カニ

ごむらば

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カニ

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冬といえばカニの季節。
僕は旅行で北陸を訪れていた。
活気のある市場の中で一際目を引いたのが、カニがたくさん並べられた冷蔵ケースの上に吊られて動いている大きなカニ。
作り物であることはすぐに分かったが、気になったのはその動き。
機械とは思えないような不規則な動き、時々動かなくなり休憩しているようにも見える。
ただ、ヒトが入るにしては小さ過ぎる、甲羅の大きさはザッと見ても70cmほど。

カニも買わないのに、そのカニを冷蔵ケースの前で見上げているのも不自然なので一旦そこから離れた。
離れて見ていると、冷蔵ケースの前からお客さんが引いてしまうと、店の主人らしき人はカニの甲羅の下の方から出ているコードを手繰る。
そしてその先にあるスイッチらしきものを操作すると、カニはビクッとした後、また動き出した。

やはり、不自然だと思ったが予定通り次の観光地へと向かった。
観光している間もあのカニが気になって、再び市場へと戻った。

戻った時には市場はすっかり落ち着き、中休みといった雰囲気。
例のカニのところへ行くと、冷蔵ケースのカニはすっかり売れてなくなっていた。
そして吊られていたカニは、大きな発泡スチロールの中に片側の脚を全て出した状態で収まっていた。
店の主人もおらずその大きなカニは放置されていた。
カニの甲羅の下から伸びるコードの先にはリモコンが有り、オフと強、弱の文字。

”弱”のスイッチを押してみる。
「あぁぁぁ」カニから確かに女性の声がした。
そしてカニは動きだす。
僕はビックリしてスイッチを握ったままコードを引っ張ってしまった。
すると、コードはカニから抜けて先には男性器のような形をしたモノが。
それはブルブルと振動している。

カニは動かなくなったが、僕はその男性器が抜けた箇所が気になり、指を入れてみた。
”あったかい!”
そのまま指を奥へ入れて搔き回すようにすると、カニからは先ほどよりも大きな声を上げた。
と同時に僕の後ろから「コラッ!」怒鳴り声が聞こえた。
振り返ると、店の主人が鬼のような形相で立っていた。
僕は「ゴメンなさい!」と言って慌ててその場を立ち去った。

その後は店の主人が怖くて市場には近寄っていません。

僕の推測ですがあのカニには、体の柔らかい女性が頭の後ろで足を組んでカニに入っていたんじゃないかと思う。
甲羅の下から延びていたコードの先はおそらく…。



おしまい
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