な鉤爪に牙などが通例だが、伝承されている竜の姿は様々である。

 天変地異の巻き起こす「竜」を恐れていた人々は、竜を「悪」として──その存在を遠ざけていた。
だが、その天変地異を巻き起こす力は、この世界が魔獣達に侵略されてから「善」へと変わる。

 全生物の頂点に君臨している竜は、環境破壊や食物連鎖などの秩序を乱す魔獣を蹂躙すべく戦ったからだ。
 それは、魔獣に苦しむ人間達にとっての大きな希望となり、恐れていた人間の心に「闘争」という火を灯した。
 そして、竜に感化された人間達は世界各地で挙兵。
 魔獣達を各個撃破し、魔獣達の数は着実に減っていった。

 世界各地で昼夜問わず戦う竜の火の吐息は、昼をさらに明るくし、夜を暖かく照らした。世界中は煌々と光照らされ、暗闇を好む魔獣達の生き残りは、世界の片隅にある「最果ての地」へと逃げ込んでいった。

 竜と人間の勝利。それは、世界に平和が訪れた事を示す。

 些細な事で争い合い、奪い合おうとする人間達は、共通の敵を持った事により強く結託する事が出来た。これにより、世界から戦争という概念がなくなり、本当の世界平和が訪れたのだ。

 だが、世界平和の礎となった竜達は、平和になった世界から忽然と姿を消した。
 その代わりとなって現れたのは、竜の血を引き継ぐ者達。
 『始祖九竜頭しそきゅうりゅうとう』と名乗る九人の男女だった。

 始祖九竜頭は「最果ての地」を守る番人の役割を担った。
 これから、また現れるであろう魔獣の手から世界を守る為、日々鍛錬し竜化を身に付けている彼等を民は「英雄」と称した。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 それは、僕が幼かった頃。
 竜人族として四代目である、祖父から聞いた話だった。
 古びた竜の絵を見せながら楽しそうに話す祖父の話は、新鮮味があって聞いていて楽しかった。
 
 「おじいちゃんは竜になれるの?」

 僕が目を輝かせて祖父に質問すると、高笑いしながら快く教えてくれた。

 「ふぉっふぉっ、じいちゃんは竜にはなれんかったのぉ。
じゃから、じいちゃんは凄く苦労したぞぉ。始祖九竜頭の仲間内から邪険にされ、軽蔑された。竜の力というのは、生まれ持った才能で決まる。努力じゃどうしようもないんじゃ。だから、じいちゃんは竜騎士という職種を作った。」

 「ぼく、竜になれるかな? それと、りゅーきしってなに?」

 「あぁ、絶対になれるとも。ディナーの竜の刻印は一級品じゃぞ。じいちゃんが保証しちゃる。
りゅーうきし、竜騎士じゃ。竜に跨り、跨った竜の力を最大限に引き出して、戦闘を行う騎士の事じゃ。」

 「ぼく、おじいちゃんの言ってる竜騎士にもなってみたい!」

 「ふぉっふぉっ、竜になれるのに竜騎士になる必要は全く無いんじゃよ。まぁ、もし本当に竜騎士ドラグーンになりたいのであれば育成所を紹介する事は可能じゃがな…………まぁ、昔の話でも聞かせちゃるか!」

 おじいちゃんは目を麗せながら嬉しそうに語り始めた。
 竜騎士誕生秘話や相棒である始祖九竜頭の竜の話、育成所について詳しい話などをこと細かく丁寧に、竜化の力を上手く使い鎧などの防具を見に纏える事も聞いた。
 その話は日暮れから日が昇るまでの時間続いた。
 長時間だったが全く苦痛に感じず、あっという間に時は過ぎ去った。
 その日から毎晩、祖父と竜騎士について熱く語り合った。
 

──ここで話を少し補足しておこう。


 竜の刻印とは、竜人族が生まれ持っている印で様々な印が存在する。印によっての竜の種族や潜在能力の高さ・数値を見測れるようになっている。
 竜の刻印は遺伝とされているが、祖父ガルセフスは地龍で翼を持たない竜。その祖父の子供である、僕の父上アルカディアは天竜・飛龍種に部類されているが翼を持たない天竜だ。
 ディナーは天竜・飛龍種に部類される竜で、潜在能力はずば抜けて高い数値となっている。
 そのために始祖九竜頭から将来有望の竜人と期待され、幼い頃から血の滲むような厳しい英才教育を課せられる事になる。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

  大好きな祖父は、この話をしてから五年後に亡くなった。
 祖父の葬儀には、国中のお偉方や貴族院の貴族達が大勢参列していた。それは、後継である父上に媚を売るためだった。

 涙一つ流さず、全く悲しむ様子を見せていない父上に対し、国の権力者達は次々に頭を深々と下げ、父上のご機嫌取りに勤しんでいた。
 竜人族とは、それ程までに権力のある一族であるのだと幼いながらに自覚した。

 そんな世の中の汚い大人達に呆れていると、黒いハット帽を深々と被った見知らぬ紳士に声を掛けられた。

 「もしかして君の名前は、ディナーじゃないか?」

 身なりが整っている長身細身の紳士などに、知り合いは居ないし、幼い僕には見覚えがない。
 しかし、僕の名前は知っているという事は、知り合いなのは確かなのだろう。一体、誰なんだ?
 僕が固まって長考していると紳士はニヤニヤとニヤケ始めた。
 困惑している様子を見て楽しんでいるようにも見える。
 僕は怒りをあからさまに露わにし、黙り込んだ。

 「…………。」
 
 お互いに見つめあったまま口を頑なに開こうとしない。
 痺れを切らして聞こうとした矢先、紳士の方から話し始めた。

 「私の名前は、クレバー・ドラグノフ。竜騎士の育成を担っている竜人族の落ちこぼれさ! 君はやはり、聞いていた通りの子らしいなぁ! アッハッハッハッハッ!!」

 「あッ……!! おじいちゃんの言ってた育成所の人だ!!」

 「クレバー・ドラグノフ」始祖九竜頭の名門・ドラグノフ家の三男で道化師の修行をしていたという風来坊である。
 祖父に見込まれ、竜騎士になりうる人材をスカウトし教育する先生という役割を引き継いだ者である。
 祖父の話に出ていたお陰か、不思議と怒りは吹き飛び、怒りの感情は感動へと変わっていた。

 「君のおじいちゃんはね、竜人族としても人間としても偉大で民から尊敬を集めていたんだよ。王国のために誠意を尽くし、竜人族としての在り方、生き方の根本を見直した賢人さ! そんな偉大な人に頼まれた事がある」

 クレバーは満面の笑みを浮かべながら、僕に小さな手紙を渡してきた。
 驚きながら手紙を受け取ると、クレバーはニヤッと不敵な笑みを見せる。

 「もしかして……この手紙を渡すためだけにここに来たの?」

 「フフフ……また機会があればお会いする事になるでしょう。それでは、私はこれにて失礼します」

 急に畏まったかしこ態度を見せた紳士は、脱帽して挨拶をすると足早に人の波へと消えていった。
 勿論、後を追いかけたが姿を捉える事が出来ず見失った。


 この出会いは、後々の僕の人生を大きく変える事になる。


 
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