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第1章 幼少期
1. 祖父からの手紙
しおりを挟むクレバー・ドラグノフから受け取った手紙を握り締め、僕は自室へと駆け抜けた。それは何故か……クレバーは竜人族の間でも有名な問題児。
もし父上に見られていたら後々が面倒臭い上に、手紙自体を息吹で燃やされ破棄されかねないからだ。
勿論、問題児が渡す手紙の中身には、絶対に問題があると幼いながらに睨んでいるが、やはり手紙に目を通さねばならない。
僕はお気に入りの椅子に浅く座って、手紙を確認した。
手紙の枚数は全部で三枚。白紙の紙に綺麗な文字で書かれている。
一枚目の手紙には「最愛の孫へ……」とだけ書いてある。
やはり、祖父からの手紙らしい。二枚目の内容は……、
──────────────────────────
ディナーよ。
お前は、いま何歳になっているのだろうか。
さぞかし立派になっているのだろう。成長していく姿をずっと見れていたらいいが、それは今のじいちゃんには分からん。
先に言っておく、すまない。
お前には幼い頃から過度の期待、希望が課せられている。
それは、じいちゃんが不甲斐なかったせいなのだ。
理由は、わしが竜になれなかったせいだが他にも理由はある。
いずれは分かると思うが……今はそれを語れない。
すまない、話が逸れてしまった。さて、本題に戻ろうか。
内緒にしていたが、お前の体には「ミハタノコハクリュウ」という竜の刻印が刻まれている。
天竜・飛龍種に部類される天竜で、潜在能力は計り知れない程にあるとされている。それ故に希少とされる竜の刻印なのだ。
わしは嘘をついた。お前に絶対に竜になれると言った事だ。
このままでは、お前は絶対に竜にはなれん。
この竜は双子の双竜であり、片割れの「セツナノコクリュウ」の刻印がないと片割れの印だけでは、全ての力を引き出す事は不可能なのじゃ。
”御旗の琥珀竜”と”刹那の黒竜”の印が合わさった時、相反する竜の力は一つに統合される。
竜になりたいのならば、三枚目に書いてある「黒龍」の紋章に右手で触れ、「我はウロボロスから解かれる」と詠唱せよ。
これでお前の自由は保証される。
この手紙はわしが死んだら、ディナー……お前の手に渡るように、クレバーに頼んでいる物だ。
クレバーは、わしの信頼できる腹心だ。是非、頼ってほしい。
これはお前のため……死にゆく者としての最後の役目。
「天を怨みず人を尤めず」
恨めない存在になる私をどうか許して欲しい。さらばだ。
──────────────────────────
いつも明るく楽しげにしている祖父に似合わない手紙の内容。意味深な発言の数々に動揺は隠しきれなかった。
「なんだこれ……」と手紙を手にしながら思わず口から出ていた。色々な事を考えながら二枚目の手紙を後ろに持っていく。
最後の三枚目には、見たことの無い紋章が描かれていた。
「これが黒龍の刻印? これに触れて詠唱すればいいのか?」
疑心暗鬼に陥っていたが、大好きな祖父を信じて意を決する。
その紋章に手紙に記載されていた通りに右手で触れ、「我はウロボロスから解かれる」と詠唱を行う。
その瞬間、一瞬で首元に激痛が走った。
「い、痛ッ……!!」
今までに経験した事のない痛みは、僕を簡単に悶絶させる。
首を抑えながらのたうち回り、声も出せぬまま激痛に耐える。
次第に体全体が熱くなり、意識は遠のいていった。
──あぁ、ここで死ぬのかな。
死を覚悟する程の痛みと熱は、意識が無くなるまで続いた。
──ドックン……ッ!、ドックン……ッ、ドッ……クン……ッ!
力強く脈打つ心臓の鼓動が、体中を駆け巡る血の流れる音が、生命を維持させようともがき苦しむ音が、真っ暗な世界でずっと聞こえていた。
それから僕は意識を失い、生と死の狭間をさまよった。
そして、僕は地獄のような日々を思い出す。
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